スケアリー・モンスターズ
ポムフィオーレ寮のスタンプラリー会場・鏡の間。
闇の鏡を前にしたゲストたちが、しげしげと興味深く見ていた。
「これが『闇の鏡』か。思ってたより普通の鏡だなあ」
「…………………」
「でも『鏡の間』自体は雰囲気があってなんだか神秘的じゃない?学園外の人がここに入れるのは、1年のうちでハロウィーンの今だけなんだって!」
早速鏡の間を撮ろうとしたゲストが、注意書きの看板を見つけた。
「あ、写真撮影禁止の看板がある……。でも、今を逃したら写真撮れるチャンスなんてもうないよね?」
「他に人はいないし、誰にも迷惑かけないよ。撮ってもいいでしょ!」
「そうだよね。撮っちゃおう!」
そう言って、パシャ!パシャ!と写真を撮るゲストたち。
その光景を、ヴィルとエペル、そしてルークを含む数人の寮生たちは物陰から見ていた。
「鏡の間で撮影を始めたわ。残念。どうやら“大切なゲスト”ではなかったようね。『マジカメモンスター』やパパラッチ……。無断で写真を撮影する輩にはろくなヤツがいない。話題作りのためなら、他人の都合なんてお構いなしなんだから」
「写真を撮る。その行為自体は素晴らしいものだ。一瞬の美を永遠に閉じ込めることができるからね。美しい光景を収集したい気持ちはよくわかる。しかし、ルールを違反する行為は美しくない」
「ああっ!あの人たち“扉”にもベタベタ触ってる!それどころか、こじ開けようとしてる!?」
ヴィルとルークの話の途中で、エペルが“扉”に触れているマジカメモンスターたちを見つける。
「闇の鏡に選定された生徒たちの魂を導く大切な“扉”。だから、特別な鍵がないと開けられない。そう学園長が言っていたのに……」
「ルールを守らない悪い子にはきついお仕置きがつきもの。ルーク、エペル。準備はいいわね?」
「「ウィ!/はい!」」
マジカメモンスターたちの行為にヴィルの顔が嫌悪感で歪んだ直後、ルークとエペルに指示を出す。
その指示に2人は頷いた。
2人が動いている間、ヴィルはその陽動としてマジカメモンスターたちの前に現れる。
「!!ね、ねえ、あれ見て……!」
「ん、なに……って、ヴィル・シェーンハイト!?」
「ナイトレイヴンカレッジの生徒とは聞いてたけど……まさかホントに会えるなんて!」
「こんな近くでヴィルを見れるチャンスなんて二度とないかも……写真撮りまくらなきゃ」
「でも、ここ撮影禁止だし見つかったら怒られちゃうかも。扉の陰に隠れてこっそり撮っちゃお!」
「オッケー」
マジカメモンスターたちは扉の陰に隠れると、そのまま写真を撮り始める。
ヴィルという存在感のある人間がいたせいで気付かなかったが、彼の後ろからもう1人――エペルが出てくる。
「あ、ヴィルの後からまた誰か出てきた」
「わ、すごく可愛い……!ネットやテレビじゃ見たことないけど……雑誌の読モとか?」
「わかんないけど、写真に撮っておこ!あんなミステリアス美少年めったにお目にかかれないって!」
「私たち、次世代のアイドル発見しちゃったんじゃない!?#ヴィル遭遇 #1000年に一度の美少年あらわるってカンジで投稿したら絶対バズるよ!」
ヴィルに続きエペルの登場に大興奮しているマジカメモンスターたちは、遠慮なく写真を撮りまくる。
その時、エペルがヴィルに話しかける。
「ヴィルサン」
「あら、エペル。晩餐の準備は整ったのかしら?」
「はい、最高の状態でご用意しております。……さあ、“お前たち”!こっちへ来るんだ!」
ヴィルの問いに答えるように、エペルは声を張り上げ、指を鳴らす。
するとどこからか寮生たちが現れ、戸惑いの表情を浮かべる。
「な、なんだこれは!足が勝手に前に進む……!」
「ヴィル寮長、これはどういうことですか!?」
「フフフ……随分時間がかかったわ。ようやく食べごろに育ったわね」
「食べごろって……どういうことですかヴィル先輩!?」
困惑する寮生たちを見て、ヴィルは妖しい笑みを浮かべながら言った。
「アンタたち、いつもアタシの美しさの秘密を知りたがっていたわよね?哀れなディナーたちに、餞別に教えてあげる。アタシの美しさの秘訣は、高い化粧品でも規則正しい生活でもない……『人間の生気』を吸うこと」
「「な、なんだって~~!?」」
「それも不健康な人間の生気じゃダメ。若くて健康な人間の生気が、一番よ。アタシはそれを糧として何百年も若さと美しさを保ってきた」
「ば、ば……化け物だ!」
「フフ……その怯えた顔、盛り上がるわ。でも間違ってる。アタシはただの化け物モンスターじゃない。アタシはモンスターの中のモンスター……ヴァンパイアよ!」
「「!!!??」」
堂々と告げたヴィルに、物陰から見ていたマジカメモンスターたちも驚きを露わにする。
2人は動揺しながらもそのままひそひそ声で会話をし始める。
「い、今の……どういうこと!?」
「わ、わかんない。いや、でもまさか。ヴァンパイアなんて架空の存在でしょ……?」
目の前で起きている出来事がうまく呑み込めず混乱するマジカメモンスターたちを余所に、ヴィルたちの会話は続く。
「じゃあ、寮長がこれまで僕たちに規則正しい生活やヘルシーな献立を指導してくれていたのは……!」
「「僕たちを……食べるため!?」」
「今のアンタたちは血液サラサラ。全身ツヤツヤ。まさに食べごろよ。さ、早速いただきましょう。エペル」
「はい、いただきます」
闇の鏡を前にしたゲストたちが、しげしげと興味深く見ていた。
「これが『闇の鏡』か。思ってたより普通の鏡だなあ」
「…………………」
「でも『鏡の間』自体は雰囲気があってなんだか神秘的じゃない?学園外の人がここに入れるのは、1年のうちでハロウィーンの今だけなんだって!」
早速鏡の間を撮ろうとしたゲストが、注意書きの看板を見つけた。
「あ、写真撮影禁止の看板がある……。でも、今を逃したら写真撮れるチャンスなんてもうないよね?」
「他に人はいないし、誰にも迷惑かけないよ。撮ってもいいでしょ!」
「そうだよね。撮っちゃおう!」
そう言って、パシャ!パシャ!と写真を撮るゲストたち。
その光景を、ヴィルとエペル、そしてルークを含む数人の寮生たちは物陰から見ていた。
「鏡の間で撮影を始めたわ。残念。どうやら“大切なゲスト”ではなかったようね。『マジカメモンスター』やパパラッチ……。無断で写真を撮影する輩にはろくなヤツがいない。話題作りのためなら、他人の都合なんてお構いなしなんだから」
「写真を撮る。その行為自体は素晴らしいものだ。一瞬の美を永遠に閉じ込めることができるからね。美しい光景を収集したい気持ちはよくわかる。しかし、ルールを違反する行為は美しくない」
「ああっ!あの人たち“扉”にもベタベタ触ってる!それどころか、こじ開けようとしてる!?」
ヴィルとルークの話の途中で、エペルが“扉”に触れているマジカメモンスターたちを見つける。
「闇の鏡に選定された生徒たちの魂を導く大切な“扉”。だから、特別な鍵がないと開けられない。そう学園長が言っていたのに……」
「ルールを守らない悪い子にはきついお仕置きがつきもの。ルーク、エペル。準備はいいわね?」
「「ウィ!/はい!」」
マジカメモンスターたちの行為にヴィルの顔が嫌悪感で歪んだ直後、ルークとエペルに指示を出す。
その指示に2人は頷いた。
2人が動いている間、ヴィルはその陽動としてマジカメモンスターたちの前に現れる。
「!!ね、ねえ、あれ見て……!」
「ん、なに……って、ヴィル・シェーンハイト!?」
「ナイトレイヴンカレッジの生徒とは聞いてたけど……まさかホントに会えるなんて!」
「こんな近くでヴィルを見れるチャンスなんて二度とないかも……写真撮りまくらなきゃ」
「でも、ここ撮影禁止だし見つかったら怒られちゃうかも。扉の陰に隠れてこっそり撮っちゃお!」
「オッケー」
マジカメモンスターたちは扉の陰に隠れると、そのまま写真を撮り始める。
ヴィルという存在感のある人間がいたせいで気付かなかったが、彼の後ろからもう1人――エペルが出てくる。
「あ、ヴィルの後からまた誰か出てきた」
「わ、すごく可愛い……!ネットやテレビじゃ見たことないけど……雑誌の読モとか?」
「わかんないけど、写真に撮っておこ!あんなミステリアス美少年めったにお目にかかれないって!」
「私たち、次世代のアイドル発見しちゃったんじゃない!?#ヴィル遭遇 #1000年に一度の美少年あらわるってカンジで投稿したら絶対バズるよ!」
ヴィルに続きエペルの登場に大興奮しているマジカメモンスターたちは、遠慮なく写真を撮りまくる。
その時、エペルがヴィルに話しかける。
「ヴィルサン」
「あら、エペル。晩餐の準備は整ったのかしら?」
「はい、最高の状態でご用意しております。……さあ、“お前たち”!こっちへ来るんだ!」
ヴィルの問いに答えるように、エペルは声を張り上げ、指を鳴らす。
するとどこからか寮生たちが現れ、戸惑いの表情を浮かべる。
「な、なんだこれは!足が勝手に前に進む……!」
「ヴィル寮長、これはどういうことですか!?」
「フフフ……随分時間がかかったわ。ようやく食べごろに育ったわね」
「食べごろって……どういうことですかヴィル先輩!?」
困惑する寮生たちを見て、ヴィルは妖しい笑みを浮かべながら言った。
「アンタたち、いつもアタシの美しさの秘密を知りたがっていたわよね?哀れなディナーたちに、餞別に教えてあげる。アタシの美しさの秘訣は、高い化粧品でも規則正しい生活でもない……『人間の生気』を吸うこと」
「「な、なんだって~~!?」」
「それも不健康な人間の生気じゃダメ。若くて健康な人間の生気が、一番よ。アタシはそれを糧として何百年も若さと美しさを保ってきた」
「ば、ば……化け物だ!」
「フフ……その怯えた顔、盛り上がるわ。でも間違ってる。アタシはただの化け物モンスターじゃない。アタシはモンスターの中のモンスター……ヴァンパイアよ!」
「「!!!??」」
堂々と告げたヴィルに、物陰から見ていたマジカメモンスターたちも驚きを露わにする。
2人は動揺しながらもそのままひそひそ声で会話をし始める。
「い、今の……どういうこと!?」
「わ、わかんない。いや、でもまさか。ヴァンパイアなんて架空の存在でしょ……?」
目の前で起きている出来事がうまく呑み込めず混乱するマジカメモンスターたちを余所に、ヴィルたちの会話は続く。
「じゃあ、寮長がこれまで僕たちに規則正しい生活やヘルシーな献立を指導してくれていたのは……!」
「「僕たちを……食べるため!?」」
「今のアンタたちは血液サラサラ。全身ツヤツヤ。まさに食べごろよ。さ、早速いただきましょう。エペル」
「はい、いただきます」