熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ
伝統衣装を身に包んだ私たち。
中でもジャミル君の衣装は、不思議と目を惹いた。
トレイ「あちこちに花火の刺繍があるってことは、この花火大会用の衣装なのか?」
「はい。アジーム家では毎年、祭りに合わせて新しく衣装を作るんですよ」
カリム「ウチで働いてくれてる人たちの分も作って……みーんなで『ヤーサミーナ河 花火大会』を楽しむことにしてるんだ!」
監督生「すごく太っ腹ですね」
グリム「でも、ロゼッタもジャミルと同じような生地じゃねーか。」
ジャミル「似てるだけで同じじゃない。」
「見て、グリム君。私の服はジャミル君のものより少し色が薄いのよ。」
グリム「ホントなんだゾ」
トレイ「袖も裾も丈も長いが、着てみると涼しいのが意外だ」
監督生「ですね。私の衣装も暑そうに見えて結構涼しいです」
ジャミル「日差しが強いので、布地で遮った方が、体感温度が下がるんです。生地も通気性の良いものを使っていますので、清涼感があると思います」
トレイ「たしかにな、この頭への直射日光を、このバンダナが遮ってくれるのは、ありがたいよ。ただ、ケイトとマレウスは、髪をまとめるのが手間だったんじゃないか?俺は短髪だから楽だったが」
監督生「言われてみればそうですね。私も帽子だけですけど。」
ケイトさんの髪はウェーブがかかっているし、マレウスさんには立派な角がある。
ケイト「そんなことなかったよ~。全部、お付きの人がやってくれたからね!」
マレウス「それに、帽子やフードと違って、僕の角のために、穴を開ける手間もなかったしな」
そういえば、マレウスさんの式典服のフードは特注で穴を開けてあるんだった。
……袖に通す機会が中々ないみたいだけど。
ケイト「腰回りに付いてる、この鈴もオシャレだよね。歩くとシャンシャンと鳴って!」
「鈴の音は邪気を払うとされているんですよ。花火大会は祭礼の一面もありますから」
ケイト「そういえば、さっきも気になったんだけど……どうしてジャミルくんの衣装だけオレたちのと違うの?すっごく派手だよね」
監督生「そうですね。スカラビアの寮服より装飾も多いですしね」
私たちの衣装も派手だけど、ジャミル先輩の衣装はその上をいく。
ケイトさんの質問に、ジャミル君は答えた。
ジャミル「今年、アジーム家は花火大会の主催ですから……カリムの従者である俺も華美な装いになったそうです。こんなにたくさんの装飾品を用意されたのは初めてで、俺も少し驚きました。……俺は、こんな格式ばった衣装より、普段着の方がよっぽど楽なんですけどね」
カリム「そう言うなって。これも大事な決まりだろ~?」
ジャミル「あぁ。わかっている」
本人も派手だと思っているが、普段からスカラビアを思わせる真紅のパーカーを着ているせいなのか、あの色合いの服はとても新鮮に見えるわね。
トレイ「腰布のファイヤーパターンが、いかにもジャミルらしいな」
ケイト「羽織ったケープもカッコいいよね~!その腰のランタンは?」
ジャミル「魔法で点灯するようになっています。花火大会の本番は夜ですから……なにかアクシデントがあった際、大切な客人をアテンドできるよう、携帯しているんです」
「もうアクシデント想定してるのね」
トレイ「このバンダナ、お洒落な上に手触りもすごくいいな。普段使い用に、買って帰ろうか」
ジャミル「この柄でしたら……1枚、数十万マドルですね」
監督生「数十万!?」
トレイ「そ、そんなにするのか!?」
ジャミル「その布はヤーサミーナシルクと言いまして、『絹の街』を象徴する織物なんです。その中でも、皆様が今身につけているのは職人が時間をかけて手織りで仕上げた一級品。『お客様に粗末なものはお貸しできないか』というアジーム家たっての希望でご用意しました」
カリム「トレイが気に入ったなら、好きなだけ持って帰っていいぜ!50枚くらいでいいか?」
トレイ「いや……さすがに遠慮するよ。いつもの帽子の方が、気が楽だ」
確かに……普段使いするには躊躇する代物だものね。
それを50枚も……カリム君は富豪の家に育ったからか遠慮ってものを知らないと見える。
「街に行けば、手頃な値段の物がありますから、そこで選んではいかがですか?」
トレイ「そうだな。身の丈にあったものを探してみるよ」
監督生「これ、ターバン以外にもありますか?」
「そうねぇ……ストールとか色々あるわよ。ユウも気に入った物があれば買っていったら?」
監督生「そうします」
ケイト「着替えも数人がかりで手伝ってくれたし、王様になった気分だったな~♪」
トレイ「あぁ、滅多に出来ない経験だったな」
監督生「え?私はお風呂に入らされて、マッサージされてましたけど……?」
ケイト「監督生ちゃんはほら、女の子だからね」
トレイ「ああ。女の子は綺麗になったほうがいいだろ?」
マレウス「……リリアも、ここにいたら喜んだことだろう。一緒に来られなくて残念だ」
ケイト「あ!それなら写真を送るっていうのはどう?マレウスくんが楽しんでる姿を見たらリリアちゃんも嬉しいと思うし……一緒に旅行してる気分になるんじゃない?」
マレウス「写真か……。僕はあまり馴染みがないのだが」
ケイト「これも腹痛で苦しんでるリリアちゃんを喜ばせるためだって」
マレウス「ふむ……ならば撮ろう。リリアのためにも、記録は残さなければな」
ケイト「そうこなくっちゃ!」
ケイトさんに勧められて写真を撮ることを決めたマレウスさん。
するとカリム君がある提案をする。
カリム「リリアに見せるんなら、ケイトたちも一緒の集合写真のほうがいいんじゃないか?みんな、せっかく着替えたんだしさ!オレが撮ってやるから、そこに並べよ。トレイも、ジャミルも、監督生もロゼッタも!」
「ええ!」
カリム君の提案に乗り、一緒に写真を撮る私たち。
彼はケイトさんだけでなく、念のために渡した私のスマホでも写真を撮ってくれた。
カリム「……やっぱオレも一緒に写真撮りたくなってきた!写真撮ってくれる人探してくるから待っててくれ!」
結局、カリム君が専属のカメラマンを呼んで、しばらくアジーム邸で写真大会が始まってしまった。
中でもジャミル君の衣装は、不思議と目を惹いた。
トレイ「あちこちに花火の刺繍があるってことは、この花火大会用の衣装なのか?」
「はい。アジーム家では毎年、祭りに合わせて新しく衣装を作るんですよ」
カリム「ウチで働いてくれてる人たちの分も作って……みーんなで『ヤーサミーナ河 花火大会』を楽しむことにしてるんだ!」
監督生「すごく太っ腹ですね」
グリム「でも、ロゼッタもジャミルと同じような生地じゃねーか。」
ジャミル「似てるだけで同じじゃない。」
「見て、グリム君。私の服はジャミル君のものより少し色が薄いのよ。」
グリム「ホントなんだゾ」
トレイ「袖も裾も丈も長いが、着てみると涼しいのが意外だ」
監督生「ですね。私の衣装も暑そうに見えて結構涼しいです」
ジャミル「日差しが強いので、布地で遮った方が、体感温度が下がるんです。生地も通気性の良いものを使っていますので、清涼感があると思います」
トレイ「たしかにな、この頭への直射日光を、このバンダナが遮ってくれるのは、ありがたいよ。ただ、ケイトとマレウスは、髪をまとめるのが手間だったんじゃないか?俺は短髪だから楽だったが」
監督生「言われてみればそうですね。私も帽子だけですけど。」
ケイトさんの髪はウェーブがかかっているし、マレウスさんには立派な角がある。
ケイト「そんなことなかったよ~。全部、お付きの人がやってくれたからね!」
マレウス「それに、帽子やフードと違って、僕の角のために、穴を開ける手間もなかったしな」
そういえば、マレウスさんの式典服のフードは特注で穴を開けてあるんだった。
……袖に通す機会が中々ないみたいだけど。
ケイト「腰回りに付いてる、この鈴もオシャレだよね。歩くとシャンシャンと鳴って!」
「鈴の音は邪気を払うとされているんですよ。花火大会は祭礼の一面もありますから」
ケイト「そういえば、さっきも気になったんだけど……どうしてジャミルくんの衣装だけオレたちのと違うの?すっごく派手だよね」
監督生「そうですね。スカラビアの寮服より装飾も多いですしね」
私たちの衣装も派手だけど、ジャミル先輩の衣装はその上をいく。
ケイトさんの質問に、ジャミル君は答えた。
ジャミル「今年、アジーム家は花火大会の主催ですから……カリムの従者である俺も華美な装いになったそうです。こんなにたくさんの装飾品を用意されたのは初めてで、俺も少し驚きました。……俺は、こんな格式ばった衣装より、普段着の方がよっぽど楽なんですけどね」
カリム「そう言うなって。これも大事な決まりだろ~?」
ジャミル「あぁ。わかっている」
本人も派手だと思っているが、普段からスカラビアを思わせる真紅のパーカーを着ているせいなのか、あの色合いの服はとても新鮮に見えるわね。
トレイ「腰布のファイヤーパターンが、いかにもジャミルらしいな」
ケイト「羽織ったケープもカッコいいよね~!その腰のランタンは?」
ジャミル「魔法で点灯するようになっています。花火大会の本番は夜ですから……なにかアクシデントがあった際、大切な客人をアテンドできるよう、携帯しているんです」
「もうアクシデント想定してるのね」
トレイ「このバンダナ、お洒落な上に手触りもすごくいいな。普段使い用に、買って帰ろうか」
ジャミル「この柄でしたら……1枚、数十万マドルですね」
監督生「数十万!?」
トレイ「そ、そんなにするのか!?」
ジャミル「その布はヤーサミーナシルクと言いまして、『絹の街』を象徴する織物なんです。その中でも、皆様が今身につけているのは職人が時間をかけて手織りで仕上げた一級品。『お客様に粗末なものはお貸しできないか』というアジーム家たっての希望でご用意しました」
カリム「トレイが気に入ったなら、好きなだけ持って帰っていいぜ!50枚くらいでいいか?」
トレイ「いや……さすがに遠慮するよ。いつもの帽子の方が、気が楽だ」
確かに……普段使いするには躊躇する代物だものね。
それを50枚も……カリム君は富豪の家に育ったからか遠慮ってものを知らないと見える。
「街に行けば、手頃な値段の物がありますから、そこで選んではいかがですか?」
トレイ「そうだな。身の丈にあったものを探してみるよ」
監督生「これ、ターバン以外にもありますか?」
「そうねぇ……ストールとか色々あるわよ。ユウも気に入った物があれば買っていったら?」
監督生「そうします」
ケイト「着替えも数人がかりで手伝ってくれたし、王様になった気分だったな~♪」
トレイ「あぁ、滅多に出来ない経験だったな」
監督生「え?私はお風呂に入らされて、マッサージされてましたけど……?」
ケイト「監督生ちゃんはほら、女の子だからね」
トレイ「ああ。女の子は綺麗になったほうがいいだろ?」
マレウス「……リリアも、ここにいたら喜んだことだろう。一緒に来られなくて残念だ」
ケイト「あ!それなら写真を送るっていうのはどう?マレウスくんが楽しんでる姿を見たらリリアちゃんも嬉しいと思うし……一緒に旅行してる気分になるんじゃない?」
マレウス「写真か……。僕はあまり馴染みがないのだが」
ケイト「これも腹痛で苦しんでるリリアちゃんを喜ばせるためだって」
マレウス「ふむ……ならば撮ろう。リリアのためにも、記録は残さなければな」
ケイト「そうこなくっちゃ!」
ケイトさんに勧められて写真を撮ることを決めたマレウスさん。
するとカリム君がある提案をする。
カリム「リリアに見せるんなら、ケイトたちも一緒の集合写真のほうがいいんじゃないか?みんな、せっかく着替えたんだしさ!オレが撮ってやるから、そこに並べよ。トレイも、ジャミルも、監督生もロゼッタも!」
「ええ!」
カリム君の提案に乗り、一緒に写真を撮る私たち。
彼はケイトさんだけでなく、念のために渡した私のスマホでも写真を撮ってくれた。
カリム「……やっぱオレも一緒に写真撮りたくなってきた!写真撮ってくれる人探してくるから待っててくれ!」
結局、カリム君が専属のカメラマンを呼んで、しばらくアジーム邸で写真大会が始まってしまった。