熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
ドライフルーツ売り場から出て、ラクダバザールを歩いていると、背後でバイパー兄妹が話していた。
ナジュマ「ねえ。こうして、ラクダバザールを一緒に歩くのって、久しぶりじゃない?」
ジャミル「あぁ。俺がナイトレイブンカレッジに行ってからは、来ていないから」
ナジュマ「その前はよく3人で来てたよね!私と、ジャミルと、あとジャミルがミドルスクールで友だちだった……」
直後、ガラガラガラーッ!!!と激しい音が響いた。
「な、なに!?」
グリム「ふなーっ!また崩れた!」
ケイト「ほらー、さっき言った場所に置けば崩れなかったのに」
ジャミル「グリムが店頭でオモチャで遊んでいたのか……人騒がせな……」
グリム「なぁ。この動物の人形を積み重ねるヤツ、全然上手くのっからないんだゾ」
グリム君が遊んでいたのは、動物の人形を積み重ねてバランスを取るオモチャ。
ジャミル「この国では、昔からあるオモチャだ。バランスを取るのは、かなりの集中力が必要だぞ」
グリム「そうだ!監督生、コレを買え!」
監督生「どうして?」
グリム「監督生に積ませて、オレ様は菓子でも食いながら、のんびり見てるんだゾ!」
監督生「どういう遊び?」
トレイ「それでグリムは楽しいのか?」
「でも、エース君やデュース君とか誘ってやったら面白いんじゃない?」
監督生「そうですね・・・じゃあ買います」
ナジュマ「私たちも、子どもの頃にこのバランスゲームで一緒に遊んだな~!一番高く人形を積み上げた人が勝ちなの。近所の子どもたちの中で、ジャミルが一番うまかったよね。崩さずにどんどん置いていくから、磁石が付いてるのかもって疑ったよ」
ジャミル「傾き具合から、どこにどの形の人形を置けばバランスが取れるのか計算していただけだ。大変だったのは、ゲームに負けたお前がすねて、散らかしたまま、姿を消した後のことだろ。片付けるのは、いつも俺だったぞ。父さんや母さんに叱られながら」
ナジュマ「えーそうだったっけ?」
文句を言うジャミル君を見て、ナジュマはとぼけた顔をした。
ナジュマ「でもさ、そうやって文句言いながらもいつも面倒みてくれるから……私もついつい、頼っちゃうんだよね。ありがと」
ジャミル「ふんっ。調子のいいやつ」
皮肉まじりで言っていたが、ジャミル君は笑っていた。
ジャミル「ナジュマ、学校の方はどうなんだ?」
ナジュマ「もちろん、上手くやってるに決まってんじゃん。文武両道でそつなくこなしてるよ。なんてったって、ジャミルの妹だからね」
ジャミル「だったらいい。これからもしっかりやれよ」
ナジュマ「それより私は、ジャミルがちゃんと学園生活を送れてるのかが心配だよ」
ジャミル「俺が?」
ナジュマ「ジャミルって、呆れるぐらい外面がいいしいつも上手く立ち回ってるように見えるけど……変なところで真面目だし、意外に頑固なところがあるからさ」
さすが妹。兄のことを理解している。
ナジュマ「無理してるんじゃないかなあって気になってたの。あんまり考えすぎないでね、お兄ちゃん」
ジャミル「……………………。もちろん、うまくやっているさ。心配するな。俺は、お前の兄だぞ?」
ナジュマ「はいはい。だったら、安心だね」
その時、ナジュマはスマホを見て声を上げる。
ナジュマ「……あ!もう、こんな時間じゃん!私、ここでお別れするね」
ケイト「えー、せっかくだし、一緒に回ろうよ。映えスポットももっとたくさん教えて欲しい!」
ナジュマ「あはは、ありがとうございます!でも友だちと連絡がついたので、今から合流します。昼間はこっちに来ちゃって遊べなかったから、夜の花火は一緒に見なくっちゃ」
ジャミル「羽目を外しすぎるなよ」
ナジュマ「もー!お父さんたちみたいなこと言わないで」
ジャミル「……まあ、それもそうだな」
ナジュマ「……あ、今日は家に帰ってくるよね?」
ジャミル「もちろん。祭りが終わって、みんなをカリムの家まで送ったら戻るよ。明日には学園に帰るけどな」
ナジュマ「それじゃ、カレーを用意して待ってるね!屋台料理を食べ過ぎないでよ。みなさんも、『ヤーサミーナ河 花火大会』を楽しんでくださいね。今度は家にも遊びに来てください。それでは、また!」
グリム「じゃあなー!」
「今度、お礼を送るわね!」
みんなで手を振ると、ナジュマは笑顔で振り返しながら走り去ってしまった。
ジャミル「さて……みなさん、次はどこに行きますか?」
マレウス「……ん?マレウスはどこだ?」
「え?」
トレイさんに言われてようやく気付く。マレウスさんの姿が全く見えない!!
監督生「……いない!!!」
ケイト「えーっ!?マレウスくん迷子になっちゃってこと!?」
トレイ「マレウスが事件に巻き込まれたりしたら、熱砂の国と茨の谷の外交問題に発展するぞ!」
「マレウスさん!?」
ジャミル「……………………。心配無用です、ロゼッタ様。俺にまかせてください」
マレウスさんが心配し過ぎて慌てる私たちに、ジャミル君はいつもの頼れる従者としての顔を見せた。
ナジュマ「ねえ。こうして、ラクダバザールを一緒に歩くのって、久しぶりじゃない?」
ジャミル「あぁ。俺がナイトレイブンカレッジに行ってからは、来ていないから」
ナジュマ「その前はよく3人で来てたよね!私と、ジャミルと、あとジャミルがミドルスクールで友だちだった……」
直後、ガラガラガラーッ!!!と激しい音が響いた。
「な、なに!?」
グリム「ふなーっ!また崩れた!」
ケイト「ほらー、さっき言った場所に置けば崩れなかったのに」
ジャミル「グリムが店頭でオモチャで遊んでいたのか……人騒がせな……」
グリム「なぁ。この動物の人形を積み重ねるヤツ、全然上手くのっからないんだゾ」
グリム君が遊んでいたのは、動物の人形を積み重ねてバランスを取るオモチャ。
ジャミル「この国では、昔からあるオモチャだ。バランスを取るのは、かなりの集中力が必要だぞ」
グリム「そうだ!監督生、コレを買え!」
監督生「どうして?」
グリム「監督生に積ませて、オレ様は菓子でも食いながら、のんびり見てるんだゾ!」
監督生「どういう遊び?」
トレイ「それでグリムは楽しいのか?」
「でも、エース君やデュース君とか誘ってやったら面白いんじゃない?」
監督生「そうですね・・・じゃあ買います」
ナジュマ「私たちも、子どもの頃にこのバランスゲームで一緒に遊んだな~!一番高く人形を積み上げた人が勝ちなの。近所の子どもたちの中で、ジャミルが一番うまかったよね。崩さずにどんどん置いていくから、磁石が付いてるのかもって疑ったよ」
ジャミル「傾き具合から、どこにどの形の人形を置けばバランスが取れるのか計算していただけだ。大変だったのは、ゲームに負けたお前がすねて、散らかしたまま、姿を消した後のことだろ。片付けるのは、いつも俺だったぞ。父さんや母さんに叱られながら」
ナジュマ「えーそうだったっけ?」
文句を言うジャミル君を見て、ナジュマはとぼけた顔をした。
ナジュマ「でもさ、そうやって文句言いながらもいつも面倒みてくれるから……私もついつい、頼っちゃうんだよね。ありがと」
ジャミル「ふんっ。調子のいいやつ」
皮肉まじりで言っていたが、ジャミル君は笑っていた。
ジャミル「ナジュマ、学校の方はどうなんだ?」
ナジュマ「もちろん、上手くやってるに決まってんじゃん。文武両道でそつなくこなしてるよ。なんてったって、ジャミルの妹だからね」
ジャミル「だったらいい。これからもしっかりやれよ」
ナジュマ「それより私は、ジャミルがちゃんと学園生活を送れてるのかが心配だよ」
ジャミル「俺が?」
ナジュマ「ジャミルって、呆れるぐらい外面がいいしいつも上手く立ち回ってるように見えるけど……変なところで真面目だし、意外に頑固なところがあるからさ」
さすが妹。兄のことを理解している。
ナジュマ「無理してるんじゃないかなあって気になってたの。あんまり考えすぎないでね、お兄ちゃん」
ジャミル「……………………。もちろん、うまくやっているさ。心配するな。俺は、お前の兄だぞ?」
ナジュマ「はいはい。だったら、安心だね」
その時、ナジュマはスマホを見て声を上げる。
ナジュマ「……あ!もう、こんな時間じゃん!私、ここでお別れするね」
ケイト「えー、せっかくだし、一緒に回ろうよ。映えスポットももっとたくさん教えて欲しい!」
ナジュマ「あはは、ありがとうございます!でも友だちと連絡がついたので、今から合流します。昼間はこっちに来ちゃって遊べなかったから、夜の花火は一緒に見なくっちゃ」
ジャミル「羽目を外しすぎるなよ」
ナジュマ「もー!お父さんたちみたいなこと言わないで」
ジャミル「……まあ、それもそうだな」
ナジュマ「……あ、今日は家に帰ってくるよね?」
ジャミル「もちろん。祭りが終わって、みんなをカリムの家まで送ったら戻るよ。明日には学園に帰るけどな」
ナジュマ「それじゃ、カレーを用意して待ってるね!屋台料理を食べ過ぎないでよ。みなさんも、『ヤーサミーナ河 花火大会』を楽しんでくださいね。今度は家にも遊びに来てください。それでは、また!」
グリム「じゃあなー!」
「今度、お礼を送るわね!」
みんなで手を振ると、ナジュマは笑顔で振り返しながら走り去ってしまった。
ジャミル「さて……みなさん、次はどこに行きますか?」
マレウス「……ん?マレウスはどこだ?」
「え?」
トレイさんに言われてようやく気付く。マレウスさんの姿が全く見えない!!
監督生「……いない!!!」
ケイト「えーっ!?マレウスくん迷子になっちゃってこと!?」
トレイ「マレウスが事件に巻き込まれたりしたら、熱砂の国と茨の谷の外交問題に発展するぞ!」
「マレウスさん!?」
ジャミル「……………………。心配無用です、ロゼッタ様。俺にまかせてください」
マレウスさんが心配し過ぎて慌てる私たちに、ジャミル君はいつもの頼れる従者としての顔を見せた。