熱砂の国のアリア―ブ・ナーリヤ

あれから数日が立ち、出発の日になった。

グリム「あ、あっちからケイトが来たんだゾ!おーい!」

外廊下で待っていると、メンバーの1人であるケイトさんが現れる。
彼の手にはお洒落なスーツケース。ケイトさんが好きそうなデザインをしていた。

カリム「ホントだ!おはよー、ケイト!」

ジャミル「ケイト先輩とも、鏡の間に行く前に会えたか。よしよし、順調に運んでいるな」

「(ジャミル君、出発する前からこんなに緊張していて大丈夫なのかしら?)」

ユウ「おはようございます、ケイト先輩。今日はよろしくお願いします」

ケイト「みんな、おはあり~!旅行日和だね~」

グリム「こっちが晴れてても、向こうの天気はわからないんじゃねーか?」

ケイト「ダイジョブ!さっきアプリで調べたら、熱砂の国も晴天だってさ♪」

「なら安心ね」

ケイト「今日は、熱砂の国のありとあらゆる物を撮影しまくるからね。バッテリー100%!もちろん、モバイルバッテリーも準備OKだよ!」

監督生「ケイト先輩は、 誰を誘ったんですか?」

ケイト「あ、気になっちゃう?よーし、それじゃあ紹介するよー☆けーくんが連れてきた、旅のパートナーは……この人っ!!」

そうして今までひっそりと隠れていた場所から現れたのは、

トレイ「……そんな風に、もったいぶったしょうかいをするのはやめてくれ」

トレイさんだった。

手にはシンプルなボストンバッグを持っていて、トレードマークのクローバーが刺繍されていた。

カリム「お!ケイトはトレイを誘ったのか」

グリム「なんか、いつもと代わり映えしない2人組なんだゾ」

「でも、慣れ親しんだ人がいると心強く感じるわよね」

監督生「そうですね」

旅で知らない人といるより、知っている人が1人でもいるとかなり心強い。

トレイ「おはよう、カリム、ジャミル。招待してくれて、ありがとう」

ケイト「熱砂の国へ行けるって聞いて、トレイくんがピッタリだと思って誘ったんだよ」

「ピッタリ・・ですか?」

どういうことだろうと首を傾げると、トレイさんはすぐに答える。

トレイ「熱砂の国には、変わったスイーツがあると聞いたことがある。この目で見てみたかったんだ。『なんでもない日』のパーティーで出す、創作デザートのアイデアになりそうだからな」

なるほど……確かに、そう考えるとトレイさんにはピッタリね。

ジャミル「トレイ先輩の気に入る食材が、きっとありますよ。俺たちの地元には熱砂の国中の郷土料理や、お菓子の屋台が集まっていますからね」

トレイ「そいつは楽しみだ。ジャミルのオススメ料理があったら、教えてくれるとうれしい。お前は料理上手だからな。ジャミル推薦のメニューを、ぜひ食べてみたい。ロゼッタも熱砂の国の出身だよな?色々教えてくれ。」

ジャミル「わかりました。気に入っている店を、紹介しますよ」

ロゼッタ「私が過ごしていた年月はジャミル君たちに比べたら少ないですけど、精一杯紹介しますね。」

トレイ「あとは、リリアを誘ってるんだよな。誰を連れてくるかは聞いているのか?」

ケイト「当日までのお楽しみ……だってさ!社会勉強がどうとか言っていたなぁ」

ジャミル「リリア先輩と仲がいい人物となると、ディアソムニア寮の誰かだと思うが……」

カリム「それならシルバーを連れてくるんじゃないか?」

ケイト「きっとそうだよ。リリアちゃんって、シルバーくんを可愛がってるし~!社会勉強っていうのも納得できるよ。シルバーくんの教育係みたいなところあるじゃん?」

ケイトさんの話を聞いて納得する面々。だけど、私は何度考えてもシルバー君ではない気がしてしまう。

ジャミル「そのわりには、いつもデタラメな知識を教えている気がするが……」

カリム「たしかに、2人が一緒にいるとことを、よく見かけるもんな!」

ジャミル「ああ、そろそろ待ち合わせの時間だ。鏡の間に行きましょう。」

みんなで鏡の間に行くと、そこにはお義父様がいた。

ジャミル「おはようございます、学園長」

学園長「はい、おはようございます」

ジャミル「今日は闇の鏡を使わせてくれて、ありがとうございます」

カリム「ほんとほんと!助かったぜ!」

学園長「ほかならぬ娘の頼み。それにアジームくんの晴れ舞台でしょう?これくらいのお手伝いはしますよ。私、優しいので。お父上に、くれぐれもよろしくお伝えくださいね?それと、できればお土産も期待しています」

「お義父様ったら・・・」

監督生「もはや我欲と保身の権化ですよ」

学園長「さあ皆さん。おしゃべりはほどほどに。あまり『彼』を待たせては悪いですよ」

ジャミル「彼?ああ、リリア先輩か。先に着いていたんですね」

学園長「おや?来客はずっと前から、貴方たちのことを待っていたのはその通りですが……ヴァンルージュくんではありませんよ」

カリム「え?リリアじゃない?ってことはシルバーかな」

「もしかして……」

誰もが首を傾げる中、鏡の間に靴音が響く。

そして、その音と共に現れたのは――

マレウス「おはよう」

マレウス・ドラコニアさんだった。

彼の足元には、明らかに高級そうな革張りの旅行鞄があった。

ジャミル「マレウス先輩!?」

マレウス「これから熱砂の国へ行くのだろう?僕も同行させてもらう」

「「「「え―――っ!?」」」」

マレウスさんリリアさんとも仲がいいし、彼を連れていく可能性はあるのは当然のことだ。

ジャミル「リリア先輩、シルバーではなくて、マレウス先輩を誘ったのか!?」

ケイト「リリアちゃん、そうきたかー。これは予想外」

私以外は予想していなかったからか、みんなひどく戸惑っていた。
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