熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ

カリム「おう。実は、みんなに熱砂の国の伝統衣装を用意したんだ」

「「「「えっ!?」」」」

カリム君からのまさかのサプライズ。

完全に初耳だった私たちは思わず驚きの声を上げる。

カリム「みんなに思い出に残る1日を過ごしてもらうにはどうしたらいいかって、昨日ジャミルと話し合ったんだ」

ジャミル「差し出がましいかと思ったのですが……せっかく熱砂の国にお越しいただきましたから。『ヤーサミーナ河 花火大会』を楽しむためにも、是非熱砂の国の歴史を感じいただければと思い、ご用意しました」

あ……もしかして、これがカリム君のさっき言ってた『お楽しみ』?

マレウス「さっきアジームが言っていた『お楽しみ』というのはこのことだったのか。気が利くな」

ケイト「こんなサプライズ嬉しすぎ!ありがとう、カリムくん、ジャミルくん!」

トレイ「このまま制服でいるのも、暑くてたいへんだったしな。助かる」

ロゼッタ「あの事件でここに戻ってきた以来着てなかったから、うれしいわ。ありがとう。」

「ありがとうございます、先輩方」


私たちからのお礼に、2人は嬉しそうに口元を綻ばせた。

カリム「ジャミルも着替えて来いよ。ついでに、みんなを案内してくれ。オレとグリムはここで待ってるからさ」

ジャミル「わかった」

グリム「ん?どうしてオレ様も待ってなくちゃいけないんだ?」

カリム「それがなあ……」

ジャミル「悪いが、グリムの服はない」

グリム「な、なんだってー!?ふな――っ!!」

グリム君分の衣装がなくグリム君が怒るが、ジャミル君は肩を竦めながら言った。

ジャミル「しょうがないだろう。サイズが違うグリムの分まで、1日じゃとても用意できなかったんだ」

ロゼッタ「逆に5人分用意できたのがすごいことだわ」

グリム「嘘つけ!どうせオレ様のことなんて忘れてたんだろ。オレ様だってかっけー服着たいんだゾ!」

カリム「そう怒るなよ。クーラーの利いた車の中で、のんびりしてていいからさ。ジュースやお菓子もたくさん用意したぞ!」

グリム「おーっ!それなら許してやるんだゾ!早く食わせろ!」

「結局、食を取るんだから」

ケイト「グリちゃんにはそっちの方が嬉しいかもね」

服よりお菓子を選んだグリム君に苦笑してしまう私たち。

完全に花より団子ね、グリム君は。

ジャミル「ではみなさん、フィッティングルームにご案内します。あ、荷物は、使用人がお持ちしますので、お預け下さい」

トレイ「……一般家庭出身の身からすると、この仰々しい扱いに慣れなくてソワソワするな」

「何事も経験ですよ。ユウ、一緒に行きましょう。」

監督生「はい!じゃあ、グリム、着替えてくるね」

グリム「おう、行ってこい!オレ様は、食ってるから!」

完全にお菓子に意識を奪われているグリム君に再び苦笑しながら、私たちはアジーム邸に入った。
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