スケアリー・モンスターズ
3年生のテーブルでは、ルークがいつものようにヴィルと一緒にいた。
ルーク「キミにふさわしい、美しいハロウィーンだね。ヴィル!」
ヴィル「……正直ホッとしてるわ。グレート・セブンの像が倒されてしまった時……もう楽しいハロウィーンは迎えられないかもしれない、と思った。運営委員長として、どうにか挽回しないとって……結構焦ってたの。アンタ、気づいていたんでしょう?ルーク」
ルーク「オーララ。キミがそんな弱気になっていたなんて全く気付きもしなかったよ。……でも、どんな逆境でもくじけずに立ち上がるキミは、とても眩しいね」
「あのー……」
すっかり2人の世界を作っていると、女性を連れた男性が遠慮がちに声をかけてくる。
「ん?」
「お話し中にすみません。俺たち、シェーンハイトさんが子役をしてた頃からの大ファンで……スタンプラリー中は勇気が出なくて声をかけられなかったんですけど、その……その……」
「……しゃ、写真!!!一緒に撮ってもらえませんか!?」
緊張気味で話す2人に、ヴィルは微笑ましいものを見る目をしながら頷いた。
ヴィル「ふふっ。もちろん」
「わああ、やったあ!」
ルーク「勇気を出して憧れのヴィルに声をかける初々しさ……美しさに心が震える光景だ!」
ヴィル「本物のアタシのファンは、みんな礼儀正しいの。それに、年に一度のハロウィーンパーティー。ゲストにはとびきりサービスしてあげないと」
そう言いながら周囲を見渡したヴィルは、ある人物達を見てにやりと笑った。
ヴィル「……向こうのテーブルに、マレウスがいるわね」
ルーク「反対方向にはレオナくんとロゼッタちゃんもいるよ!」
2人がそう会話していたのが聞こえたのか、マレウスは小首を傾げ、レオナは面倒臭そうに顔を歪ませた。
マレウス「ん?僕を呼んだか」
レオナ「うるせぇのに見つかった……」
ロゼッタ「そんな風に言わないでください。」
レオナ「・・・」
ヴィル「記念撮影よ。アンタたちも入りなさい」
有無を言わせない口調で言うと、近くにいたゲストは目を大きく見開いた。
「えっ!世界で五本指に入るって魔法士のマレウス・ドラコニアさん!?」
「こっちの獣人属の生徒さんと隣にいる女性もマジフト大会の中継で見たことある!こんな有名魔法士さんたちと写真なんて……いいんでしょうか……!」
マレウス「いいぞ。僕と共に写真を写ることを許そう」
萎縮するゲストに対してマレウスがそう言うと、レオナは鼻で笑う。
レオナ「ハッ。偉そうにしやがって。声をかけてもらえたのがそんなに嬉しかったのか?」
マレウス「……ただ僕が写ればキングスカラーが霞んで見えなくなってしまうかもしれないが、大丈夫か?」
レオナ「心配なら隅っこで小さくなってろよ。テメェの邪魔な角のせいで写真の収まりが悪くなるからなァ」
ロゼッタ「お二人とも…」
ヴィル「……ルーク、撮ってくれない?このままじゃいつまで経っても終わらない」
いつもように喧嘩し始めた2人。焦っているロゼッタをよそ眼にヴィルは慣れた様子でルークに言った。
ルーク「ウィ。任せてくれたまえ。キミ、スマホを貸してくれるかい?」
「はい!」
ルーク「いくよ。キュイキュイ!」
ルークの合図と共にシャッターが鳴り、ヴィルとマレウスはポーズを取った。レオナもロゼッタの笑顔につられ、しぶしぶポーズをとった。
ルーク「……うん、ボーテ!今にも画面から飛び出しそうなくらい、楽しそうな瞬間が撮れた」
「「わあ、ありがとうございます!」」
ルークの撮った写真を見て嬉しそうにするゲストを見て、マレウスは小さく笑う。
マレウス「こんなに喜んでもらえるならマジカメも悪くはない」
レオナ「そんなこと言って、お前相当キレてたらしいな。『ドラコニアチャレンジ』だったか?ははは、ぜひ拝んでみたかったぜ」
ロゼッタ「あ‥あの」
再び喧嘩が勃発しかけた時、レオナの式典服から着信音が鳴り響いた。
ヴィル「レオナ、さっきからずっとスマホが鳴ってる」
レオナ「チッ……実家からだ。“アイツ”、一日中かけてきやがる」
ヴィル「ご実家?急用だから何度もかけてきてるんでしょう。さっさと出たらどう?」
ロゼッタ「出てあげてください。ね?」
レオナ「………………ハァ~~~…………………………」
何も知らないヴィルの催促とロゼッタの可愛らしさにに深いため息を吐きながら、レオナは堪忍したようにスマホの着信ボタンをタップした。
『おじた―――ん!!!!!』
レオナ「うるせっ……。おいチェカ、1日に何度も何度も電話をかけてくるな」
ロゼッタ「チェカ君!」
電話の相手はレオナの予想通り、チェカだった。
開口一番の大声を聞いて顔をしかめるが、向こうは気にせず話を続けた。
チェカ『今日はハロウィーンだから特別にお電話していいって、お父様が!おねーたんも近くにいるんだね!!』
レオナ「なんだその理屈は……。俺とロゼッタは今、忙しい。なんの用だ」
チェカ『ハッピーハロウィーン!!』
レオナ「………………………………用事はそれだけか?」
チェカ『えっ大事なことだよ。このご挨拶は、今日だけのとくべつなんだよ!』
わざわざ挨拶のためだけに何度も電話をかけてきた甥に心底呆れながら、レオナは早口で言った。
レオナ「………………。おっと、悪い。お前の声がよく聞こえない。ゴーストが電波にいたずらしてるらしい。ハロウィーンだからな」
チェカ『え?え?おじたん?』
レオナ「名残惜しいが、今日はここまでだ。あばよチェカ。ハッピーハロウィーン。ほら、ロゼッタも言え」
ロゼッタ「あ・・ハッピーハロウィン!!チェカ君」
そうして、レオナは電話を切った。
ルーク「どうしたんだい、獅子の君ロア・ドゥ・レオン。苦虫を噛み潰したような顔をして」
レオナ「うるせぇ。俺はもう帰る。あとはテメェらで好きなようにやれ」
ロゼッタ「あ…レオナさん待ってください!・・・すみません。失礼します」
そう言ってレオナはパーティー会場へ出て行ってしまった。それを追いかけるようにロゼッタも出ていった。
ルーク「おやおや。獅子の君ロア・ドゥ・レオンは気まぐれなことだね」
ヴィル「気を悪くしないで。アイツ以外のうちの生徒はもっと優雅で品があるの」
「いえ!一緒に写真を撮ってもらえてとっても嬉しかったです」
「宝物にします。ありがとうございました!」
そう説明するヴィルに、ゲストたちは首を横に振った後頭を下げる。
その時、誰も気付かなかった。
さっきまでいたマレウスが、見覚えのあるシルバーグレーの髪を見つけて、その後を追うために消えたことに。
ルーク「キミにふさわしい、美しいハロウィーンだね。ヴィル!」
ヴィル「……正直ホッとしてるわ。グレート・セブンの像が倒されてしまった時……もう楽しいハロウィーンは迎えられないかもしれない、と思った。運営委員長として、どうにか挽回しないとって……結構焦ってたの。アンタ、気づいていたんでしょう?ルーク」
ルーク「オーララ。キミがそんな弱気になっていたなんて全く気付きもしなかったよ。……でも、どんな逆境でもくじけずに立ち上がるキミは、とても眩しいね」
「あのー……」
すっかり2人の世界を作っていると、女性を連れた男性が遠慮がちに声をかけてくる。
「ん?」
「お話し中にすみません。俺たち、シェーンハイトさんが子役をしてた頃からの大ファンで……スタンプラリー中は勇気が出なくて声をかけられなかったんですけど、その……その……」
「……しゃ、写真!!!一緒に撮ってもらえませんか!?」
緊張気味で話す2人に、ヴィルは微笑ましいものを見る目をしながら頷いた。
ヴィル「ふふっ。もちろん」
「わああ、やったあ!」
ルーク「勇気を出して憧れのヴィルに声をかける初々しさ……美しさに心が震える光景だ!」
ヴィル「本物のアタシのファンは、みんな礼儀正しいの。それに、年に一度のハロウィーンパーティー。ゲストにはとびきりサービスしてあげないと」
そう言いながら周囲を見渡したヴィルは、ある人物達を見てにやりと笑った。
ヴィル「……向こうのテーブルに、マレウスがいるわね」
ルーク「反対方向にはレオナくんとロゼッタちゃんもいるよ!」
2人がそう会話していたのが聞こえたのか、マレウスは小首を傾げ、レオナは面倒臭そうに顔を歪ませた。
マレウス「ん?僕を呼んだか」
レオナ「うるせぇのに見つかった……」
ロゼッタ「そんな風に言わないでください。」
レオナ「・・・」
ヴィル「記念撮影よ。アンタたちも入りなさい」
有無を言わせない口調で言うと、近くにいたゲストは目を大きく見開いた。
「えっ!世界で五本指に入るって魔法士のマレウス・ドラコニアさん!?」
「こっちの獣人属の生徒さんと隣にいる女性もマジフト大会の中継で見たことある!こんな有名魔法士さんたちと写真なんて……いいんでしょうか……!」
マレウス「いいぞ。僕と共に写真を写ることを許そう」
萎縮するゲストに対してマレウスがそう言うと、レオナは鼻で笑う。
レオナ「ハッ。偉そうにしやがって。声をかけてもらえたのがそんなに嬉しかったのか?」
マレウス「……ただ僕が写ればキングスカラーが霞んで見えなくなってしまうかもしれないが、大丈夫か?」
レオナ「心配なら隅っこで小さくなってろよ。テメェの邪魔な角のせいで写真の収まりが悪くなるからなァ」
ロゼッタ「お二人とも…」
ヴィル「……ルーク、撮ってくれない?このままじゃいつまで経っても終わらない」
いつもように喧嘩し始めた2人。焦っているロゼッタをよそ眼にヴィルは慣れた様子でルークに言った。
ルーク「ウィ。任せてくれたまえ。キミ、スマホを貸してくれるかい?」
「はい!」
ルーク「いくよ。キュイキュイ!」
ルークの合図と共にシャッターが鳴り、ヴィルとマレウスはポーズを取った。レオナもロゼッタの笑顔につられ、しぶしぶポーズをとった。
ルーク「……うん、ボーテ!今にも画面から飛び出しそうなくらい、楽しそうな瞬間が撮れた」
「「わあ、ありがとうございます!」」
ルークの撮った写真を見て嬉しそうにするゲストを見て、マレウスは小さく笑う。
マレウス「こんなに喜んでもらえるならマジカメも悪くはない」
レオナ「そんなこと言って、お前相当キレてたらしいな。『ドラコニアチャレンジ』だったか?ははは、ぜひ拝んでみたかったぜ」
ロゼッタ「あ‥あの」
再び喧嘩が勃発しかけた時、レオナの式典服から着信音が鳴り響いた。
ヴィル「レオナ、さっきからずっとスマホが鳴ってる」
レオナ「チッ……実家からだ。“アイツ”、一日中かけてきやがる」
ヴィル「ご実家?急用だから何度もかけてきてるんでしょう。さっさと出たらどう?」
ロゼッタ「出てあげてください。ね?」
レオナ「………………ハァ~~~…………………………」
何も知らないヴィルの催促とロゼッタの可愛らしさにに深いため息を吐きながら、レオナは堪忍したようにスマホの着信ボタンをタップした。
『おじた―――ん!!!!!』
レオナ「うるせっ……。おいチェカ、1日に何度も何度も電話をかけてくるな」
ロゼッタ「チェカ君!」
電話の相手はレオナの予想通り、チェカだった。
開口一番の大声を聞いて顔をしかめるが、向こうは気にせず話を続けた。
チェカ『今日はハロウィーンだから特別にお電話していいって、お父様が!おねーたんも近くにいるんだね!!』
レオナ「なんだその理屈は……。俺とロゼッタは今、忙しい。なんの用だ」
チェカ『ハッピーハロウィーン!!』
レオナ「………………………………用事はそれだけか?」
チェカ『えっ大事なことだよ。このご挨拶は、今日だけのとくべつなんだよ!』
わざわざ挨拶のためだけに何度も電話をかけてきた甥に心底呆れながら、レオナは早口で言った。
レオナ「………………。おっと、悪い。お前の声がよく聞こえない。ゴーストが電波にいたずらしてるらしい。ハロウィーンだからな」
チェカ『え?え?おじたん?』
レオナ「名残惜しいが、今日はここまでだ。あばよチェカ。ハッピーハロウィーン。ほら、ロゼッタも言え」
ロゼッタ「あ・・ハッピーハロウィン!!チェカ君」
そうして、レオナは電話を切った。
ルーク「どうしたんだい、獅子の君ロア・ドゥ・レオン。苦虫を噛み潰したような顔をして」
レオナ「うるせぇ。俺はもう帰る。あとはテメェらで好きなようにやれ」
ロゼッタ「あ…レオナさん待ってください!・・・すみません。失礼します」
そう言ってレオナはパーティー会場へ出て行ってしまった。それを追いかけるようにロゼッタも出ていった。
ルーク「おやおや。獅子の君ロア・ドゥ・レオンは気まぐれなことだね」
ヴィル「気を悪くしないで。アイツ以外のうちの生徒はもっと優雅で品があるの」
「いえ!一緒に写真を撮ってもらえてとっても嬉しかったです」
「宝物にします。ありがとうございました!」
そう説明するヴィルに、ゲストたちは首を横に振った後頭を下げる。
その時、誰も気付かなかった。
さっきまでいたマレウスが、見覚えのあるシルバーグレーの髪を見つけて、その後を追うために消えたことに。