スケアリー・モンスターズ
イグニハイド寮スタンプラリー会場・図書室。
エントランスホールは夜ということもあり日中よりも不気味さが伝わってくる。
青い光もその不気味さを際立たせている中、ゲストたちはエントランスホールの椅子に腰かけていた。
「ナイトレイヴンカレッジ、マジ広いわー。たくさん歩いてもうお腹ペコペコ」
「プロジェクションマッピングが始まるまで座ってお菓子食おうぜ!」
「おっ、いいねぇ。喉も乾いたしジュースも飲もーっと」
そう言いながらゲストたちはお菓子を食べ始め、ジュースも豪快に飲む。
「お兄さんたち、こんばんは!」
彼らが食事を始めた時、オルトが笑顔で出迎えた。
「ん?なんだこの子。仮装して学校に遊びにきてるのかな」
「こんばんは~。君もお菓子食べる?ポテチに、ポップコーン、チョコレートもあるよ」
「でも……図書館でご飯を食べるのは禁止されてるんだよ。ほら、看板に書いてある」
オルトが指をさした先には、『飲食禁止』の注意書き。
それを見たゲストたちは軽く笑いながら言った。
「飲食禁止って言われてもさあ……。こんなにたくさんテーブルと椅子があるしちょっと俺らが使っても問題ないよ!」
「そーそー!むしろスペースを有効活用したほうが学校もハッピーになるって!ははは!」
「でも……『パンプキン騎士』に呪われちゃうかもよ?」
ゲストたちが笑っていると、オルトが困った顔をしながら言う。
『パンプキン騎士』という単語に、2人は首を傾げた。
「『パンプキン騎士』?なんだそれ」
「……あ、俺それ聞いたことあるかも。映画のキャラクターじゃね?」
「そう!映画『パンプキン・ホロウ』に出てくるこわーいゴーストの名前!お兄さん『パンプキン・ホロウ』を知ってるの!?」
オルトが目を輝かせながら問うが、ゲストはけらけら笑いながら言った。
「おー、まあな!ありきたりなストーリーの上に特撮はチープで全然怖くない子どもだまし。ホラーを名乗るにしてはコミカルすぎて全体的に残念すぎる、見る価値なしの三流映画!……ってヤツっしょ?」
ゲストのその言葉に、オルトの顔が険しくなる。
しかしそれに気付かないまま、ゲストたちは話で盛り上がる。
「お前超詳しいじゃん!俺、聞いたこともねえわ。映画好きなんだ?」
「いやあ、実は俺……結構オタクでさあ~?マニアックな映画とか詳しいんだよね。ま、『パンプキン・ホロウ』の映画自体は見たことないんだけど」
「えっ?映画は見たことない?」
「うん。でもレビューサイトであらすじ読んだし見たようなもんでしょ」
「……」
映画自体見ていないのに酷評したゲストに、オルトは無言で黙り込む。
しかしそこには普段の優しい眼差しはなく、純粋な怒りが宿っていた。
その光景をイデアと寮生たちは物陰で見ていた。
「図書館でお菓子をむしゃむしゃ。ジュースをごくごく。注意されてもしらんぷり。はーい。マジカメモンスターさん乙でーす」
マジカメモンスター認定されたゲストを見ながら、イデアはオルトと同じように目に怒りを宿しながら言った。
「あの態度も相当腹立つけどさあ、なにより許し難いのは……『パンプキン・ホロウ』を『見る価値なしの三流映画』呼ばわりだと!?テンポの良い会話と恐怖シーンの配分が絶妙で老若男女におすすめできるストーリーじゃないか!
それに特撮映画は手作り感があるからこそ製作者の努力や愛情を感じられるんだ!そんなこともわからん底の浅いパンピーのレビューなんて、それこそ見る価値なし!」
「寮長の言う通り!見てもいない映画を語って『俺オタクなんだよね(笑)』なんて……オタクへの侮辱以外のなにものでもない!」
「知ったかぶりのマジカメモンスター共を『パンプキン・ホロウの刑』に処してやりましょう!」
続くように言ってきた寮生たちの言葉に、イデアは笑いながら頷く。
「ひひひっ。言われるまでもありませんわ……。諸君、所定の位置につきたまえ。ただいまから作戦を実行する!」
「「イエス、サー !」」
寮長らしく号令をかけたイデアに、寮生たちは元気よく返事した。
「……そっかー。パンプキン騎士ナイトは知ってるんだね」
目の前のマジカメモンスターたちにビームを放ちたい気持ちを抑えながら、オルトは話を続ける。
「それじゃあお兄さん、この話は知ってる?マニアの間では有名な話なんだけど……『パンプキン・ホロウ』は実話を元にしてるらしいんだ」
「「実話ぁ?」」
「うん」
オルトの言葉にマジカルモンスターたちは首を傾げ、そのまま話始めた。
「昔、粗末にされたジャック・オ・ランタンのゴーストが騎士に乗り移って……食事を楽しむ人間を、みーんなパンプキンに変えちゃう事件があったんだって!きっと自分が食べてもらえなかったからゴーストは食べ物に嫉妬してるんだね。
その怖いパンプキン騎士が現れたのが……ここ、賢者の島らしいんだ!当時の人たちは、なんとかパンプキン騎士を倒してこの図書館の下に彼を埋めたらしいよ。だから図書館は『飲食禁止』なんだ。おいしく食事をしている人を見るとパンプキン騎士が怒っちゃうの」
「あっはっは!!キミ、そんな話信じてるの~!?素直でちょー可愛いわ」
「ジャック・オ・ランタンのゴーストとか、人がパンプキンに変えられるとか……ありえないって~!大丈夫大丈夫!」
オルトの話を聞いていたにも関わらず、マジカメモンスターたちは気にせずお菓子を食べ、ジュースを飲む。
「そうかなあ……あれっ!」
話を信じてもらえず落ち込んだその時、オルトはある音を聴きとった。
「ねえ!なんだか変な音がしない?」
「え?」
オルトの言葉にマジカメモンスターたちは食事をする手を止めた。
その時、ガシャン……ガシャン……という音が聞こえてきた。
「確かに……ガシャンガシャン変な音がする。金属が擦れ合ってるみたいな……」
そう言っている間に、ガシャン……ガシャン……と音が徐々に大きくなっていく。
「だんだん近付いてきてね?」
マジカメモンスターが言った直後、ガシャン……ガシャン……と音がそこで止まった。
「『パンプキンはパンプキンでも食べられないパンプキンはなんだ?……答えはこのオレさ!悲しきモンスター、パンプキン騎士!』」
「「うわあっ!?」」
エントランスホールは夜ということもあり日中よりも不気味さが伝わってくる。
青い光もその不気味さを際立たせている中、ゲストたちはエントランスホールの椅子に腰かけていた。
「ナイトレイヴンカレッジ、マジ広いわー。たくさん歩いてもうお腹ペコペコ」
「プロジェクションマッピングが始まるまで座ってお菓子食おうぜ!」
「おっ、いいねぇ。喉も乾いたしジュースも飲もーっと」
そう言いながらゲストたちはお菓子を食べ始め、ジュースも豪快に飲む。
「お兄さんたち、こんばんは!」
彼らが食事を始めた時、オルトが笑顔で出迎えた。
「ん?なんだこの子。仮装して学校に遊びにきてるのかな」
「こんばんは~。君もお菓子食べる?ポテチに、ポップコーン、チョコレートもあるよ」
「でも……図書館でご飯を食べるのは禁止されてるんだよ。ほら、看板に書いてある」
オルトが指をさした先には、『飲食禁止』の注意書き。
それを見たゲストたちは軽く笑いながら言った。
「飲食禁止って言われてもさあ……。こんなにたくさんテーブルと椅子があるしちょっと俺らが使っても問題ないよ!」
「そーそー!むしろスペースを有効活用したほうが学校もハッピーになるって!ははは!」
「でも……『パンプキン騎士』に呪われちゃうかもよ?」
ゲストたちが笑っていると、オルトが困った顔をしながら言う。
『パンプキン騎士』という単語に、2人は首を傾げた。
「『パンプキン騎士』?なんだそれ」
「……あ、俺それ聞いたことあるかも。映画のキャラクターじゃね?」
「そう!映画『パンプキン・ホロウ』に出てくるこわーいゴーストの名前!お兄さん『パンプキン・ホロウ』を知ってるの!?」
オルトが目を輝かせながら問うが、ゲストはけらけら笑いながら言った。
「おー、まあな!ありきたりなストーリーの上に特撮はチープで全然怖くない子どもだまし。ホラーを名乗るにしてはコミカルすぎて全体的に残念すぎる、見る価値なしの三流映画!……ってヤツっしょ?」
ゲストのその言葉に、オルトの顔が険しくなる。
しかしそれに気付かないまま、ゲストたちは話で盛り上がる。
「お前超詳しいじゃん!俺、聞いたこともねえわ。映画好きなんだ?」
「いやあ、実は俺……結構オタクでさあ~?マニアックな映画とか詳しいんだよね。ま、『パンプキン・ホロウ』の映画自体は見たことないんだけど」
「えっ?映画は見たことない?」
「うん。でもレビューサイトであらすじ読んだし見たようなもんでしょ」
「……」
映画自体見ていないのに酷評したゲストに、オルトは無言で黙り込む。
しかしそこには普段の優しい眼差しはなく、純粋な怒りが宿っていた。
その光景をイデアと寮生たちは物陰で見ていた。
「図書館でお菓子をむしゃむしゃ。ジュースをごくごく。注意されてもしらんぷり。はーい。マジカメモンスターさん乙でーす」
マジカメモンスター認定されたゲストを見ながら、イデアはオルトと同じように目に怒りを宿しながら言った。
「あの態度も相当腹立つけどさあ、なにより許し難いのは……『パンプキン・ホロウ』を『見る価値なしの三流映画』呼ばわりだと!?テンポの良い会話と恐怖シーンの配分が絶妙で老若男女におすすめできるストーリーじゃないか!
それに特撮映画は手作り感があるからこそ製作者の努力や愛情を感じられるんだ!そんなこともわからん底の浅いパンピーのレビューなんて、それこそ見る価値なし!」
「寮長の言う通り!見てもいない映画を語って『俺オタクなんだよね(笑)』なんて……オタクへの侮辱以外のなにものでもない!」
「知ったかぶりのマジカメモンスター共を『パンプキン・ホロウの刑』に処してやりましょう!」
続くように言ってきた寮生たちの言葉に、イデアは笑いながら頷く。
「ひひひっ。言われるまでもありませんわ……。諸君、所定の位置につきたまえ。ただいまから作戦を実行する!」
「「イエス、サー !」」
寮長らしく号令をかけたイデアに、寮生たちは元気よく返事した。
「……そっかー。パンプキン騎士ナイトは知ってるんだね」
目の前のマジカメモンスターたちにビームを放ちたい気持ちを抑えながら、オルトは話を続ける。
「それじゃあお兄さん、この話は知ってる?マニアの間では有名な話なんだけど……『パンプキン・ホロウ』は実話を元にしてるらしいんだ」
「「実話ぁ?」」
「うん」
オルトの言葉にマジカルモンスターたちは首を傾げ、そのまま話始めた。
「昔、粗末にされたジャック・オ・ランタンのゴーストが騎士に乗り移って……食事を楽しむ人間を、みーんなパンプキンに変えちゃう事件があったんだって!きっと自分が食べてもらえなかったからゴーストは食べ物に嫉妬してるんだね。
その怖いパンプキン騎士が現れたのが……ここ、賢者の島らしいんだ!当時の人たちは、なんとかパンプキン騎士を倒してこの図書館の下に彼を埋めたらしいよ。だから図書館は『飲食禁止』なんだ。おいしく食事をしている人を見るとパンプキン騎士が怒っちゃうの」
「あっはっは!!キミ、そんな話信じてるの~!?素直でちょー可愛いわ」
「ジャック・オ・ランタンのゴーストとか、人がパンプキンに変えられるとか……ありえないって~!大丈夫大丈夫!」
オルトの話を聞いていたにも関わらず、マジカメモンスターたちは気にせずお菓子を食べ、ジュースを飲む。
「そうかなあ……あれっ!」
話を信じてもらえず落ち込んだその時、オルトはある音を聴きとった。
「ねえ!なんだか変な音がしない?」
「え?」
オルトの言葉にマジカメモンスターたちは食事をする手を止めた。
その時、ガシャン……ガシャン……という音が聞こえてきた。
「確かに……ガシャンガシャン変な音がする。金属が擦れ合ってるみたいな……」
そう言っている間に、ガシャン……ガシャン……と音が徐々に大きくなっていく。
「だんだん近付いてきてね?」
マジカメモンスターが言った直後、ガシャン……ガシャン……と音がそこで止まった。
「『パンプキンはパンプキンでも食べられないパンプキンはなんだ?……答えはこのオレさ!悲しきモンスター、パンプキン騎士!』」
「「うわあっ!?」」