熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
男の行手を阻むのはユウ、グリム、ケイト、トレイ、カリム、そしてマレウス、グリムの7人。
当然、皆の顔に笑みはない。あるのは、ロゼッタを攫った男に対して怒りのみ。
「う、動くな、来るんじゃねぇ! 一歩でも近づいてみろ……この女がどうなっても知らないからな!?」
「っ……!」
「「「ロゼッタ!」」」「「ロゼッタちゃん!!」」「ロゼッタさん!」
男は懐から出したナイフをロゼッタの首に当てると「近づくな!」と大声で喚く。
恐怖からロゼッタの目から涙が零れ落ち、涙を見た監督生は言葉に出さず目が合ったままのロゼッタにあることを伝える。
「(私を信じて、目を閉じてください)」
口には出ていないが、監督生の言っていることをロゼッタは理解した。男に捕まっている中、頷くことはできない。
ロゼッタが濡れた睫毛を震わせながらゆっくりと瞼を閉じた瞬間、監督生は一歩踏み出すと、風のような速さで男とロゼッタの前に飛び出した。
それはあまりに一瞬のことで男は動くことができない。
男の手首に監督生は手刀を当てナイフを落とさせ、腕を掴み勢いよく腕を引く。監督生が男の腕を引いたことによりロゼッタは解放され、座り込みそうになったところを駆け寄ったジャミルが支えた。
監督生「ロゼッタさんの敵っ!」
「がはっ!!」
監督生が男の身体を背負うように、思いきり腕を引くと男は宙を舞う。腕を掴まれているため遠くに投げ出されることはなく、男の身体は背中から勢いよく地面に叩きつけられた。
綺麗に決まった背負い投げにより男は意識を失い、力なく地面に倒れ込んだ。
ケイト「ナイス、監督生ちゃん!」
カリム「すっげー! なんだ、今の技!?」
トレイ「綺麗に決まったな」
マレウス「ほう、見事な投げ技だ。どこの国の体術か詳しく聞かせてもらおう」
監督生「はっ……ロゼッタさんっ!」
「ユウっ、皆さんっ」
ジャミルの腕の中にいるロゼッタに監督生たちは駆け寄り、無事に助け出せた安堵の息を吐く。
地面で伸びている男をジャミルは魔法を使い、縄で拘束する。そんなにキツく締めつける必要はあるのかと問われる程締め上げるとジャミルは「よし、こんなものだろう」と頷いた。
ジャミル「ロゼッタ様、俺がついていたというのに怖い目に遭わせて申し訳ありませんでした。」
「ジャミル君はなにも悪くないわ。油断した私が悪かったの。‥ごめんなさい」
ジャミル「ロゼッタ様……」
「助けに来てくれてありがとう。でも、どうしてこの場所がわかったの?」
ジャミル「この子らが教えてくれました」
「この子って?・・・サラマンダー?とお猿さん?」
サラマンダー『ボク・・・愛しい子のにおい辿った』
「そう。ありがとう。」
サラマンダーとロゼッタが話し終わった後、ジャミルの背中からひょこっと顔を出したのは先程ロゼッタをここに連れてきた小猿。
小猿は男に容赦なく掴まれ、赤く痣になってしまっているロゼッタの腕に心配そうに触れた。
ジャミル「この場所に盗人がいるのはわかっていました。向かっている途中、俺たちの方に駆け寄って来たこいつがこの場所まで案内してくれたんです」
カリム「オレ、動物言語は苦手でよくわかんねーけど、ロゼッタを助けてくれって言ってるみたいだったよな」
トレイ「俺もカリムと同じように感じた。ロゼッタをこの場所に連れて来たのも一緒に遊ぶつもりだったのかもな」
「そうだったんですか……お猿さん、助けを呼んでくれてありがとう」
「ウキッ」
ロゼッタが微笑むと小猿は鳴く。その鳴き声は「どういたしまして」と言っているように感じた。
撫でてほしそうに頭をロゼッタの方に向ける小猿に、ロゼッタは微笑みながら撫でようと手を伸ばそうとしたのだが。
「……っ」
「ロゼッタ様……?」
突然自分の胸に力なく凭れ掛かるロゼッタにジャミルは声をかけるが、返事はない。そして、肩に乗っていたサラマンダーも見えなくなってしまった。
トレイ「気を失ったみたいだな。無理もないさ、女の子が怖い目にあったんだ」
マレウス「ああ。今まで気を失わなかったのが不思議なくらいだ。バイパー、ロゼッタを預かろう」
ジャミル「いえ、ロゼッタ様は俺が。マレウス先輩のお手を煩わせることはありません」
マレウス「……ほう」
ロゼッタを寄越せ、と手を伸ばすマレウスにジャミルは一歩も引かない。
バチバチと2人の間に火花が散っているように監督生は錯覚した。
カリム「ジャミルはコイツを警察に届けるんだろ? だったらマレウスに任せてもいいんじゃないか? それかオレが抱いてようか?」
ジャミル「……いや、お前に任せるくらいならマレウス先輩の方がまだいい」
カリム「そうか?」
ジャミル「……というわけでマレウス先輩、ロゼッタ様をお願いします」
マレウス「ああ、任せろ。ロゼッタに近づこうと企む不届き者は炎を吹き黒焦げにしてやろう」
ジャミルからロゼッタを預かるとマレウスは大切に抱きかかえる。
腕の中で目を閉じるロゼッタに柔らかな笑みを向け、盗人の男を引き渡すべく、足を進めた。
当然、皆の顔に笑みはない。あるのは、ロゼッタを攫った男に対して怒りのみ。
「う、動くな、来るんじゃねぇ! 一歩でも近づいてみろ……この女がどうなっても知らないからな!?」
「っ……!」
「「「ロゼッタ!」」」「「ロゼッタちゃん!!」」「ロゼッタさん!」
男は懐から出したナイフをロゼッタの首に当てると「近づくな!」と大声で喚く。
恐怖からロゼッタの目から涙が零れ落ち、涙を見た監督生は言葉に出さず目が合ったままのロゼッタにあることを伝える。
「(私を信じて、目を閉じてください)」
口には出ていないが、監督生の言っていることをロゼッタは理解した。男に捕まっている中、頷くことはできない。
ロゼッタが濡れた睫毛を震わせながらゆっくりと瞼を閉じた瞬間、監督生は一歩踏み出すと、風のような速さで男とロゼッタの前に飛び出した。
それはあまりに一瞬のことで男は動くことができない。
男の手首に監督生は手刀を当てナイフを落とさせ、腕を掴み勢いよく腕を引く。監督生が男の腕を引いたことによりロゼッタは解放され、座り込みそうになったところを駆け寄ったジャミルが支えた。
監督生「ロゼッタさんの敵っ!」
「がはっ!!」
監督生が男の身体を背負うように、思いきり腕を引くと男は宙を舞う。腕を掴まれているため遠くに投げ出されることはなく、男の身体は背中から勢いよく地面に叩きつけられた。
綺麗に決まった背負い投げにより男は意識を失い、力なく地面に倒れ込んだ。
ケイト「ナイス、監督生ちゃん!」
カリム「すっげー! なんだ、今の技!?」
トレイ「綺麗に決まったな」
マレウス「ほう、見事な投げ技だ。どこの国の体術か詳しく聞かせてもらおう」
監督生「はっ……ロゼッタさんっ!」
「ユウっ、皆さんっ」
ジャミルの腕の中にいるロゼッタに監督生たちは駆け寄り、無事に助け出せた安堵の息を吐く。
地面で伸びている男をジャミルは魔法を使い、縄で拘束する。そんなにキツく締めつける必要はあるのかと問われる程締め上げるとジャミルは「よし、こんなものだろう」と頷いた。
ジャミル「ロゼッタ様、俺がついていたというのに怖い目に遭わせて申し訳ありませんでした。」
「ジャミル君はなにも悪くないわ。油断した私が悪かったの。‥ごめんなさい」
ジャミル「ロゼッタ様……」
「助けに来てくれてありがとう。でも、どうしてこの場所がわかったの?」
ジャミル「この子らが教えてくれました」
「この子って?・・・サラマンダー?とお猿さん?」
サラマンダー『ボク・・・愛しい子のにおい辿った』
「そう。ありがとう。」
サラマンダーとロゼッタが話し終わった後、ジャミルの背中からひょこっと顔を出したのは先程ロゼッタをここに連れてきた小猿。
小猿は男に容赦なく掴まれ、赤く痣になってしまっているロゼッタの腕に心配そうに触れた。
ジャミル「この場所に盗人がいるのはわかっていました。向かっている途中、俺たちの方に駆け寄って来たこいつがこの場所まで案内してくれたんです」
カリム「オレ、動物言語は苦手でよくわかんねーけど、ロゼッタを助けてくれって言ってるみたいだったよな」
トレイ「俺もカリムと同じように感じた。ロゼッタをこの場所に連れて来たのも一緒に遊ぶつもりだったのかもな」
「そうだったんですか……お猿さん、助けを呼んでくれてありがとう」
「ウキッ」
ロゼッタが微笑むと小猿は鳴く。その鳴き声は「どういたしまして」と言っているように感じた。
撫でてほしそうに頭をロゼッタの方に向ける小猿に、ロゼッタは微笑みながら撫でようと手を伸ばそうとしたのだが。
「……っ」
「ロゼッタ様……?」
突然自分の胸に力なく凭れ掛かるロゼッタにジャミルは声をかけるが、返事はない。そして、肩に乗っていたサラマンダーも見えなくなってしまった。
トレイ「気を失ったみたいだな。無理もないさ、女の子が怖い目にあったんだ」
マレウス「ああ。今まで気を失わなかったのが不思議なくらいだ。バイパー、ロゼッタを預かろう」
ジャミル「いえ、ロゼッタ様は俺が。マレウス先輩のお手を煩わせることはありません」
マレウス「……ほう」
ロゼッタを寄越せ、と手を伸ばすマレウスにジャミルは一歩も引かない。
バチバチと2人の間に火花が散っているように監督生は錯覚した。
カリム「ジャミルはコイツを警察に届けるんだろ? だったらマレウスに任せてもいいんじゃないか? それかオレが抱いてようか?」
ジャミル「……いや、お前に任せるくらいならマレウス先輩の方がまだいい」
カリム「そうか?」
ジャミル「……というわけでマレウス先輩、ロゼッタ様をお願いします」
マレウス「ああ、任せろ。ロゼッタに近づこうと企む不届き者は炎を吹き黒焦げにしてやろう」
ジャミルからロゼッタを預かるとマレウスは大切に抱きかかえる。
腕の中で目を閉じるロゼッタに柔らかな笑みを向け、盗人の男を引き渡すべく、足を進めた。