スケアリー・モンスターズ
メインストリート。
グレート・セブンの像が並ぶそこで、ゲストたちが現れる。
「来たぜ、メインストリート!やっぱグレート・セブンの像は映えるわ~」
「ここで石像と同じポーズした写真もバズってたし、ウチらもここで写真撮ろうよ!」
「いいねぇ~。んじゃ、ちょっと石像をどかして……」
ゲストの1人が石像に触れようとしたが、近くに『石像に触れないでください』の注意書きがあった。
「石像に触れるなって……でも、どかさないと写真撮れないよ」
「危ないってのならわかるけどさあ……」
そこまで言うと、ゲストたちはきょろきょろと周囲を見渡し、人がいないことを確認する。
「……ささっと撮って、ささっと戻せば平気じゃない?」
「それもそうだな。よっしゃ、俺の魔法で簡単にどかしてやる」
男のほうが魔法をかじっているのか、よく見る浮遊魔法を使ってハートの女王に石像をどかす。
そして一緒にハートの女王のポーズを取るのを、私たちは林檎の木々の中から見ていた。
「マジカルモンスター確定。前の人も魔法使えた人がいたのかな?」
「そんなことよりアイツらを追い出すのが先なんだゾ!」
「そうだね。今回は僕たちも許せないからね」
ぷりぷり怒っているグリムはいいとしても、普段あまり怒らないゴーストたちも顔が険しい。
まあ、あそこまで迷惑かけられたのだ。怒るのは当然だ。
「……さて、じゃあそろそろオンボロ寮プレゼンツのハロウィーンをしようか。ロゼッタさんのためにも必ず成功させよう!みんな、準備はいい?」
「「「おう!」」」
私の号令にみんなが返事する。そして、頭に乗せた“とんがり帽子”を目深く被り細く笑む。
……さて。今日一番の恐怖をあげるから覚悟しろ、マジカルモンスターたち!!
ハートの女王の像をどかし、写真を撮ったマジカメモンスターたち。
魔法で元の位置に戻し、マジカメにさっき撮った写真を上げる。
「おっ、さっそくいいねがついた」
「やっぱりグレート・セブンのポーズはバズるね~」
そう言いながら帰ろうとした時、ふっとメインストリートに飾られているランタンと蝋燭の火が消える。
「きゃっ!何?」
「火が消えたみたいだな……」
片割れが怯えるのを宥めていると、上空でふよふよと浮いているものを見つける。
それはマジカメで何度も見たゴーストたち。
「急げ。急げ。早くここから離れないと」
「ああ、もうすぐ魔女が来ちまうよ」
「彼女の邪魔はいかんぞ。怒りに触れてしまう」
ゴーストたちは口々にそう言うと、下で呆然とするマジカメモンスターたちに近寄り言った。
「お前さんたち、なんでここにいるんだい!?早く帰らないと!」
「え、帰るってなんで?」
「なんで?そんなの伝説の月の魔女様がくるからじゃ!」
「月の魔女……?」
初めて聞く名前に首を傾げるマジカルモンスターたちに、ゴーストたちは説明する。
「かつて、このツイステッドワンダーランドにいた魔女じゃ。彼女はグレート・セブンと関りがあり、あの茨の魔女とやり合えるほどの強者じゃった」
「だけど、彼女はグレート・セブンと色々とあったらしくてね……別れてから一度も会ってないんだ」
「そんな彼女も死んでしまい、毎年ハロウィーンになると墓参りとしてこのメインストリートに出てくる。これはナイトレイヴンカレッジだけでなく賢者の島でも常識となっている」
「……でも墓参りしに来るだけでしょ?それでなんで帰らないといけないの?」
マジカルモンスターたちの質問に、一番細いゴーストが答える。
「彼女は墓参りだろうと他の誰かに自分の姿を見せられるのを嫌うんじゃ。メインストリートに鼻歌がきこえてきたら、それは月の魔女様が来た合図じゃ」
「もし、彼女の姿を一度でも目にしてしまったら……どうなるんだろうね~?」
「噂じゃ何人もの生徒が消えたと聞いたなあ。きっと月の魔女様のおもちゃにされたんだろうね。それも、壊れるまで……ね」
「ああ、恐ろしい!恐ろしすぎて笑いがこみあげてしまう!」
「「「イーッヒッヒッヒ!!」」」
ゴーストたちは一緒に笑うと、そのまま消えてしまう。
その話を聞いたマジカメモンスターたちは、顔を青くしながら見合わせる。
「ど……どうする!?」
「どうするって、そんなの早く帰るに決まってるだろ!」
ゴーストの語り口調が怖すぎたのか、マジカルモンスターたちは急いでメインストリートから出ようとする。
しかし・・・・・
「~♪」
鼻歌が聞こえてくる。
例のゴーストが来たと悟った2人は、さらに顔を青くする。
「き、来た!?早くない!?」
「と、とりあえず隠れるぞ!」
急いでリンゴの木に隠れてこっそり覗くと、そこには黒い薔薇を7本持った魔女が歩いていた。
黒髪をなびかせ、黒いワンピースと黒いハイヒール、そしてとんがり帽子を被った魔女は静かに歌い始める。
「『厳格』のハートの女王。法律違反は許さない、破った子はみんなそろって打ち首よ。
『不屈』の百獣の王。ハイエナと一緒に荒野を駆けろ、獲物は喉元を狙ってひとがぶり。
『慈悲』の海の魔女。お願いごとは彼女におまかせ、お代は高くても文句はダメよ。
『熟慮』の砂漠の魔術師。知略が欲しければお尋ねになって、どんなペテンも見破ってみせる。
『奮励』の美しき女王。世界一の美しさを目指すわ、ライバルには毒林檎をおひとつどうぞ。
『勤勉』の死者の国の王。死者は全て彼の手の中、悪人には永遠の苦しみを。
『高尚』の茨の魔女。妖精たちの女王様、ドラゴンになってあらゆるものを焼き払え」
それは月虹魔女のゴーストが作った、グレート・セブンの歌。(実際には、ランタンから聞いたのをそのまま使っている)
軽快なステップを踏んで、彼女は薔薇を石像の前に添える。
しかし、ハートの女王の石像の前でピタリと動きを止めた。
グレート・セブンの像が並ぶそこで、ゲストたちが現れる。
「来たぜ、メインストリート!やっぱグレート・セブンの像は映えるわ~」
「ここで石像と同じポーズした写真もバズってたし、ウチらもここで写真撮ろうよ!」
「いいねぇ~。んじゃ、ちょっと石像をどかして……」
ゲストの1人が石像に触れようとしたが、近くに『石像に触れないでください』の注意書きがあった。
「石像に触れるなって……でも、どかさないと写真撮れないよ」
「危ないってのならわかるけどさあ……」
そこまで言うと、ゲストたちはきょろきょろと周囲を見渡し、人がいないことを確認する。
「……ささっと撮って、ささっと戻せば平気じゃない?」
「それもそうだな。よっしゃ、俺の魔法で簡単にどかしてやる」
男のほうが魔法をかじっているのか、よく見る浮遊魔法を使ってハートの女王に石像をどかす。
そして一緒にハートの女王のポーズを取るのを、私たちは林檎の木々の中から見ていた。
「マジカルモンスター確定。前の人も魔法使えた人がいたのかな?」
「そんなことよりアイツらを追い出すのが先なんだゾ!」
「そうだね。今回は僕たちも許せないからね」
ぷりぷり怒っているグリムはいいとしても、普段あまり怒らないゴーストたちも顔が険しい。
まあ、あそこまで迷惑かけられたのだ。怒るのは当然だ。
「……さて、じゃあそろそろオンボロ寮プレゼンツのハロウィーンをしようか。ロゼッタさんのためにも必ず成功させよう!みんな、準備はいい?」
「「「おう!」」」
私の号令にみんなが返事する。そして、頭に乗せた“とんがり帽子”を目深く被り細く笑む。
……さて。今日一番の恐怖をあげるから覚悟しろ、マジカルモンスターたち!!
ハートの女王の像をどかし、写真を撮ったマジカメモンスターたち。
魔法で元の位置に戻し、マジカメにさっき撮った写真を上げる。
「おっ、さっそくいいねがついた」
「やっぱりグレート・セブンのポーズはバズるね~」
そう言いながら帰ろうとした時、ふっとメインストリートに飾られているランタンと蝋燭の火が消える。
「きゃっ!何?」
「火が消えたみたいだな……」
片割れが怯えるのを宥めていると、上空でふよふよと浮いているものを見つける。
それはマジカメで何度も見たゴーストたち。
「急げ。急げ。早くここから離れないと」
「ああ、もうすぐ魔女が来ちまうよ」
「彼女の邪魔はいかんぞ。怒りに触れてしまう」
ゴーストたちは口々にそう言うと、下で呆然とするマジカメモンスターたちに近寄り言った。
「お前さんたち、なんでここにいるんだい!?早く帰らないと!」
「え、帰るってなんで?」
「なんで?そんなの伝説の月の魔女様がくるからじゃ!」
「月の魔女……?」
初めて聞く名前に首を傾げるマジカルモンスターたちに、ゴーストたちは説明する。
「かつて、このツイステッドワンダーランドにいた魔女じゃ。彼女はグレート・セブンと関りがあり、あの茨の魔女とやり合えるほどの強者じゃった」
「だけど、彼女はグレート・セブンと色々とあったらしくてね……別れてから一度も会ってないんだ」
「そんな彼女も死んでしまい、毎年ハロウィーンになると墓参りとしてこのメインストリートに出てくる。これはナイトレイヴンカレッジだけでなく賢者の島でも常識となっている」
「……でも墓参りしに来るだけでしょ?それでなんで帰らないといけないの?」
マジカルモンスターたちの質問に、一番細いゴーストが答える。
「彼女は墓参りだろうと他の誰かに自分の姿を見せられるのを嫌うんじゃ。メインストリートに鼻歌がきこえてきたら、それは月の魔女様が来た合図じゃ」
「もし、彼女の姿を一度でも目にしてしまったら……どうなるんだろうね~?」
「噂じゃ何人もの生徒が消えたと聞いたなあ。きっと月の魔女様のおもちゃにされたんだろうね。それも、壊れるまで……ね」
「ああ、恐ろしい!恐ろしすぎて笑いがこみあげてしまう!」
「「「イーッヒッヒッヒ!!」」」
ゴーストたちは一緒に笑うと、そのまま消えてしまう。
その話を聞いたマジカメモンスターたちは、顔を青くしながら見合わせる。
「ど……どうする!?」
「どうするって、そんなの早く帰るに決まってるだろ!」
ゴーストの語り口調が怖すぎたのか、マジカルモンスターたちは急いでメインストリートから出ようとする。
しかし・・・・・
「~♪」
鼻歌が聞こえてくる。
例のゴーストが来たと悟った2人は、さらに顔を青くする。
「き、来た!?早くない!?」
「と、とりあえず隠れるぞ!」
急いでリンゴの木に隠れてこっそり覗くと、そこには黒い薔薇を7本持った魔女が歩いていた。
黒髪をなびかせ、黒いワンピースと黒いハイヒール、そしてとんがり帽子を被った魔女は静かに歌い始める。
「『厳格』のハートの女王。法律違反は許さない、破った子はみんなそろって打ち首よ。
『不屈』の百獣の王。ハイエナと一緒に荒野を駆けろ、獲物は喉元を狙ってひとがぶり。
『慈悲』の海の魔女。お願いごとは彼女におまかせ、お代は高くても文句はダメよ。
『熟慮』の砂漠の魔術師。知略が欲しければお尋ねになって、どんなペテンも見破ってみせる。
『奮励』の美しき女王。世界一の美しさを目指すわ、ライバルには毒林檎をおひとつどうぞ。
『勤勉』の死者の国の王。死者は全て彼の手の中、悪人には永遠の苦しみを。
『高尚』の茨の魔女。妖精たちの女王様、ドラゴンになってあらゆるものを焼き払え」
それは月虹魔女のゴーストが作った、グレート・セブンの歌。(実際には、ランタンから聞いたのをそのまま使っている)
軽快なステップを踏んで、彼女は薔薇を石像の前に添える。
しかし、ハートの女王の石像の前でピタリと動きを止めた。