スケアリー・モンスターズ

サバナクロー寮のスタンプラリー会場・コロシアム。
ジャックと共にやってきたバルガスとロゼッタは、マジカメモンスターに恫喝する寮生たちを見た。

「おいテメェらなめてんじゃねぇぞゴラァ!」

「痛い目にあわねぇとわかんねぇのかアァン!?」

「ひゅ―――!迫力はんっぱね~~!」

「記念に写真撮るんで今のもっかいオナシャース!」

「「なんだとォ!?」」

恫喝されているというのにさらに煽るマジカメモンスターに、寮生たちが怒声を上げる。

バルガス「ゲ、ゲストとサバナクローの生徒たちがもめている。一触即発状態じゃないか!」

ジャック「俺がいくら止めても両方とも聞いてくれないんです。どう対応すれば良いのかわかんなくて……!」

「レオナさんはどうしたの?彼が黙ってこの状況を見てるはずがないと思うけど‥‥」

ジャック「それが……」

ロゼッタの問いにジャックは気まずそうにある方向に指をさす。
そこにいたのは……。

レオナ「おい、お前ら……………………全員生きて帰すんじゃねぇぞ!」

「「お―――!」」

バルガス「止めるどころか先導している!?」

ジャック「はい……一番キレてるのがレオナ先輩なんです……。ラギー先輩とハロウィーン運営委員のみんなでなんとか抑えてたんですけど、もう限界で……」

ハーツラビュルでもリドルがキレていたが、あそこにはストッパーであるトレイを含む寮生が数多くいた。
しかし、このサバナクローでのストッパーはジャックとラギー、それ以外だとほんの数人しかいない。それに、レオナを唯一制御できるのはロゼッタだけだ。

ラギー「あっ、ジャックくん!ロゼッタちゃんとバルガス先生を連れてきてくれたんッスね!?オレのユニーク魔法でレオナさんを抑えるのももう限界ッス!早くどうにかしてー!」

ジャックが帰って来るまでレオナを抑えていてくれたラギーの切実な叫びに、バルガスは真剣な面立ちになる。

バルガス「このままでは怪我人が出てしまう……。……よし!ここは公平に、筋肉で勝負だ!」

レオナ「すっこんでろ!!!!!」

バルガスの的外れな言葉にレオナが怒声を上げた。

ラギー「あーあー……もうどうしようもないッスね。ジャックくん。オレらでこっそり魔法を使ってゲストを追い返しちまいましょう!」

ジャック「え、でも一般人に魔法なんて……!」

ラギー「ここでやんないと、逆に怪我人が増えることになるッス。楽しいハロウィーンにしたいなら大人になんなきゃ!」

ジャック「う……しょうがねえ!」

ラギーの言葉に覚悟を決めたジャックは、一緒にマジカルペンを構えた。

「私が彼らの気を引きますから、その間に魔法を」

ラギー「何する気ッスか?」

「内緒よ♪」

ロゼッタはラギーらに対してそう微笑むと、騒ぎの中に入っていった。

「あなた達、いい加減にしなさい💢」

「キャン」  「え・・・」

いきなりロゼッタが叫んだことにより、マジカメモンスターはビビり、サバナクローの寮生たちは耳と尻尾が逆立った。

レオナもロゼッタがこんなに大声を出すなんて…と驚いていた。

ロゼッタは、寮生たちの方を向いて、言った。

「楽しんでもらうために、一般客の方に入ってもらっているんです!そんな態度で接したらだめだってわかるでしょう!!」

「でm『黙ってなさい!』キャン すんません」

「このような出来事が学園の印象を大きく左右させるんです‥あなた達はそれをわかっているんですか!?」

「「すみませんでした!!姐さん!!」」

「(ロゼッタちゃんの本気の怒り‥‥怖いッスねえ~・・・それじゃあそれじゃあ、今のうちに)」

魔法により、マジカメモンスターが動き出す

それに気づいた寮生がロゼッタに報告しようとするが…

「ね、姐さん・・・『話はまだ終わっていませんよ』・・すんません」

「「(その笑顔が怖~)」」

「そして…レオナさん。サバナクロー寮の長として、この行動はいけないことですよ」

「・・・・・」

「あなたは、ラギー君やジャック君のようにこの騒動を停める立場にあるんです。わかっていますか?」

「ああ・・」

「「(寮長の耳と尻尾が‥!?こんなの見たことねえぞ)」」

「今日のご飯・・・お肉減らしますからね…罰です」

「悪かった」

「「(罰が可愛いような‥‥サバナらしくねえ・・・)」」

ジャックとラギーによってマジカメモンスターたちは会場から追い出された。
いなくなった獲物たちに、レオナは舌を打つ。

レオナ「チッ、逃げたか。命拾いしたなァ。……今度会ったらソテーにして食ってやる!ガルルルッ」

「レオナさん!」

レオナ「…悪い」

ロゼッタが唸るレオナに私はまだ怒っているという意思表示をすると、レオナの耳は垂れ、そばにいた寮生たちが声を上げた。

「寮長は悪くねえ!先にちょっかいをかけてきたのはあっちだ!」

「そうだそうだ!」

「奴ら、俺らのハロウィーンの展示品を勝手にいじくりやがったんすよ!」

「展示品を荒らされたんですか?」

会場の展示品に触れるのは基本的にNGだ。
生徒が丹精込めて作ったものを壊されては、せっかくのハロウィーンが台無しになってしまう。

バルガス「それは確かに客も悪いが……一体なんのためだ?」

「理由はこのスマホを見ればわかります。さっき見つけたネット記事です」

「ん?なになに……『なんでも願いが叶っちゃう!?ナイトレイブンカレッジの海賊船のウワサ!』……なんだこれは」

「ナイトレイブンカレッジにある幽霊船は昔々全ての願い事をかなえた伝説の海賊の船で……その海賊の宝物を身に付けた写真をマジカメにアップすると、海賊ゴーストのパワーが宿る。んで、そのパワーのおかげで写真を撮った人の願い事が叶っちゃう!……だそうです。しかも・・・ロゼッタさんが仮装している妖精を写真に移すといいとかなんとか・・・・ロゼッタさんが今日ここに来なくてよかったです。」

ジャックの話を聞いて、バルガスは頭痛をこらえる顔をした。
そもそもこの幽霊船も宝物も全部寮の手作りだし、そんな伝説もパワーもない。

ロゼッタも、それには驚いた。

「んなわけぇだろうが。アイツら全員頭空っぽか?」

「もちろん全員が全員、こんな噂話を信じてるわけじゃないんでしょうけど……流行ってるから、とりあえず乗っといてマジカメに写真をアップしたいんでしょーね」

「飾ってたレプリカのアクセサリーを勝手に付けてパシャパシャ写真を撮って……用が済んだら、適当なところにポイッ。会場がめちゃくちゃだ。許せねえ!」

「展示物のガイコツ船長に着せてた服を引き剥がして着た写真を撮るヤツまで出てきやがった!」

展示物に手を出され憤る寮生に、さっきまで怒っていたロゼッタも冷静になった。

「……理由はよくわかりました。。ですが、暴力ではなく言葉で伝えられたはずです。暴力は暴力しか生みません。これからはやめてくださいね。」

「「すみませんでした!姐さん!!」」

ここにいるサバナクロー寮生全員がロゼッタに謝った。
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