荒野の反逆者

目を開けると、暗闇の世界にいた。ここはどこ?その時レオナさんの声が聞こえた。

_生まれたときからずっと
        __俺の頭には
____どけられない岩が置かれていた。

これがあなたの本音なの?そう聞きたかったが本人の姿はない。

「レオナさん…?どこにいるんですか?」

彼を探しながら歩いていると場面は別の場所に変化した。王宮で召使の方たちが話をしている。

召使いA「はあ・・・第一王子のファレナ様はあんなに朗らかでいらっしゃるのに…何故弟であるレオナ様はあんなに気難しくていらっしゃるのか…」

召使いB「しかも、すべてを砂に変えてしまう魔法を使うなんて、なんて恐ろしい…」

召使いC「2人ともやめないか!誰かに聞かれたらどうする。」

この会話もしかしてレオナさんに聞かれていたんじゃ…レオナさんにとってはこれが通常だったのか…こんな環境に立っていれば、不満が溜まるのも無理はない…このような境遇の下で生まれてきたのはレオナさんのせいではないのに。それに1番レオナさんのユニーク魔法を恐れていたのは自分自身じゃないかしら。

                           _もし、俺が
______________第一王子だったら
                   _きっとこう言われただろう。

「第一皇子様のレオナ様は思慮深く強力な魔法を使いこなす魔法士だ。能天気な弟とは大違い」と。

___それが第二王子になっただけでコレだ。

だからラギー君たちに何も変えられないと告げたのね。

___第二王子はやることなすことケチをつけられ第一王子を称えるためのダシにされる。どうやったって、一番にはなれない。

場面がまた切り替わった。誰かの部屋みたいな…そこには今より少し幼いレオナさんとおそらくだが、ファレナ様がいた。

ファレナ「レオナ!何故今日の式典に来なかった?」

レ「式典?あァ、兄貴の息子を国民に見せびらかす親馬鹿パーティーのことか?それは失礼を、つい二度寝しちまった。」

ファレナ「国民に未来の王の顔見せをする大拙な日だぞ。」

レ「確かにおめでたい日だな。嫌われ者の第二王子の王位継承権が永遠に消えた記念日だ。」

ファレナ「そんないい方はよせ!」

レ「生まれた順番が早い奴は得だよなァ。毎日歌を歌いながらゴロゴロ昼寝してたって王になれる。」

ファレナ「レオナ…例え王になれなくとも、お前は賢い。この国のためにできることがたくさんあるはずだ。」

レ「この国が頭の出来で王を決めるしきたりならやる気も出したんだがな。」

ファレナ「レオナ。待つんだ、レオナ!」

やっぱり、あの方はファレナ様だったのね。諦めてしまったあの目、さっきまでのレオナさんと重なって見える。もう自分は王になれないと。求めたとしても無駄だと。だけど、諦めきれなかった。だからオーバーブロットを。でもそのことをだれにも理解してもらえない。認めてもらえない。心が閉ざされていく…

__ほんの数年遅れて生まれたというだけで
   ___何故こんな思いをしなくちゃならない?
__どれだけ勉強しようがどれだけ魔法を使えるようになろうが…
_____生まれてから死ぬまで兄より優勝だと
__認められることはなく
___王にもなれない。
何故、俺は第二王子に生まれた?
何故、俺は一番になれない?
何故だ。何故だ。何故だ。
ー人生は不公平だ。

ああ、やっぱり、あなたは認めてほしかったんですね。
”第一王子の弟”でも、”第二王子”でもなくって・・・・・・・・・・・
”レオナ・キングスカラー”として
ただ一人の人間として・・・・・人から認められたかったのですね。やることすべてに文句を言われ、どんなに頑張っても、否定される。
それが耐えられなかったのですね。
そして、ようやくあなたを見つけることができました。近づいてみると、怯えたように見える。

「レオナさ・・・」

レ「!?来るな」

近づいてくる私に声を荒らげるがそれでも私は近づく。

レ「く、来るな!!!」

さっきよりも声を張り上げるレオナさん。私はそんな彼の言葉を聞かずそっと後ろから抱きしめた。

「あなたは認められたかったのですね。第二王子としてではなく、レオナさん自身として、見てほしかったのでしょう?」

レ「黙れ。」

あなたはそう言うけれど、少し嬉しそう。

「今から話す話は、私の独り言だと思って聞き流してくださって、結構です。私は、生まれ持った力のせいで、大切な人を失いました。私はこの力が憎くて憎くて仕方がなかった。だから、私という存在を消そうと思ったんです。」

黙って私の話を聞いていたレオナさんがここで遮った。

レ「でも、お前は、俺よりも存在、認められてるじゃねぇか」

「・・・ええ、そうかもしれません。お義父様に引き取られてから、私は変わりました。」

レ「それじゃあ、俺とは違う…もうこれ以上俺にかまうな。」

いつもと変わらないような口調で言っているが、自分の気持ちに気づいてくれて嬉しいのか尻尾と耳が嬉しそうに反応している。

「尻尾、嬉しそうですね。」

レ「な・・っ!!」

そういいながら彼はこちらを振り向く。だから私は彼の頬に手を置いた。すると一遍恥ずかしそうな顔から、驚いた顔になる彼。

「やっと、こっちを向いてくれましたね。」

レ「お、お前。何して・・・」

「周りを見てください。あなたを認めてくれる王国があります。あなたは立派な王様です。」

レ「何言って・・オレは王に何か…」

「あなたは、サバナクロー寮の立派な王様です。王には器がどうだとかいろいろ言いますけど、、王は支持されなければ王とは言えません。寮生たちは貴方を必要としている。たとえ小さなものだとしても、彼らがあなたを王様だと認めている限り、あなたを必要としている人がそこにいる限り、あなたは立派な王様なんです。」

段々とレオナさんから邪悪な影が薄れていく。

「貴方がどのように思っているかわかりませんが、あの場所であなたを必要としてくれている人がいる。さあ、帰りましょう。」

笑みを浮かべながらこう告げるとレオナさんからであった日と同じような質問をされた。

レ「…・お前は俺が怖くねぇのか?」

貴方のこと怖いと思うはずがないじゃない。だから私はこう言った。

「怖くありませんよ。あなたの魔法は素敵です。」

レ「!?そうか…」

そうつぶやいたレオナさんの姿はとても生き生きしているように見えた。

「お帰りなさい、レオナさん。」

レ「…ああ、ただいま。エリーゼ。」

本当は、ロゼッタと呼んでほしい…そんな私の願いが届くはずがなく、この世界にひびが入った。
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