深海の商人

~オクタヴィネル寮~
エリーゼSide

ラ「シシシッ!うまく持ち出せましたね。」

「こんなに早く持ち出せるとは…」

こんなに早く持ち出せるとは思わず、開いた口がなかなかふさがらない。さすがはラギー君。

レ「フン、お前の手癖の悪さには恐れ入るな。」

ラ「絶対に取られたくないなら、ポケットにもしっかり鍵かけとかなきゃ。にしても、この契約書の量すごいッスね。5、600枚はありそう。」

ポケットにも鍵…か…すごい発想だけど、そんな事実現するのは難しいでしょうね。開けるのも大変そうだし…

レ「フン。この学園内に入るずっと前から悪徳契約を繰り返してコツコツため込んでたんだろうぜ。これで契約書はVIPルームの外に持ち出せた。あとは‥‥『俺こそが飢え、俺こそが乾き。お前から明日を奪うものー』


ユニーク魔法の詠唱を始めたレオナさん。あと少しで詠唱が終わるというところで、アズール君が叫びながらこちらに向かってきた。

ア「待ちなさい!!」

もうバレてしまったか。もうすくし時間を稼げると思ったのだけれど…

レ「・・・・・おっと、もうおでましか。それ以上こっちに近づくなよ。契約書がどうなっても知らないぜ。」

ア「か、返してください…それを返してください!」

この様子を見るにユウと私の仮説はあってたみたいね。

レ「おいおい、少しは取り繕えよ。おすましごっこはやめたのか?その慌てぶりを見るに、アイツとエリーゼの予想は当たってたらしいな。」

ア「なん・・・・だって?」

驚くアズール君を見て、私は昨日の夜のことを思い出していた。

***
昨晩~レオナの部屋~

レ「つまり、金庫に保管されている時なら、契約書は敗れる状態なんじゃねぇかって言いたいんだな?」

「ユウから聞いた話をもとに考えると恐らくそういうことになりますね。」

グ「・・・・ん?んんん?どういうことなんだゾ?」

ラ「あっ、言われてみれば確かに。ちょっとおかしいッスね。アズール君たちが言うとおり、契約書は触ると電量が流れたりして絶対に破けないっていうなら…厳重に金庫に入れて守る必要、なくないッスか?その辺に置いときゃいいッスよね。レオナさんの財布みたいに。」

グ「ハッ!金庫といえば…。アイツ、金庫にちょっと傷がついただけでめちゃくちゃ怒ってたんだゾ。」

「怒るということはそれだけ、金庫を壊されたらマズいってことになります。」

ラ「なるほどねー。大事なもんは金庫にしまうのが常識だから、疑問にすら思ってなかったッス。庶民感覚ゼロの王子様行動もたまには役に立つんスね~。」

レ「チッ、いちいち一言多いんだよテメエは。」

ラ「…・となると、契約書から電量が流れるってのも・・・・」

「おそらく雷の魔法でしょう。アズール君はあの時、ユウたちがVIPルームに来ることを知っていて待ち構えていた。」

グ「にゃに~~~!?」

レ「エリーゼの言う通りだろうな。1年坊どもが見ているのを知ってて、契約書を机の上に”わざわざ”置き忘れたんだろ。あとは契約書に触れたのを見計らって雷の魔法を使えばいい。見え透いた罠に引っかかってんじゃねえよ。」

グ「アズールの奴、二枚舌どころか八枚舌なんだゾ!また騙された!」

レ「なんにせよ、金庫から契約書を持ち出してみれば話は早そうだな。」

***

ア「あいつとエリーゼさんが・・・・!?何故!?」

「私は生徒の皆さんが安全に安心して生活を送れるようにしたいだけです。」

ア「っ!貴方何故ここに」

「海の方へ行くのを許可されなかったのでこちらへ来たんです。写真を取ってくるのは彼らに任せました。ウィンディーネもついていきましたしあちらの方も大丈夫でしょう。」

ア「ウィンディーネだと!?なぜあなたが呼び出せる!?」

「それは・・・・」

レ「エリーゼには呼び出せる力がある。それだけだ。」

前回はこの力のことを言ってしまったけれど、アリアドネがいる以上、この力のことを言うのはやめた方がいい。私の正体がロゼッタだとばれるかもしれない・・・・
私が言うのを躊躇うのがわかったのかレオナさんは私を守るようにして立ち、こういった。それで私のことをあきらめたのか怒りの矛先はユウの方へ。

ア「なぜだ、なぜアイツは僕の邪魔ばかりしてくる!?イソギンチャクから解放したってアイツには何の得もないだろう!?」

レ「それについては、俺も同意だな。…そこでだ。なあアズール、俺と取引しようぜ。」


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