fate(槍弓)

 ランサーはときどき、ヒトにも光合成が必要だのなんだのと言っては日向の縁側に寝そべっている。だらりと寝そべった姿は眠りの底に沈んでいるように見えて、しかし意識を覚醒させたまま目を閉じているだけのようにも見える。
 一階のこの部屋に、時折客人がくるようになった。四つ足の客はぶち模様の毛皮を持ち、一声挨拶しては気持ちよさそうに土の上で伸びている。おそらく外で飼われているのだろう、愛想もよく人懐こい。穏やかな顔をして、機嫌がよければ庭に出ているアーチャーの足へ体を擦り付ける。代わりに尻を軽くたたいてやれば喉を鳴らすのだからかわいいものである。どこかの誰かに見習ってほしい素直さだ。
 日向でこんこんと眠るランサーに挨拶したぶち猫はするりと縁側に上った。こいつは頭がいい、人が暇か否か十分理解している、と手の空いたアーチャーは膝の上に猫を招く。真ん丸な目をして微笑むような顔をして、くるりと猫は膝の上でまるまった。腹と太ももが穏やかな温みを抱く。軽く小さな命のぬくもりだ。アーチャーは壊さぬように身体に込める力を調整する。圧迫しても逃げ、緊張しても逃げるだろう。ふっと力を抜いた一瞬のような、なにもかもいのちとして一体化するような感覚を追い求めてアーチャーは目を閉じた。日向のにおいがする。ランサーのにおいがする。太陽と混じる、二人と一匹のにおいがする。ひどく気持ちのいい午睡だと思って、アーチャーはそのまま霞む頭でぼんやりと春の午後を過ごした。それはどこまでも幸福な春の一日だった。
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