艦これ
ゴーヤが、堤防で甲羅干ししている姉妹のもとへ駆け寄ってくる。たたた、と勢いを弛めながらも走るゴーヤは唐突に
「おにぎりでち」
と姉妹たちへ告げた。ふーん、とイムヤは鼻息で返事をする。目線は手元の小さな機械に注がれたままだ。
持ち出していた鏡で自身の特徴的な色合いの髪と、その結い具合を細かくチェックしていたイクがゴーヤに言う。
「あれは二人の生きざまなのね」
結っては解く。イクは櫛を毛先に通しながら、ちらりと仁王立ちしているゴーヤを見上げた。
「い・き・ざ・ま」
間宮さんと伊良湖さんは、時折スイッチが急に入る。すると食堂の大釜でコメを大量に炊き始め、何かに憑かれているかのようにその両手で、数え切れないほどのおにぎりを作り出す。両手は熱々のコメで赤く火傷し、間に手を漬ける塩水でぴりぴりと痛む。それでも無心でおにぎりを作る。艦娘たちを決して飢えさせてはならないとでもいうように。
燦燦と日が降り注ぐ堤防の上に寝そべって厚い本を読んでいたハチが、「うんうん」と歌いながら足をぱたぱた動かす。
「明日は遠足ですね」
ハチはそう呟きながら頁をめくった。イクがふふ、と笑い「おかずが欲しくてもそれはちょっと贅沢なのね」と甘い口調でゴーヤに微笑む。
「ゴーヤに生きざまはよくわからないでち」
「そうね、イクと話をしてると頭が痛くなるの!」
ゴーヤは画面をスクロールさせる指を止め、ごろり、とざらつく堤防の上に寝転んだ。日の光が目に染みる。空は気持ちいいほどに青く高かった。
「暇ね。……海へ潜りたい。私は潜りたいの」
イムヤへもイクはふふ、と笑い
「もう何もかも終わったのね」
と優しく言い聞かせるように囁いた。
「……終わっても終わってない。だって私は海へ潜れるし、私に泳げない海なんてないんだから!」
「浅い海には潜れないですね」
「障害物も邪魔なのね」
「その時はゴーヤも一緒に行くでち」
イムヤは魚雷の形をした只の金属を抱えるゴーヤへ手を伸ばし、寝転んだまますべすべとした白い足の甲をさすった。
「ゴーヤは素直で好きよ」
「だって底がぎざぎざに尖る浅瀬なんて、考えるだけでお腹が痛くなりそうです。それにもう、潜る理由も泳ぐ理由もないですね!」
イムヤはハチへ肩を大きくすくめてみせた。
「お腹が心配なら浮き輪で浮かんじゃえばいいのよ!」
手元の防水スマホを衝動にまかせ胸の内に差し込んだ。厚い水着の生地が強く機械を包む。
「これは己の矜持に関わることよ。理由がなくたって必要なくたって、私には”私に泳げない海がないこと”が必要なの!」
イムヤはバネに弾かれたように立ち上がった。身に染み込んだ構えで堤防から水面へと飛び立つ。水面に落ちていく一瞬に、イムヤを包む世界はとても明瞭になる。海はもったりと波打つ。自由に泳ぎ遊ぶ、イムヤを祝福するように。
イクがふふ、と笑って言った。
「それがイムヤの”生きざま”なのね」
「おにぎりでち」
と姉妹たちへ告げた。ふーん、とイムヤは鼻息で返事をする。目線は手元の小さな機械に注がれたままだ。
持ち出していた鏡で自身の特徴的な色合いの髪と、その結い具合を細かくチェックしていたイクがゴーヤに言う。
「あれは二人の生きざまなのね」
結っては解く。イクは櫛を毛先に通しながら、ちらりと仁王立ちしているゴーヤを見上げた。
「い・き・ざ・ま」
間宮さんと伊良湖さんは、時折スイッチが急に入る。すると食堂の大釜でコメを大量に炊き始め、何かに憑かれているかのようにその両手で、数え切れないほどのおにぎりを作り出す。両手は熱々のコメで赤く火傷し、間に手を漬ける塩水でぴりぴりと痛む。それでも無心でおにぎりを作る。艦娘たちを決して飢えさせてはならないとでもいうように。
燦燦と日が降り注ぐ堤防の上に寝そべって厚い本を読んでいたハチが、「うんうん」と歌いながら足をぱたぱた動かす。
「明日は遠足ですね」
ハチはそう呟きながら頁をめくった。イクがふふ、と笑い「おかずが欲しくてもそれはちょっと贅沢なのね」と甘い口調でゴーヤに微笑む。
「ゴーヤに生きざまはよくわからないでち」
「そうね、イクと話をしてると頭が痛くなるの!」
ゴーヤは画面をスクロールさせる指を止め、ごろり、とざらつく堤防の上に寝転んだ。日の光が目に染みる。空は気持ちいいほどに青く高かった。
「暇ね。……海へ潜りたい。私は潜りたいの」
イムヤへもイクはふふ、と笑い
「もう何もかも終わったのね」
と優しく言い聞かせるように囁いた。
「……終わっても終わってない。だって私は海へ潜れるし、私に泳げない海なんてないんだから!」
「浅い海には潜れないですね」
「障害物も邪魔なのね」
「その時はゴーヤも一緒に行くでち」
イムヤは魚雷の形をした只の金属を抱えるゴーヤへ手を伸ばし、寝転んだまますべすべとした白い足の甲をさすった。
「ゴーヤは素直で好きよ」
「だって底がぎざぎざに尖る浅瀬なんて、考えるだけでお腹が痛くなりそうです。それにもう、潜る理由も泳ぐ理由もないですね!」
イムヤはハチへ肩を大きくすくめてみせた。
「お腹が心配なら浮き輪で浮かんじゃえばいいのよ!」
手元の防水スマホを衝動にまかせ胸の内に差し込んだ。厚い水着の生地が強く機械を包む。
「これは己の矜持に関わることよ。理由がなくたって必要なくたって、私には”私に泳げない海がないこと”が必要なの!」
イムヤはバネに弾かれたように立ち上がった。身に染み込んだ構えで堤防から水面へと飛び立つ。水面に落ちていく一瞬に、イムヤを包む世界はとても明瞭になる。海はもったりと波打つ。自由に泳ぎ遊ぶ、イムヤを祝福するように。
イクがふふ、と笑って言った。
「それがイムヤの”生きざま”なのね」
