熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ

しかし、後悔してもここから『ラクダバザール』まで戻るのは一苦労だ。

でも、一応食べ物系のお土産もあるから、ちゃんと探せばあるかもしれないけれど、トレイさんはほぼ諦めているようだ。

トレイ「……仕方がない。あきらめて、別の物を買うことにするか」

サラマンダー『何買う?』

トレイ「料理に使う、スパイスにしようと思ってる」

「「!?」」

トレイさん……よりにもよって、それを選びますか……!?

トレイ「リリアは時々料理をするんだろう?よく教室でシルバーたちに作っているって話していた」

ケイト「それいいかも!日常的に使う調味料なら、喜んでくれるんじゃないかな」

「あ、いやその、それはちょっと、やめといたほうが……」

トレイ「この赤トウガラシや、乾燥ミントは熱砂の国の定番スパイスらしい。オリーブオイルやナッツオイルも、有名だ。それと、ザクロのドレッシングも……」

私の反応に気付かず、次々とスパイと調味料を選んでいくトレイさん。
だけど、一番彼を知っているマレウスさんが制止をかけた。

マレウス「…………待て」

トレイ「どうした、マレウス?」

マレウス「2人は、リリアの料理を食べたことはあるか?」

トレイ「食べたことはないな」

ケイト「オレも!マレウスくんは、もちろんあるんでしょ?」

マレウス「あぁ。リリアの料理は……言葉では言い表せないほど独特な味なんだ」

マレウスさん……婉曲的な言い方してくれたのはいいけれど、この際だからはっきり言った方がいいと思う。

美味しくないって

トレイ「それは、つまり……おいしくないのか?」

マレウス「感想は差し控える。ただ……クローバーがどうしても調味料を土産にするというのなら……相応の覚悟が必要だ。僕にも、お前たちにも」

ケイト「えっと……ロゼッタちゃんは、リリアちゃんの料理のこと知ってるよね?どんな感じなの?」

「…………私から言えることは、リリアさんの料理を食べたらどうなるかわからない、というだけです」

トレイ「……わ、わかった。そこまで言うなら、止めるよ」

マレウスさんと私の発言によって、トレイさんは手にしていた調味料を棚に戻した。

よかった、ひとまず大惨事は回避できた……!

トレイ「はぁ、やはりトマトジュースを買うことにするか。見つけられるかな……」

「私も手伝います」

大惨事を回避した礼として、私はトレイさんと一緒にトマトジュースを探すことになるのだった。
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