スケアリー・モンスターズ

激しく首を縦に振るジャミルに、カリムは苦笑しながら言った。

「ジャミルは虫が大ッ嫌いなんだよ。小さいころに好物のデーツの中に虫が混じっていたことがあって、それからダメになっちまったんだ」

「思い出させるな!あの時は食べる前に気付けたからよかったものの……ああ、思い出すだけでも鳥肌が立つ!食べ物を放置すれば、虫が寄ってきます。それも屋外ならなおさらです!」

「確かにポイ捨ても虫が湧くのも問題だが……なにも全部燃やそうとしなくてもいいだろう」

至極もっともなことを言ったトレインに、さすがのジャミルも気まずい顔を浮かべた。

「虫除けを使う。定期的に掃除をする。他にもなにか手段はあるはずだ」

「すべて試しましたが、お客さんの数が多すぎてそれではとても間に合いません。油断するとすぐに湧いてくる。マジカメモンスターも虫も同じです。……根絶やしにしなければ!」

ついに虫と同等に扱いになったマジカメモンスターだが、誰も彼らに同情しなかった。

「お客さんたち、僕たちが注意しても『買ったものをどうしようが自由』って話を聞かないんです!」

「みんなで力を合わせて作ったハロウィーンの飾りもワッフルで汚れてしまいました……」

「副寮長が怒るのも当然だ!仕返しされたって文句は言えない!」

「そうだそうだ!お尻が焦げちゃえばいいんだ!」

「いいわけないだろう!」

寮生の言葉にトレインは叱責するも、みんなマジカメモンスターのことで憤っている。
さっきのトレインの言葉が届いていることすら怪しい状態だ。

「すっかり頭に来てしまっている……。まさか副寮長のバイパーがゲストとトラブルを起こすとは思っていなかった」

「マジカメには『ナイトレイヴンカレッジワッフル』の写真が溢れてる。今さら、俺が売るのをやめても写真を見たお客が次々にやって来ちゃうだろうねえ」

「このままでは衝突は避けられんな……」

そう言ってトレインは、運営委員であるカリムに言った。

「アジーム。他の運営委員とともに、寮生とゲストがこれ以上問題を起こさぬよう見張りなさい。ハロウィーンを安全に進めるためだ。ただし!魔法を使おうなどとは絶対に考えないように!いいな?」

「えーっと…………わかった!オレに任せてくれ」

いつものように言うカリムだが、その顔には不安が浮かんでいる。
今まで通りではいかないと自分でも察しているようだ。

その光景を木の枝にいるカラスは見つめており、今度は鏡の間へと飛んで行った。

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