荒野の反逆者

~保健室~
グ「あっ、エリーゼ!目が覚めたんだゾ?」

グリム君が私の顔を覗き込んでいる。それによく見るとエース君やデュース君。それにジャック君もいる。

「ここは…どこ?」

エ「後半試合が始まってすぐ、グリムがぶん投げたディスクが監督生の頭に直撃しかけたのを庇って気絶したんすよ。エリーゼさん。覚えてないっすか?」

「そういえば・・・」

~エリーゼの回想シーン~
「前半レオナさんが何もしかけてこなかった…絶対後半何かしかけてくるはず!みんな気合入れていきましょう!」

エ「ウイーっす。」

そんなこんなで始まった後半戦。エース君がゴールを決めた。

エ「よっっしゃ!初ゴールいただき!」

レ「はっ、やるじゃねえか。だが、喜んでいられるのも今のうちだ。すぐに取り返してやる」

グ「フフン!その前にオレ様が必殺超ロングシュートをお見舞いしてやるんだゾ!名付けて…グレートグリムハリケーン!」

そんなことして大丈夫かと思ったとき、そのディスクがユウの方に向かってることに気づいた。

「ユウ!危ない!!!」

その言葉を最後に私の意識はフェードアウトした。

                           ~回想Fin.~
「…痛かったなあ、あれ。」

グ「超ロングシュートをキメてやろうと思ったんだけどな~。」

監「私のこと庇ってもらってごめんなさい。グ~リ~ム~何か言うことあるでしょ!」

グ「ごめんなさい…なんだゾ。」

グリム君の耳がペタンと下がってる。不謹慎だけど、可愛いわね。

「わざとじゃなかったんだから、しょうがないわよ。次からは気を付けてね。」

監「エリーゼさんが聖母に見える。」

ジャック「初心者が無茶な真似するからだ。」

デュ「とにかく目を覚ましてよかったです。全然目を覚まさなかったから打ちどころが悪かったんじゃないかと。それに学園長は精霊の力を使ったから…ってとにかく心配してました。」

エ「てなわけでエリーゼさんが寝てる間に閉会式もとっくに終わって、もう会場の撤収作業始まっちゃってるっす。」

そうか・・・そんなに私は寝てたのね。去年試合が見れなかったから今年見たかったのに…残念だわ。

「ところで、サバナクロー寮はどうなったの?」

レ「チッ…あいつら、マジでディスクじゃなくて俺たちを直接狙ってきやがって。」

声が聞こえたので隣を見ると、ベッドに横たわるレオナさんとラギー君の姿が。

ラ「おかげでディアソムニア寮と戦う頃には俺たちヨレヨレ、結局優勝はディアソムニア寮ッスよ。」

ジャック「レオナ先輩、ラギー先輩!目が覚めたんスか。」

レ「チッ…この俺が昼寝以外で保健室のベッドを使うハメになるなんてな。」

ラ「ディアソムニア寮生は1人もここに担ぎ込まれてないとこがまた、腹立つッスねぇ。」

エ「噂には聞いてたけど、マジでディアソムニアの寮長ハンパなかったわ。」

デュ「ああ、すごかったな。エリーゼさんもみたら驚いたはずです。」

エ「アレに勝つイメージ湧かないのはわかる…って思っちゃった。」

「私、去年も見れなかったから、本当に見たかったわ。」

ジャック「フン。挑む前から負ける気でいたら勝てるもんも勝てねえよ。俺は来年は絶対ディアソムニア寮に勝ってみせる。卑怯な手を使わず、俺の全力を尽くしてな。」

レ「フン。卑怯な手だって、自分の力のうちだろ?」

監「反省の色が見えない…」

レオナさんはこうでなくっちゃね。

レ「反省?どこに反省の必要が?今年の大会は、俺なりに全力を尽くした。来年もまた、勝つために全力を尽くすだけだ。」

ラ「シシシッ!さすがレオナさん。そうこなくっちゃ。」

ジャック「やれやれ。先が思いやられるぜ…」

グ「来年こそはトーナメント戦に出てやるんだゾ!」

デュ「僕たちも選手枠で出られるように頑張らないとな。」

エ「確かに。今年みたいに格好悪い目立ち方は、もう勘弁だわ。」

レ「そういえば、エリーゼ。お前」

レオナさんが何かを私に話そうとした時、バンと勢いよく保健室の扉が開いた。

赤毛の少年「あーーっ!おじたん!やっと見つけた!」

現れたのは、獣耳の小さな男の子。誰かに似てる気が…

グ「ン?なんなんだゾ、この子ども。」

赤毛の少年「レオナおじたん!」

レ「あ~…クソ。うるせぇのが来た。」

ジャック「レオナ、おじ・・・・たん?」

レ「この毛玉は兄貴の息子のチェカ。・・・・・・・・俺の甥だ。」

皆「お、甥~~~~~!?」

あ、そうか!どことなくレオナさんに似ていたんだ。

ラ「ってことは、これが王位継承権第一位の…?」

チェカ「おじたんの試合カッコ良かった!今度帰ってきたら、僕にもマジカルシフト教えて!」

レ「わかった。わかったから、耳元で大声出すな。お前、お付きのヤツらはどうした?今頃泡食って探してるぞ。」

チェカ「おじたんに早く会いたくてみんな置いて来ちゃった。えへへ。」

愛らしい笑みを浮かべるチェカ君と対照的に焦るレオナさん。

ジャック「え・・・っと。レオナ先輩の苦悩の種って…」

監「無邪気な天使…?」

グ「しかもめちゃくちゃ懐かれてるんだゾ。」

レ「うるせえな。…・じろじろ見てんじゃねえ!」

チェカ「ねえねえ、おじたん!次いつ帰ってくるの?来週?その次?あっ
、僕のお手紙読んでくれた?」

レ「あー、何度も言ったろ。ホリデーには帰…痛っ、おい、腹に乗るな!」

怪我人としてベッドで寝ているレオナさんのおなかの上に、遠慮なしに乗っているチェカ君。これは将来大物になりそうな予感…

ジャック「レ、レオナ先輩の腹の上にずかずかと馬乗りに!?」

ラ「プッ・・・あはは!こりゃ大物ッスわ。レオナさんが実家に帰りたがらないのこういうことだったんスね。」

ジャック君は唖然とし、ラギー君は大笑い。

チェカ「みんな、おじたんのお友達?」

エ「くくくっ。そーそー。おじたんのオトモダチ。ね~、レオナおじたん!」

ラ「お、おじたんって・・・ッ!アハハ!いでで、笑ったら傷に響く~~。」

レ「てめーら笑ってんじゃねえ!後で覚えてろ…!」

レオナさんは怒っているが、チェカ君がおなかの上に乗っているからか、何もできないみたい。その時、チェカ様が私に話しかけてきた。

チェカ「おねーたん!」

「どうかしましたか?」

レオナさんのおなかの上から降りて私に近づいてきたチェカ様。

チェカ「おねーたん、頭大丈夫?」

「ええ、大丈夫ですよ。心配してくださってありがとうございます。」

チェカ「それとね、おねーたんって、おじたんの恋人なの?」

「えっ!?どうしてそんなことを!?」

チェカ君が生まれる前に私は消えた。なのになぜそんなことを言うの!?

チェカ「だっておねーたんが倒れたとき、すごーい心配してたよ!だから恋人なのかなって。」

私が返答に困ってると、レオナさんが口を開けた。

レ「今は違ぇよ。今はな…」

チェカ「わかった!」

レオナさん…私のことを…でも私はあなたの気持ちにこたえられないわ。だって私は…

そんなことを思っているとチェカ様のお付きの方が来てチェカ様は嵐のように去っていった。
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