スケアリー・モンスターズ

ユウSIDE

会場のどこにもグリムがいなくて、なんとなくオンボロ寮まで来てしまった。

「グリム、どこに行っちゃったのかな」

さすがにここまで来ていないだろうと思い、踵を返した時だ。

マレウス「人の子よ、少しいいか?」

何故かツノ太郎が現れた。

「ツノ太郎、どうしたの?」

マレウス「1人でパーティー会場を出たのが見えたのでゆっくり話せる機会かと思ってな」

あー、そういえばハロウィーンウィークはかなり忙しかったから。

マレウス「お前に確認したいことがあるんだ」

「確認?」

マレウス「……ナイトレイヴンカレッジのハロウィーンは楽しかったか?」

ツノ太郎の質問に、私は察した。
彼はスタンプラリー会場をオンボロ寮にして、結果マジカルモンスターのせいで迷惑をかけたと思っていたのだろう。

でもマジカルモンスターはゴーストたちにも非があるし、うまく追い出せなかった自分にも責任はある。
なら、私の答えは当然これだ。

「とっても楽しかった。色々と大変だったけど……それでもこの7日間は素晴らしいものになったもん。私たちのオンボロ寮をスタンプラリー会場にしてくれてありがとう、ツノ太郎」

マレウス「そうか。それは……よかった」

私への答えに、ツノ太郎は安堵と嬉しさを滲ませた笑みを浮かべた。

マレウス「色々あったが……僕も、オンボロ寮で楽しいハロウィーンを過ごすことができた。寮を貸してくれた、つまり恩人たるお前はどうだったかと、気になっていたんだ。たった7日間だったが……今年のハロウィーンは、僕にとっても特別なものになった」

「それは私も同じ。この世界での初めてのハロウィーンが今年でよかった!」

そう言い合う私たちは、小さくも笑みを浮かべた。
ツノ太郎を見てふとあることを思いだした私は、スマホを取り出す。

「そういえばまだあなたと写真撮ってなかったね。一緒に撮らない?」

マレウス「マジカメに載せるのか?」

「ううん、これは現像して写真にする。大事な友人の写真くらい、マジカメに載せなくてもいいでしょ?」

マレウス「……そうだな。現像したら僕にもくれないか?」

「もちろん」

そもそも、私がマジカメに載せているのは自分で撮ったハロウィーン風景だけ。

エースたちと一緒に撮った写真は、後日 現像してアルバムに入れる。

みんなマジカメに載せてるだろうけど……この写真だけは、マジカメに載せたくなかった。

「じゃあいくよ。はい、チーズ!」

なるべく収まるようにスマホの角度に気を付けながらシャッターを下ろす。
画面にはブレなく綺麗に撮れた写真が表示され、私はほっと安堵の息を吐く。
ツノ太郎は満足そうにその写真を見ながら言った。

マレウス「どうか最後までハロウィーンを楽しんでくれ。ハッピーハロウィーン」

その合言葉と共に、ツノ太郎はいつものように消えてしまった。
相変わらず神出鬼没だ。でも、そういうところが彼らしい。

「ハッピーハロウィーン……ツノ太郎」

私も同じように合言葉を言うと、背後からデュースが呼ぶ声が聞こえた。

デュース「おーい、監督生!どこだ?グリムが見つかったぞ!」

デュースの呼び声に反応し、私はそっちへ走る。
戻った場所はパーティー会場で、グリムはヴィル先輩たちに囲まれていた。

デュース「ああ、監督生来たか」

「どういう状況?」

デュース「リーチ先輩とシェーンハイト先輩が捕まえてくれたんだ」

デュースの説明を聞いていると、横からジェイド先輩が言った。

ジェイド「グリムくん、ちょっと目を離した隙に、僕のお皿のカルパッチョを食べてしまったんです」

「ああ、いつものですか」

ヴィル「こんなにたくさんの料理があるのに、どうして人の皿の上にあるものをとろうとするの?」

グリム「テーブルの上にある食べ物より、人が持ってる食い物のほうがうまそうに見えるんだゾ」

ヴィル「最低の下をいくマナーね。監督生、連帯責任よ」

「嫌ですよ!罰受けるならグリムだけにしてください!」

そもそも、グリムにマナーを仕込むことなど至難の業。
連帯責任なんて心外だ。

ジェイド「悪い子ですね。カルパッチョの代わりにグリムくんを食べてしまいましょうか」

グリム「へん!そんなおどしオレ様には通用しないもんね。油断するほうが悪いんだゾ!」

「グリム、3ヶ月高級ツナ缶なし。それと、ロゼッタさんに抱き着くの1週間禁止」

「うっ……ふ、ふん!それくらい別にいいんだゾ!」

毎月一缶しか買わない高級ツナ缶が3ヶ月もない。それに、大好きなロゼッタさんに抱き着けない

いつもなら泣きながら謝るが、今回はそうならなかった。

グリム「にゃはっ。魔法の呪文『トリック・オア・トリート』で1ヶ月分のお菓子も集めたし……ああ~今日が終わって欲しくないんだゾ~~!」

グリムの中では高級ツナ缶よりハロウィーンのほうが勝っているらしく、今の様子を見てその場にいた全員が肩を竦めた。

ケイト「あっ、グリちゃん。それにみんなも。探したよ~」

ジェイド「おや、ケイトさん。それにゴーストさんたちではありませんか。僕たちになにか御用ですか?」

ケイト「ゴーストちゃんから、相談があるんだって♪」

「「「相談?」」」

全員が首を傾げていると、ゴーストたちはどこかもじもじしながら言った。

「えっと…………そのね…………」

「こんなに素敵なハロウィーンはわしらも長いゴースト生で初めてで……」

「ずっとずーっと先まで思い出せるようにどうしても形に残したいんだ。それで、ケー坊に相談したんだけど……」

「もし、嫌じゃなかったら、俺たちが写真に写るハロウィーンのうちに……マジカメに…………みんなとの集合写真を、アップにしてもいいかな?」

「「「……」」」
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