スケアリー・モンスターズ

看板を無視して花壇へ入ったマジカメモンスターたち。
彼らは先ほどの話を聞いたにも関わらず、はしゃいでいた。

「室内なのに霧が出るなんて、さっすがナイトレイヴンカレッジ。本格的な植物園だなぁ」

「あれ……霧の奥に誰かいるぜ。もしかしてスケルトンじゃね?なーんてな、あはは!」

「確かめてみようよ!こんばんはー」

「……」

「「うわあっ!スケルトン!?」

霧の中から現れたスケルトン――デュースを見て、肩を震わせるマジカメモンスターたち。
しかしすぐに落ち着かせた。

「……な、わけないか。ナイトレイヴンカレッジの生徒っすか?仮装かっこいーっすね!」

「……」

「ん?」

「……」

マジカメモンスターが話しかけても、デュースは無視しながらシャベルを動かす。
ザッザッザッと土を掬っている彼に、マジカメモンスターが問いかける。

「あの、シャベツを持ってなにをしてるんですか?」

「……見たらわかるだろう? 埋めてるんだよ」

「埋めてる?」

「ああ。掘って、埋める。それが墓守の仕事だからな」

「墓守って……」

真面目に答えるデュースに、マジカメモンスターは先ほどの話を思い出す。
しかし、あれは怪談と同じ類のはずだと思った直後だ。

「う、うう…………。……けて……」

「え?こ、この声、一体どこから?」

「……うわあっ!足元を見ろ!!」

片割れの声を聞いて足元を見た直後、そこにいたのは……。

「……て……助けて……!」

「ひ、人が……」

「土の中に!?」

デュースが掘った穴には、エースを含むハーツラビュル生が入っており、土がかけられている。
彼らが体操着姿なのも、彼らにはそれを気付くことはできなかった。

「うう……ここから出してくれ……!頼む、そこの人たち!助けてくれぇ……!」

「おい黙れっ!大人しく埋まってろ!」

「うわっ!ぺぺっ、口に土が……」

デュースが一喝しながら土をかけるが、加減しなかったせいでエースの口に土が入る。
エースが小声で言うが、それも聞こえていないマジカメモンスターは恐怖で顔を青くする。

「も、もしかしてスケルトンの噂は本当だったってこと!?」

「そんなバカなことあるわけねーだろ!」

「でも、実際に……ひ、ひ、人が埋められてるし……!」

マジカメモンスターたちが怯える中、デュースはすっとそちらに目を向けた。

「この場所に、生きた人間がいるはずがない……。さてはお前たちも墓から蘇ったゴーストだな?」

「「えっ!?」」

「墓荒らしや悪霊から墓を守るのが我ら墓守の仕事………………」

デュースの言葉にマジカメモンスターたちは驚愕の声を上げた直後、彼はスコップを手にしながら言う。

「さあ、お前たち……大人しく墓の中に戻れ!!」

「「うわ――っ!」」

スコップを手に襲いかかるデュース。
マジカメモンスターたちは悲鳴を上げながら、デュースから逃げ出す。

「スケルトンが襲いかかってきた!」

「ととと、とにかく逃げよう!」

逃げ出すマジカメモンスターたち。
しかし植物園は深い霧が立ち込めており、視界が白く染まっているせいで方向がわかたなくなっていた。

「はあっ……はあっ……霧が濃くて前が見えない!どっちに進めばいいのかわからないよ!」

「出口はどこ……あ、明かり!きっと植物園の出口のライトだ!」

マジカメモンスターの片割れが見つけた明かりに、もう1人もオアシスを見つけた旅人のような顔をする。

「あの明かりを目指して進めば……ぎゃあ!!!」

直後、片割れが派手に転んだ。

「ちょっと、なにしてんの!?転んでる場合じゃないんですけど!」

「……あ……あ……」

「早く立って!すぐ逃げなきゃヤバ……」

「……あ…………足首……」

「え?」

「足首をなにかに……掴まれてる……!」

「……ひっ!?地面から手が生えてる!!」

転んだまま起き上がれない片割れの言葉に、もう1人は悲鳴を上げる。
片割れの足首は地面から生えた手でがっちりと掴まれており、そこからもう1人のスケルトン・・・ケイトが現れる。

「こらこらゴーストちゃん、植物園から逃げ出したらだめじゃん」

「君たちはここで、永遠に眠らないといけない存在なんだから」

「大人しくお墓の中に戻ろうね」

「ひいい!スケルトンがいっぱい這い出てきた!」

ケイトがユニーク魔法で増やした分身たちに、何も知らないマジカメモンスターは悲鳴を上げる。

「大丈夫、冷たい土の中でも寂しくなんかないよ♪」

「みーんな、君たちを待ってくれてるからさ……」

「み、みんな……?」

そう問いかけた直後、ケイトが這い出た穴から声が聞こえてきた。

「助けて……息が苦しい……」

「俺たちはゴーストじゃない……ここから出してくれぇ……」

「誰か、誰かぁ……!」

「ひいっ!こ、ここでも土の中に人が!?」

リドルとトレイの声にマジカメモンスターたちは顔を真っ青にする。
それを見たケイトは、順番に口を開きながら言った。

「悪い奴らは逃さない。オレたちは絶対に墓守としての役割を果たすんだ」
「心配しないで。君たちを埋めたあとは……」

「「「綺麗な花を植えてあげるからさァ!Boo!」」」

「「ぎゃ――――!」」

「Boo!」

「「ぎゃ――――!こっちにも―――!!」」

目の前にいるケイトたち、そして背後から現れたデュースに怯えるマジカメモンスターたち。

「ち、近寄らないでぇ――――!」

マジカメモンスターがそう叫ぶも、ケイトとデュースは聞き入れない。
今は怪談に出てくるスケルトン……いやこの墓地を守る墓守として、2人に近づいていった。
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