熱砂の策謀家
「申し訳ないけど、いらないわ。」
カリム「遠慮するな!お詫びなんだし」
「楽しかったから、大丈夫よ」
ジャミル「冷汗を搔いている、やっぱり無理をしていたんだろう」
カリム「それなら猶更貰ってくれ!ほら、これとかどうだ?エリーゼの瞳と同じ色の宝石がついたイヤリング!それとも、こっちのペンダントがいいか?」
ジャミル「カリム。それだと派手すぎる。エリーゼは整っているし、可愛らしい顔つきをしているんだ。宝石ジャラジャラは似合わないだろう」
カリム「う~ん、それもそうだな…じゃあ服はどうだ?特注で造らせるってのは」
ジャミル「服か…それもいいが……ちょっと待っていろ。心当たりがある」
拒否して欲しいのだけども、ジャミル君も一緒になって探し出す。
どさくさ紛れてグリム君も盗もうとしているのを見付け、ユウがバシッと叩く。
「あ、あの本当に…「見つけた、これ何かどうだ?」
私の話を聞いて!!
カリム「確かに綺麗だな!シンプルだけど、この宝石、エリーゼに似合う!」
ジャミル「そうだろ?ここへ来た時から、彼女に似合うと思っていた」
カリム「流石ジャミルだな!エリーゼ、手を出してくれ」
断わる言葉を、言う間もなくカリム君に右手を取られる。その右手に銀色のバングルをつけてくれた。煌びやかな宝物庫にある物としてはいたってシンプルだ。
シルバーの細めのバングル。
花のような模様のデザインに、蒼い色の宝石が埋め込まれている。
………シンプルなデザインで凄く好みだが___この宝石本物?
カリム「どうだ?気に入ったか?」
「え、ええ…凄い素敵だけど………こ、こんな高価そうなもの貰えないわ!」
カリム「気にするなって!お詫びと、お礼みたいなもんだ!」
「だ、だけど…」
カリム「そろそろ夕食だし、行こうぜ!」
監督生「さすが、この学園の人だ。」
また話を聞いてくれず、テクテクと出口へ歩いていくカリム君。
すると、ジャミル君が近付いてきた。
ジャミル「熱砂の国の薔薇とモチーフにされているデザインだ。気に入ってくれただろうか?」
「素敵だけど、貰えないわ」
ジャミル「何、1つ無くなったところで、まだこんなにあるんだ」
グリム「それはそれでどーかと思うんだゾ」
「それに私何かに、こんな装飾品は‥「そんなことはない」
私の言葉にかぶせ、ジャミル君は私のバングルに触れる。
ジャミル「君によく似合うよ。気に入っているならこのまま貰ってくれ、カリムも喜ぶ」
「……で、でも」
ジャミル「そうか…熱砂の国では、男性が女性にものを送るのは信頼の証と言われているが、君がそれを拒むなら仕方がない。カリムに言って…」
「そういう訳じゃないわ!ただ、高価な物だし!謝罪されるいわれもないから…ただそれだけよ」
カリム君に言いに行こうとするジャミル君を止める。
そんな事言われたらもう受取る以外、選択義が無い。
「…そ、そういう事だったら、貰うことにするわ。返せと言われたらすぐに返すから」
ジャミル「良かった。カリムも喜ぶよ」
さっきの浮かない顔はどこへ行ったのか、ニッコリと笑みを深めるジャミル君。…嵌めたわね。
カリム「おーい、何してるんだ?早く行こうぜー!」
物置の扉を開け、カリム君が此方を呼んでいる。
…その時、ふと気づいた。
「あれ?サラマンダーはどこ?」
グリム「……あ!?あいつ、いなくなってるんだゾ!オレ様の子分2号が!」
監督生「誰も子分になってないよ………どこ行ったんでしょうね」
キョロキョロと探すが、先ほどまで一緒にいたサラマンダーの姿が無い。
___あと、何だろう。
「……なんか、ちょっと気持ち悪い」
グリム「体調悪いのか?」
監督生「大丈夫ですか!?」
ジャミル「大丈夫か?何なら部屋を用意するが‥」
「大丈夫よ。多分、夜と昼の気温のせいじゃないかしら」
ジャミル「あぁ、そうだな。砂漠の夜は冷える、あとで上着を用意しよう」
「ありがとう」
契約している訳でも無いし…戻って来るわよね?そう考え、カリム君の元へ駆ける。
ジャミル「………ククッ」
後ろでジャミル君が怪しく笑っている事に気付かないまま…‥。
物置から出て、談話室へ向かおうとした時、ジャミル君がカリム君に話したい事があるらしく、「先に行っててくれ~」とカリム君に告げられる。
それに頷き、私とユウとグリム君は談話室に歩き出す。
グリム「エリーゼだけいいな~オレ様も欲しいんだゾ!」
「…かなり強引だった気もするけど………っ」
ふと、立ち眩みがして、壁に手をつき、立ち止まる。
グリム「どうした?大丈夫か?」
監督生「顔色が‥」
「……大丈夫よ」
グリム「空飛び過ぎて、クラクラしたのか?」
「そうかもしれないわね」
グリム「………本当に、大丈夫なんだゾ?」
心配そうに見上げるグリム君。しゃがみ込み、そんな彼の頭を撫でる。
「お腹空いているのもあるから、ご飯食べたら治るわよ」
グリム「そう…か…‥なら、いっぱい食べるんだゾ~!」
「ええ、行きましょう」
グリム君を抱えて、談話室へ急いだ。
_______________スカラビア寮 談話室
寮生「あ~腹減った。今日の夕食はなんだろう?」
寮生「今日の特訓もキツかったな~」
談話室につくと、特訓を終えた寮生たちがグッタリとした様子で食事を待っていた。…なんか、絨毯で楽しんでいたのが申し訳なくなる。
「…ふぅ、昼間と違って大分涼しいわね」
グリム「ここは冷たい隙間風が吹き込むオンボロ寮と違ってまさに楽園なんだゾ。カリムもいいヤツだし。オレ様ここの寮生になりてぇな~」
すると、ジャミル君とカリム君が談話室へ入ってきた。
ジャミル「みんな揃ってるな?夕食の前に、寮長から寮生全員に話があるそうだ」
寮生「寮長から話……ですか?」
ジャミル君の言葉に寮生たちはざわついている。
グリム「あ、そっか。そういえばカリムのヤツ……居残り特訓はやめて明日からスカラビアも冬休みにするって言ってたんだゾ」
監督生「……あ、そうか。昼間言っていたね」
グリム「オレ様は美味いメシが冬休みのあいだ食えなくなって残念なんだゾ~」
だけど、寮生たちにとっては嬉しい事だろう。そして、カリム君はジャミル君や寮生たちの前に出る。
カリム「………この冬休み、オレたちスカラビアは自主的に寮に残り、毎日6時間自習をすると決定したが……オレは気づいた。
それじゃ、全然生ぬるい!!!!!」
「『え!?』」
カリム君の言葉に、驚愕した。昼間まであんなに精霊が見えていたのに、今はカリム君の側に、精霊たちが見えない。
ジャミル「カリム。寮生を家に帰すと決めたんじゃ……!?」
グリム「アイツ、さっきと言ってることが全然違うんだゾ!?」
「カ、カリム君…ど、どうしちゃったの?」
カリム「1日たった6時間で、他寮にとった遅れが挽回できるはずがない。他寮の2倍、いや、5倍の努力をしなければ、成績最下位の寮の汚名を注げないと思え!明日からは毎日5時間の勉強と、4時間の実技訓練を全員の義務とする!」
監督生「…毎日9時間!?」
そんな詰め込んで本当に見に着くはずがない。流石に無理やりすぎる。寮生たちも困惑の声を上げているが、カリム君には届かない。
カリム「今日の夕食後は、防衛魔法の特訓を行う!さっさと食って準備しろ」
「「は……はいっ!」」
カリム「スカラビアに来たからには、エリーゼと監督生とグリムも強制参加だ!いいな!」
グリム「えぇ~!なんでオレ様たちまで!?」
監督生「本当に、どうして‥」
「さすがにやりすぎじゃ・・」
ジャミル「………」
_____ポタポタッ
【俺は_____大嫌いだった】
「っつ!?」
チクリと針の様な痛みが胸に感じ、インクが垂れる音がした
痛みはもう襲ってくることはないってメリッサ達言ってたのに、どうして?
グリム「エリーゼ、どうしたんだゾ?」
「何にもないわ」
早めに食べて…特訓とやらに参加しないと…今のカリム君に逆らってはいけない気がする。
***
食べ終わって早々、他の寮生たちに強制達に連れ出され、噴水広場の方へ連れ出された。
魔法が使えないユウは筋トレなどの体力メニューを、グリム君と私は魔法の特訓に引き摺られていった。
***
カリム「本日はここまで!!」
そして、カリム君の宣言で今日の特訓が終了した。
カリム「明日の午前中は、東のオアシスまで行進だ。徹底的にしごいてやるから、そのつもりでいろ!」
そういうとカリム君は寮の中へ戻って行った。カリム君がいなくなったと同時に倒れ込む寮生たち。
寮生「はぁ……はぁ……。手も足もガクガクだ……」
寮生「誰か、水……水をくれ……」
寮生「明日も朝から砂漠を行進なんて」
寮生「寮長はどうしちまったんだ。前はこんなことする人じゃなかったのに」
ジャミル「………」
グリム「ぜ~は~……やっと終わった」
フラフラとしながらユウの足元までたどり着いたグリム君。
立つことも辛そうだったので、持ち上げて上げる。
グリム「さっきまで超ニコニコしたいいヤツだったのに急に人が変わっちまったんだゾ」
「…本当にどうしたのかしら、カリム先輩」
ジャミル「きっと、寮対抗マジフト大会や期末テストでスカラビアの成績がふるわなかったことに……責任を感じているんだろう。アイツは最近、ひどく情緒不安定なんだ」
監督生「情緒不安定…にしては、性格180度変わり過ぎでは?二重人格といった方が…」
ジャミル「俺もアイツとは長い付き合いだが、今のカリムとどう接したものかと困り果てている」
ジャミル君は眉をひそめて話す。つまり、幼少期から一緒にいたジャミル君でも今の症状が謎…という事。
「…あんな感じになったのはここ最近よね?私が知る限りカリム君はあんな子じゃなかった」
ジャミル「あぁ。言動がコロコロ変わったり、急に横暴になったり……とにかく手に負えない。こうなる前は寮生全員が寮長であるカリムを慕っていたが、最近のおかしな様子には戸惑うばかりで……」
監督生「…変な物食べたとか?」
ジャミル「それは俺がいるから絶対にない」
断言するジャミル君。…従者の鏡ね。
ジャミル「さっきのように突然無茶を言い出すことも多くて……このままじゃ寮生たちの不満が爆発するのは時間の問題だ」
監督生「そりゃそうでしょうね」
いきなり態度が変わって、特訓9時間って……やる事なす事、無茶苦茶な寮長、不満を持つなという方が無茶だ。
ジャミル「今まではなんとかフォローしてきたが……俺1人の力ではもう限界が見えている」
監督生「逆によくフォロー出来ましたね…」
グリム「うーん、ハーツラビュルのトレイといい、副寮長ってヤツは苦労するんだゾ」
「…トレイさんか。確かにある意味苦労していたわね」
そういえば、少しリドル君の時の件と似ている気がする。
もしかして……アジーム家のストレスがたまって………いや、違う。家族との仲も良好そうだし。ハーツラビュルの時の様な話ではないと思う。
すると、ジャミル君が「あ!」と声を上げ、こちらを見た。
ジャミル「そうか……君たちこそ、“ダイヤの原石”なんだ!」
「ダ、ダイヤの原石?」
グリム「はぁ?なんだそれ?」
カリム「遠慮するな!お詫びなんだし」
「楽しかったから、大丈夫よ」
ジャミル「冷汗を搔いている、やっぱり無理をしていたんだろう」
カリム「それなら猶更貰ってくれ!ほら、これとかどうだ?エリーゼの瞳と同じ色の宝石がついたイヤリング!それとも、こっちのペンダントがいいか?」
ジャミル「カリム。それだと派手すぎる。エリーゼは整っているし、可愛らしい顔つきをしているんだ。宝石ジャラジャラは似合わないだろう」
カリム「う~ん、それもそうだな…じゃあ服はどうだ?特注で造らせるってのは」
ジャミル「服か…それもいいが……ちょっと待っていろ。心当たりがある」
拒否して欲しいのだけども、ジャミル君も一緒になって探し出す。
どさくさ紛れてグリム君も盗もうとしているのを見付け、ユウがバシッと叩く。
「あ、あの本当に…「見つけた、これ何かどうだ?」
私の話を聞いて!!
カリム「確かに綺麗だな!シンプルだけど、この宝石、エリーゼに似合う!」
ジャミル「そうだろ?ここへ来た時から、彼女に似合うと思っていた」
カリム「流石ジャミルだな!エリーゼ、手を出してくれ」
断わる言葉を、言う間もなくカリム君に右手を取られる。その右手に銀色のバングルをつけてくれた。煌びやかな宝物庫にある物としてはいたってシンプルだ。
シルバーの細めのバングル。
花のような模様のデザインに、蒼い色の宝石が埋め込まれている。
………シンプルなデザインで凄く好みだが___この宝石本物?
カリム「どうだ?気に入ったか?」
「え、ええ…凄い素敵だけど………こ、こんな高価そうなもの貰えないわ!」
カリム「気にするなって!お詫びと、お礼みたいなもんだ!」
「だ、だけど…」
カリム「そろそろ夕食だし、行こうぜ!」
監督生「さすが、この学園の人だ。」
また話を聞いてくれず、テクテクと出口へ歩いていくカリム君。
すると、ジャミル君が近付いてきた。
ジャミル「熱砂の国の薔薇とモチーフにされているデザインだ。気に入ってくれただろうか?」
「素敵だけど、貰えないわ」
ジャミル「何、1つ無くなったところで、まだこんなにあるんだ」
グリム「それはそれでどーかと思うんだゾ」
「それに私何かに、こんな装飾品は‥「そんなことはない」
私の言葉にかぶせ、ジャミル君は私のバングルに触れる。
ジャミル「君によく似合うよ。気に入っているならこのまま貰ってくれ、カリムも喜ぶ」
「……で、でも」
ジャミル「そうか…熱砂の国では、男性が女性にものを送るのは信頼の証と言われているが、君がそれを拒むなら仕方がない。カリムに言って…」
「そういう訳じゃないわ!ただ、高価な物だし!謝罪されるいわれもないから…ただそれだけよ」
カリム君に言いに行こうとするジャミル君を止める。
そんな事言われたらもう受取る以外、選択義が無い。
「…そ、そういう事だったら、貰うことにするわ。返せと言われたらすぐに返すから」
ジャミル「良かった。カリムも喜ぶよ」
さっきの浮かない顔はどこへ行ったのか、ニッコリと笑みを深めるジャミル君。…嵌めたわね。
カリム「おーい、何してるんだ?早く行こうぜー!」
物置の扉を開け、カリム君が此方を呼んでいる。
…その時、ふと気づいた。
「あれ?サラマンダーはどこ?」
グリム「……あ!?あいつ、いなくなってるんだゾ!オレ様の子分2号が!」
監督生「誰も子分になってないよ………どこ行ったんでしょうね」
キョロキョロと探すが、先ほどまで一緒にいたサラマンダーの姿が無い。
___あと、何だろう。
「……なんか、ちょっと気持ち悪い」
グリム「体調悪いのか?」
監督生「大丈夫ですか!?」
ジャミル「大丈夫か?何なら部屋を用意するが‥」
「大丈夫よ。多分、夜と昼の気温のせいじゃないかしら」
ジャミル「あぁ、そうだな。砂漠の夜は冷える、あとで上着を用意しよう」
「ありがとう」
契約している訳でも無いし…戻って来るわよね?そう考え、カリム君の元へ駆ける。
ジャミル「………ククッ」
後ろでジャミル君が怪しく笑っている事に気付かないまま…‥。
物置から出て、談話室へ向かおうとした時、ジャミル君がカリム君に話したい事があるらしく、「先に行っててくれ~」とカリム君に告げられる。
それに頷き、私とユウとグリム君は談話室に歩き出す。
グリム「エリーゼだけいいな~オレ様も欲しいんだゾ!」
「…かなり強引だった気もするけど………っ」
ふと、立ち眩みがして、壁に手をつき、立ち止まる。
グリム「どうした?大丈夫か?」
監督生「顔色が‥」
「……大丈夫よ」
グリム「空飛び過ぎて、クラクラしたのか?」
「そうかもしれないわね」
グリム「………本当に、大丈夫なんだゾ?」
心配そうに見上げるグリム君。しゃがみ込み、そんな彼の頭を撫でる。
「お腹空いているのもあるから、ご飯食べたら治るわよ」
グリム「そう…か…‥なら、いっぱい食べるんだゾ~!」
「ええ、行きましょう」
グリム君を抱えて、談話室へ急いだ。
_______________スカラビア寮 談話室
寮生「あ~腹減った。今日の夕食はなんだろう?」
寮生「今日の特訓もキツかったな~」
談話室につくと、特訓を終えた寮生たちがグッタリとした様子で食事を待っていた。…なんか、絨毯で楽しんでいたのが申し訳なくなる。
「…ふぅ、昼間と違って大分涼しいわね」
グリム「ここは冷たい隙間風が吹き込むオンボロ寮と違ってまさに楽園なんだゾ。カリムもいいヤツだし。オレ様ここの寮生になりてぇな~」
すると、ジャミル君とカリム君が談話室へ入ってきた。
ジャミル「みんな揃ってるな?夕食の前に、寮長から寮生全員に話があるそうだ」
寮生「寮長から話……ですか?」
ジャミル君の言葉に寮生たちはざわついている。
グリム「あ、そっか。そういえばカリムのヤツ……居残り特訓はやめて明日からスカラビアも冬休みにするって言ってたんだゾ」
監督生「……あ、そうか。昼間言っていたね」
グリム「オレ様は美味いメシが冬休みのあいだ食えなくなって残念なんだゾ~」
だけど、寮生たちにとっては嬉しい事だろう。そして、カリム君はジャミル君や寮生たちの前に出る。
カリム「………この冬休み、オレたちスカラビアは自主的に寮に残り、毎日6時間自習をすると決定したが……オレは気づいた。
それじゃ、全然生ぬるい!!!!!」
「『え!?』」
カリム君の言葉に、驚愕した。昼間まであんなに精霊が見えていたのに、今はカリム君の側に、精霊たちが見えない。
ジャミル「カリム。寮生を家に帰すと決めたんじゃ……!?」
グリム「アイツ、さっきと言ってることが全然違うんだゾ!?」
「カ、カリム君…ど、どうしちゃったの?」
カリム「1日たった6時間で、他寮にとった遅れが挽回できるはずがない。他寮の2倍、いや、5倍の努力をしなければ、成績最下位の寮の汚名を注げないと思え!明日からは毎日5時間の勉強と、4時間の実技訓練を全員の義務とする!」
監督生「…毎日9時間!?」
そんな詰め込んで本当に見に着くはずがない。流石に無理やりすぎる。寮生たちも困惑の声を上げているが、カリム君には届かない。
カリム「今日の夕食後は、防衛魔法の特訓を行う!さっさと食って準備しろ」
「「は……はいっ!」」
カリム「スカラビアに来たからには、エリーゼと監督生とグリムも強制参加だ!いいな!」
グリム「えぇ~!なんでオレ様たちまで!?」
監督生「本当に、どうして‥」
「さすがにやりすぎじゃ・・」
ジャミル「………」
_____ポタポタッ
【俺は_____大嫌いだった】
「っつ!?」
チクリと針の様な痛みが胸に感じ、インクが垂れる音がした
痛みはもう襲ってくることはないってメリッサ達言ってたのに、どうして?
グリム「エリーゼ、どうしたんだゾ?」
「何にもないわ」
早めに食べて…特訓とやらに参加しないと…今のカリム君に逆らってはいけない気がする。
***
食べ終わって早々、他の寮生たちに強制達に連れ出され、噴水広場の方へ連れ出された。
魔法が使えないユウは筋トレなどの体力メニューを、グリム君と私は魔法の特訓に引き摺られていった。
***
カリム「本日はここまで!!」
そして、カリム君の宣言で今日の特訓が終了した。
カリム「明日の午前中は、東のオアシスまで行進だ。徹底的にしごいてやるから、そのつもりでいろ!」
そういうとカリム君は寮の中へ戻って行った。カリム君がいなくなったと同時に倒れ込む寮生たち。
寮生「はぁ……はぁ……。手も足もガクガクだ……」
寮生「誰か、水……水をくれ……」
寮生「明日も朝から砂漠を行進なんて」
寮生「寮長はどうしちまったんだ。前はこんなことする人じゃなかったのに」
ジャミル「………」
グリム「ぜ~は~……やっと終わった」
フラフラとしながらユウの足元までたどり着いたグリム君。
立つことも辛そうだったので、持ち上げて上げる。
グリム「さっきまで超ニコニコしたいいヤツだったのに急に人が変わっちまったんだゾ」
「…本当にどうしたのかしら、カリム先輩」
ジャミル「きっと、寮対抗マジフト大会や期末テストでスカラビアの成績がふるわなかったことに……責任を感じているんだろう。アイツは最近、ひどく情緒不安定なんだ」
監督生「情緒不安定…にしては、性格180度変わり過ぎでは?二重人格といった方が…」
ジャミル「俺もアイツとは長い付き合いだが、今のカリムとどう接したものかと困り果てている」
ジャミル君は眉をひそめて話す。つまり、幼少期から一緒にいたジャミル君でも今の症状が謎…という事。
「…あんな感じになったのはここ最近よね?私が知る限りカリム君はあんな子じゃなかった」
ジャミル「あぁ。言動がコロコロ変わったり、急に横暴になったり……とにかく手に負えない。こうなる前は寮生全員が寮長であるカリムを慕っていたが、最近のおかしな様子には戸惑うばかりで……」
監督生「…変な物食べたとか?」
ジャミル「それは俺がいるから絶対にない」
断言するジャミル君。…従者の鏡ね。
ジャミル「さっきのように突然無茶を言い出すことも多くて……このままじゃ寮生たちの不満が爆発するのは時間の問題だ」
監督生「そりゃそうでしょうね」
いきなり態度が変わって、特訓9時間って……やる事なす事、無茶苦茶な寮長、不満を持つなという方が無茶だ。
ジャミル「今まではなんとかフォローしてきたが……俺1人の力ではもう限界が見えている」
監督生「逆によくフォロー出来ましたね…」
グリム「うーん、ハーツラビュルのトレイといい、副寮長ってヤツは苦労するんだゾ」
「…トレイさんか。確かにある意味苦労していたわね」
そういえば、少しリドル君の時の件と似ている気がする。
もしかして……アジーム家のストレスがたまって………いや、違う。家族との仲も良好そうだし。ハーツラビュルの時の様な話ではないと思う。
すると、ジャミル君が「あ!」と声を上げ、こちらを見た。
ジャミル「そうか……君たちこそ、“ダイヤの原石”なんだ!」
「ダ、ダイヤの原石?」
グリム「はぁ?なんだそれ?」