熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
グリム「うー、食べても食べても全然なくならない……。ウマいけど、飽きてきたんだゾ……」
「このパンは、1人で食べるようじゃないのよ。みんなでちょっとずつ、分けて食べるの」
グリム「監督生、残りを食べてくれ」
監督生「いいけど、全部は食べられないよ」
こんなに長いパンをユウ1人で食べきれるわけないわよね。
トレイ「仕方がない。俺たちも一緒に食べてやるか」
ケイト「でも、この大きさのパンをそのまま食べたら、グリちゃんみたいに飽きちゃうんじゃない?」
ジャミル「それなら、店先にあるジャムを付けて食べてみてください。特産品がフルーツなので、それらの加工品も名物です。特にアプリコットジャムは有名ですよ。すごく美味しいので、みなさんもぜひ。はい、ジャムをどうぞ」
ジャミル君はいつの間にか買ったジャムを手渡す。
アプリコットジャムは濃いオレンジをしており、蓋を開けただけで甘酸っぱい香りが漂ってきた。
トレイ「ありがとう。それじゃあ……ぱくっ。なるほど、甘くておいしいな。大きな杏が果実のままで、しっかりと残っていて、フルーティーだ」
「ジャムにしているのに、すごくみずみずしい。私でもこんな風に作れないわ」
マレウス「果実の酸味も感じるが、それにもましてとにかく甘い」
ケイト「そ、そんなに甘いの……?」
トレイ「あぁ。これはパンがすすむな」
あ、そっか。たしかケイトさんって、甘いものがダメだった。
ナジュマ「家でもこのジャムをよく使ってますよ。私、甘い物大好きで何枚も食べちゃうんです!はい、ケイトさんもどうぞ!」
ケイト「えっ!?それも美味しそうだけど、けーくんは別の物を付けようかな~……。これなに?」
ジャミル「こちらは、焼きナスのペーストです。みずみずしい野菜も特産品ですから、これもお勧めですよ」
ジャミル君がもう1つの瓶を渡すと、ケイト先輩はそれを塗る。
ケイト「それじゃぁ……ぱくっ。あっさりしていておいしい!ヨーグルトも混ざってるね、これ」
監督生「これ、胡椒をかけて食べてもおいしいんじゃないですか?」
ジャミル「ああ。黒胡椒をかけると辛味と見事にマッチするぞ」
グリム「どれどれ……ぱくっ。ウマいウマい!コレならいくらでも食べられるゾ!」
監督生「さっきもう食べられないとか言ってたのに、本当に調子の良いヤツだな、グリムは……」
またパンを食べだしたグリム君にユウが呆れていると、ナジュマもパンをちぎってジャムを塗った。
ナジュマ「私も、いただきまーす!」
ジャミル「ナジュマ、食べる前にちゃんと手を拭け。ほら、ウエットティッシュだ」
ナジュマ「もー、子ども扱いしないでよ!」
「どこから出したの?それ」
傘といい、ウエットティッシュといい、ジャミル君の服はどんなつくりになってるのかしら?
トレイ「面倒見がよく気が利くな、ジャミルは」
ケイト「ちょーっと、過保護過ぎる気もするけどね」
監督生「それ、2人にとってはブーメラン発言では?」
「「うっ」」
マレウス「焼きたてはうまいな。バイパーの家にもベーカリーのようにパン焼き釜があったのか?」
ジャミル「俺の家にあるのは普通のオーブンです。釜を使いたいときには、カリムの家で借りていました。出来立ては格別のおいしさですし、大きさや形を自由に作れるのも、子どもの時は楽しみでした」
ナジュマ「そうそう。私、初めてパンを焼いた時、焦がしちゃったんだよね」
ジャミル「仕方ないさ。パン焼き釜で作るのは難しい」
トレイ「俺も子どもの頃、オーブンでパイを焦がしたし、気持ちはわかるな」
「私もパンを焦がしてしまったことがあるから、その気持ちわかるわ。」
焦がしてしまったとき、いたたまれない気持ちになるのよね。しかも、それはレオナさんに渡そうとしたやつで・・・でも、レオナさんは気にせず食べてくれた。
ケイト残念だったね、ナジュマちゃん」
ナジュマ「がっかりでしたよー。泣きそうでしたもん。でも、焦げたパンを使って、ジャミルがハンバーグを作ってくれたんだ」
グリム「ん?焦げたパンがハンバーグに?どうやったんだ?」
ナジュマ「焦げのひどい部分を削って、残りをつなぎのパン粉の代わりにしたんだよ。あれ、おいしかったなー」
ジャミル「あのまま捨てるのも勿体なかったからな。それにナジュマが失敗でめげたら、俺ばかりパンを焼き続けることになる」
ナジュマ「はいはい。おかげで、今でもパンを焼くのは好きですよ」
ケイト「いいお兄ちゃんだね~」
ジャミル「……そういうわけじゃありません」
ジャミル君はそう否定するけど、傍から見ればいい兄だろう。
そんなことを思いながら、私は屋台で売っていたジャムとペーストを買った。
「このパンは、1人で食べるようじゃないのよ。みんなでちょっとずつ、分けて食べるの」
グリム「監督生、残りを食べてくれ」
監督生「いいけど、全部は食べられないよ」
こんなに長いパンをユウ1人で食べきれるわけないわよね。
トレイ「仕方がない。俺たちも一緒に食べてやるか」
ケイト「でも、この大きさのパンをそのまま食べたら、グリちゃんみたいに飽きちゃうんじゃない?」
ジャミル「それなら、店先にあるジャムを付けて食べてみてください。特産品がフルーツなので、それらの加工品も名物です。特にアプリコットジャムは有名ですよ。すごく美味しいので、みなさんもぜひ。はい、ジャムをどうぞ」
ジャミル君はいつの間にか買ったジャムを手渡す。
アプリコットジャムは濃いオレンジをしており、蓋を開けただけで甘酸っぱい香りが漂ってきた。
トレイ「ありがとう。それじゃあ……ぱくっ。なるほど、甘くておいしいな。大きな杏が果実のままで、しっかりと残っていて、フルーティーだ」
「ジャムにしているのに、すごくみずみずしい。私でもこんな風に作れないわ」
マレウス「果実の酸味も感じるが、それにもましてとにかく甘い」
ケイト「そ、そんなに甘いの……?」
トレイ「あぁ。これはパンがすすむな」
あ、そっか。たしかケイトさんって、甘いものがダメだった。
ナジュマ「家でもこのジャムをよく使ってますよ。私、甘い物大好きで何枚も食べちゃうんです!はい、ケイトさんもどうぞ!」
ケイト「えっ!?それも美味しそうだけど、けーくんは別の物を付けようかな~……。これなに?」
ジャミル「こちらは、焼きナスのペーストです。みずみずしい野菜も特産品ですから、これもお勧めですよ」
ジャミル君がもう1つの瓶を渡すと、ケイト先輩はそれを塗る。
ケイト「それじゃぁ……ぱくっ。あっさりしていておいしい!ヨーグルトも混ざってるね、これ」
監督生「これ、胡椒をかけて食べてもおいしいんじゃないですか?」
ジャミル「ああ。黒胡椒をかけると辛味と見事にマッチするぞ」
グリム「どれどれ……ぱくっ。ウマいウマい!コレならいくらでも食べられるゾ!」
監督生「さっきもう食べられないとか言ってたのに、本当に調子の良いヤツだな、グリムは……」
またパンを食べだしたグリム君にユウが呆れていると、ナジュマもパンをちぎってジャムを塗った。
ナジュマ「私も、いただきまーす!」
ジャミル「ナジュマ、食べる前にちゃんと手を拭け。ほら、ウエットティッシュだ」
ナジュマ「もー、子ども扱いしないでよ!」
「どこから出したの?それ」
傘といい、ウエットティッシュといい、ジャミル君の服はどんなつくりになってるのかしら?
トレイ「面倒見がよく気が利くな、ジャミルは」
ケイト「ちょーっと、過保護過ぎる気もするけどね」
監督生「それ、2人にとってはブーメラン発言では?」
「「うっ」」
マレウス「焼きたてはうまいな。バイパーの家にもベーカリーのようにパン焼き釜があったのか?」
ジャミル「俺の家にあるのは普通のオーブンです。釜を使いたいときには、カリムの家で借りていました。出来立ては格別のおいしさですし、大きさや形を自由に作れるのも、子どもの時は楽しみでした」
ナジュマ「そうそう。私、初めてパンを焼いた時、焦がしちゃったんだよね」
ジャミル「仕方ないさ。パン焼き釜で作るのは難しい」
トレイ「俺も子どもの頃、オーブンでパイを焦がしたし、気持ちはわかるな」
「私もパンを焦がしてしまったことがあるから、その気持ちわかるわ。」
焦がしてしまったとき、いたたまれない気持ちになるのよね。しかも、それはレオナさんに渡そうとしたやつで・・・でも、レオナさんは気にせず食べてくれた。
ケイト残念だったね、ナジュマちゃん」
ナジュマ「がっかりでしたよー。泣きそうでしたもん。でも、焦げたパンを使って、ジャミルがハンバーグを作ってくれたんだ」
グリム「ん?焦げたパンがハンバーグに?どうやったんだ?」
ナジュマ「焦げのひどい部分を削って、残りをつなぎのパン粉の代わりにしたんだよ。あれ、おいしかったなー」
ジャミル「あのまま捨てるのも勿体なかったからな。それにナジュマが失敗でめげたら、俺ばかりパンを焼き続けることになる」
ナジュマ「はいはい。おかげで、今でもパンを焼くのは好きですよ」
ケイト「いいお兄ちゃんだね~」
ジャミル「……そういうわけじゃありません」
ジャミル君はそう否定するけど、傍から見ればいい兄だろう。
そんなことを思いながら、私は屋台で売っていたジャムとペーストを買った。