スケアリー・モンスターズ
教師たちがそれぞれの会場で出向く中、クルーウェルはメインストリートを歩きながら魔法薬学室へと向かっていた。
「問題が起こっていないか様子を見てこいというようなことを学園長は言っていたが……オクタヴィネルは良く言えば冷静。悪く言えば計算高い。仮にマジカメモンスターが現れたとしてもうまく対処していることだろう。まあ、魔法薬学室は俺の管轄だし念のために様子を見ておくか」
そう呑気に言いながら魔法薬学室に向かったクルーウェルに待っていたのは……。
「チョロチョロ逃げてんじゃねぇぞ雑魚どもが!大人しく絞められろや!」
「うわやっべーわ!スッゲー迫力だわ!」
「ナイトレイブンカレッジ生めっちゃ怖ぇ~!」
「こんな衝撃映像、絶対バズるじゃん!ムービー撮っとこ」
「あはは!お前ら余裕あんねぇ。全員楽しく、海底でお散歩させてやるよ!!!」
周囲のセットを破壊しながらマジカメモンスターを追うフロイド。
「フロイド、せっかくのセットが壊れるでしょう!ジェイドも黙って見ていないで止めろ!」
「ですが、悪いのはゲストの方では?フロイドに非はないかと思います」
「はあ。まったく、お前たちは……。やるなとは言っていません。ここでは暴れるな、と言っているんです。やるなら外で。後始末も含めてきちんとお願いします」
「ステ―――――――――イ!」
そして傍観するジェイドと物騒なことをしようとしているアズールを見て、クルーウェルは我慢できず前に出た。
「これは一体なんの騒ぎだ!?フロイド・リーチ、マジカルペンを降ろせ!寮長も副寮長も、揉め事の片棒をかつごうとするな」
「しかし、あのお客様には話が通じないんです。僕たちも困っていまして……」
「言葉が通じないゲストならば言葉以外での訴えかけもやむなしでは?」
「……」
2人の言い分も正しいが、それでもこのままではいかない。
そう考えたクルーウェルは、ある提案をした。
「フロイド・リーチを止めないなら、お前たちがマジカメモンスターを追い出せ。ただし怪我をさせないようにだぞ。トレイン先生に知られると厄介だから、あくまでこっそりだ。お前たちはハロウィーン運営委員でもある。自分の寮の問題は自分で解決しろ!」
「先生がそうおっしゃるのであれば……。いきますよ、ジェイド」
「かしこまりました」
クルーウェルの提案を聞いたアズールはいつもの支配人としての笑みを浮かべ、ジェイドは忠実な部下として返事をするのだった。
「これでよそ者はいなくなったな。……さて。おいたをしたわけを聞こうじゃないか、リーチ」
「は?なにその言い方ムカつく。オレ全然悪くねぇし」
マジカメモンスターを追い出した後、クルーウェルは暴れていたフロイドに問いかける。
フロイドは苛立たしげに言うと、その横でアズールとジェイドが説明した。
「彼らは、私たちが注意しても『自撮り棒』を使った撮影をやめなかったんです。こんな狭い室内で長物を振り回したら人や物にぶつかって、とても危険でしょう?私たちは大切な設備とお客様方を守ろうと必死に対処したんですよ」
「それに、彼らは怒ったフロイドの写真を撮ってマジカメに上げようとしていました。真剣に注意している相手にパシャパシャとフラッシュを向けるのは非常識では?」
「お前たちの意見にも一理あるが……」
「あ、あの……」
事情を聞いたクルーウェルが言おうとした瞬間、近くの寮生が控えめな態度で言った。
「フロイドさんは、失礼なお客に対してもずっと我慢して丁寧に注意していました」
「そうそう。寮の全員で準備してきたハロウィーンだからって、見たこともないぐらい辛抱強くて……あんな温厚なフロイドさんは見たことなかった!僕は夢でも見てるのかと思いました!」
「そうです!それなのに、相手が全然言うことを聞かなかったんです!」
フロイドをよく知る寮生の援護射撃に、フロイド自身も同意した。
「だよなぁー!?悪いのはあっちだっつーの。アイツら、薬品のたくさん入った棚を棒で倒した後もヘラヘラ笑って謝んなかったし……」
「なに!?薬品棚を倒した!?」
フロイドの言葉にクルーウェルは大声を上げる。
この倉庫の薬品棚には貴重な薬品が保管されており、中には入手困難な代物さえある。
「…………」
慌てて薬品棚があるとこを見て、床に落ちた瓶と液体を見て絶句する。
「ほ、本当だ……貴重な薬品がめちゃくちゃになっている……!」
無残な惨状を見たクルーウェルは、眦を吊り上げながらフロイドたちのほうを振り返った。
「…………こんの駄犬共が!なぜもっと早くにマジカメモンスターを追い払わなかった!」
「ええー!言ってること無茶苦茶じゃね!?イシダイせんせぇがオレを止めたじゃん」
「ビークワイエット!お前がしようとしていたのは喧嘩だ。客に危害を加えろとは言っていない。番犬になれと言っているんだ」
若干八つ当たりされた感はあるが、クルーウェルの言い分は正しい。
それでも納得いかないフロイドが拗ねている横で、クルーウェルは言った。
「貴重な品が集まるこの場所でこれ以上の粗相は許さない!マジカメモンスターの迷惑行為も、寮生との喧嘩もご法度だ。運営委員でしっかり防ぐように!」
「……わかりました。これ以上の迷惑はおかけ致しません」
クルーウェルの言葉にアズールが了承するも、小さくため息を吐いた。
「やれやれ。マジカメモンスターと寮生のどちらにも気を払わなければならないとは……」
「なかなかやりがいのありそうな仕事ですね」
小声でぼやくアズールの横で、ジェイドは楽しそうに言う。
その光景を室内に侵入しドアから覗いていたカラスは、静かに立ち去ると今度は購買部へと飛んだ。
「問題が起こっていないか様子を見てこいというようなことを学園長は言っていたが……オクタヴィネルは良く言えば冷静。悪く言えば計算高い。仮にマジカメモンスターが現れたとしてもうまく対処していることだろう。まあ、魔法薬学室は俺の管轄だし念のために様子を見ておくか」
そう呑気に言いながら魔法薬学室に向かったクルーウェルに待っていたのは……。
「チョロチョロ逃げてんじゃねぇぞ雑魚どもが!大人しく絞められろや!」
「うわやっべーわ!スッゲー迫力だわ!」
「ナイトレイブンカレッジ生めっちゃ怖ぇ~!」
「こんな衝撃映像、絶対バズるじゃん!ムービー撮っとこ」
「あはは!お前ら余裕あんねぇ。全員楽しく、海底でお散歩させてやるよ!!!」
周囲のセットを破壊しながらマジカメモンスターを追うフロイド。
「フロイド、せっかくのセットが壊れるでしょう!ジェイドも黙って見ていないで止めろ!」
「ですが、悪いのはゲストの方では?フロイドに非はないかと思います」
「はあ。まったく、お前たちは……。やるなとは言っていません。ここでは暴れるな、と言っているんです。やるなら外で。後始末も含めてきちんとお願いします」
「ステ―――――――――イ!」
そして傍観するジェイドと物騒なことをしようとしているアズールを見て、クルーウェルは我慢できず前に出た。
「これは一体なんの騒ぎだ!?フロイド・リーチ、マジカルペンを降ろせ!寮長も副寮長も、揉め事の片棒をかつごうとするな」
「しかし、あのお客様には話が通じないんです。僕たちも困っていまして……」
「言葉が通じないゲストならば言葉以外での訴えかけもやむなしでは?」
「……」
2人の言い分も正しいが、それでもこのままではいかない。
そう考えたクルーウェルは、ある提案をした。
「フロイド・リーチを止めないなら、お前たちがマジカメモンスターを追い出せ。ただし怪我をさせないようにだぞ。トレイン先生に知られると厄介だから、あくまでこっそりだ。お前たちはハロウィーン運営委員でもある。自分の寮の問題は自分で解決しろ!」
「先生がそうおっしゃるのであれば……。いきますよ、ジェイド」
「かしこまりました」
クルーウェルの提案を聞いたアズールはいつもの支配人としての笑みを浮かべ、ジェイドは忠実な部下として返事をするのだった。
「これでよそ者はいなくなったな。……さて。おいたをしたわけを聞こうじゃないか、リーチ」
「は?なにその言い方ムカつく。オレ全然悪くねぇし」
マジカメモンスターを追い出した後、クルーウェルは暴れていたフロイドに問いかける。
フロイドは苛立たしげに言うと、その横でアズールとジェイドが説明した。
「彼らは、私たちが注意しても『自撮り棒』を使った撮影をやめなかったんです。こんな狭い室内で長物を振り回したら人や物にぶつかって、とても危険でしょう?私たちは大切な設備とお客様方を守ろうと必死に対処したんですよ」
「それに、彼らは怒ったフロイドの写真を撮ってマジカメに上げようとしていました。真剣に注意している相手にパシャパシャとフラッシュを向けるのは非常識では?」
「お前たちの意見にも一理あるが……」
「あ、あの……」
事情を聞いたクルーウェルが言おうとした瞬間、近くの寮生が控えめな態度で言った。
「フロイドさんは、失礼なお客に対してもずっと我慢して丁寧に注意していました」
「そうそう。寮の全員で準備してきたハロウィーンだからって、見たこともないぐらい辛抱強くて……あんな温厚なフロイドさんは見たことなかった!僕は夢でも見てるのかと思いました!」
「そうです!それなのに、相手が全然言うことを聞かなかったんです!」
フロイドをよく知る寮生の援護射撃に、フロイド自身も同意した。
「だよなぁー!?悪いのはあっちだっつーの。アイツら、薬品のたくさん入った棚を棒で倒した後もヘラヘラ笑って謝んなかったし……」
「なに!?薬品棚を倒した!?」
フロイドの言葉にクルーウェルは大声を上げる。
この倉庫の薬品棚には貴重な薬品が保管されており、中には入手困難な代物さえある。
「…………」
慌てて薬品棚があるとこを見て、床に落ちた瓶と液体を見て絶句する。
「ほ、本当だ……貴重な薬品がめちゃくちゃになっている……!」
無残な惨状を見たクルーウェルは、眦を吊り上げながらフロイドたちのほうを振り返った。
「…………こんの駄犬共が!なぜもっと早くにマジカメモンスターを追い払わなかった!」
「ええー!言ってること無茶苦茶じゃね!?イシダイせんせぇがオレを止めたじゃん」
「ビークワイエット!お前がしようとしていたのは喧嘩だ。客に危害を加えろとは言っていない。番犬になれと言っているんだ」
若干八つ当たりされた感はあるが、クルーウェルの言い分は正しい。
それでも納得いかないフロイドが拗ねている横で、クルーウェルは言った。
「貴重な品が集まるこの場所でこれ以上の粗相は許さない!マジカメモンスターの迷惑行為も、寮生との喧嘩もご法度だ。運営委員でしっかり防ぐように!」
「……わかりました。これ以上の迷惑はおかけ致しません」
クルーウェルの言葉にアズールが了承するも、小さくため息を吐いた。
「やれやれ。マジカメモンスターと寮生のどちらにも気を払わなければならないとは……」
「なかなかやりがいのありそうな仕事ですね」
小声でぼやくアズールの横で、ジェイドは楽しそうに言う。
その光景を室内に侵入しドアから覗いていたカラスは、静かに立ち去ると今度は購買部へと飛んだ。