熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
ジャミル「ここまで言ってもらって、断るのはおかしいな。その名誉ある打ち上げ……俺たちが引き受けさせてもらいます。ドッカーン! ……と派手に決めますよ」
カリム「よし! 花火大会の楽しみが1つ増えた! 楽しみだなー」
監督生「ロゼッタさん、頑張ってください!」
「ええ!」
マレウス「……乾杯はしないのか?」
マレウスは不思議そうにミントレモネードのグラスを持ち上げる。
気絶していたロゼッタが目を覚ます前、一足先に乾杯した際、マレウスは乾杯する理由をケイトに聞いた。乾杯するのはめでたいことがある時にすると伝えるとマレウスは納得し、グラスを合わせた。
マレウスにとってロゼッタとジャミルが名誉ある大役を任されたことはめでたく、乾杯するものだと思っているようだ。
カリム「あ! たしかに! マレウス、よく気づいてくれたぜ」
ケイト「うんうん! マレウスくんの覚えが早くて、ケイト先生はうれしーよ! それじゃあ、ジャミルくんとロゼッタちゃんの晴れ舞台を祝して……」
「「「『かんぱーい!!』」」」
コツンと重なったグラスが音を立てる。
花火が打ち上がるまでの僅かな時間をロゼッタたちは穏やかに流れる河を見つめながら楽しんだ。
そしてついに花火が打ちあがる。
空に大輪の花が咲いている。打ち上がる花火を見上げながらロゼッタはそう感じていた。
花火玉が空に打ち上げられ、弾けて夜空に鮮やかな色を咲かす度に人々は声をあげて喜び、顔に笑顔を浮かべる。
ケイト「うわ、すっごー!」
トレイ「こんなに大きな花火を見たのは初めてだ!」
マレウス「手を伸ばせば、花火に届きそうな迫力だな」
「とっても綺麗……」
監督生「はい、本当に綺麗ですね。」
写真を撮るシャッター音ですら打ち消す花火の音。
赤、緑、青……色が変わる度にロゼッタの顔を照らす色も変わっていく。自分の隣で目を輝かせるロゼッタに監督生は目を細めた。
「(……やっぱり花火よりロゼッタさんが綺麗だ)」
無邪気に喜ぶロゼッタの横顔を見て監督生はそう感じた。
ジャミル「ただ上を見ているだけでは、もったいないですよ」
トレイ「ん? どういうことだ?」
カリム「花火の下で、楽しく踊るのが【ヤーサミーナ河 花火大会】なんだ!」
ジャミル「姫と青年の結婚を祝福して、人々が踊ったのが始まりなんです。せっかくの機会ですし、みなさんも踊って2人を祝福してみては?」
マレウス「この国の伝統文化というのなら、僕も参加させてとらおう」
グリム「監督生とロゼッタも一緒に踊るんだゾ!」
監督生「わかった!」
「ええ」
ぴょんぴょん飛び跳ねるグリムに柔らかく微笑むとロゼッタはその手を握る。
ただ楽しく、代わる代わる手を取り合い踊る彼らの顔には笑顔が溢れていた。
ジャミル「ロゼッタ様、そろそろお時間です」
「ええ」
ジャミルがロゼッタの耳元で囁けば手に持っていた手持ち花火に力を入れる。ジャミルの腰にさしていたマジカルペンの魔法石が光り、2人の手持ち花火の先に火が付くと花火が噴射された。
ジャミル「準備はよろしいですか?」
「いつでも大丈夫よ」
ジャミル「それじゃあいきますよ。3.2.1……」
ジャミルのカウントに合わせてロゼッタは手持ち花火を自分の背よりも高く掲げる。
2人の花火が重なった数秒後、河の対岸からドン、と一際大きな音がなり空に大輪の花が咲く。
この美しい光景を忘れることはない。
ロゼッタは目に映る美しい色鮮やかな花火を眩しい笑みを浮かべながら、記憶に焼き付けていた。
翌日ー
「ジャミル君、お見送りありがとう」
カリムの家で賑やかで煌びやかな宴の招待を受けた後、ロゼッタは監督生たちよりも一足早く学園に戻ることを決めた。
鏡の前に着くとロゼッタは隣に立つジャミルを振り返る。
ジャミル「……本当にお帰りになられるのですか? 久しぶりに故郷に来たのですから、もう1日いたらどうです?」
大量の土産が入った紙袋を両手に持つロゼッタにジャミルは縋るような視線を送る。
ロゼッタに見せたい場所、一緒に行きたい場所はまだたくさんある。叶うことなら監督生たちとこのまま1日でも長くこの国に残ってほしい。
ジャミルは期待して目を見つめるが、ロゼッタは微笑を浮かべたまま小さく首を横に振った。
「私だけこんなに楽しんでたら、レオナさんに申し訳ないから。それに、お義父様に怪我したことバレちゃって…早く帰ってきなさいって言われたの。」
「……そうですか。ロゼッタ様がそう決めたのならこれ以上言うのはよします。」
「ジャミルくん、昨日は本当にありがとう。何回も花火大会は見てきたけど、こんなに素敵な経験、初めてだったわ。みんなで見た花火、ずっと忘れない」
ジャミル「ロゼッタ様と見たこと、俺も忘れません。」
穏やかに見つめ合う2人の間の空気は柔らかい。
鏡に波紋が現れ学園へのゲートが繋がるとジャミルはロゼッタの手を握った。
ジャミル「ナジュマに言われたからありませんが……また、俺とこの国に行きましょう。まだまだたくさん、ロゼッタ様にお見せたい場所があります」
「ジャミル君・・・ええ。楽しみにしてる」
ジャミル「お気をつけてお帰り下さい」
「ふふっ、ええ、気をつけるわね。ジャミル君、また明日」
ジャミル「はい、また明日、学園でお会いしましょう」
ジャミルが握っていた手を離すと、ロゼッタは鏡に向かう。
『ナイトレイブンカレッジ』
ジャミルが見送る中、戻る場所であるナイトレイブンカレッジを思い浮かべたロゼッタの姿は、鏡の中に消えていった。
カリム「よし! 花火大会の楽しみが1つ増えた! 楽しみだなー」
監督生「ロゼッタさん、頑張ってください!」
「ええ!」
マレウス「……乾杯はしないのか?」
マレウスは不思議そうにミントレモネードのグラスを持ち上げる。
気絶していたロゼッタが目を覚ます前、一足先に乾杯した際、マレウスは乾杯する理由をケイトに聞いた。乾杯するのはめでたいことがある時にすると伝えるとマレウスは納得し、グラスを合わせた。
マレウスにとってロゼッタとジャミルが名誉ある大役を任されたことはめでたく、乾杯するものだと思っているようだ。
カリム「あ! たしかに! マレウス、よく気づいてくれたぜ」
ケイト「うんうん! マレウスくんの覚えが早くて、ケイト先生はうれしーよ! それじゃあ、ジャミルくんとロゼッタちゃんの晴れ舞台を祝して……」
「「「『かんぱーい!!』」」」
コツンと重なったグラスが音を立てる。
花火が打ち上がるまでの僅かな時間をロゼッタたちは穏やかに流れる河を見つめながら楽しんだ。
そしてついに花火が打ちあがる。
空に大輪の花が咲いている。打ち上がる花火を見上げながらロゼッタはそう感じていた。
花火玉が空に打ち上げられ、弾けて夜空に鮮やかな色を咲かす度に人々は声をあげて喜び、顔に笑顔を浮かべる。
ケイト「うわ、すっごー!」
トレイ「こんなに大きな花火を見たのは初めてだ!」
マレウス「手を伸ばせば、花火に届きそうな迫力だな」
「とっても綺麗……」
監督生「はい、本当に綺麗ですね。」
写真を撮るシャッター音ですら打ち消す花火の音。
赤、緑、青……色が変わる度にロゼッタの顔を照らす色も変わっていく。自分の隣で目を輝かせるロゼッタに監督生は目を細めた。
「(……やっぱり花火よりロゼッタさんが綺麗だ)」
無邪気に喜ぶロゼッタの横顔を見て監督生はそう感じた。
ジャミル「ただ上を見ているだけでは、もったいないですよ」
トレイ「ん? どういうことだ?」
カリム「花火の下で、楽しく踊るのが【ヤーサミーナ河 花火大会】なんだ!」
ジャミル「姫と青年の結婚を祝福して、人々が踊ったのが始まりなんです。せっかくの機会ですし、みなさんも踊って2人を祝福してみては?」
マレウス「この国の伝統文化というのなら、僕も参加させてとらおう」
グリム「監督生とロゼッタも一緒に踊るんだゾ!」
監督生「わかった!」
「ええ」
ぴょんぴょん飛び跳ねるグリムに柔らかく微笑むとロゼッタはその手を握る。
ただ楽しく、代わる代わる手を取り合い踊る彼らの顔には笑顔が溢れていた。
ジャミル「ロゼッタ様、そろそろお時間です」
「ええ」
ジャミルがロゼッタの耳元で囁けば手に持っていた手持ち花火に力を入れる。ジャミルの腰にさしていたマジカルペンの魔法石が光り、2人の手持ち花火の先に火が付くと花火が噴射された。
ジャミル「準備はよろしいですか?」
「いつでも大丈夫よ」
ジャミル「それじゃあいきますよ。3.2.1……」
ジャミルのカウントに合わせてロゼッタは手持ち花火を自分の背よりも高く掲げる。
2人の花火が重なった数秒後、河の対岸からドン、と一際大きな音がなり空に大輪の花が咲く。
この美しい光景を忘れることはない。
ロゼッタは目に映る美しい色鮮やかな花火を眩しい笑みを浮かべながら、記憶に焼き付けていた。
翌日ー
「ジャミル君、お見送りありがとう」
カリムの家で賑やかで煌びやかな宴の招待を受けた後、ロゼッタは監督生たちよりも一足早く学園に戻ることを決めた。
鏡の前に着くとロゼッタは隣に立つジャミルを振り返る。
ジャミル「……本当にお帰りになられるのですか? 久しぶりに故郷に来たのですから、もう1日いたらどうです?」
大量の土産が入った紙袋を両手に持つロゼッタにジャミルは縋るような視線を送る。
ロゼッタに見せたい場所、一緒に行きたい場所はまだたくさんある。叶うことなら監督生たちとこのまま1日でも長くこの国に残ってほしい。
ジャミルは期待して目を見つめるが、ロゼッタは微笑を浮かべたまま小さく首を横に振った。
「私だけこんなに楽しんでたら、レオナさんに申し訳ないから。それに、お義父様に怪我したことバレちゃって…早く帰ってきなさいって言われたの。」
「……そうですか。ロゼッタ様がそう決めたのならこれ以上言うのはよします。」
「ジャミルくん、昨日は本当にありがとう。何回も花火大会は見てきたけど、こんなに素敵な経験、初めてだったわ。みんなで見た花火、ずっと忘れない」
ジャミル「ロゼッタ様と見たこと、俺も忘れません。」
穏やかに見つめ合う2人の間の空気は柔らかい。
鏡に波紋が現れ学園へのゲートが繋がるとジャミルはロゼッタの手を握った。
ジャミル「ナジュマに言われたからありませんが……また、俺とこの国に行きましょう。まだまだたくさん、ロゼッタ様にお見せたい場所があります」
「ジャミル君・・・ええ。楽しみにしてる」
ジャミル「お気をつけてお帰り下さい」
「ふふっ、ええ、気をつけるわね。ジャミル君、また明日」
ジャミル「はい、また明日、学園でお会いしましょう」
ジャミルが握っていた手を離すと、ロゼッタは鏡に向かう。
『ナイトレイブンカレッジ』
ジャミルが見送る中、戻る場所であるナイトレイブンカレッジを思い浮かべたロゼッタの姿は、鏡の中に消えていった。