プロローグ

  今は昔、熱砂の国にはルシファー家という巨大な勢力を持った貴族がいました。貴族として名高く、代々その力を受け継いで勢力を伸ばしていました。途中までは...
 
 自分たちの力で何でも動くと勘違いしたルシファー家のある時代の当主、ヘドラ・ルシファーはある時から悪事ばかりするようになったのです。ある時は汚職。またある時は、自分たちにとって都合の悪い人たちに偽の罪をかぶせて追放など。ヘドラはいつの間にか数えたらひとたまりもないほどの悪人になっていったのです。

  他の貴族たちは一度は悪事を働いたヘドラを追放しようと立ち上がりました。しかし、ヘドラによって未然に防がれてしまいます。それに加えて、脅しをかけられ、服従せざるを余儀なくされてしまったのです。
そんな事態を一切知らなかった国王は、「よくぞ悪人を捕まえてくれた!」とおっしゃって、ヘドラに褒美を与えるのでした。
そんな事態を打開しようと立ち上がったのが、シャーティー家の方々でした。シャーティー家の人たちは元々、夕焼けの草原出身の貴族でしたが、ヘドラたちの悪事の実態を他の貴族たちから聞き、その行いを改めさせようと熱砂の国を訪れたのでした。
 
 まずシャーティー家が行ったのは、服従させられていた貴族たちの解放でした。それは困難なことと思われていましたが、シャーティー家の方々と熱砂の国の王様が昔からの仲だったことと、シャーティー家の方々の巧みな話術により成功したのでした。解放された貴族たちは彼らに深く感謝し、付き従うと約束してくれました。他にも様々なことで見方を着々と増やしていったのです。
 
 着々と勢力を伸ばしていったシャーティー家に対して、恨みを持つ人がいます。ここまで読んでくださった方はわかりますよね。
そう、ヘドラです。自分がここまで積み上げてきた(不正をしながらですが)名声を、簡単にひっくり返していくのですから、いい気にはなれませんでした。このままでは、今の地位がシャーティー家に取られてしまうのではないかと焦りだします。

 この由々しき事態をどうしたらよいのか。ヘドラは必至で考えました。ずっと考え続けて結果、あることが思い浮かびます。それは、ルシファー家の女性を自分より上の立場の人間、または力を持っている商人のところへ、嫁がせることだったのです。
 
 当時、自分たちより上の立場や商人に自分の家系の女性、特に自分の娘を嫁がせることは、出世の上で大変重要なことでした。ヘドラは結婚していましたが、子供がまだいなかったので、家系の女性を嫁がせようとしたのでした。最初は、名のある他国の貴族。次は...という風に次々に女性たちを結婚させていきました。それで後ろ盾を得られたかというとそうではありませんでしたが、後から使えるだろうと考え、次々と政略結婚させていったのでした。 
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