スケアリー・モンスターズ

「ああ。本当は、ロゼッタに教わりたかったけど、アイツ今体調悪いだろ?だからルークに聞いたんだ。ルークは動物に詳しいだろ?相談したら、狼について詳しく教えてくれたよ。ハロウィーンのためにいっぱい練習しておいて助かったぜ!」

ロゼッタは、ホワイトタイガーの獣人だ。教わるのも悪くないだろう。だが、カリムの言うとおり、襲われる状況ではない。一方、ルークは狩人。聞くにはもってこいの人材だ。ジャミルはそう思った。

「あっ、助かったと言えば絨毯もな」

「♪」

そう言うと、茂みの中から出てきた絨毯は嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねた。

「自由に動かせるお前のふさを狼のしっぽに見立てるって案……さっすがジャミルの考えたアイデアだ!すごくうまくいったな。狼男に怯える役がうまかったおかげでオレが飛び出す前からみんなもう怖がってたし……ジャミルやみんなのおかげで作戦が成功したよ。ありがとう!」

「……」

笑顔でお礼を言うカリム。
いつもなら適当な言葉で流すが、今回はそうしなかった。

「それはどうだろうな……。アイツらが逃げて行ったのはお前の迫真の演技があったからこそだろう。まず、演技の指導を仰ぐ相手にルーク先輩を選んだのが正解だった。
 結果を見据えて計画を立て、手を抜かず努力する。それこそがスカラビアのモットー“遠謀深慮”。寮長の面目躍如だな、カリム」

「!!へへっ、ありがとう」

この時のジャミルの言葉は従者としてではない、スカラビア寮の副寮長としての言葉だった。
それに気付いたカリムは、嬉しそうに笑った。

「みんなで頑張ってよかったな!絶対に最高のハロウィーンになるよ。ロゼッタの体調が心配だけど、これならきっと、明日は宴ができるはずだ。最後まで全力で楽しもうぜ!ハッピーハロウィーン!」

「「「ハッピーハロウィーン!」」」

カリムの言葉に、ジャミルたちは笑顔で返事を返すのだった。
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