深海の商人

エリーゼSide

アズール君がオーバーブロットをしてから日付をまたぎ、アトランティカ記念博物館に写真を返す日がやってきました。

エ「うわーすげえ。中はこんな風になってんだ。」

デュ「伝説の海の王の像か…海の魔女以外にも海底にはいろんな偉人がいたんだな」

ジャック「この王様、なかなか鍛えてるじゃねえか。」

ジャック君の着眼点はそこなのね‥‥

ア「みなさん、ようこそアトランティカ記念博物館へ。本日は『モストロ・ラウンジ』の研修旅行・・・という名目で貸し切り営業となっておりますのでゆっくり楽しんでいってください」

グ「ふなっ、出たなタコ足アズール…と、思ったらお前は人間の姿のままなのか?」

ア「ええ、僕のようにタコ足の人魚はこの辺りではとても珍しいので‥‥こっそり写真を戻しに来たのに変に印象に残っても嫌ですから。」

ジェ「そんなに気にしなくても。写真に写っているまんまるおデブな人魚が貴方だとは、誰も気付きませんよ。」

フ「せっかく帰ってきたんだから、そんな不便な姿じゃなくて、元の姿に戻って泳ぎ回ればいいのに~。」

ア「フン。放っておいてください。じゃあ僕は写真をそっと元に戻してきますから…・みなさんはどうぞ館内をご覧ください。」

フ「あっちに人魚姫の銀の髪すきとか展示してあるよ。」

エ「さっきパンフで写真見たけどあれどう見ても櫛じゃなくてフォークじゃね?」

ジェ「フフフ…陸の人間にはそう見えるかもしれませんね。」

皆が気になるものを続々と見に行く中、私はアズール君のことが心配になり残ることにした。

ア「・・・あなたは行かないんですか?それにエリーゼさんも。」

監「本当に写真を返すまで、見張ります。エリーゼさんと」

「私は見張るつもりはなかったんだけど、アズール君のことが心配で残ったの。」

ア「疑り深いですね。ちゃんと戻しますよ。・・・昔の写真を全て消去すれば僕がクズでノロマなタコ野郎と馬鹿にされていた過去も消えるような気がしていたんです。海の間所は、悪行を働いていた過去を隠すことはせずその評判を覆す働きをして人々に認められた。僕は、彼女のようになりたいと言いながら…結局、過去の自分を認められず、否定し続けていただけだった。」

監「あなたはもう、魔法より凄い力を持っています」

ア「え・・・?」

「ユウの言う通りよ。努力は、魔法より習得が難しいものなの。」

ア「努力…僕が?・・・・ふっ。勝手に美談にするのはやめていただけますか?僕はただ、僕をバカにしたヤツらを見返してやりたかっただけですから。」

アズール君と話をしていたらグリム君がやってきた。何やら見せたいものがあるらしい。

グ「ユウ~!エリーゼ!向こうにでけぇ恐竜の骨みたいなのが置いてあったんだゾ!」

ジェ「あれは恐竜ではなくシードラゴンという海のモンスターですね。海の魔女の洞窟の入り口は、シードラゴンの骨で出来ていた…という言い伝えがあります。」

フ「あっちに海の魔女の大釜のレプリカとかもあるよ。」

デュ「なにっ。海にも大釜があるのか。」

エ「海ん中でどうやって温めんの?」

フ「エー、わかんね。アズール、説明してー。」

ア「いいでしょう。僕のツアーガイド代は高くつきますよ」

アズール君の顔が明るくなった。これで、もう、安心ね。
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