熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
「お猿さんっ、待って・・・止まって!」
「ウキキッ!」
小さき猿の細い腕のどこにこんなに強い力があるのか。ロゼッタは小猿に手首を掴まれたまま、サハブ市場の人気のない場所まで連れてこられていた。
「お、やっと戻ってきたか…って、何連れてきてるんだ!?」
「あなたは‥大道芸の」
サルの帰りを待っていた男はロゼッタを見て眉をひそめる。
ウキキ―!とサルは鳴き、ようやくロゼッタから手を離し、肩からかけていたカバンをひっくり返すと、地面にはネックレスや宝石やスマホ、財布などの貴重品が散らばった。
「やるじゃないか、大収穫だぞ!さすが年に1度の花火大会だ。もっと盗んで盗んで、稼ぎまくるぞ!」
「ウキキ!」
「もしかして…観光客を狙うスリって‥あなた達のこと?」
「そうとも。此奴に指示を出して俺が換金する。祭りに浮かれているやつが多いからな。この花火大会は稼ぎ時なんだ」
「っつ(メリッサ、録音できてる?)」
メリッサ『ええ…でも、攻撃しなくていいの?・・あなたまさか!?』
「(ええ。ずっとサラマンダーを連れてたら、疲れちゃって。これ以上精霊を読んだら、逃げられなくなっちゃう)」
メリッサ『・・・サラマンダーをずっと連れていく必要なかったんじゃない?後でレオナに怒られても知らないわよ』
「(サラマンダーにも楽しんでもらいたかったのよ。私の生まれ育った故郷をね)」
メリッサ『あなたらしいわね。ピンチになったら逃げなさいよ』
「(わかった)」
ロゼッタは連れ去られた瞬間、メリッサを呼んだ。そして、ここまでのことを録音してもらっていたのだ。
スリの奴らには気づかれていない。
「こりゃしばらくは遊んで暮らせるぜ」
地面に散らばった貴重品を麻袋に詰め込む男性を前に、ロゼッタは必死に体を翻す。
何とか助けを求めなければ。そう判断し、ロゼッタが走りかけた途端に、ロゼッタの腕を男が掴んだ
「離してっつ」
「どこに行こうってんだ?顔を見られて逃がすはずがないだろうが」
「きゃっ」
強く腕を引かれ、引き寄せられたロゼッタは男の胸に顔をぶつけ、男は掴んだロゼッタの腕を背中で捻り拘束する。
顎を持ち上げ強引に上を向かせると、まじまじとロゼッタの顔を見つめ、ニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。
「あんたのことには目をつけてたんだ。これは金になるってな。従者を連れて観光かい、お姫様?」
「じゅう・・しゃ?」
確かに自分は貴族だが、お姫様ではない。この男は何か勘違いをしている。ロゼッタが誤解だといったところで男がロゼッタを逃がすはずがない。
ところで、ロゼッタについていたっ護衛はどうなったのかお話しよう。ロゼッタの護衛は何と新人だった。地理を理解しておらず、ロゼッタが連れ去られた時、サルを追いかけて見失ってしまったのだった。
「どこの国のお姫様だ?肌の色からしてこの国ではないな?ああ‥獣人だったのか。夕焼けの草原だな?」
確かに将来的にはレオナの嫁になり、姫になるのかもしれないが今は違う。
「私はお姫様じゃ・・・、ああっ!」
出身国を聞いてくるということは身代金を要求するつもりなのだろう。ロゼッタが自分の求める返答をしなかったことに腹を立てた男がひねり上げていた手に力を込めると、ロゼッタは悲痛な声を上げた。
「こっちはもっと稼がないといけないんだ、早く答えろ!」
「・・・いやよ・・ぜっ・・たいに・・いわない」
「このっ!!」
「っ・・・」
ひねられた腕が痛い。このまま力を入れ続けられたら折れてしまうかもしれない。それでも、大切な人に目枠をかけたくないという一心でロゼッタが口を割ることはなかった。
振り下ろされる拳にロゼッタはきつく目を瞑る
「そこまでだ」
聞こえてきた声に、男の拳はロゼッタに落とされる寸前で止まった
「ジャミル、君・・・?」
ジャミル「ええ。必ずやお助けします。ご安心ください。」
「・・・・ええ」
ジャミルの顔を見たロゼッタに安堵から涙が滲む。
「な、何者だ、あんたは!?」
ジャミル「面倒ごとが嫌いな、ただの従者だ」
「な、なぜここがわかった!?」
ジャミル「盗んだものをすぐに品定めするために、貴様は1番人気のない場所を選ぶはずと思ったのさ。」
「チッ!捕まってたまるか!来いっ!」
「きゃあっ」
ジャミル「ロゼッタ様!」
サラマンダー『愛しい子!』
男はロゼッタの腕を引きジャミルから距離を取ると、路地裏に逃げ込もうとする。
だが…その先からは監督生が現れ、足を止めた。
次に逃げようとした先にはケイトが、その次にはトレイにカリム、さらにその次はマレウス、最後に逃げようとした道にはグリムが腕組みをして佇んでいた。
ジャミル「逃げても無駄だ」
「くっ、仲間がいたのか・・・!」
「皆さんっ・・・」
「ウキキッ!」
小さき猿の細い腕のどこにこんなに強い力があるのか。ロゼッタは小猿に手首を掴まれたまま、サハブ市場の人気のない場所まで連れてこられていた。
「お、やっと戻ってきたか…って、何連れてきてるんだ!?」
「あなたは‥大道芸の」
サルの帰りを待っていた男はロゼッタを見て眉をひそめる。
ウキキ―!とサルは鳴き、ようやくロゼッタから手を離し、肩からかけていたカバンをひっくり返すと、地面にはネックレスや宝石やスマホ、財布などの貴重品が散らばった。
「やるじゃないか、大収穫だぞ!さすが年に1度の花火大会だ。もっと盗んで盗んで、稼ぎまくるぞ!」
「ウキキ!」
「もしかして…観光客を狙うスリって‥あなた達のこと?」
「そうとも。此奴に指示を出して俺が換金する。祭りに浮かれているやつが多いからな。この花火大会は稼ぎ時なんだ」
「っつ(メリッサ、録音できてる?)」
メリッサ『ええ…でも、攻撃しなくていいの?・・あなたまさか!?』
「(ええ。ずっとサラマンダーを連れてたら、疲れちゃって。これ以上精霊を読んだら、逃げられなくなっちゃう)」
メリッサ『・・・サラマンダーをずっと連れていく必要なかったんじゃない?後でレオナに怒られても知らないわよ』
「(サラマンダーにも楽しんでもらいたかったのよ。私の生まれ育った故郷をね)」
メリッサ『あなたらしいわね。ピンチになったら逃げなさいよ』
「(わかった)」
ロゼッタは連れ去られた瞬間、メリッサを呼んだ。そして、ここまでのことを録音してもらっていたのだ。
スリの奴らには気づかれていない。
「こりゃしばらくは遊んで暮らせるぜ」
地面に散らばった貴重品を麻袋に詰め込む男性を前に、ロゼッタは必死に体を翻す。
何とか助けを求めなければ。そう判断し、ロゼッタが走りかけた途端に、ロゼッタの腕を男が掴んだ
「離してっつ」
「どこに行こうってんだ?顔を見られて逃がすはずがないだろうが」
「きゃっ」
強く腕を引かれ、引き寄せられたロゼッタは男の胸に顔をぶつけ、男は掴んだロゼッタの腕を背中で捻り拘束する。
顎を持ち上げ強引に上を向かせると、まじまじとロゼッタの顔を見つめ、ニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。
「あんたのことには目をつけてたんだ。これは金になるってな。従者を連れて観光かい、お姫様?」
「じゅう・・しゃ?」
確かに自分は貴族だが、お姫様ではない。この男は何か勘違いをしている。ロゼッタが誤解だといったところで男がロゼッタを逃がすはずがない。
ところで、ロゼッタについていたっ護衛はどうなったのかお話しよう。ロゼッタの護衛は何と新人だった。地理を理解しておらず、ロゼッタが連れ去られた時、サルを追いかけて見失ってしまったのだった。
「どこの国のお姫様だ?肌の色からしてこの国ではないな?ああ‥獣人だったのか。夕焼けの草原だな?」
確かに将来的にはレオナの嫁になり、姫になるのかもしれないが今は違う。
「私はお姫様じゃ・・・、ああっ!」
出身国を聞いてくるということは身代金を要求するつもりなのだろう。ロゼッタが自分の求める返答をしなかったことに腹を立てた男がひねり上げていた手に力を込めると、ロゼッタは悲痛な声を上げた。
「こっちはもっと稼がないといけないんだ、早く答えろ!」
「・・・いやよ・・ぜっ・・たいに・・いわない」
「このっ!!」
「っ・・・」
ひねられた腕が痛い。このまま力を入れ続けられたら折れてしまうかもしれない。それでも、大切な人に目枠をかけたくないという一心でロゼッタが口を割ることはなかった。
振り下ろされる拳にロゼッタはきつく目を瞑る
「そこまでだ」
聞こえてきた声に、男の拳はロゼッタに落とされる寸前で止まった
「ジャミル、君・・・?」
ジャミル「ええ。必ずやお助けします。ご安心ください。」
「・・・・ええ」
ジャミルの顔を見たロゼッタに安堵から涙が滲む。
「な、何者だ、あんたは!?」
ジャミル「面倒ごとが嫌いな、ただの従者だ」
「な、なぜここがわかった!?」
ジャミル「盗んだものをすぐに品定めするために、貴様は1番人気のない場所を選ぶはずと思ったのさ。」
「チッ!捕まってたまるか!来いっ!」
「きゃあっ」
ジャミル「ロゼッタ様!」
サラマンダー『愛しい子!』
男はロゼッタの腕を引きジャミルから距離を取ると、路地裏に逃げ込もうとする。
だが…その先からは監督生が現れ、足を止めた。
次に逃げようとした先にはケイトが、その次にはトレイにカリム、さらにその次はマレウス、最後に逃げようとした道にはグリムが腕組みをして佇んでいた。
ジャミル「逃げても無駄だ」
「くっ、仲間がいたのか・・・!」
「皆さんっ・・・」