スケアリー・モンスターズ

ハーツラビュルのスタンプラリー会場・植物園。
園内に飾られているジャック・オ・ランタンが夜になった途端、妖しく光る。
うっすらと霧が立ち込める中、ゲスト2人は植物園に足を踏み入れた。

「やっとついた!植物園~。マジカメでバズってる、ここにしかない珍しい花……絶対にうちらも写真撮りたいよね!」

「だな!どこに生えてるんだろう」

「あっ、あれじゃない!?花壇の一番奥に生えてる綺麗な花!」

ゲストの女性が花を見つけるも、その前には『花壇に入らないでください』と書かれた看板。
それを見て、花壇に駆け寄る足がピタリと止まった。

「花壇に入るなって言われても……このままじゃ他の草が邪魔で、うまく写真が撮れないよなあ」

看板を見てそうぼやくゲストの男性。
しかし、その時木の向こうから何かが動く音がした。

「ん?木の向こうにも人がいるみたい」

そこには3人の生徒がおり、何故か体操着姿。
しかしゲスト二人は疑問に思わず、生徒たちの会話を聞く。

「ねえキミ、知っているかい?ナイトレイヴンカレッジの植物園にまつわる噂……」

「え?知らないっすねー。教えてください」

「ん?噂?」

生徒の会話に首を傾げるも、話は進んでいく。

「何世紀も前の話だけれど……この植物園のあたりは“問題のあるヤツ”を埋葬する墓地だったんだ」

「問題のあるやつ?」

「人を困らせる魔法士、とんでもない暴君、残虐な騎士……とにかく人の手に負えない悪者さ。人の多い都市部には埋葬できないいわく付きの者をへんぴな賢者の島に押し付けたというところだろう。
 そんな悪い奴らが悪霊になり蘇ったら大変だろう?だから島民は、墓地に番人をつけたそうだ。しかし……その墓守は、霧が立ち込める夜に忽然と姿を消してしまったらしい」

生徒の話がたんだん雲行きが怪しいものになり、ゲストたちも思わず無言で聞き入ってしまう。

「次の墓守も、その次の墓守も、そのまた次の墓守も……何人もの墓守が、決まって霧の夜に行方をくらませた。みんな逃げだしたのか?それとも埋葬された悪者たちに、あの世に連れ去られたのか?
 ……真相はわからない。けれど、今も霧の夜にはシャベルを持ったスケルトンがこの植物園をうろついているのが目撃されるとか。そのスケルトンは、消えた墓守たちの成れの果てではないかと言われているんだよ。彼らは自分が命を落としたことに気付かず今でも墓を守っているそうだ」

「ええ~!?オレ、そんな話聞いたことないっすよ?」

「学園は必死に隠しているが、ナイトレイヴンカレッジでは毎年行方不明者が出ているらしいぞ。消えた人たちが最後に目撃されたのはこの植物園だって話だ。だから『立ち入り禁止』の花壇がたくさんあるんだとさ。体面上、表立っては言えないが……スケルトンの現れる場所に生徒が立ち入らないようにするためだろうな」

メガネをかけた生徒がそう話終えた直後、霧が深くなり始める。
しかも空気も冷えてきて、寒さで思わず身を震わせた。

「……噂をすれば、霧が出て少し冷えてきたね。ボクたちも早く帰ろう」

そう言って生徒たちが植物園の外へ行ってしまう。
話を最後まで聞いていたゲストたちは、若干青い顔をしながら言った。

「……だってさ。今の話聞いた?」

「いやいや!元墓地とかスケルトンとか学校にありがちなただの怪談っしょ」

「あー、ね。『NRC7不思議』的なやつかあ」

「つか逆においしくね?いわくつきの植物園、怖くてハロウィーンっぽいじゃん。怪談動画って人気あるし、バズっちゃうかもよ!」

「それもそっか。んじゃ入っちゃおー!」

さっきの話を聞いてなお、ゲスト2人は看板が立てられた花壇の中へ入っていく。
ドスドスドスと他の植物を遠慮なく踏み荒らす様を見て、近くで見ていたデュースが言った。

「……奴ら、看板を見たうえで花壇に入りました!」

「マジカメモンスター確定だね」

「ローズハート寮長たちの話を聞いていたのにそれでも花壇を踏み荒らすなんて!」

「ためらうどこか、楽しそうに笑ってるし……ちょーっと強めにお仕置きしないとかな。ロゼッタちゃんのこともあるしね。」

普段温厚なケイトもマジカメモンスターに嫌悪感を滲ませながら、背後に控えている寮生たちに声をかけた。

「みんな、所定の位置について準備して!」

「「「はいっ!」」」
47/85ページ
スキ