深海の商人

~オクタヴィネル寮~

ア「そこのお前の雷の魔法、その隣のヤツの運動能力全部、全部僕によこせぇ!」

スカラビア寮生「ひぃい~~~~っ!」

近くの生徒から次々に力を吸い取っていく、アズール君。能力を吸えば吸うほど水の色は黒く染まっていく。

ラ「アズール君、みんなからナニを吸ってんスか!?吸われたヤツらが次々倒れていく!」

レ「アイツのユニーク魔法、契約書を介さないと他人からすべての魔法を吸い取っちまうようだな。契約自体が魔法の効果を制御する役割を果たしていたんだろう。」

ラ「ええ!?怖すぎじゃないスか?」

「あのままでは、魔法の放出ばかり…・ブロットが…」

レ「ああ。そんな禁術クラスの魔法、反動であっという間にブロットの許容量を超えるぞ。」

「黒いオーラがすでに出始めているというのに…まだ吸い取っている…・レオナさんのものよりもオーラがすごい」

レ「あ?どういう・・・」

私がその質問に答えようとした時、ジェイド君とフロイド君が帰ってきた。

ジェ「アズール!貴方何をしているんです!」

フ「うわ、なにこれ、どーなってんの?」

ウィンディーネ『嫌な予感がして戻ってきたけれど、これは予想以上ね。』

『ウィンディーネ!』

ウィンディーネが戻ってきたということは‥‥あの子たちも‥‥

エ「げっ、何だこの騒ぎ!?」

デュ「アズールが暴れてる‥‥のか!?」

ジャック「アイツ、寮生たちの力を無理矢理吸い取ってるみてぇだ。」

グ「ヒェェ・・・レオナ!さてはオマエがいじめたんだゾ!?」

レ「俺のせいかよ。お前らが契約書を砂にしろっつったんだろ。」

メリッサ『ほったらかしにしてたら、あの子オーバーブロットするわよ。』

いつの間にか、メリッサもいた。だが、メリッサの言葉に皆、緊張が走る。

ア「ジェイド、フロイド、ああ、やっと戻ってきてくれたんですね。そこのバカどもせいで、僕の契約書がすべて無くなってしまったんです。だから、あなた達の力も僕にください。ねえ、僕にくださいよぉ!」

ジェ「お待ちなさい。あなたのユニーク魔法は強力すぎるゆえに、契約書無しには制御できないはず。そんなことをすればどうなるか、自分が一番よくわかっているでしょう!」

冷静さが欠けてしまったアズール君に言い聞かせるジェイド君。だが、その声は耳に届かない。

ア「だって、なくなっちゃったんですよ、全部‥‥アハハ・・・アハハッ!このままじゃ昔の僕に戻ってしまう!」

フ「あのサー、今のアズールって、昔のアズールよりずっとダサいんだけど。」

この前のレオナさんの時もそうだったけれど、こういう状況下において相手を煽ることはタブー。これはかなりまずい状況に・・・。

ア「あ~~~、そうですか。どうせ僕は1人じゃなにも出来ないクズでノロマなタコ野郎ですよ。だから、もっとマシな僕になるためにみんなの力を奪ってやるんです。美しい歌声も、強力な魔法も、全部僕のものだ!寄越しなさい、全てを!」

アズール君からさらにどす黒いものが溢れ出てくる。それによって能力を奪われた生徒たちの悲鳴が響き渡る。

フ「なんだよアレ?アズールの体から黒いドロドロが出てきてる。墨…じゃねーよな?」

ジェ「ユニーク魔法の使い過ぎです。ブロットが蓄積許容量を超えている!このままでは‥‥オバーブロットしてしまう!」

ア「あーっはっは!あーーーっはっはっは!」

アズール君の高笑いが響き渡り、彼の体には黒い影が覆われた。

「っう!」

レ「エリーゼ!」

先ほどよりも格段に強くなった痛みを感じた瞬間、アズール君はオーバーブロットした。

アズール君を見ると、黒いオーラが周りにまとわりつき、下半身がタコ足の姿をしている。

グ「ふな゛っ!アイツ、足がタコになったんだゾ!」

ジェ「あれが、海の中でのアズールの姿です。」

フ「あの後ろの何?俺でも絞められないほどデカイ!」

メリッサ『わー、随分と大きな化身。相当負のエネルギーが溜まってたのね。』

レ「今はアズールを正気に戻すのが最優先だ。」

ラ「じゃないと、オレ達もイソギンチャクにされちまうッス!」

レオナさんの時より胸の痛みが強い…けど…

「ウィンディーネ!!」

ウィンディーネ『あの化身を何とかしたいのね?』

「協力してくれる?」

ウィンディーネ『あなたが、無茶をしないと約束できるのなら。』

「それは・・・・・」

何も言い返せなくなった時、レオナさんがこう発言した。

レ「俺がエリーゼを無茶させないようにする。それでいいだろ?お前は止めたとしても突っ走るからな。」

レオナさん…

ウィンディーネ『獅子の子がいるのなら安心ね。無理しないようにちゃんと見張っててちょうだい。』

ジャック「で、どうするんスか…?」

ウィンディーネ『エリーゼ。歌を歌いなさい。私とメリッサで協力してあの子を弱らせるから、後は他の子に任せなさい。いいわね。あなたの力は必ずあのタコ坊やにと届けてあげる。』

メリッサ『任せて!この前以上の力出してあげる』

皆に聞こえるように大きな声で私は作戦を言った。

「皆さん!聞いてもらえますか?私が、アズール君にまとわりついている化身を弱らせます。その間、攻撃を仕掛けてください!必ず当たるはずです!お願いします!」

フ「エンゼルちゃんさあ、簡単に言ってるけど…それ、チョー難しいんじゃね?」

ラ「まず、あの化身にどうやって近づくんスか?」

ジャック「だが、このまま見てるだけじゃ何ともなんねえ。元に戻す方法がそれしかないならそれに賭けるしかねえな。」

レ「エリーゼ、出来るのか」

レオナさんは私の方をじっと見つめる。

「絶対にやり遂げて見せます!アズール君をあのままにはしておけません。私が化身を弱らせるので、アズール君から化身がはがれるよう攻撃してほしいんです!お願いします!」

私の強い意思が伝わったのか皆アズール君のオバーブロットを止めるため立ち上がった。

デュ「それが、エリーゼさんの最善策なら従います。」

エ「よっしゃー。いっちょやってやりますか!」

ラ「レオナさんの時も、エリーゼちゃんがやってくれたし、任せるしかなさそうッスね。」

レ「無茶しそうになったら、俺が止める‥良いな?」

ジェ「つまり、エリーゼさんの攻撃が当たるようにすればいいんですね。」

フ「なーんか、面白そー。」

「ありがとうございます。皆さん。じゃあ、始めます!」

アズール君のオーバーブロットを止めるため、私はウィンディーネに言われたとおり、歌を歌い始めた。

「あああ~あああ~♪あああ~ああ~あああ~♪」

メリッサ『その調子よ、頑張って!』

そういわれてアズール君の方をちらりと見ると、弱っているように見える。

ア「や、やめろ!!」

確実に弱っている・・この調子でと思ったとき、私の目の前にアズール君からの攻撃が迫っていた。

よけられない!!反射的に目をつぶってしまった。恐る恐る目を開けるが攻撃がこない・・・どうなって?

レ「ったく、気ーつけろ。」

レオナさんが防衛魔法ではじいてくれたみたいだ。

「!?レオナさん…ありがとうございます。」

レ「これはお前にしかできないことだ。しっかりやれ。」

レオナさんそう言われ、自信がついた私。また歌声に思いを乗せた。

「あああ~ああ~♪あああ~♪」

ウィンディーネ『準備できたわよ。良くやったわね。エリーゼ。』

ウィンディーネがそう言った瞬間あたりはものすごい水流に包まれた。その瞬間眠気が襲って、意識を手放した。レオナさんの声が最後聞こえたような気がした。

レ「エリーゼ!オイ、しっかりしろ!エリーゼ!!」
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