スケアリー・モンスターズ

ヴィルたちから離れた席では、他の3年生たちがいた。

ケイト「ねーイデアくん。その頭じゃ食事ムリじゃない?絶対とったほうがいいって」

イデア「いえ、拙者賑やかなハロウィーンでもう胸がいっぱいなんで。食事はいいんで」

リリア「そんなことを言って、本当は腹が減っておるのじゃろう?どれ、わしが兜の隙間から美味しそうなテリーヌをねじ込んでやろう」

イデア「結構です!兜があるから大勢の前でもなんとか平静を保ってられるんだ。放っておいてくれ!」

トレイ「2人とも、別に無理強いしなくても……」

イデアの兜を外そうとするケイトとリリアに、トレイが苦笑しながら間に入り止めようとした。
その時、ちょうどゲストたちがやってきた。

「あっ、植物園のスケルトンだ!」

ケイト「ん?」

ケイトが首を傾げた瞬間、イデアと一緒にゲストに取り囲まれた。

「スケルトンの仮装、怖くて、かっこよくて……最高でした!」

「私は図書館のプロジェクションマッピングが好き!家に帰ったら『パンプキン・ホロウ』見てみます」

「龍の迫力、ほんっとにすごかった!しかも最後のパレード……最高に盛り上がりました!」

「ナイトレイヴンカレッジのハロウィーン本当に面白かった!」

「絶対にまた遊びにきます!」

ケイト「あはは、そんなに目をキラキラさせることじゃないって~。大袈裟だなあ」

イデア「ふひひっ。なにそれ。“絶対”とかそんな簡単に言っちゃっていいんでござるか~?」

苦笑しながら謙遜するケイト、早口で語るイデア。
いつもらしくない2人の反応に、リリアがにやりと笑った。

リリア「2人とも…………さては照れておるな?」

ケイト「いやいや、そんなわけないじゃん!」

イデア「そうでござるよリリア氏!拙者そんなピュアじゃないですし」

必死に否定する2人にリリアはカラカラと笑う。

トレイ「ケイトはともかく、イデアは顔が見えないから照れ隠しなのかどうか俺には全然わからない」

?「そうだにゃあ。もっと歌い出すぐら喜びゃあーいいのに」

トレイ「ははは。歌はやりすぎだけど……ってチェーニャ!?いつの間に来てたんだ!?」

幼馴染みの顔が宙に浮いているのを見て、トレイは思わず飛びのく。
その様子をチェーニャは笑いながら見つめ、すぐに透明にしていた身体を出す。

チェーニャ「おみゃーらがマジカメで随分噂になってたもんで遊びにきたがね」

トレイ「お前……ロイヤルソードアカデミーの奴が来てるってバレたら、また騒ぎになるぞ」

チェーニャ「だいじょーぶだいじょーぶ。こんなにたくさん人がいるんだし、バレやしにゃーよ」

そもそも、ロイヤルソードアカデミーもハロウィーンをやっているのではと思うが、この幼馴染みにそれすら意味がないことを知っているトレイはため息を吐いた。
その横では再びイデアの兜を外そうと騒いでいた。

ケイト「イデアくん、兜外してよ。やっぱ顔が見えてないのフェアじゃないでしょ」

イデア「やめてくだされー!引っ張らないでくだされー!ケイト氏だってベール着用ではござらんか~!」

リリア「賑やかじゃのう。やはりハロウィーンはこうでないと」

騒ぎ出すケイトとイデアを楽しそうに見つめるリリア。
その時、周囲にマレウスがいないことに気付いた。

リリア「ん?そういえば会場のどこにもマレウスが見当たらん。さっきまではヴィルたちと一緒にいたようじゃが……一体どこに行ってしもうたんじゃろうか」

『――それは少し野暮ってものだよ♪』

背後から声をかけられ振り返ると、左手にトマトジュース、右手にシードルを持ったジャック・オ・ランタンが立っていた。

リリアはジャック・オ・ランタンの顔を見て、小さく笑いトマトジュースを受け取った。

リリア「なんじゃ。お主はマレウスはどこに行ったのか知っとるのか?」

ランタン『うん。あの子たちは、ちょっとした逢引きをしにいったよ♪。すぐ戻ってくる』

リリア「そうか!なら安心じゃ」

そう言いながらトマトジュースを飲んだリリアは、優雅にシードルを飲むランタンに言った。

リリア「……正門でも騒ぎ、お主のせいじゃろ?」

ランタン『君も知ってたの?さっきクロウリーに見つかって、あやうく説教されそうになっちゃった。マジカルモンスターを追い出したんだから別にいいじゃん、相変わらずケチなカラスだよ』

リリア「くふふ、お主も相変わらずで安心したわ」

ランタン『お互いね』

そう言いながら、2人は笑いながらグラスを合わせた。
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