スケアリー・モンスターズ
「注意書き?」
「……はっ!鏡の間に立てている『看板』か?」
ヴィルさんのアイデアを聞いたデュース君が首を傾げる横で、シルバー君は思い出したように言った。
「そう。うちやディアソムニアのように“守るべきルール”をきちんと知らしめて……」
「それを破った者を『マジカメモンスター』と認定しましょう」
「なるほど。じゃあその人たちを追い出せばいいんですね」
「「「……っしゃあ!!学園の外までぶっ飛ばしてやる!!!」」」
「落ち着け猪突猛進三人衆」
完全に吹っ飛ばす気でいる3人の背中をユウが叩く。今日はいつになく言葉が過激ね。
「いやいやさすがに『防犯システム』のフリして追い出すのにも限度あるでしょ。相手もそこまでバカじゃない。こっそり魔法使ってたのがバレたら、ヤバイのは拙者たちのほうですぞ」
「そーだね。例えどんなに迷惑をかけられたとしても……魔法執行官でもないオレたちが一般人を魔法で攻撃するのは本来NG。ハロウィーンパーティーどころか学園に批判が殺到して大変なことになっちゃう!」
「じゃあ…………拳、すかね?」
「普通の喧嘩でも警察沙汰になるっつーの」
「マジカメモンスターを攻撃せずに追い出す方法……。そんなのあるのかぁ?」
「「「……。うーん…………」」」
「あははははははっ!」
「……フロイド。みんな真剣に考えているというのに一体なにがおかしいんだい?」
その時、フロイド君が笑ったことでリドル君を含む真面目たちの視線が向く。
「だってさあ、みんな難しい顔して悩んじゃって……なんでぇ?難しいことなんか全然ねーじゃん。変なの」
「ふふふ、フロイド。笑ってはいけませんよ」
「ジェイドも笑ってしまっていますよ」
「これは失礼」
「……なに。感じが悪いわね」
「変にもったいぶってないでさっさと言ったほうがいいですよ。ここのみんな、色々とフラストレーション溜まってるんで」
「やれやれ……」
ヴィルさんの柳眉が歪んだのを見て、ユウはため息を吐きながら先を促す。
アズール君も今の状況を見て判断したのか、素直に応じた。
「みなさん、これまで厄介なお客様に立ち退いて頂く際どうされていたか思い出してください」
「まず、誰かを『立ち退かせる』機会なんてそうそうないんだよなあ……」
「おや、そうなんですね」
「そういう反応いいからさっさと話進めてくださいません?」
アズール君のわざとらしい反応にイラッとしたユウが怒りの声を上げると、ジェイド君が空気を読んで話を進めた。
「例えば……賃貸住宅を想像してください。多くの契約では、正当な理由なくして貸主が借主を強制的に追い出すことはできません。ですから……自分から出て行っていただくんです」
「自ら出て行かせる……?よりよい条件で他の契約を結ぶとか?」
「わかった!一緒にうまい飯を食いながら腹を割って話し合うんだな?」
「あーあ……これだからお坊ちゃま方は。ジェイドくんたちの悪そ~な笑顔を見ててピンんとこないんスか?もっとひどいことッス。嫌な思いをさせるんッスよ。『もうここにいたくない!』って思うぐらいにね」
「さすがラギーさん。正解です」
アズール君の返答に、ラギー君はにやりと笑った。
「怖い。危ない。嫌い。気持ちが悪い……そのように感じるものからたいていの人間は距離をおきます。それはマジカメモンスターたちも例外ではないはず。例えば、もし。……もしですよ?
このナイトレイブンカレッジに、可愛らしいグリムくんや愛嬌のあるゴーストではない……“本当に恐ろしいゴースト”がいたとしたら?マジカメモンスターは今のように『映え』などと言っていられるでしょうか」
「……確かに、“もし”そんなゴーストがいたら、一刻も早くこの学園から出て行きたくなるでしょうね」
「もちろん、楽しく安全な当学園にそのような恐ろしいゴーストは存在しません。ですが……中には勘違いしてしまう方がいらっしゃるかもしれませんね」
そう言うヴィルさんも、ジェイド君も極悪な顔をしている。
「なにせ、今は『ハロウィーンウィーク』……恐ろしいゴーストが現世を彷徨い歩く季節。そして僕たちは……ご覧の通り、ゴーストの格好をしていますから。不幸な誤解を招かないようよぉく気を付けなくては」
「……言われてみるとそういう勘違いを産む可能性もあるな」
「ククッ……白々しい。よく言うぜ」
「ヒヒッ。これは念入りに“気を付けて”いかないといけませんな」
ジェイド君の意図を察した3人が悪い笑みを浮かべた。
「ふぅむ……なるほどなんだゾ!」
「つまり……」
「「……どういうことだ?」」
「だーっ!わかってねえなら頷くなっての」
「つまり、オレたちが怖いゴーストのふりをして……マジカメモンスターをおどかして学園から追い出しちゃおうってこと!」
「それなら魔法は使わないし、暴力もないから問題ない。ナイスアイデアね」
「うん、俺もそー思う♪」
魔法なし、暴力なしの純粋なおどかし。
たとえバレてしまっても、どちらも使ってないから言い逃れできる。
これをナイスアイデアと言わないわけがない。
「……パーティーが開かれるのは明日10月31日の夜。作戦を結構するなら、今夜しかないわ」
「ふふふ……夜の狩りか。腕が鳴るね」
「ルークさん、弓矢持ち出すのは禁止ですよ?」
ガチでマジカメモンスターを狩ろうするルーク先輩に釘を刺すと、彼は笑顔で黙るだけ。
この人も意外とストレス溜まっていたのね・・・・
「みんな、いいこと。アタシたちは……『明日のハロウィーンをより盛り上げるためにゴースト役の練習をしている』あくまでそれだけよ」
「くふふ。思わず“練習”に熱が入りすぎてしまうかもしれんが……それも若さじゃな」
「そう。そして……これはアタシたちだけの秘密の“練習”。わかったわね?」
「「「おー!」」」
ヴィルさんの言葉にみんなが腕を上げていると、ちょうどお義父様たちが帰ってきた。
「ふうー……先生たちの間でも議論が紛糾しています。少しでも開催の可能性を高めるために……ハロウィーンパーティー開催の有無は、明日の朝状況を見ての判断ということになりそうです」
「「「はーい!」」」
「「わかりましたー!」」
「「それで全然問題ないでーす!」」
「……やけに聞き分けがいいな」
お義父様の話を聞いて元気よく返事するみんなに、教師たちが訝しげな反応を見せる。
私も思ったわ。だって、反応が白々しすぎるもの。
「……はっ!鏡の間に立てている『看板』か?」
ヴィルさんのアイデアを聞いたデュース君が首を傾げる横で、シルバー君は思い出したように言った。
「そう。うちやディアソムニアのように“守るべきルール”をきちんと知らしめて……」
「それを破った者を『マジカメモンスター』と認定しましょう」
「なるほど。じゃあその人たちを追い出せばいいんですね」
「「「……っしゃあ!!学園の外までぶっ飛ばしてやる!!!」」」
「落ち着け猪突猛進三人衆」
完全に吹っ飛ばす気でいる3人の背中をユウが叩く。今日はいつになく言葉が過激ね。
「いやいやさすがに『防犯システム』のフリして追い出すのにも限度あるでしょ。相手もそこまでバカじゃない。こっそり魔法使ってたのがバレたら、ヤバイのは拙者たちのほうですぞ」
「そーだね。例えどんなに迷惑をかけられたとしても……魔法執行官でもないオレたちが一般人を魔法で攻撃するのは本来NG。ハロウィーンパーティーどころか学園に批判が殺到して大変なことになっちゃう!」
「じゃあ…………拳、すかね?」
「普通の喧嘩でも警察沙汰になるっつーの」
「マジカメモンスターを攻撃せずに追い出す方法……。そんなのあるのかぁ?」
「「「……。うーん…………」」」
「あははははははっ!」
「……フロイド。みんな真剣に考えているというのに一体なにがおかしいんだい?」
その時、フロイド君が笑ったことでリドル君を含む真面目たちの視線が向く。
「だってさあ、みんな難しい顔して悩んじゃって……なんでぇ?難しいことなんか全然ねーじゃん。変なの」
「ふふふ、フロイド。笑ってはいけませんよ」
「ジェイドも笑ってしまっていますよ」
「これは失礼」
「……なに。感じが悪いわね」
「変にもったいぶってないでさっさと言ったほうがいいですよ。ここのみんな、色々とフラストレーション溜まってるんで」
「やれやれ……」
ヴィルさんの柳眉が歪んだのを見て、ユウはため息を吐きながら先を促す。
アズール君も今の状況を見て判断したのか、素直に応じた。
「みなさん、これまで厄介なお客様に立ち退いて頂く際どうされていたか思い出してください」
「まず、誰かを『立ち退かせる』機会なんてそうそうないんだよなあ……」
「おや、そうなんですね」
「そういう反応いいからさっさと話進めてくださいません?」
アズール君のわざとらしい反応にイラッとしたユウが怒りの声を上げると、ジェイド君が空気を読んで話を進めた。
「例えば……賃貸住宅を想像してください。多くの契約では、正当な理由なくして貸主が借主を強制的に追い出すことはできません。ですから……自分から出て行っていただくんです」
「自ら出て行かせる……?よりよい条件で他の契約を結ぶとか?」
「わかった!一緒にうまい飯を食いながら腹を割って話し合うんだな?」
「あーあ……これだからお坊ちゃま方は。ジェイドくんたちの悪そ~な笑顔を見ててピンんとこないんスか?もっとひどいことッス。嫌な思いをさせるんッスよ。『もうここにいたくない!』って思うぐらいにね」
「さすがラギーさん。正解です」
アズール君の返答に、ラギー君はにやりと笑った。
「怖い。危ない。嫌い。気持ちが悪い……そのように感じるものからたいていの人間は距離をおきます。それはマジカメモンスターたちも例外ではないはず。例えば、もし。……もしですよ?
このナイトレイブンカレッジに、可愛らしいグリムくんや愛嬌のあるゴーストではない……“本当に恐ろしいゴースト”がいたとしたら?マジカメモンスターは今のように『映え』などと言っていられるでしょうか」
「……確かに、“もし”そんなゴーストがいたら、一刻も早くこの学園から出て行きたくなるでしょうね」
「もちろん、楽しく安全な当学園にそのような恐ろしいゴーストは存在しません。ですが……中には勘違いしてしまう方がいらっしゃるかもしれませんね」
そう言うヴィルさんも、ジェイド君も極悪な顔をしている。
「なにせ、今は『ハロウィーンウィーク』……恐ろしいゴーストが現世を彷徨い歩く季節。そして僕たちは……ご覧の通り、ゴーストの格好をしていますから。不幸な誤解を招かないようよぉく気を付けなくては」
「……言われてみるとそういう勘違いを産む可能性もあるな」
「ククッ……白々しい。よく言うぜ」
「ヒヒッ。これは念入りに“気を付けて”いかないといけませんな」
ジェイド君の意図を察した3人が悪い笑みを浮かべた。
「ふぅむ……なるほどなんだゾ!」
「つまり……」
「「……どういうことだ?」」
「だーっ!わかってねえなら頷くなっての」
「つまり、オレたちが怖いゴーストのふりをして……マジカメモンスターをおどかして学園から追い出しちゃおうってこと!」
「それなら魔法は使わないし、暴力もないから問題ない。ナイスアイデアね」
「うん、俺もそー思う♪」
魔法なし、暴力なしの純粋なおどかし。
たとえバレてしまっても、どちらも使ってないから言い逃れできる。
これをナイスアイデアと言わないわけがない。
「……パーティーが開かれるのは明日10月31日の夜。作戦を結構するなら、今夜しかないわ」
「ふふふ……夜の狩りか。腕が鳴るね」
「ルークさん、弓矢持ち出すのは禁止ですよ?」
ガチでマジカメモンスターを狩ろうするルーク先輩に釘を刺すと、彼は笑顔で黙るだけ。
この人も意外とストレス溜まっていたのね・・・・
「みんな、いいこと。アタシたちは……『明日のハロウィーンをより盛り上げるためにゴースト役の練習をしている』あくまでそれだけよ」
「くふふ。思わず“練習”に熱が入りすぎてしまうかもしれんが……それも若さじゃな」
「そう。そして……これはアタシたちだけの秘密の“練習”。わかったわね?」
「「「おー!」」」
ヴィルさんの言葉にみんなが腕を上げていると、ちょうどお義父様たちが帰ってきた。
「ふうー……先生たちの間でも議論が紛糾しています。少しでも開催の可能性を高めるために……ハロウィーンパーティー開催の有無は、明日の朝状況を見ての判断ということになりそうです」
「「「はーい!」」」
「「わかりましたー!」」
「「それで全然問題ないでーす!」」
「……やけに聞き分けがいいな」
お義父様の話を聞いて元気よく返事するみんなに、教師たちが訝しげな反応を見せる。
私も思ったわ。だって、反応が白々しすぎるもの。