スケアリー・モンスターズ
「『魔法薬学室』だってさ。マッドなドクターの研究室っぽくてキマッてる!」
「ハロウィーン映えする写真が撮れそうじゃん。入ってみよう!」
『ハロウィーンウィーク』に参加しているゲストが、オクタヴィネル寮のスタンプラリー会場・魔法薬学室へ入る。
室内に入ると昼間とは違う本格的な不気味さが際立ち、ゲストたちはハロウィーン映えする光景に目を輝かせる。
「不気味で格好いい~!いっぱい写真撮ろー」
「あの奥の代でポーズとったら盛れそうじゃね!?……あ、でも看板に『セットに乗らないで』って書いてあるわ。自撮り棒も瓶が倒れるから『使用禁止』だって」
「自撮り棒使っちゃだめ……って言われてもさ、遠くから撮らなきゃ全体が入んないじゃん。ぶつからなきゃいいわけっしょ?気を付けるから大丈夫だって!」
「それもそっか!んじ撮りまーす。いぇーい!」
看板を見たにも関わらず、自撮り棒を使って写真を撮りまくるゲストもといマジカメモンスターたち。
それをジェイドとアズールが物陰で見ていた。
「はい、問題行動を確認しました。この時点をもって、彼らを『マジカメモンスター』と認定します」
「ふふふ……規則がなんのためにあるのか親切な僕たちが彼らに教えてあげましょう!」
「ええ、海の魔女の慈愛の精神で……骨の髄までね」
もしここに彼ら以外いたら、完全に『おまいう』発言認定されていただろう。
そんなことを知らないマジカメモンスターたちは、写真を撮った瞬間ふと首を傾げた。
「あれ?なにかフラッシュに反射した。置いてあるのは……水槽?中に魚とかいる感じかな。おっしゃれ~~!」
そう言ってマジカメモンスターたちが水槽に近づくと、そこにいたのは一体の人魚――フロイド。
水槽にいるフロイドは目を瞑っており、微動だにしていない。
「……って中に入ってるの、人魚じゃん!」
「偽物っしょ。人魚って珍しいし、全然動かないし」
「それもそっかー。にしてもよくできた模型……。あっ、記念にここでも写真撮ろうぜ!『#NRC記録』ってタグ付けて今レポしてんの」
フロイドを模型と勘違いしたマジカメモンスターたちの様子に、2人は薄ら笑みを浮かべる。
「やれやれ、我が物顔でおおはしゃぎ……元気がいいですね」
「結構なことです。こちらもやりがいがあるというもの。お前たち、準備はできていますね?」
「「はい!」」
アズールが背後にいる寮生に声をかけた直後、マジカメモンスターたちは水槽の前で自撮り棒を構えた。
「うっし、この角度盛れてるわ。いくぞー、せーのっ!」
シャッターを押そうとした直後、寮生が魔法を使う。
魔法によってマジカメモンスターが持っていた自撮り棒が揺れて、水槽に当たる。
ガシャン!!と音が室内に響いた。
「えっ!?自撮り棒が水槽にぶつかった!?」
「き、傷が付いてる……こんな高そうな水槽、弁償できなくね!?」
「お、俺のせいじゃねーし。暗くて見えなかったけどなんかぶつかってきたんだよ!……てか、今なら誰も見てないしバレないうちにこっそり逃げれば……」
そう言ってマジカメモンスターたちが魔法薬学室を出ようとした直後、
「困りますねえお客さん……」
背後から声をかけられた。
「「どきっ!!」」
水槽を傷つけたマジカメモンスターたちが背後から聞こえた声に肩を震わせて振り向く、そこにいたのは実験着姿のアズールと寮生たちがいた。
「だ、誰?ナイトレイヴンカレッジの生徒っすか?」
「はい。同時に、ここの管理を任されている者です。水槽の中にいるのは、いわく付きの人魚。見学をするのは自由ですが……どうかくれぐれも刺激しないようにしてください。呪われても知りませんよ」
「い、いわくつき……?」
「ええ……」
マジカメモンスターの問いにアズールが頷くと、突然周囲が暗くなりアズールにスポットライトが当てられた。
「ご存知でしょうか……その昔、珍しい人魚のマミーは非常に重宝されていました。折れた骨を一瞬でくっつけたり、傷跡を消してくれたり、解熱剤になったり、腹痛を治したり……万病に効く薬になると信じられていたんです。迷信にすぎないのに、愚かな話ですよね。
マミーにされてしまった人魚たちは当然人間を強く恨みました……。凶悪なゴーストとなって復讐を始め、手に負えなくなった人間たちはやっと己の過ちに気付き……命からがら、人魚の怨霊をこの魔法の水槽に閉じ込めたのです。
絶対にこの水槽を傷付けてはならない。学園に伝わるその教えを守るために僕たちは……厳重に!細心の注意を払って!指紋1つ付けないように!……とーっても気を付けているんですよ」
アズールの話は当然作り話なのだが、それを知らないマジカメモンスターたちは恐怖で顔を青くする。
「へ、へえ~。そそ、そうなんですかあ~……」
「あのー……ちなみになんですけどぉ……。水槽に傷を付けたら一体どうなるんっすかね?」
「水槽に込められていた封印の魔法が解けてしまうでしょう。一度鎮めたとはいえ、ゴーストの恨みは根深い。今でも人魚たちは復讐する機会を狙っています。彼らの一番の目的は、人間から生気を吸ってこの世に蘇ることです。もし、万が一にでも水槽が傷付けられて封印が解かれれば……ここにいる全員カラカラになるまで生気を吸われ……マミーの仲間入りでしょうね!」
絶対に明るく言ってはいけない話をしたアズールに、マジカメモンスターたちの顔が青を通り越して白くなる。
それでも水槽のことがバレないように、彼らは明るい表情を無理やり作った。
「ハロウィーン映えする写真が撮れそうじゃん。入ってみよう!」
『ハロウィーンウィーク』に参加しているゲストが、オクタヴィネル寮のスタンプラリー会場・魔法薬学室へ入る。
室内に入ると昼間とは違う本格的な不気味さが際立ち、ゲストたちはハロウィーン映えする光景に目を輝かせる。
「不気味で格好いい~!いっぱい写真撮ろー」
「あの奥の代でポーズとったら盛れそうじゃね!?……あ、でも看板に『セットに乗らないで』って書いてあるわ。自撮り棒も瓶が倒れるから『使用禁止』だって」
「自撮り棒使っちゃだめ……って言われてもさ、遠くから撮らなきゃ全体が入んないじゃん。ぶつからなきゃいいわけっしょ?気を付けるから大丈夫だって!」
「それもそっか!んじ撮りまーす。いぇーい!」
看板を見たにも関わらず、自撮り棒を使って写真を撮りまくるゲストもといマジカメモンスターたち。
それをジェイドとアズールが物陰で見ていた。
「はい、問題行動を確認しました。この時点をもって、彼らを『マジカメモンスター』と認定します」
「ふふふ……規則がなんのためにあるのか親切な僕たちが彼らに教えてあげましょう!」
「ええ、海の魔女の慈愛の精神で……骨の髄までね」
もしここに彼ら以外いたら、完全に『おまいう』発言認定されていただろう。
そんなことを知らないマジカメモンスターたちは、写真を撮った瞬間ふと首を傾げた。
「あれ?なにかフラッシュに反射した。置いてあるのは……水槽?中に魚とかいる感じかな。おっしゃれ~~!」
そう言ってマジカメモンスターたちが水槽に近づくと、そこにいたのは一体の人魚――フロイド。
水槽にいるフロイドは目を瞑っており、微動だにしていない。
「……って中に入ってるの、人魚じゃん!」
「偽物っしょ。人魚って珍しいし、全然動かないし」
「それもそっかー。にしてもよくできた模型……。あっ、記念にここでも写真撮ろうぜ!『#NRC記録』ってタグ付けて今レポしてんの」
フロイドを模型と勘違いしたマジカメモンスターたちの様子に、2人は薄ら笑みを浮かべる。
「やれやれ、我が物顔でおおはしゃぎ……元気がいいですね」
「結構なことです。こちらもやりがいがあるというもの。お前たち、準備はできていますね?」
「「はい!」」
アズールが背後にいる寮生に声をかけた直後、マジカメモンスターたちは水槽の前で自撮り棒を構えた。
「うっし、この角度盛れてるわ。いくぞー、せーのっ!」
シャッターを押そうとした直後、寮生が魔法を使う。
魔法によってマジカメモンスターが持っていた自撮り棒が揺れて、水槽に当たる。
ガシャン!!と音が室内に響いた。
「えっ!?自撮り棒が水槽にぶつかった!?」
「き、傷が付いてる……こんな高そうな水槽、弁償できなくね!?」
「お、俺のせいじゃねーし。暗くて見えなかったけどなんかぶつかってきたんだよ!……てか、今なら誰も見てないしバレないうちにこっそり逃げれば……」
そう言ってマジカメモンスターたちが魔法薬学室を出ようとした直後、
「困りますねえお客さん……」
背後から声をかけられた。
「「どきっ!!」」
水槽を傷つけたマジカメモンスターたちが背後から聞こえた声に肩を震わせて振り向く、そこにいたのは実験着姿のアズールと寮生たちがいた。
「だ、誰?ナイトレイヴンカレッジの生徒っすか?」
「はい。同時に、ここの管理を任されている者です。水槽の中にいるのは、いわく付きの人魚。見学をするのは自由ですが……どうかくれぐれも刺激しないようにしてください。呪われても知りませんよ」
「い、いわくつき……?」
「ええ……」
マジカメモンスターの問いにアズールが頷くと、突然周囲が暗くなりアズールにスポットライトが当てられた。
「ご存知でしょうか……その昔、珍しい人魚のマミーは非常に重宝されていました。折れた骨を一瞬でくっつけたり、傷跡を消してくれたり、解熱剤になったり、腹痛を治したり……万病に効く薬になると信じられていたんです。迷信にすぎないのに、愚かな話ですよね。
マミーにされてしまった人魚たちは当然人間を強く恨みました……。凶悪なゴーストとなって復讐を始め、手に負えなくなった人間たちはやっと己の過ちに気付き……命からがら、人魚の怨霊をこの魔法の水槽に閉じ込めたのです。
絶対にこの水槽を傷付けてはならない。学園に伝わるその教えを守るために僕たちは……厳重に!細心の注意を払って!指紋1つ付けないように!……とーっても気を付けているんですよ」
アズールの話は当然作り話なのだが、それを知らないマジカメモンスターたちは恐怖で顔を青くする。
「へ、へえ~。そそ、そうなんですかあ~……」
「あのー……ちなみになんですけどぉ……。水槽に傷を付けたら一体どうなるんっすかね?」
「水槽に込められていた封印の魔法が解けてしまうでしょう。一度鎮めたとはいえ、ゴーストの恨みは根深い。今でも人魚たちは復讐する機会を狙っています。彼らの一番の目的は、人間から生気を吸ってこの世に蘇ることです。もし、万が一にでも水槽が傷付けられて封印が解かれれば……ここにいる全員カラカラになるまで生気を吸われ……マミーの仲間入りでしょうね!」
絶対に明るく言ってはいけない話をしたアズールに、マジカメモンスターたちの顔が青を通り越して白くなる。
それでも水槽のことがバレないように、彼らは明るい表情を無理やり作った。