熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
私たちが会場のそばで話をしていると、時間が経つにつれて人の数が増していった。
ケイト「ねぇねぇ。さっきより、だんだん人出が増えてきたんじゃない?」
ジャミル「『絹の街』の住人にとって、待ちに待った日ですから。早めに来て、席取りをしていますね」
監督生「世界が違っても、花火大会の席取りはあるんだ」
トレイ「持ち寄った食べ物や飲み物で、宴会を始めている。どこもかしこもお祭り騒ぎだな」
マレウス「人々の活気が溢れているのは、良い街だという証拠だ」
その時、グリムが慌てたようにバタバタし始める。
グリム「のんびりしている場合じゃないんだゾ!オレ様たちの見る場所がなくなっちまう!」
ジャミル「心配はいらない。ちゃんと人数分の招待席を確保してあるからな」
監督生「そういえば、その招待席はどこなんですか?」
ユウの質問に、ジャミル君はピーコックグリーンの天幕が掛かった場所を指さす。
ジャミル「あの天幕が掛かったスペースが、招待席だ。個室型で暑さを凌げて快適に見ることが出来る」
トレイ「明らかに他の一般席とは、格式が違うな。まるで高級ホテルのスイートルームだ」
ジャミル「あそこは、招待されて外国から来訪した著名人や芸能人も、座る特別席です」
マレウス「観覧席を覆っている天幕の緑色は、この国に来てから何度も見るな」
監督生「実際、その色の衣装を着てるし」
そう言いながら、ユウは今着ている衣装の裾を揺らす。
「ピーコックグリーンは、伝承の姫君が好んで身につけていた色だそうよ。祭りの最中は、ピーコックグリーンを基調とした織物で、街中が飾り付けられているんです。」
トレイ「あっちのテントは、赤い布が貼られているな」
ジャミル「あちらは、やはり国民人気の高い、伝説の『砂漠の魔術師』のイメージカラーです」
ケイト「どの角度で撮るのが一番映えそうかな~。ねえジャミルくん、花火はどこから上がるの?」
ジャミル「この会場の前に流れている河の対岸からです」
ジャミル君が指をさした対岸には、職人らしき人影がちらほら見えた。
ジャミル「『絹の街』のどこからでも、花火は見えるのですが……間近に見ることができ、大迫力の音を味わえるこの会場は、とても人気がありますね」
トレイ「そのために、みんな席取りをしているわけだな」
グリム「なー、花火の話はもう十分聞いたんだゾ。いい加減、腹が減って目が回ってきた……」
監督生「え、あんなのお菓子食べてたのにっ?」
耳をぺしょっとさせて、お腹を抱えているグリム君。
着替えてる間、かなり時間が掛かったから、グリム君は結構な量のお菓子食べているはず。
なのにもう空腹って……この子の消化機能はどうなってるのかしら??
ジャミル「わかったよ。それでは『ラクダバザール』へ向かおう」
グリム君に急かされ、ジャミル君は肩を竦めながら私たちを『ラクダバザール』に案内するのだった。
ジャミル君に案内されてやってきた『ラクダバザール』。
色鮮やかな天幕がかけられた露店には、砂漠地帯なのに新鮮なフルーツや野菜、獲れたての魚に不思議な模様をした壺とかぐわしい香りを放つ花が並んでいる。
観光客だけでなく地元民も賑わい、商人たちの声があちこちで飛ぶ。
お忍びで来たあの日々が懐かしく感じる
ジャミル「皆さん、『ラクダバザール』に到着しました」
トレイ「テントの露店が所狭しと並んでいるな。まるで朝市のような賑わいだ」
ジャミル「そうですね。ここでは普段から多くの露店が商いをしていますが……今日の活気は凄まじい。『ヤーサミーナ河 花火大会』があるので、いつも以上に賑わっているのでしょう」
ケイト「うわー、これこれ!オレの想像してた『熱砂の国』っぽい風景!旅行に来た~ってカンジがするよ。たっくさん写真撮っちゃお♪」
るんるん気分で写真を撮るケイトさん。嬉しそうで何よりだわ。
監督生「とても『熱砂の国』らしさが感じる場所ですね」
トレイ「『絹の街』の人々は、ここで日常品の買い物をするのか?」
ジャミル「地元民も、野菜や魚などの生鮮食品は『ラクダバザール』に買いに来ますが……観光客向けの屋台グルメの店も多いですね。今みたいな観光客が多い時期は特に」
ジャミル君の説明を聞いて、マレウスさんが小首を傾げた。
マレウス「……おかしいな」
トレイ「どうした、マレウス?」
マレウス「先ほどから探しているが、ラクダが1頭も見当たらない」
監督生「ラクダ?」
マレウス「『ラクダバザール』というぐらいだから、さぞ多くのラクダが頭を連ねているのだろうと思ったが」
「ああ、そのことですか。今はもうラクダはいないんです」
マレウスの話を聞いて、ジャミル君は納得した顔になる。
ジャミル「この国に、運河や陸路が発達するまでは、売り物や荷物を箱を運ぶのに、ラクダが使われていました。そして、この場所にかつてあったオアシスで、商人たちは、ラクダを休ませていたそうです。
彼らが自然とここで商売を始め、やがて市場へと発展していった……というわけですね。今では交易や商売には船や車が使われているのでその姿はありませんが、名前には残っています」
マレウス「なるほど、名称1つとっても、歴史があるものだ」
トレイ「定着した名前を、無理に変える必要はないもんな」
ケイト「それに、『ラクダバザール』って名前、可愛くて親しみやすいもんね。観光地にピッタリ!」
監督生「シンプルだからこそ覚えやすいですしね」
ケイト「ねぇねぇ。さっきより、だんだん人出が増えてきたんじゃない?」
ジャミル「『絹の街』の住人にとって、待ちに待った日ですから。早めに来て、席取りをしていますね」
監督生「世界が違っても、花火大会の席取りはあるんだ」
トレイ「持ち寄った食べ物や飲み物で、宴会を始めている。どこもかしこもお祭り騒ぎだな」
マレウス「人々の活気が溢れているのは、良い街だという証拠だ」
その時、グリムが慌てたようにバタバタし始める。
グリム「のんびりしている場合じゃないんだゾ!オレ様たちの見る場所がなくなっちまう!」
ジャミル「心配はいらない。ちゃんと人数分の招待席を確保してあるからな」
監督生「そういえば、その招待席はどこなんですか?」
ユウの質問に、ジャミル君はピーコックグリーンの天幕が掛かった場所を指さす。
ジャミル「あの天幕が掛かったスペースが、招待席だ。個室型で暑さを凌げて快適に見ることが出来る」
トレイ「明らかに他の一般席とは、格式が違うな。まるで高級ホテルのスイートルームだ」
ジャミル「あそこは、招待されて外国から来訪した著名人や芸能人も、座る特別席です」
マレウス「観覧席を覆っている天幕の緑色は、この国に来てから何度も見るな」
監督生「実際、その色の衣装を着てるし」
そう言いながら、ユウは今着ている衣装の裾を揺らす。
「ピーコックグリーンは、伝承の姫君が好んで身につけていた色だそうよ。祭りの最中は、ピーコックグリーンを基調とした織物で、街中が飾り付けられているんです。」
トレイ「あっちのテントは、赤い布が貼られているな」
ジャミル「あちらは、やはり国民人気の高い、伝説の『砂漠の魔術師』のイメージカラーです」
ケイト「どの角度で撮るのが一番映えそうかな~。ねえジャミルくん、花火はどこから上がるの?」
ジャミル「この会場の前に流れている河の対岸からです」
ジャミル君が指をさした対岸には、職人らしき人影がちらほら見えた。
ジャミル「『絹の街』のどこからでも、花火は見えるのですが……間近に見ることができ、大迫力の音を味わえるこの会場は、とても人気がありますね」
トレイ「そのために、みんな席取りをしているわけだな」
グリム「なー、花火の話はもう十分聞いたんだゾ。いい加減、腹が減って目が回ってきた……」
監督生「え、あんなのお菓子食べてたのにっ?」
耳をぺしょっとさせて、お腹を抱えているグリム君。
着替えてる間、かなり時間が掛かったから、グリム君は結構な量のお菓子食べているはず。
なのにもう空腹って……この子の消化機能はどうなってるのかしら??
ジャミル「わかったよ。それでは『ラクダバザール』へ向かおう」
グリム君に急かされ、ジャミル君は肩を竦めながら私たちを『ラクダバザール』に案内するのだった。
ジャミル君に案内されてやってきた『ラクダバザール』。
色鮮やかな天幕がかけられた露店には、砂漠地帯なのに新鮮なフルーツや野菜、獲れたての魚に不思議な模様をした壺とかぐわしい香りを放つ花が並んでいる。
観光客だけでなく地元民も賑わい、商人たちの声があちこちで飛ぶ。
お忍びで来たあの日々が懐かしく感じる
ジャミル「皆さん、『ラクダバザール』に到着しました」
トレイ「テントの露店が所狭しと並んでいるな。まるで朝市のような賑わいだ」
ジャミル「そうですね。ここでは普段から多くの露店が商いをしていますが……今日の活気は凄まじい。『ヤーサミーナ河 花火大会』があるので、いつも以上に賑わっているのでしょう」
ケイト「うわー、これこれ!オレの想像してた『熱砂の国』っぽい風景!旅行に来た~ってカンジがするよ。たっくさん写真撮っちゃお♪」
るんるん気分で写真を撮るケイトさん。嬉しそうで何よりだわ。
監督生「とても『熱砂の国』らしさが感じる場所ですね」
トレイ「『絹の街』の人々は、ここで日常品の買い物をするのか?」
ジャミル「地元民も、野菜や魚などの生鮮食品は『ラクダバザール』に買いに来ますが……観光客向けの屋台グルメの店も多いですね。今みたいな観光客が多い時期は特に」
ジャミル君の説明を聞いて、マレウスさんが小首を傾げた。
マレウス「……おかしいな」
トレイ「どうした、マレウス?」
マレウス「先ほどから探しているが、ラクダが1頭も見当たらない」
監督生「ラクダ?」
マレウス「『ラクダバザール』というぐらいだから、さぞ多くのラクダが頭を連ねているのだろうと思ったが」
「ああ、そのことですか。今はもうラクダはいないんです」
マレウスの話を聞いて、ジャミル君は納得した顔になる。
ジャミル「この国に、運河や陸路が発達するまでは、売り物や荷物を箱を運ぶのに、ラクダが使われていました。そして、この場所にかつてあったオアシスで、商人たちは、ラクダを休ませていたそうです。
彼らが自然とここで商売を始め、やがて市場へと発展していった……というわけですね。今では交易や商売には船や車が使われているのでその姿はありませんが、名前には残っています」
マレウス「なるほど、名称1つとっても、歴史があるものだ」
トレイ「定着した名前を、無理に変える必要はないもんな」
ケイト「それに、『ラクダバザール』って名前、可愛くて親しみやすいもんね。観光地にピッタリ!」
監督生「シンプルだからこそ覚えやすいですしね」