熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
写真撮影を終えると、トレイさんはふと思い出しながら言った。
トレイ「衣装の話に気を取られていたが、カリムの家の中もすごかったな」
ケイト「ホントホント!少し入っただけだけど、圧倒されたよ~」
監督生「スカラビアより豪華だった」
グリム「ふ~ん。どんな感じだったんだ?」
カリム君の家に興味を持ったのか、グリム君が問いかけるとみんなは答えてくれる。
トレイ「あそこの大きな門を開けると、見たことがない規模の大広間があるんだ」
ケイト「あんまり広いから、思わずトレイくんと踊っちゃったよ!」
「いきなり社交ダンスを始められたので、驚きました」
グリム「オマエらはしゃぎすぎなんだゾ」
トレイ「俺は踊っていない!ケイトに巻き込まれただけだ!」
グリム君が呆れてジト目を向けると、トレイさんは慌てて否定した。
たしかに、あれは踊ったというか踊らされたが一番的確ね。
ケイト「とにかく、めちゃくちゃ豪華!キラキラして、ピカピカして、まぶしいの!」
監督生「ケイト先輩、語彙力なくなってません?」
マレウス「金を多用した、きらびやかな装飾だった。茨の谷の知ろとはかなり趣が違ったな」
ケイト「でも、そんな所に、けーくんたちの荷物を置けないでしょ?どうすればいいのか尋ねたら……なんと、宝物庫を通されたの。そこには、目がくらんじゃうほど金ピカな財宝が、山みたいにドーンと積まれていてさ」
トレイ「そんな場所に、俺たちのバックが置かれるんだ。違和感が凄かったな」
監督生「スカラビアの宝物庫より凄かったですね。でも、それにしてはまだ年季が経ってなかったような……」
ジャミル「あの宝物庫は、今年建てられたばかりの、新しいものですよ」
今年なら年季が入っていないのは当然ね
ケイト「……っていうことは、ああいう宝物庫がいくつもあるの!?」
ジャミル「えぇ、10個以上は」
「「「「そんなに!」」」」
ジャミル「収める宝物の大きさや価値によって、格納する場所が異なります。アジーム家に代々伝わる一級品の大事な家宝は、屋敷の奥にある、第1宝物庫に収められていますよ」
カリム「あの物置なら、子どもの頃に、何度も忍び込んだな~」
ジャミル「その度に大騒ぎになったんだぞ!中の宝物を壊したこともあったろ!」
ちょっとカリム君、家宝壊しちゃダメじゃない!
ケイト「カリムくん、わんぱくだなあ~」
監督生「わんぱくで済ますことですか、これ?」
カリム「そうそう!学園で乗っている魔法の絨毯も、あそこで出会ったんだよ!」
「そうだったのね。」
スカラビアに来ると、何故か私にくっついてくる魔法の絨毯。
カリム君は「きっとロゼッタのことが気に入ったんだろうな~」とか言ってたけど、今も真意は不明だ。
……そういえば、ハーツラビュルのハリネズミとかフラミンゴも、私が来ると脱走してまでくっついてくるのよね。どうしてかしら?
ジャミル「あれこそ、家宝中の家宝じゃないか!伝説の魔法の絨毯のレプリカとはいえ、国宝クラスの貴重品だ!それをまさか、ナイトレイブンカレッジに……他国に持って行くことになるなんて」
カリム「最初はとーちゃんも迷ってみたいだけど最後にはオーケーしてくれたぜ?『分かった、持って行け!仲良くしなさい』って。すごいニコニコしてた」
ジャミル「あのお方は、お前に甘すぎる……」
カリム「いいじゃないか。あの絨毯は、今じゃすっかりオレたちの大事な友だちなんだからさ!」
その光景が自然と脳裏に浮かんでしまい、私は思わず苦笑いしてしまった。
トレイ「ジャミルはカリムと昔から友だちだったんだろ?この家でも色々、思い出があるんじゃないか?」
ジャミル「そうですね……」
やはりアジーム邸に来たからか、トレイさんは2人の話が気になるらしい。ジャミル君も聞かれたため、昔話を始めた。
ジャミル「俺たち使用人の食事は、用意されたまかない飯や、家から持ってきた弁当だったりするんです。しかし一度、弁当を持ってこられなかったことがありまして……」
「どうして?」
ジャミル「俺が家で用意した弁当を、妹が勝手に持って行ってしまったんです」
ケイト「微笑ましい理由だね~」
グリム「ジャミルの料理はウメーからな!食べたくなる気持ちもわかるんだゾ」
どうやらジャミル君の料理の腕は、子どもの頃から健在のようだ。
監督生「それで、お昼はどうしたんですか?」
ジャミル「そのときはまかないも無かったので、俺はキッチンに行って、自分で昼食を作りました。お屋敷のキッチンを使うからにはと、同僚の分も作って一緒に食べていたのですが……どうやらそれを食べた人たちの話によって、俺の料理が美味いと噂になったらしいんです。
それがカリムの旦那様と奥様の耳にも入ってしまい、『自分たちも食べてみたい』と言われ……ついにある日、アジーム家の昼食を俺が用意することになってしまいました」
ケイト「へぇー!なにを作ったの?」
ジャミル「俺は、羊のコース料理を作るつもりだったのですが、『普段作っているものが食べたい』と頼まれ……濡れバーガーを」
ケイト「……なに、それ?」
ケイトさんが笑顔で固まった!いつもとは違うその表情に驚きを隠せない
トレイ「湿っているハンバーガーなのか?聞いたこともない料理だな」
ジャミル「ハンバーガーを、トマトソースで浸したものです。ですから、パンはスポンジみたいに、しんなり柔らかな食感になります」
トレイ「話を聞く限りでは、あまり食欲はわかないな」
グリム「好き嫌いなんてオマエらみんなオコサマなんだゾ。オレ様はなんでも食べる!!」
監督生「だからって、芝生まで食べないで」
「えっ!?グリム君芝生食べてたの?」
監督生「はい…あ!話逸らしてごめんなさい」
ジャミル「まったく・・・食べてみたらきっと先輩方も気に入ります。熱砂の国では人気のファストフードなんですよ」
トレイ「本当か?驚いたな……。カリムのご両親の反応は、どうだったんだ?」
ジャミル「好評でした。街の住人には一般的な食べ物ですが……おふたりは召し上がったことがなかったんでしょう。思った通り、新鮮な味に感じたようです。俺の作った特製ソースも、お口に合ったようで」
熱砂の富豪とその奥方ですもの。庶民の味は新鮮に感じるはずだわ。私はお母様が一般人だったから、食卓に豪華な料理が並ぶのは宴の時だけだったわね。
カリム「オレも初めて食べたんだ。ウマかったなー!」
ケイト「じゃあ昼食会は大成功だったんだね」
ジャミル「それが……その会がきっかけで、年に何回か俺が昼食を用意することになったんです。屋敷には凄腕の料理人がたくさんいるので、彼らに協力してもらいながらですがね」
カリム「すごいだろー?みんな、ジャミルの作る料理が大好きなんだ!もちろんオレも。だからもっとたくさんの人に食べてもらいたいなと思って、いろんな人を呼んだんだぜ!」
ジャミル「来賓の方々は、とても俺みたいな素人の家庭料理を振る舞っていいような方々ではなく……俺は昼食会の日が近付く度に、頭を悩ませるはめに……」
ケイト「ジャミルくんって……要領いいんだか悪いんだかわかんないよね……」
監督生「ここまで苦労と不運に見舞われてる人はいませんよ。1回お祓い行ったほうがいいのでは?」
ジャミル「ほっとけ!!」
「無理しないようにね…」
ジャミル「お気遣い感謝祖ます。さて、着替えも終わって、荷物も置いたので、街へ観光に向かいましょう」
カリム「よーし、みんなで観光だー!」
ジャミル「カリム、お前は、挨拶回りがあるだろう?」
ちゃっかりついてこようとしたカリム君に、ジャミル君は逃さず指摘した。
トレイ「衣装の話に気を取られていたが、カリムの家の中もすごかったな」
ケイト「ホントホント!少し入っただけだけど、圧倒されたよ~」
監督生「スカラビアより豪華だった」
グリム「ふ~ん。どんな感じだったんだ?」
カリム君の家に興味を持ったのか、グリム君が問いかけるとみんなは答えてくれる。
トレイ「あそこの大きな門を開けると、見たことがない規模の大広間があるんだ」
ケイト「あんまり広いから、思わずトレイくんと踊っちゃったよ!」
「いきなり社交ダンスを始められたので、驚きました」
グリム「オマエらはしゃぎすぎなんだゾ」
トレイ「俺は踊っていない!ケイトに巻き込まれただけだ!」
グリム君が呆れてジト目を向けると、トレイさんは慌てて否定した。
たしかに、あれは踊ったというか踊らされたが一番的確ね。
ケイト「とにかく、めちゃくちゃ豪華!キラキラして、ピカピカして、まぶしいの!」
監督生「ケイト先輩、語彙力なくなってません?」
マレウス「金を多用した、きらびやかな装飾だった。茨の谷の知ろとはかなり趣が違ったな」
ケイト「でも、そんな所に、けーくんたちの荷物を置けないでしょ?どうすればいいのか尋ねたら……なんと、宝物庫を通されたの。そこには、目がくらんじゃうほど金ピカな財宝が、山みたいにドーンと積まれていてさ」
トレイ「そんな場所に、俺たちのバックが置かれるんだ。違和感が凄かったな」
監督生「スカラビアの宝物庫より凄かったですね。でも、それにしてはまだ年季が経ってなかったような……」
ジャミル「あの宝物庫は、今年建てられたばかりの、新しいものですよ」
今年なら年季が入っていないのは当然ね
ケイト「……っていうことは、ああいう宝物庫がいくつもあるの!?」
ジャミル「えぇ、10個以上は」
「「「「そんなに!」」」」
ジャミル「収める宝物の大きさや価値によって、格納する場所が異なります。アジーム家に代々伝わる一級品の大事な家宝は、屋敷の奥にある、第1宝物庫に収められていますよ」
カリム「あの物置なら、子どもの頃に、何度も忍び込んだな~」
ジャミル「その度に大騒ぎになったんだぞ!中の宝物を壊したこともあったろ!」
ちょっとカリム君、家宝壊しちゃダメじゃない!
ケイト「カリムくん、わんぱくだなあ~」
監督生「わんぱくで済ますことですか、これ?」
カリム「そうそう!学園で乗っている魔法の絨毯も、あそこで出会ったんだよ!」
「そうだったのね。」
スカラビアに来ると、何故か私にくっついてくる魔法の絨毯。
カリム君は「きっとロゼッタのことが気に入ったんだろうな~」とか言ってたけど、今も真意は不明だ。
……そういえば、ハーツラビュルのハリネズミとかフラミンゴも、私が来ると脱走してまでくっついてくるのよね。どうしてかしら?
ジャミル「あれこそ、家宝中の家宝じゃないか!伝説の魔法の絨毯のレプリカとはいえ、国宝クラスの貴重品だ!それをまさか、ナイトレイブンカレッジに……他国に持って行くことになるなんて」
カリム「最初はとーちゃんも迷ってみたいだけど最後にはオーケーしてくれたぜ?『分かった、持って行け!仲良くしなさい』って。すごいニコニコしてた」
ジャミル「あのお方は、お前に甘すぎる……」
カリム「いいじゃないか。あの絨毯は、今じゃすっかりオレたちの大事な友だちなんだからさ!」
その光景が自然と脳裏に浮かんでしまい、私は思わず苦笑いしてしまった。
トレイ「ジャミルはカリムと昔から友だちだったんだろ?この家でも色々、思い出があるんじゃないか?」
ジャミル「そうですね……」
やはりアジーム邸に来たからか、トレイさんは2人の話が気になるらしい。ジャミル君も聞かれたため、昔話を始めた。
ジャミル「俺たち使用人の食事は、用意されたまかない飯や、家から持ってきた弁当だったりするんです。しかし一度、弁当を持ってこられなかったことがありまして……」
「どうして?」
ジャミル「俺が家で用意した弁当を、妹が勝手に持って行ってしまったんです」
ケイト「微笑ましい理由だね~」
グリム「ジャミルの料理はウメーからな!食べたくなる気持ちもわかるんだゾ」
どうやらジャミル君の料理の腕は、子どもの頃から健在のようだ。
監督生「それで、お昼はどうしたんですか?」
ジャミル「そのときはまかないも無かったので、俺はキッチンに行って、自分で昼食を作りました。お屋敷のキッチンを使うからにはと、同僚の分も作って一緒に食べていたのですが……どうやらそれを食べた人たちの話によって、俺の料理が美味いと噂になったらしいんです。
それがカリムの旦那様と奥様の耳にも入ってしまい、『自分たちも食べてみたい』と言われ……ついにある日、アジーム家の昼食を俺が用意することになってしまいました」
ケイト「へぇー!なにを作ったの?」
ジャミル「俺は、羊のコース料理を作るつもりだったのですが、『普段作っているものが食べたい』と頼まれ……濡れバーガーを」
ケイト「……なに、それ?」
ケイトさんが笑顔で固まった!いつもとは違うその表情に驚きを隠せない
トレイ「湿っているハンバーガーなのか?聞いたこともない料理だな」
ジャミル「ハンバーガーを、トマトソースで浸したものです。ですから、パンはスポンジみたいに、しんなり柔らかな食感になります」
トレイ「話を聞く限りでは、あまり食欲はわかないな」
グリム「好き嫌いなんてオマエらみんなオコサマなんだゾ。オレ様はなんでも食べる!!」
監督生「だからって、芝生まで食べないで」
「えっ!?グリム君芝生食べてたの?」
監督生「はい…あ!話逸らしてごめんなさい」
ジャミル「まったく・・・食べてみたらきっと先輩方も気に入ります。熱砂の国では人気のファストフードなんですよ」
トレイ「本当か?驚いたな……。カリムのご両親の反応は、どうだったんだ?」
ジャミル「好評でした。街の住人には一般的な食べ物ですが……おふたりは召し上がったことがなかったんでしょう。思った通り、新鮮な味に感じたようです。俺の作った特製ソースも、お口に合ったようで」
熱砂の富豪とその奥方ですもの。庶民の味は新鮮に感じるはずだわ。私はお母様が一般人だったから、食卓に豪華な料理が並ぶのは宴の時だけだったわね。
カリム「オレも初めて食べたんだ。ウマかったなー!」
ケイト「じゃあ昼食会は大成功だったんだね」
ジャミル「それが……その会がきっかけで、年に何回か俺が昼食を用意することになったんです。屋敷には凄腕の料理人がたくさんいるので、彼らに協力してもらいながらですがね」
カリム「すごいだろー?みんな、ジャミルの作る料理が大好きなんだ!もちろんオレも。だからもっとたくさんの人に食べてもらいたいなと思って、いろんな人を呼んだんだぜ!」
ジャミル「来賓の方々は、とても俺みたいな素人の家庭料理を振る舞っていいような方々ではなく……俺は昼食会の日が近付く度に、頭を悩ませるはめに……」
ケイト「ジャミルくんって……要領いいんだか悪いんだかわかんないよね……」
監督生「ここまで苦労と不運に見舞われてる人はいませんよ。1回お祓い行ったほうがいいのでは?」
ジャミル「ほっとけ!!」
「無理しないようにね…」
ジャミル「お気遣い感謝祖ます。さて、着替えも終わって、荷物も置いたので、街へ観光に向かいましょう」
カリム「よーし、みんなで観光だー!」
ジャミル「カリム、お前は、挨拶回りがあるだろう?」
ちゃっかりついてこようとしたカリム君に、ジャミル君は逃さず指摘した。