熱砂の策謀家

_______________スカラビア寮

鏡舎へ行き、皆、スカラビア寮へ続く鏡を通った。

監督生「暑い」

熱い日差しにムスッとした空気…そして、目の前に宮殿のような建物が。
その奥には砂漠が見える

グリム「ここがスカラビア寮か。本当にムワッと暑くて、真夏みてぇなんだゾ!」

ジャミル「冷えた身体が温まるだろう?」

「暖まるを通り越して暑く感じるわね…でも、いつ見ても大きい建物ね」

暑がる私と対照的にサラマンダーはさっきよりテンションが高い。暑い所…というか、炎とかの中に住むから。この暑さは丁度いいのだろう。

ジャミル「さあ、こっちだ」

宮殿を眺めていた私達をエスコートしてくれるジャミル君。彼に連れられ、私達は豪華でデカイ宮殿の中へ入った。

__________スカラビア寮 談話室

連れられたのは、スカラビア寮の談話室。豪華で立派な絨毯の上には、派手な柄で大きさが様々なクッションが転がっていた。窓が無く、開放的で、砂漠の風景が見渡せる。

ジャミル「さぁ、そこにどうぞ」

「失礼します」

一応会釈して、ユウと一緒にクッションが何もない隅っこに座る。グリム君とサラマンダーは堂々と真ん中に座り、クッションで遊んでいる。
あぁ、怖い…破かないでね。

ジャミル「気にしなくてもいい。ほら、地面じゃ腰が痛いだろう」

監督生「…お、お気遣いどうも」

絨毯が普通と違うくらい柔らかいから、腰が痛む事も無いと思うけれど…。

ジャミル「客人のおでましだ!みな、歓迎の音楽を!」

パンパンと手拍子をし、寮生たちに告げるジャミル君。

そうしている間に、寮生たちが演奏を始める。

グリム「にゃっはっは!オレ様ほどの有名人ともなるとこんなに歓迎されちまうのか!」

監督生「…悪名の意味で有名なのでは?」

熱砂の国の楽器集団と、目の前には豪華な料理。

こんなよくしてもらってもいいのかしら?

ジャミル「さあ、冷める前にどんどん食べてくれ」

グリム「いただきまーす!…う、うまい!口いっぱいに広がるスパイスの香りに、後引く辛さ……。カリカリのナッツが乗った野菜の炒め物も美味いし、コッチの揚げ饅頭みたいなのも、んまぁい!」

サラマンダー『美味し~』

ジャミル「肉料理とスープもあるぞ。まだまだ沢山あるから、食べていってくれ」

バクバクと食べるグリム君とサラマンダーに苦笑いをするユウと私。
サラマンダーに至ってはさっきまで威嚇していたのに。

監督生「…あの、寮長さんが来る前に食べたら行儀が悪いんじゃ」

ジャミル「そんな事は気にしなくても遠慮せず食べるといい。それに、毒見は済んである」

「・・・毒見?」

カリム君が次期当主だからやっているんでしょうけど、知らないふりしておこう

___その時。

「……お前たち、なにを騒いでいる?」

声がした方を向けば、この寮の寮長、カリム君が立っていた。

スカラビア寮生達「!!り、寮長……!」

カリム君の登場に、賑やかな場がシンとなった。音楽の舞台も停止し、皆に緊張が走る。…そんな緊張走るほど怖い子じゃないはずよね?
チラッとジャミル君を見ると、彼自身もどこか焦っているようだ。

ジャミル「カリム……」

カリム「どういうことだ、ジャミル。客を呼ぶなんてオレは聞いていないぞ!」

ジャミル「カリム、これにはワケが____……」

グリム「…何か、怖そうな奴が来たんだゾ」

監督生「や、やっぱり失礼だったかな…」

え?カリム君が怒ってる?いつもニコニコしてるのに・・・

カリム「客を呼ぶ時は、必ず先に報告しろと言ったはずだ!そうすれば…………もっとスゲーご馳走と音楽隊を用意出来たのに~~!」

「「え?」」

私とユウとグリム君、そしてスカラビ寮生たち全員が、目を点にする。
そんな私らには気付かず、カリム君はいつものような、太陽のような笑みを浮かべる。

カリム「エリーゼよく来たな!それに、よう、おふたりさん。出迎えのパレードもなくて悪い!オレはスカラビアの寮長、カリム・アルアジームだ。はじめまして、だよな?」

監督生「え、えっと」

先ほどの暗い雰囲気は何だったのか・・・私達に絡んでくる。

ジャミル「いいや、監督生たちとは初対面じゃない。お前は入学式でグリムに尻を焦がされたし、マジフト大会の前にも食堂で話をしたぞ」

カリム「あれっ?そうだったか?あっはっは、悪い悪い。オレ、あんまり人の顔覚えるの得意じゃねぇんだよな~。気を悪くしないでくれ」

監督生「い、いえ、全然。ユウです。お邪魔しています」

カリム「おう!カリム・アルアジームだ!よろしくな!監督生、グリム!」

監督生「よろしくお願いします」

グリム「よろしく!なんだゾ!」

「……!」

彼の周りにフワッと火の精霊が飛んでいた。しかも1人ではない…何人もいる。

精霊は妖精以上に人間には懐かない。凄い妖精に好かれているわね…。

私と同じ体質……ではなさそうだけども。
6/42ページ
スキ