スケアリー・モンスターズ
メインストリートを歩くトレインは、サムと一緒に購買部へ向かっていた。
「ミステリーショップの周りでは、スカラビアの小鬼ちゃんたちがハロウィーンをしているんだ。トレイン先生、一緒に様子を見に行ってくれるかい?」
「いいだろう。しかしスカラビアだろう?彼らなら心配はいらない。寮長のアジームは、少しとぼけたところはあるが大らかな生徒だ。そうそう揉め事は起こすまい」
サムの言葉にトレインは客観的な意見を述べる。
「それに、もしなにかトラブルが起こったとしても……スカラビアは副寮長のバイパーがしっかりしている。万が一寮生が暴走してアジームの手に負えない事態になっていても、バイパーがなんとかするはずだ。安心して見に行くとしよう」
「そうだね!」
そんな会話をしながら購買部へ着いた直後、2人は目の前の光景に絶句した。
何故なら……。
「もう我慢ならない!すべて焼き払ってやる!!!!!!!!!!」
「うわージャミル、落ち着け!マジカルペンをしまえよー!こんなに布がたくさんあるところで火の魔法を使ったら、ぜーんぶ丸焦げになっちまうって!」
「そのつもりでやってるんだ!」
「だ、誰かジャミルを止めてくれ~!」
「なにをやっているんだバイパー!?」
本来ならストッパーに回るはずのジャミルが暴走しており、カリムがそれを抑えるという事態になっていた。
さすがのトレインも大声を上げて制止するが、ジャミルは睨みつけながら言った。
「トレイン先生……止めないでください。アイツらが言うことを聞かないからこうする他ないんです!」
「あいつら……?」
ジャミルの言葉にトレインが首を傾げると、向こうでスマホを構えているマジカメモンスターが騒ぎ始めた。
「え、なに?花火的なイベント?」
「超エモじゃん!見学しよう」
「周りの様子を一切気にせず、楽しそうにへらへらと携帯電話を構えている…………マジカメモンスターがここにも出たのか!」
「ピュ~ゥ!いっちょアガルのオナシャース!」
囃し立てるマジカメモンスターに、ジャミルは冷笑を浮かべた。
「ふっ。そんなにお望みならやってやるよ……。派手な花火を、ドッカーンとな!!!」
「こら、バイパーやめなさい!」
「どうしよう。このままじゃハロウィーンがめちゃくちゃになっちまう……」
オーバーブロットしたように吹き飛ばす気満々のジャミルをトレインも抑える。
それを見て、カリムが悩み始めたのを見計らいサムが小声で話しかける。
「Hey、金ピカの小鬼ちゃん!このままじゃミステリーショップがローストされる。客を追い出して、俺の店を守ってくれ!」
「え、お客さんを追い出す?魔法でってことか?」
サムからのお願いに、カリムは目を丸くする。
さすがの彼も一般人に魔法を使うのは禁止されていることは知っているからこそ、その反応は正しかった。
「ああ。マジカメモンスターがいなくなれば黒髪の小鬼ちゃんも落ち着くだろう。……でもトレイン先生には見つからないようにね?一般人に魔法を使ったなんて知られたら怒られる。あくまでこっそりと、丁寧にだ。できるかい?」
「……わかった!オレがみんなを守るぜ!」
寮長としての顔をしたカリムは、ジャミルたちを守るためにマジカルペンを構えた。
「ああ、よかった……マジカメモンスターがいなくなった」
「お前たち、なにがあったのか洗いざらい話してもらおうか」
無事マジカメモンスターを追い出せてほっとするサムの横で、トレインが険しい顔つきでスカラビア寮生たちを見る。
未だ苛立っているジャミルの隣でカリムは口を開いた。
「それがさあ……」
「アイツら、どこでもお構いなしにポイ捨てするんです!」
「「ポイ捨て?」」
「ゴミ箱の周辺を見てください」
ポイ捨てという単語に2人が首を傾げると、ジャミルは設置されているゴミ箱のほうを指さした。
「ふむ、ゴミ箱の周辺……うっ!すごい悪臭だ!!甘ったるい香りの中にツンとすえた腐臭が混ざっている……」
「捨てられているのは……ミステリーショップで売っている『ナイトレイヴンカレッジワッフル』じゃないか!」
ゴミ箱の中にあるワッフルを見て、サムは目を見開く。
しかも数は1個や2個どころではなかった。
「…ゴミ箱から溢れかえって地面や草木の中にもたくさん捨てられている。ナイトレイヴンカレッジの林檎をジャムにした特製ワッフルだったのに……一体なにが悪かったんだ!?」
「問題は味ではありません。マジカメモンスターはただ可愛いワッフルの写真を撮って、マジカメに上げたかっただけ。食べるためにワッフルを買ったんじゃないんです。だから、写真を撮った後は『今お腹いっぱい』『持ち歩くの面倒くさい』と言って……すぐにワッフルを捨てる!」
「食べ物を粗末にするとはなんと罰当たりな奴らだ」
ワッフルが捨てられた理由を聞いて、トレインは嘆かわしいとばかりに言う。
食べ物を食べずに捨ててはいけないことは、世界共通の常識だ。
その常識すら捨てたマジカメモンスターに、さすがのトレインも憤りを感じた。
「じゃあジャミルくんは、捨てられたワッフルのために怒ってくれたのかい?優しい小鬼ちゃんだね。ありがとう……」
「違います!!」
感慨深く伝えたサムのお礼を、ジャミルは一喝した。
「腑抜けたことを言っている場合ではありません。食べ物を捨てると…………“ヤツ”らが出る!」
「「やつら……?」」
2人が首を傾げた直後、ゴミ箱でカサカサ……ッと音がする。
その音の発生源は――大小さまざまな虫だ。
「うわ―――――ッ!!出た!“ヤツ”だ!」
「やつって……」
「もしかして、捨てられたワッフルに集まっている虫のことか?」
「そ、そ、そうです!!!」
「ミステリーショップの周りでは、スカラビアの小鬼ちゃんたちがハロウィーンをしているんだ。トレイン先生、一緒に様子を見に行ってくれるかい?」
「いいだろう。しかしスカラビアだろう?彼らなら心配はいらない。寮長のアジームは、少しとぼけたところはあるが大らかな生徒だ。そうそう揉め事は起こすまい」
サムの言葉にトレインは客観的な意見を述べる。
「それに、もしなにかトラブルが起こったとしても……スカラビアは副寮長のバイパーがしっかりしている。万が一寮生が暴走してアジームの手に負えない事態になっていても、バイパーがなんとかするはずだ。安心して見に行くとしよう」
「そうだね!」
そんな会話をしながら購買部へ着いた直後、2人は目の前の光景に絶句した。
何故なら……。
「もう我慢ならない!すべて焼き払ってやる!!!!!!!!!!」
「うわージャミル、落ち着け!マジカルペンをしまえよー!こんなに布がたくさんあるところで火の魔法を使ったら、ぜーんぶ丸焦げになっちまうって!」
「そのつもりでやってるんだ!」
「だ、誰かジャミルを止めてくれ~!」
「なにをやっているんだバイパー!?」
本来ならストッパーに回るはずのジャミルが暴走しており、カリムがそれを抑えるという事態になっていた。
さすがのトレインも大声を上げて制止するが、ジャミルは睨みつけながら言った。
「トレイン先生……止めないでください。アイツらが言うことを聞かないからこうする他ないんです!」
「あいつら……?」
ジャミルの言葉にトレインが首を傾げると、向こうでスマホを構えているマジカメモンスターが騒ぎ始めた。
「え、なに?花火的なイベント?」
「超エモじゃん!見学しよう」
「周りの様子を一切気にせず、楽しそうにへらへらと携帯電話を構えている…………マジカメモンスターがここにも出たのか!」
「ピュ~ゥ!いっちょアガルのオナシャース!」
囃し立てるマジカメモンスターに、ジャミルは冷笑を浮かべた。
「ふっ。そんなにお望みならやってやるよ……。派手な花火を、ドッカーンとな!!!」
「こら、バイパーやめなさい!」
「どうしよう。このままじゃハロウィーンがめちゃくちゃになっちまう……」
オーバーブロットしたように吹き飛ばす気満々のジャミルをトレインも抑える。
それを見て、カリムが悩み始めたのを見計らいサムが小声で話しかける。
「Hey、金ピカの小鬼ちゃん!このままじゃミステリーショップがローストされる。客を追い出して、俺の店を守ってくれ!」
「え、お客さんを追い出す?魔法でってことか?」
サムからのお願いに、カリムは目を丸くする。
さすがの彼も一般人に魔法を使うのは禁止されていることは知っているからこそ、その反応は正しかった。
「ああ。マジカメモンスターがいなくなれば黒髪の小鬼ちゃんも落ち着くだろう。……でもトレイン先生には見つからないようにね?一般人に魔法を使ったなんて知られたら怒られる。あくまでこっそりと、丁寧にだ。できるかい?」
「……わかった!オレがみんなを守るぜ!」
寮長としての顔をしたカリムは、ジャミルたちを守るためにマジカルペンを構えた。
「ああ、よかった……マジカメモンスターがいなくなった」
「お前たち、なにがあったのか洗いざらい話してもらおうか」
無事マジカメモンスターを追い出せてほっとするサムの横で、トレインが険しい顔つきでスカラビア寮生たちを見る。
未だ苛立っているジャミルの隣でカリムは口を開いた。
「それがさあ……」
「アイツら、どこでもお構いなしにポイ捨てするんです!」
「「ポイ捨て?」」
「ゴミ箱の周辺を見てください」
ポイ捨てという単語に2人が首を傾げると、ジャミルは設置されているゴミ箱のほうを指さした。
「ふむ、ゴミ箱の周辺……うっ!すごい悪臭だ!!甘ったるい香りの中にツンとすえた腐臭が混ざっている……」
「捨てられているのは……ミステリーショップで売っている『ナイトレイヴンカレッジワッフル』じゃないか!」
ゴミ箱の中にあるワッフルを見て、サムは目を見開く。
しかも数は1個や2個どころではなかった。
「…ゴミ箱から溢れかえって地面や草木の中にもたくさん捨てられている。ナイトレイヴンカレッジの林檎をジャムにした特製ワッフルだったのに……一体なにが悪かったんだ!?」
「問題は味ではありません。マジカメモンスターはただ可愛いワッフルの写真を撮って、マジカメに上げたかっただけ。食べるためにワッフルを買ったんじゃないんです。だから、写真を撮った後は『今お腹いっぱい』『持ち歩くの面倒くさい』と言って……すぐにワッフルを捨てる!」
「食べ物を粗末にするとはなんと罰当たりな奴らだ」
ワッフルが捨てられた理由を聞いて、トレインは嘆かわしいとばかりに言う。
食べ物を食べずに捨ててはいけないことは、世界共通の常識だ。
その常識すら捨てたマジカメモンスターに、さすがのトレインも憤りを感じた。
「じゃあジャミルくんは、捨てられたワッフルのために怒ってくれたのかい?優しい小鬼ちゃんだね。ありがとう……」
「違います!!」
感慨深く伝えたサムのお礼を、ジャミルは一喝した。
「腑抜けたことを言っている場合ではありません。食べ物を捨てると…………“ヤツ”らが出る!」
「「やつら……?」」
2人が首を傾げた直後、ゴミ箱でカサカサ……ッと音がする。
その音の発生源は――大小さまざまな虫だ。
「うわ―――――ッ!!出た!“ヤツ”だ!」
「やつって……」
「もしかして、捨てられたワッフルに集まっている虫のことか?」
「そ、そ、そうです!!!」