スケアリー・モンスターズ

「嘘……ハートの女王の石像がずれてる!?」

「「ぎくっ!」」

月の魔女のゴーストの言葉にマジカルモンスターたちは肩を震わせる。
最初見た時にちゃんと戻したと思っていたが、どうやら位置がずれていたようだ。

「ちょっと!なんでちゃんと戻さないの!?」

「まさかズレに気付くとは思わなかったんだ!俺は悪くない!」

小声でそう話していると、魔女はカツン!とヒールと石畳を叩く。
その音に釣られるように、ゴースト3体と同じとんがり帽子を被ったモンスターが現れた。

「どうしたんだい、月の魔女様!」

「誰かがハートの女王の石像を動かした。彼女たちの石像に触れるなんて……許し難いわ。万死に値する。あなたたち、不届き者を探しなさい。きっとまだこの近くにいるはずだわ」

「見つけたらどうするんだい?」

「決まっているわ。――私のハロウィーンを台無しにしたことを死ぬほど後悔させてあげるのよ」

ぞっとする冷たい声に、マジカルモンスターたちは震え始める。
そのまま捜索し始めたゴーストとモンスターたちに、2人は小声で話す。

「どうしよう!?私たち、このまま魔女に殺されちゃうの!?」

「とにかく早くここから離れよう!学園の外に出れば、きっと……」

そう言って逃げようとした瞬間、マジカメモンスターたちの目の前が青い炎で包まれる。

「見ぃ~~つぅ~~けぇ~~たぁ~~ゾォォォ~~~~!」

「「ぎゃ―――――!!」」

「オマエら、ここにいたんだゾ!」

「なんだと!?」

「捕まえろ!捕まえろ!」

「月の魔女様の前に突き出すのじゃ!」

モンスターの一言にゴーストたちが集まり、マジカルモンスターたちは一斉に逃げ出す。

「どこへ行くんだい~!?」

「月の魔女様のところへお連れしろ!」

「月の魔女様は大変お怒りじゃ!早く見つけ出せ!」

ゴーストたちが獲物を追い込むように声を張り上げ、マジカメモンスターたちを探す。
メインストリート中を駆け回る彼らの目の縁には、大粒の涙が浮かび始めていた。

「こっちはダメ!ゴーストがいるよ!」

「あ、あっち正門だ!あっちに行けば逃げれるぞ!」

見えてきた正門を見て、マジカルモンスターたちは逃げれたと思った。
直後、そばに植えていた林檎の木が動きだし、そのまま彼らの首元を持ちあげた。

「う、うわあっ!?」

「り、林檎の木が勝手に!?イヤ、離して!」

宙を浮いたマジカメモンスターたちは逃げようともがくが、抵抗虚しくリレーのバトンのように別の木にパスされる。
そして、メインストリートのグレート・セブンの像が並ぶ場所で彼らの身体は石畳の上に投げ落とされる。

「……これが、その不届き者なの?」

「ああ、そうなんだゾ」

頭上で月の魔女のゴーストの声がした。
目線の先には彼女が履いている黒いヒールがあり、マジカルモンスターたちはガタガタと震える。

「私の姿を見ただけでなく、せっかくの墓参りとハロウィーンを台無しにするなんて……なんて重罪人なのかしら。ハートの女王なら問答無用で打ち首でしょうね」

世間話のように言いながら、月の魔女のゴーストはくすりと笑った。

「でも……そうね。いつもならここでおもちゃにして捨てるけど、今年は少し趣向を変えましょうか」

月の魔女のゴーストが指を鳴らす。
直後、消えていたランタンと蝋燭の明かりが灯り、そして――

「この愚か者たちは、私が直々に手を下す!我が怒り、その骨身に染みるまで教えてあげる!!」

「「うわ―――!!魔女の怒りだ――――――!!!」」

「Boo!」

月の魔女のゴースト――ユウの言葉に、マジカルモンスターたちの泣き叫ぶ声はメインストリートだけでなくナイトレイヴンカレッジ中に響き渡った。

メインストリートに現れたマジカルモンスターたち。
それをおどかしている私たちに、彼らはすっかりへっぴり腰だ。

「ゴーストにも生者にも迷惑をかける……」

「愚かな『マジカメモンスター』めええぇぇ!」

「ひいい!ゴーストに囲まれた……!」

ゴーストたちに囲まれたマジカメモンスターたち。
怯えたその顔を見ながら、ゴーストたちは言った。

「お前さんたちには、特別なハロウィーンをプレゼントしてやるぅ……」

「と、特別なハロウィーンって……?」

「ヒーッヒッヒ……それはねぇ……」

「「「お前ら自身が……………………ゴーストになるのさぁ!Boo!!」

「「ぎゃ――――!!!!!」」

本物のゴーストのおどかしは、さすがのマジカルモンスターたちも効いたようで。

「た、助けてくれぇ~~~!」

情けない悲鳴をあげながら、マジカルモンスターたちはメインストリートを離れる。

「「「……」」」

それを見送って、人気がいなくなった直後、

「……にゃはっ。にゃはは!にゃ――はっはっは!!!!」

グリムが我慢できずに高笑いした。

「ついに!ついに、マジカメモンスターを……みーんな追い払ったんだぞ~~~!!!」

「「「いぇーい!!」

「みんな、お疲れ様!」

「これでハロウィーンが楽しめるね」

「ロゼッタちゃんの体調がよくなるといいね…」

「そうだね・・・」
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