スケアリー・モンスターズ
アズールの本音を聞き逃さなかったイデアのジド目に、本人は平然と笑顔で言った。
アズール「お前もそう思うでしょう、ジェイド」
ジェイド「はい。イデアさんとオルトくんを除け者にして『ハロウィーンウィーク』を行うことなどできません。たくさんのお客さんがいらっしゃっている今年のハロウィーン、みんなで楽しみましょう。そうすればオルトくんもきっとハロウィーンのことをもっと好きになれるかと」
イデア「2人とも絶対なにか企んでるじゃん……」
オクタヴィネル2人組の顔を見て、イデアは完全に何かの思惑があると察していた。
イデア「……でも無駄だよ。作品に誤った先入観を与えるなんて、ファンの風上にも置けない行為……拙者は絶対にしませんから!」
アズール「なるほど……つまりイデアさんの『パンプキン・ホロウ』への情熱はその程度のちっぽけなものだったんですね」
イデア「……は?今の話のどこをどう聞いたらそう解釈できるわけ?」
アズールの指摘に、イデアは困惑する。
まさか作品への情熱を引き合いだされ、一ファンである彼も動揺した。
アズール「『パンプキン・ホロウの魅力を伝えるためにプロジェクションマッピングと実写のショーをする』。イデアさんは『ハロウィーンウィーク』が始まる前にみんなの前でこう言いました。中止するということは映画の宣伝を諦めたということ」
イデア「そ、それは……お客さんたちがなにを見ても『かわいい』しか言わないから……」
ジェイド「元々映画に興味のない正反対の人たちに訴求できてこその広報なのでは?」
イデア「うっ。厳しい大人の事情……つらいが真理すぎる……」
ジェイドの指摘は図星で、イデアも反論はできなかった。
アズール「つまりプロジェクションマッピングにはまだまだ改善の余地がある。それを中止して、全て投げ出すということは……イデアさんの映画への愛情が足りてないということに他ならない!」
イデア「は~~~~!?」
アズールの言葉に、イデアは今日一番の大声を上げた。
イデア「拙者は通常版・限定版・復刻スチールケース版、ディレクターズカット版のディスクにトイ系も揃えている筋金入りの『パンプキン・ホロウ』マニアですぞ!?愚弄するのも大概にしなされ!」
アズール「しかし、それを伝えられないようでは意味がありません」
イデア「できますし!?伝えられますし!?拙者を舐めないでいただきたい!!ホラー映画の作法を知らない一般人でもわかるぐらい面白くて、怖い……『パンプキン・ホロウ』の魅力たっぷりのハロウィーンを、作ってやろうではありませんか!」
すっかりやる気になったイデアに、アズールとジェイドは薄く笑みを浮かべる。
しかし興奮気味のイデアはそれに気づかず、オルトに指示を出した。
イデア「オルト、寮のみんなと一緒にプロジェクションマッピングのデータを修正しよう。僕は名シーンを見せることにこだわりすぎてそこまでのストーリーを疎かにしていた……。パンプキン騎士ナイトは怖い存在であるとわかる映画の導入部分からダイジェストで映像を作ろう!
より映画に忠実に、より恐ろしく、でもどうしても続きが気になるような……見ている人をドキドキさせるショーに変更!……あ。あとハートに見えそうなツタの映像は全部修正して。拙者もラストの登場シーンの完成度を限界まで高めるため、演技の練習に励む!みんなで一緒に頑張ろう!」
オルト「こ、こんなに学園の行事にやる気のある兄さんは見たことがない……。兄さんがやりたいなら、もちろん僕も手伝うよ!」
ジェイド「ああよかった。みんなでハロウィーンを楽しみましょう」
オルト「うん!ありがとう、2人とも」
オルトが笑顔で感謝を伝えると、ジェイドはあるものを取り出した。
ジェイド「お礼なんて、そんな…………でしたらこちら、図書館の入り口に見本として置いていただけますか?」
オルト「えっ、見本?これは、パンフレットかな。ええっとなになに……」
ジェイドから受け取ったのは、パンフレット。
それを見て、オルトはパンフレットを開き、その中身を見て首を傾げる。
オルト「『一番ハロウィーンを楽しむ!ナイトレイブンカレッジ最強攻略マップ』……?」
アズール「今、『ハロウィーンウィーク』のために、島外からたくさんのお客さんがいらっしゃっています。スタンプラリーのマップだけを頼りに広い学園を回るのは大変でしょう?」
ジェイド「ですので、『ハロウィーンウィーク』初日の動員数を見てすぐ超特急で……有志の寮生にガイドブックを作っていただきました。全16ページ、1冊1200マドルで販売中です」
オルト「お、お金とるんだ……」
こういうのは普通、無料で配られるものだが彼らは有料にした。
オルトの中にある無数にデータから、『タダ同然の品を売りつける悪徳商人』の情報が浮かんでしまった。
アズール「イデアさんが作ったプロジェクションマッピングは目玉のショーとして見開きの特集を組んでいます。もしも中止になったらどうしようかと思いましたよ」
ジェイド「刷り直しとなると、大量に印刷した分が全て無駄になってしまいますからね」
「「よかったよかった!」」
オルト「なるほど……だから『ハロウィーンをやろう』って必死だったんだね……」
2人の思惑を知り、オルトは肩を竦める。
しかしダシにされたイデアは怒るどころかむしろ気にしていなかった
イデア「見開き特集?どうせなら折り込みポスターにしてくれもよかったぐらいだ。アズール氏、ジェイド氏、拙者の職人魂に火をつけた責任は取ってもらうよ。
そのガイドブックをたくさん売ってたくさんイグニハイドを宣伝してくだされ。……そして拙者は『パンプキン・ホロウ』を宣伝する!!」
アズール「もちろん、お任せください。より面白いプロジェクションマッピングになればお客様ももっと楽しんでくれることでしょう」
ジェイド「お客様も、僕たちも、みんな幸せになれる。今年のハロウィーンは素晴らしいですね」
「「「ハッピーハロウィーン!」」」
オルト「ええっと……ハッピーハロウィーン!……でいいのかな?」
ツッコミ不在という状況の中、すっかり有頂天になっている3人を見てオルトは1人首を傾げるのだった。
アズール「お前もそう思うでしょう、ジェイド」
ジェイド「はい。イデアさんとオルトくんを除け者にして『ハロウィーンウィーク』を行うことなどできません。たくさんのお客さんがいらっしゃっている今年のハロウィーン、みんなで楽しみましょう。そうすればオルトくんもきっとハロウィーンのことをもっと好きになれるかと」
イデア「2人とも絶対なにか企んでるじゃん……」
オクタヴィネル2人組の顔を見て、イデアは完全に何かの思惑があると察していた。
イデア「……でも無駄だよ。作品に誤った先入観を与えるなんて、ファンの風上にも置けない行為……拙者は絶対にしませんから!」
アズール「なるほど……つまりイデアさんの『パンプキン・ホロウ』への情熱はその程度のちっぽけなものだったんですね」
イデア「……は?今の話のどこをどう聞いたらそう解釈できるわけ?」
アズールの指摘に、イデアは困惑する。
まさか作品への情熱を引き合いだされ、一ファンである彼も動揺した。
アズール「『パンプキン・ホロウの魅力を伝えるためにプロジェクションマッピングと実写のショーをする』。イデアさんは『ハロウィーンウィーク』が始まる前にみんなの前でこう言いました。中止するということは映画の宣伝を諦めたということ」
イデア「そ、それは……お客さんたちがなにを見ても『かわいい』しか言わないから……」
ジェイド「元々映画に興味のない正反対の人たちに訴求できてこその広報なのでは?」
イデア「うっ。厳しい大人の事情……つらいが真理すぎる……」
ジェイドの指摘は図星で、イデアも反論はできなかった。
アズール「つまりプロジェクションマッピングにはまだまだ改善の余地がある。それを中止して、全て投げ出すということは……イデアさんの映画への愛情が足りてないということに他ならない!」
イデア「は~~~~!?」
アズールの言葉に、イデアは今日一番の大声を上げた。
イデア「拙者は通常版・限定版・復刻スチールケース版、ディレクターズカット版のディスクにトイ系も揃えている筋金入りの『パンプキン・ホロウ』マニアですぞ!?愚弄するのも大概にしなされ!」
アズール「しかし、それを伝えられないようでは意味がありません」
イデア「できますし!?伝えられますし!?拙者を舐めないでいただきたい!!ホラー映画の作法を知らない一般人でもわかるぐらい面白くて、怖い……『パンプキン・ホロウ』の魅力たっぷりのハロウィーンを、作ってやろうではありませんか!」
すっかりやる気になったイデアに、アズールとジェイドは薄く笑みを浮かべる。
しかし興奮気味のイデアはそれに気づかず、オルトに指示を出した。
イデア「オルト、寮のみんなと一緒にプロジェクションマッピングのデータを修正しよう。僕は名シーンを見せることにこだわりすぎてそこまでのストーリーを疎かにしていた……。パンプキン騎士ナイトは怖い存在であるとわかる映画の導入部分からダイジェストで映像を作ろう!
より映画に忠実に、より恐ろしく、でもどうしても続きが気になるような……見ている人をドキドキさせるショーに変更!……あ。あとハートに見えそうなツタの映像は全部修正して。拙者もラストの登場シーンの完成度を限界まで高めるため、演技の練習に励む!みんなで一緒に頑張ろう!」
オルト「こ、こんなに学園の行事にやる気のある兄さんは見たことがない……。兄さんがやりたいなら、もちろん僕も手伝うよ!」
ジェイド「ああよかった。みんなでハロウィーンを楽しみましょう」
オルト「うん!ありがとう、2人とも」
オルトが笑顔で感謝を伝えると、ジェイドはあるものを取り出した。
ジェイド「お礼なんて、そんな…………でしたらこちら、図書館の入り口に見本として置いていただけますか?」
オルト「えっ、見本?これは、パンフレットかな。ええっとなになに……」
ジェイドから受け取ったのは、パンフレット。
それを見て、オルトはパンフレットを開き、その中身を見て首を傾げる。
オルト「『一番ハロウィーンを楽しむ!ナイトレイブンカレッジ最強攻略マップ』……?」
アズール「今、『ハロウィーンウィーク』のために、島外からたくさんのお客さんがいらっしゃっています。スタンプラリーのマップだけを頼りに広い学園を回るのは大変でしょう?」
ジェイド「ですので、『ハロウィーンウィーク』初日の動員数を見てすぐ超特急で……有志の寮生にガイドブックを作っていただきました。全16ページ、1冊1200マドルで販売中です」
オルト「お、お金とるんだ……」
こういうのは普通、無料で配られるものだが彼らは有料にした。
オルトの中にある無数にデータから、『タダ同然の品を売りつける悪徳商人』の情報が浮かんでしまった。
アズール「イデアさんが作ったプロジェクションマッピングは目玉のショーとして見開きの特集を組んでいます。もしも中止になったらどうしようかと思いましたよ」
ジェイド「刷り直しとなると、大量に印刷した分が全て無駄になってしまいますからね」
「「よかったよかった!」」
オルト「なるほど……だから『ハロウィーンをやろう』って必死だったんだね……」
2人の思惑を知り、オルトは肩を竦める。
しかしダシにされたイデアは怒るどころかむしろ気にしていなかった
イデア「見開き特集?どうせなら折り込みポスターにしてくれもよかったぐらいだ。アズール氏、ジェイド氏、拙者の職人魂に火をつけた責任は取ってもらうよ。
そのガイドブックをたくさん売ってたくさんイグニハイドを宣伝してくだされ。……そして拙者は『パンプキン・ホロウ』を宣伝する!!」
アズール「もちろん、お任せください。より面白いプロジェクションマッピングになればお客様ももっと楽しんでくれることでしょう」
ジェイド「お客様も、僕たちも、みんな幸せになれる。今年のハロウィーンは素晴らしいですね」
「「「ハッピーハロウィーン!」」」
オルト「ええっと……ハッピーハロウィーン!……でいいのかな?」
ツッコミ不在という状況の中、すっかり有頂天になっている3人を見てオルトは1人首を傾げるのだった。