スケアリー・モンスターズ
「いやー……さっきのお客さんたちの態度ひどかったな。マジカメモンスター。自分が楽しいから周りも楽しんでると思ってるタイプの、最悪の陽キャ。絶対に遭遇したくない……出会ったらどう考えても衝突不可避」
ぶつぶつと独り言を言うイデアはイグニハイド寮のスタンプラリー会場である図書室に向かっていた。
「もしもうちの寮にもマジカメモンスターが現れたらどうするか、対策を立てないと。僕よりずーっと人と話すのが得意なオルトに対応してもらうのが吉かなあ……」
オルトならば笑顔で対応してくれるはずだ、と兄の絶対的確信を持ちながら図書室の扉を開く。
そこに広がっていたのは……。
「魔導エネルギー充填開始」
「オルト、やめろ!そこまでしなくていい!」
「くっ、だめだ。魔導砲にエネルギーがどんどん集まってきている!」
「このままじゃ俺たちも巻き込まれる……!」
「充填完了後、最大出力でビームを発射。『ハロウィーンウィーク参加者』を一掃します」
「何事――――!?一掃!?『ビーム』って聞こえたんだけど!?」
オルトが魔導ビームを放つ準備をしており、それを寮生たちが抑えるという普段見ないはずの光景だった。
イデアの叫びを聞いて、オルトを抑えていた寮生たちは救世主が現れたような顔をした。
「ああっ、寮長来てくれたんですね!」
「オルトが魔導ビームを放とうとしているんです!いくら話しかけても反応がなくて……」
「そこのお客さん!危ないから早く逃げてください!」
「かわい~!あの子ロボットの仮装してるよ」
「ほんとだ。携帯ショップの入り口とかに置いてある案内用のヤツかな」
「超ユニークな仮装~!1枚撮ってもいい?」
「ビームで狙われてるって言うのに、逃げる気ゼロ!危機感能力低すぎか!?」
寮生が避難を促すも、マジカメモンスターはそれを一種のパフォーマンスと勘違い。
さすがのイデアもツッコみせざるを得なかった。
「充填30%完了……40%完了……」
「キャ、キャンセルコマンドを……アーッ!甲冑が邪魔でタイピングできない!」
オルトを制止させようとするが、リアルにこだわった仮装のせいでキーボードが打てずイデアは頭を抱えた。
「どうして生体認証にしなかったんですか~!迅速にアプデ希望!」
「りょ!で、でも今はとにかくビーム発射に備えてゲストたちを外に出すんだ!」
オルトを制止させるイデアの代わりに、寮生たちは指示に従いマジカルペンを構えるのだった。
「……お客さん、みんないなくなったよね?」
マジカメモンスターを追い出したか確認するイデア。
その背後では未だぷりぷり怒っているオルトとそれを宥める寮生たちがいた。
「オルトも止められたしなんとかビーム発射は防げたけど……」
「兄さん、なんでアイツら追い払っちゃったの?あともうちょっとで悪い奴らをやっつけられるところだったのに!」
「やっつけたら駄目なんだって!」
思わずツッコんだが、滅多にないオルトの様子にさすがのイデアも戸惑う。
「オルトがあんなに怒るなんて……一体なにがあったの?」
「これを見てよ!」
イデアの問いに、オルトはあるものを取り出す。
それはイデアというか、この場にいる者なら必ず目にするものだ。
「これって……図書館の本?うわっ、濡れてるしベタベタしてる!」
ポタポタと液体を垂らす本。
しかし、漂う匂いに眉をひそめた。
「甘い匂い……もしかして、ジュースで濡れてる?」
「さっきのお客さんたちが、図書館内でジュースを飲んでお菓子を食べてたんだ。『栄養補給なら外でお願いします』って言ったんだけど、聞いてくれなくて……それどころか『ロボの仮装可愛い~!』って僕を囲んでツンツンし始めたんだ!」
「はあ!?ツンツン!?な、なんて失礼な奴らだ!」
「『君、近所の子?』『ワッフル食べる?』って口膣パーツに食べ物を無理やり入れようとして……異物が入り込むと故障の原因になっちゃうよ」
自分がいない間にオルトがひどい目に遭っていたことにショックを隠せないイデア。
オルトはそのまま話を続ける。
「『やめて』って揉み合ってるうちにジュースの缶が倒れちゃって……。……大切な図書館の本を汚して、ごめんなさい」
「そ、そうだったのか。確かに注意も聞かずに、図書館で飲み食いするのは許せませんな。でも、一般人にビームを出そうとするのは……世間的にはもっと許されないっていうか……」
オルトの謝罪を聞いてイデアは納得するが、それでもビームはやりすぎだ。
その時、擁護するように寮生たちが声を上げる。
「寮長!彼らは図書館のテーブルを占拠してずっと大きな声でおしゃべりをしていました。プロジェクションマッピングを楽しみに待っていたお客さんたちは、とても迷惑そうにしてた!」
「ああ。図書館で大声を出して飲食なんて常識がなさすぎる。オルトが怒るのも当然です!それに……」
「それに?」
ぶつぶつと独り言を言うイデアはイグニハイド寮のスタンプラリー会場である図書室に向かっていた。
「もしもうちの寮にもマジカメモンスターが現れたらどうするか、対策を立てないと。僕よりずーっと人と話すのが得意なオルトに対応してもらうのが吉かなあ……」
オルトならば笑顔で対応してくれるはずだ、と兄の絶対的確信を持ちながら図書室の扉を開く。
そこに広がっていたのは……。
「魔導エネルギー充填開始」
「オルト、やめろ!そこまでしなくていい!」
「くっ、だめだ。魔導砲にエネルギーがどんどん集まってきている!」
「このままじゃ俺たちも巻き込まれる……!」
「充填完了後、最大出力でビームを発射。『ハロウィーンウィーク参加者』を一掃します」
「何事――――!?一掃!?『ビーム』って聞こえたんだけど!?」
オルトが魔導ビームを放つ準備をしており、それを寮生たちが抑えるという普段見ないはずの光景だった。
イデアの叫びを聞いて、オルトを抑えていた寮生たちは救世主が現れたような顔をした。
「ああっ、寮長来てくれたんですね!」
「オルトが魔導ビームを放とうとしているんです!いくら話しかけても反応がなくて……」
「そこのお客さん!危ないから早く逃げてください!」
「かわい~!あの子ロボットの仮装してるよ」
「ほんとだ。携帯ショップの入り口とかに置いてある案内用のヤツかな」
「超ユニークな仮装~!1枚撮ってもいい?」
「ビームで狙われてるって言うのに、逃げる気ゼロ!危機感能力低すぎか!?」
寮生が避難を促すも、マジカメモンスターはそれを一種のパフォーマンスと勘違い。
さすがのイデアもツッコみせざるを得なかった。
「充填30%完了……40%完了……」
「キャ、キャンセルコマンドを……アーッ!甲冑が邪魔でタイピングできない!」
オルトを制止させようとするが、リアルにこだわった仮装のせいでキーボードが打てずイデアは頭を抱えた。
「どうして生体認証にしなかったんですか~!迅速にアプデ希望!」
「りょ!で、でも今はとにかくビーム発射に備えてゲストたちを外に出すんだ!」
オルトを制止させるイデアの代わりに、寮生たちは指示に従いマジカルペンを構えるのだった。
「……お客さん、みんないなくなったよね?」
マジカメモンスターを追い出したか確認するイデア。
その背後では未だぷりぷり怒っているオルトとそれを宥める寮生たちがいた。
「オルトも止められたしなんとかビーム発射は防げたけど……」
「兄さん、なんでアイツら追い払っちゃったの?あともうちょっとで悪い奴らをやっつけられるところだったのに!」
「やっつけたら駄目なんだって!」
思わずツッコんだが、滅多にないオルトの様子にさすがのイデアも戸惑う。
「オルトがあんなに怒るなんて……一体なにがあったの?」
「これを見てよ!」
イデアの問いに、オルトはあるものを取り出す。
それはイデアというか、この場にいる者なら必ず目にするものだ。
「これって……図書館の本?うわっ、濡れてるしベタベタしてる!」
ポタポタと液体を垂らす本。
しかし、漂う匂いに眉をひそめた。
「甘い匂い……もしかして、ジュースで濡れてる?」
「さっきのお客さんたちが、図書館内でジュースを飲んでお菓子を食べてたんだ。『栄養補給なら外でお願いします』って言ったんだけど、聞いてくれなくて……それどころか『ロボの仮装可愛い~!』って僕を囲んでツンツンし始めたんだ!」
「はあ!?ツンツン!?な、なんて失礼な奴らだ!」
「『君、近所の子?』『ワッフル食べる?』って口膣パーツに食べ物を無理やり入れようとして……異物が入り込むと故障の原因になっちゃうよ」
自分がいない間にオルトがひどい目に遭っていたことにショックを隠せないイデア。
オルトはそのまま話を続ける。
「『やめて』って揉み合ってるうちにジュースの缶が倒れちゃって……。……大切な図書館の本を汚して、ごめんなさい」
「そ、そうだったのか。確かに注意も聞かずに、図書館で飲み食いするのは許せませんな。でも、一般人にビームを出そうとするのは……世間的にはもっと許されないっていうか……」
オルトの謝罪を聞いてイデアは納得するが、それでもビームはやりすぎだ。
その時、擁護するように寮生たちが声を上げる。
「寮長!彼らは図書館のテーブルを占拠してずっと大きな声でおしゃべりをしていました。プロジェクションマッピングを楽しみに待っていたお客さんたちは、とても迷惑そうにしてた!」
「ああ。図書館で大声を出して飲食なんて常識がなさすぎる。オルトが怒るのも当然です!それに……」
「それに?」