熱砂の策謀家
ジャミルSIDE
何故か泣いているエリーゼを、寝泊まりさせている部屋へ連れて行く。
さっきグラスを投げて寮生達にキレていた時は心底驚いたが‥急に泣き出した事も驚きだ。彼女の方こそ、情緒不安定じゃないか…?
部屋につき、一先ず椅子に座らせる。
ジャミル「心臓とグリムが言っていたが…持病があるのか?」
「もう痛くなんてならないわ」
ジャミル「だが、あの監督生とグリムの慌てぶりを見ると…酷いものだろ?今、痛みがなくても、一応飲んでいた方が…」
「精霊と関わることによる痛みだから、もう痛くなんてならないの」
自身の胸を触り、ロゼッタはどこか寂しそうに言う。精霊と関わる事で生じる?一体どういうことだ?
俺の顔から困惑していることを察したのか、彼女は苦笑いを浮かべる。
初日に見た笑顔とは程遠い…どこか作られたような笑みだ。
「私の心臓の痛みは…邪気が原因じゃないかって言われてるの。邪気がある中で精霊の力を使うことで、心臓が痛くなる。でも、アズール君の件があってから、心臓が痛くなることは随分減ったの。好かれている体質じゃなくなった今の私に、痛みが襲ってくるなんてありえないわ」
ユウとグリム君にも後で説明しとくわねと、笑って言うエリーゼ。
それは…喜ぶべき事だろう。痛みを感じなくなるんだから…何故、そんな辛い顔をするんだ。奴等から解放されて喜ぶべきだ。
………何で、無理して笑う。
「…さっきは本当に、ごめんなさい。生意気な事言っちゃって」
ジャミル「…いや、寧ろ…助かった。あのままだと暴動が起きていたからな」
___まぁ、そうなるように仕組んだのは俺だが。
俺が口走れば…‥必ず他の奴等は食いついて騒ぎ出し、暴動が起きる。
計画通り___なのに、コイツの行動だけは計画外だった。
“余計なこと”を言ってくれたおかげで__寮生達の暴走が揺らいだ。
だが、まぁ……あと一押しという所だろう。手順が1つ狂ったくらいで、なんてことはない。
こいつも、ユウもグリムも…精々、俺の手の中で踊って、働いて貰わないと。
エリーゼ、お前は俺にとって『魔法のランプ』だ。あの学園長のコネでお前はこの学園にいられる。
うまく利用すれば、学園長すらもゆするネタが作れる。だからお前を‟駒”に選んだんだ。
ジャミル「もう休め。俺は戻るから」
ポンと彼女の肩に手を置く。俺達とは違い、細く華奢な身体…レオナ先輩に気に入られているとはいえ、よく学園で食われないものだ。
人が望むように、両親が望むように、彼女が望むように優しい笑みを浮かべ、背を向ける。
このまま無視して部屋を出ればよかった
___だったら、きっと聞かずに済んだのに。
「……本当にいらないのは、私なのよ。・・・・このまま、消えてしまいたい」
ポツリと呟かれた彼女の“本音”。ドアノブに触れた手が止まった。
そして、思わず振り返ってしまった。
ジャミル「エリーゼ」
やめろ、それ以上何も言うな。何も言わずに外へ出ろ。聞こえなかったフリをしろ。精神はそう訴えるのに、俺の体はもう一度、彼女の目の前まで来ていた。
「……いらないのは、カリム君じゃなくて…私なの。お義父様も最近はユウとグリム君に頼ることが多いし…2人が優秀になったら、それこそ学園から出ていかなくっちゃ。」
そして、俺に向けた乾いた笑みを向ける。ぐっと拳を握る力が強まった。
___やめろ、俺にそんな顔を向けるな。
ジャミル「そんな事は…ない」
__お前がいらない?当然だろ、お前は学園長の駒だ。精霊の加護がなくなった今、お前は必要ない。
ジャミル「きっと戻るさ…心配しなくても」
__役に立たないのなら、精々俺の言う通りに動いてくれ
精神がそう訴える中、俺は右手首の……銀のバングルに手を伸ばしていた。ふと、その手が彼女の物と重なる。
「ごめんなさい、さっきのやつで汚れちゃったかも」
ジャミル「!……い、いやどこも汚れていない」
「…良かった。折角貰った物だもの、壊しちゃ大変だから」
さっと手を引っ込めた俺と、バングルを優しく撫でるエリーゼ。
____“ソレ”のせいで、今お前は苦しんでいるんだぞ
____“ソレ”を渡した“俺”のせいで……こんな事になっているんだ。
お前もカリムと同じ、鈍感なのか。変な所で鋭いくせに、何でそこには気付かないんだ……。
言えよ、カリムのせいだって、ここに誘ったオレのせいだって、
言って罵る資格はお前にはあるのに…………気づけよ。
「ジャミル君はやっぱり、優しいわね。」
ジャミル「……そんな事は、ない」
俺が優しい…だと?どこまでお気楽なんだ。
……………お前に褒められる資格なんて___俺には…ないんだ。
何故か泣いているエリーゼを、寝泊まりさせている部屋へ連れて行く。
さっきグラスを投げて寮生達にキレていた時は心底驚いたが‥急に泣き出した事も驚きだ。彼女の方こそ、情緒不安定じゃないか…?
部屋につき、一先ず椅子に座らせる。
ジャミル「心臓とグリムが言っていたが…持病があるのか?」
「もう痛くなんてならないわ」
ジャミル「だが、あの監督生とグリムの慌てぶりを見ると…酷いものだろ?今、痛みがなくても、一応飲んでいた方が…」
「精霊と関わることによる痛みだから、もう痛くなんてならないの」
自身の胸を触り、ロゼッタはどこか寂しそうに言う。精霊と関わる事で生じる?一体どういうことだ?
俺の顔から困惑していることを察したのか、彼女は苦笑いを浮かべる。
初日に見た笑顔とは程遠い…どこか作られたような笑みだ。
「私の心臓の痛みは…邪気が原因じゃないかって言われてるの。邪気がある中で精霊の力を使うことで、心臓が痛くなる。でも、アズール君の件があってから、心臓が痛くなることは随分減ったの。好かれている体質じゃなくなった今の私に、痛みが襲ってくるなんてありえないわ」
ユウとグリム君にも後で説明しとくわねと、笑って言うエリーゼ。
それは…喜ぶべき事だろう。痛みを感じなくなるんだから…何故、そんな辛い顔をするんだ。奴等から解放されて喜ぶべきだ。
………何で、無理して笑う。
「…さっきは本当に、ごめんなさい。生意気な事言っちゃって」
ジャミル「…いや、寧ろ…助かった。あのままだと暴動が起きていたからな」
___まぁ、そうなるように仕組んだのは俺だが。
俺が口走れば…‥必ず他の奴等は食いついて騒ぎ出し、暴動が起きる。
計画通り___なのに、コイツの行動だけは計画外だった。
“余計なこと”を言ってくれたおかげで__寮生達の暴走が揺らいだ。
だが、まぁ……あと一押しという所だろう。手順が1つ狂ったくらいで、なんてことはない。
こいつも、ユウもグリムも…精々、俺の手の中で踊って、働いて貰わないと。
エリーゼ、お前は俺にとって『魔法のランプ』だ。あの学園長のコネでお前はこの学園にいられる。
うまく利用すれば、学園長すらもゆするネタが作れる。だからお前を‟駒”に選んだんだ。
ジャミル「もう休め。俺は戻るから」
ポンと彼女の肩に手を置く。俺達とは違い、細く華奢な身体…レオナ先輩に気に入られているとはいえ、よく学園で食われないものだ。
人が望むように、両親が望むように、彼女が望むように優しい笑みを浮かべ、背を向ける。
このまま無視して部屋を出ればよかった
___だったら、きっと聞かずに済んだのに。
「……本当にいらないのは、私なのよ。・・・・このまま、消えてしまいたい」
ポツリと呟かれた彼女の“本音”。ドアノブに触れた手が止まった。
そして、思わず振り返ってしまった。
ジャミル「エリーゼ」
やめろ、それ以上何も言うな。何も言わずに外へ出ろ。聞こえなかったフリをしろ。精神はそう訴えるのに、俺の体はもう一度、彼女の目の前まで来ていた。
「……いらないのは、カリム君じゃなくて…私なの。お義父様も最近はユウとグリム君に頼ることが多いし…2人が優秀になったら、それこそ学園から出ていかなくっちゃ。」
そして、俺に向けた乾いた笑みを向ける。ぐっと拳を握る力が強まった。
___やめろ、俺にそんな顔を向けるな。
ジャミル「そんな事は…ない」
__お前がいらない?当然だろ、お前は学園長の駒だ。精霊の加護がなくなった今、お前は必要ない。
ジャミル「きっと戻るさ…心配しなくても」
__役に立たないのなら、精々俺の言う通りに動いてくれ
精神がそう訴える中、俺は右手首の……銀のバングルに手を伸ばしていた。ふと、その手が彼女の物と重なる。
「ごめんなさい、さっきのやつで汚れちゃったかも」
ジャミル「!……い、いやどこも汚れていない」
「…良かった。折角貰った物だもの、壊しちゃ大変だから」
さっと手を引っ込めた俺と、バングルを優しく撫でるエリーゼ。
____“ソレ”のせいで、今お前は苦しんでいるんだぞ
____“ソレ”を渡した“俺”のせいで……こんな事になっているんだ。
お前もカリムと同じ、鈍感なのか。変な所で鋭いくせに、何でそこには気付かないんだ……。
言えよ、カリムのせいだって、ここに誘ったオレのせいだって、
言って罵る資格はお前にはあるのに…………気づけよ。
「ジャミル君はやっぱり、優しいわね。」
ジャミル「……そんな事は、ない」
俺が優しい…だと?どこまでお気楽なんだ。
……………お前に褒められる資格なんて___俺には…ないんだ。