熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ

マレウスさんの衝撃発言に全員が叫ぶ。

そのせいで車体が軽く揺れて、運転手が驚いてバックミラー越しから私たちの様子を確認していた。私はすみませんというような目線を送った。

マレウス「茨の谷には、機械仕掛けのものはほとんどない。それに飛んだ方がよほど早いからな。わざわざ地を這う機械など使う必要は無いと思っていたが……乗ってみると、広いし、なかなか快適だな。悪くない気分だ。これならば、お前達がよく車を使うのも合点がいく」

トレイ「この車が特別なだけなんだが……」

監督生「普通の車はこれよりもっと狭いよ」

ケイト「初めて乗ったのが、こんな高級車なんて、レアな体験だよね~」

マレウスさんの初の車体験が上手くいってよかったと思おう。

グリム「それにしても熱砂の国に着いた時は、暑さでどうなることかと思ったゾ!」

ケイト「エアコンが効いた車内で、ゆっくり出来るのは、カリムくんのおかげだね♪」

トレイ「……でもちょっと、冷房が効きすぎじゃないか?」

監督生「たしかに、少し寒くなりました」

グリム「そうか?オレ様には、ちょうど良いくらいなんだゾ」

「グリム君はモフモフだものね」

カリム「この国は外が暑いから、部屋の中じゃ冷房の温度を低めに設定しておくのが常識なんだ!」

ジャミル「そのため、寒暖差で体調を崩すことも多いんです。皆さんには寒すぎたようですね」

マレウス「ならば僕が火を噴いて温めるか?」

「「「!?」」」

監督生「やめて。火だるまになるから」

カリム「あはは~!マレウスはおもしろいことを言うな!」

マレウスさんの提案に3人が驚き、ユウはすかさず制止をかける。
カリム君は笑っていたけど、あれ絶対本気だったわね。

トレイ「……マレウスが言うと、冗談なのか、本気なのか、判断がつかないな」

ケイト「ヒヤッとしたせいか余計に体温下がった気がするよ」

ジャミル「運転手に車内の温度を少し上げてもらいましょう。ちょっと待ってください」

ジャミル君はさっそく運転席まで行くと、運転手の人に話しかける。
するとさっきまで冷たかった温度が少し上がったのを感じた。

トレイ「……ふぅ、だいぶ過ごしやすくなってきたな。ありがとう、ジャミル」

でも、まだ寒いなと思っていたとき・・・

ジャミル「ロゼッタ様、まだ寒いようでしたら、もう少し温度を上げるよう言いますが…」

「大丈夫よ、時期に暖かくなるから」

??『愛しい子、寒い?僕が暖めてあげる』

「「!?」」

「サラマンダーじゃない!!」

トレイ「サラマンダーって言ったら火の精霊か?」

ケイト「温めるのにぴったりだね♪」

グリム「見た目がトカゲみたいなんだゾ…」

「ふふっ。サラマンダー以外にも動物のような見た目の子結構いるのよ」

監督生「へえ~。そうなんですね」

サラマンダー『愛しい子の周りあったかくしたどう?」

「だいぶ暖まってきたわ。ありがとう」

私たちを乗せたリムジンは『絹の街』の道路を走る。
窓の外では景色が流れるように変わっていく。

ケイト「こうして車の中から、街を観光出来るのもいいね。移動しながら色々な物が見られるの楽しいよ♪」

監督生「ずいぶんたくさん人がいますね」

カリム「観光客も多かったな。地元が盛り上がっていると嬉しくなるぜ」

ここにいる観光客のお目当ては、きっと今日の花火大会なのだろう。
これはだいぶ賑やかになりそうね。

ジャミル「人混みが凄かったのは、地元の人は日差しの弱い朝方や夕時に外出することが多いせいです。これから気温は、グングン上がっていきます。その分、街を出歩く人は減るので、歩きやすくはなりますから」

トレイ「うっ……まだ暑くなるのか……」

「『絹の街』は、ミストシャワーが街中にあって、熱砂の国の中では比較的涼しい場所なんですよ。バザールや店にはシェードがあるので、日差しを受けずに歩けるんです。」

トレイ「それでも暑さ対策を考えておかないと。さすがにこの恰好で街歩きするのは辛いからな」

確かに、ナイトレイブンカレッジの制服はここでは少し暑い。
下がスカートの私ですら暑いのだから、生徒の皆はそれより暑いはずだ。

カリム「そのことも心配無用だぜ!しっかり準備はしてあるからさ」

トレイ「どういう意味だ、カリム?」

カリム「それは後のお楽しみってことで!」

「?」

どこかウキウキしているカリム君に首を傾げていると、リムジンは幹線道路に入った。

トレイ「片道4車線の幹線道路か。交通インフラは、かなり整備されているんだな」

監督生「実家で見た旅番組では、熱砂の国に近い国の道路は乗り物で密集されていたので、こっちでもそうなのかと思ってました」

ユウのいた世界にも熱砂の国のような場所があるのね。興味深いわ
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