スケアリー・モンスターズ

その光景を見ながら、ルークは笑顔で語った。

「うんうん。エペルくんはそれはそれは勇ましかったよ!お客さんたちは、注意をするエペルくんの愛らしさに感銘を受けてね。『100年に一度の微笑としてマジカメでバズる』と、彼にもその刃スマホが向けたのだけれど……。
『てめーなに考えじゃんずや!!!きかねヤツばぶっ飛ばすぞ!!!!』……と啖呵を切ったエペルくんはお客さんたちに飛びかかろうとしたんだ。一瞬、止めるのが躊躇われるほどの勢いだった。元気いっぱいだね!トレビアン!」

「……」

「ルークサン、全部話さなくたっていいのに……!」

さっきまでの感動を台無しにする武勇伝に、全員の間に気まずい空気が落ちた。

「言葉使いと態度はあとでしっかり正すとして……揉めた理由はわかったわ。マジカルモンスターは『写真撮影禁止』の看板をきちんと見ていたのよね?」

「はい。ですが『減るもんじゃないし』と言いわけをされてしまいました」

「ルールを知っているなら、破って追い出されても文句は言えないでしょう。こちらには正当な理由があるわ。迷惑なマジカメモンスターはこっそり追い返して」

ヴィルの指示に、寮生全員は頷いた。

「わかりました!きっと彼らに目に物を見せてやります!」

「注意しても取り合わずにへらへらと……とても失礼な者たちだったね」

「美しい鏡の間にはとても相応しくない。退治されて当然のモンスターだ!」

「大切な鏡の間と、親愛なるポムフィオーレを守るため……せめて苦しまないように仕留めるよ!」

「こっそりって、聞こえた?危害を加えてはだめよ」

「ウィ!もちろんだよ」

「……本当にわかっているのかしら。どうも血の気が多いわね。品と美しさを重んじるポムフィオーレに、無粋なマジカメモンスターは天敵ってところかした……」

あの忠実なルークがちゃんと聞いているのかすら怪しい事態に、ヴィルは気を引き締め直す。

「エペル。これ以上の問題が怒らないよう一緒に見張りましょう」

「はい……!」

ヴィルの言葉にエペルが強く頷いた。
その光景を窓の外から見ていたカラスは、そのまま図書館のほうへ飛ぶ。
それを見ていた闇の鏡は、何も言わずじっとカラスが去った後の窓を見つめていた。
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