熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ

「私とよく料理をサバナクローで作るからじゃない?」

監督生「そうかもしれませんね。」

ジャミル「他にも買って行く相手はいるのか?」

監督生「ポムフィオーレ寮の人にも買って行きます」

ジャミル「彼らは見た目にたいそう気を遣っているからな。熱砂の国の化粧品は、成分はもちろんパッケージも華美なものが多い。土産物として最適だろう」

「リリアさん以外にもお土産を買って行くとなると、いろいろな店を回る必要がありそうね。」

ジャミル「そうですね。のんびりしていたらすぐに花火の開始時刻になる。少し急ぐべきだな。マレウス先輩、トレイ先輩。土産物店が集まっているエリアに移動しましょう」

トレイ・マレウス「「わかった/ああ」」

ジャミル君に連れられ、土産物店のエリアに来た。

土産物店が揃っているだけあって、どこも観光客の財布にも優しいリーズナブルな価格で売り出されている。

グリム「なあ!この『絹の街限定デーツキャラメル』、エースとデュースのやつにいいんじゃないか?真っ黒で表面がツヤツヤしてて美味そうなんだゾ!」

監督生「この世界にもご当地キャラメルがあるの!?」

「ユウのいた世界にもあったの?」

監督生「はい」

トレイ「美味そうかはどうかはともかく……その土地ならではのお菓子っていうのはいい案だと思うぞ」

ジャミル「そんなもの、どこの観光地でも売っているだろう。わざわざ『絹の街』までやってきたんだ。この土地ならではの品々を買っていったらどうだ?」

グリム「にゃはは、心配いらないんだゾ!まだまだたくさん買うからな!ドライフルーツ、デーツチョコ、ココナッツジュース……あれもこれも全部オレ様用のお土産だ!」

監督生「悪いけど、自分用のお土産は3000マドルまでだよ」

グリム「ふな゛っ!!??」

トレイ「どうやら、監督生の財布の紐はかなり固そうだな、グリム」

もちろんこのことに駄々をこねるグリム君だが、ユウが「じゃあ半年高級ツナ缶なしなら、たくさん買ってもいいわよ」と言ったら、さすがの彼も渋々予算内に収められるものを選ぶことにしたようだ。

その間にユウもエース君とデュース君のお土産を選ぶ。一緒に選んでほしいというので少しだけ手伝った。

エース君には卓上タイプのランプ、デュース君にはナザールボンジュウという目玉の魔除けのお守りにした。

ランプはエース君のイメージカラーである赤を基調としたもので、おまけで彼の好きそうな香りがするキャンドルを選んだ。

ナザールボンジュウは妬みや羨望などの『邪視』から身を守ってくれる効果があり、デュース君は陸上部じゃ一部の先輩に妬まれている。

前にジャック君と一緒に表彰されて陰でいろいろ言われているから、そういった意味では、このお守りはデュース君に最適ね。

他にもクラスのみんなや先生方のおみやげを選んでいると、買い物かごはそれなりにパンパンとなり、なんとか会計を済ませた。

グリム「よし、会計が終わったんだゾ!」

ジャミル「結構な量になったな……。みなさん、スリに遭わないようにしっかり荷物を持ってください。両手に土産物を抱えていたら観光客とアピールしているも同然。油断すると格好の餌食になりますよ」

トレイ「なるほど……警戒心の薄い他所の人間が狙い目というわけか」

ジャミル「『絹の街』に暮らす人々すら、祭りに浮かれて気が緩んでいますから。用心に越したことはありません」

トレイ「身が引き締まる思いだな。学園で生活している分には物を盗られる心配なんてまずないし……」

監督生「それはどうでしょう?」

「え?」

監督生「ナイトレイブンカレッジにはたいそう手癖の悪いハイエナがいるらしいという噂を耳にしたので」

トレイ「あー」

ジャミル「……はは、なるほどな」

その時、全員がその人物の姿が脳裏に浮かんだのは言うまでもない。

「スリが心配なら、私のカバンに入れておきますか?これ、私以外開けられないのでセキュリティー面ではしっかりしているはずです。」

ジャミル「たしかに、そのかばんはとんでもない収納力がありますね。」

トレイ「なら、少しの間だけスペースを借りるか」

そうして、私のカバンにみんなのお土産が入れられていく。

カバンはとんでもない収納力があるから、大小問わず様々なものが入る。
それを見て、通行人が何度見したけど、スルーしてお土産を全部入れた。

ジャミル「では次は、地元の住民たちに人気の専門店にご案内します。茶葉や熱砂の国の特産品を加工した食品や化粧品、絹織物の実演販売をしている店もありますよ。人通りがさらに増えてきましたからはぐれないようについてきてください」

ジャミル君を先頭に、私たちはなるべくはなれないように歩き始めた。
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