光明ノ神子2

 本日は、バレンタインデーだ。
「勇音なにやったんだ!?」
 しかしこの、薬問屋の店主勇音は、目の下には、ひどいくま。そして何故か血まみれで朝帰ってきた。
「まさか強姦されたのか!?」
 そしてひどく心配するのは、居候兼恋人の燕青が。
「強姦なんてされてないし」
 勇音は、むすっとしそういうと、下駄を脱ぎ、中に。
「燕青仕事は!?」
「今日は、事務所いくけど……」
「そう」
 燕青は、そういうと、勇音は、そのまま風呂に入ってしまった。
「何があったんだ……」
 燕青がそう呟くなか、勇音は、お湯だきのスイッチを押し、着物を脱ぎ捨て、それを洗濯機にぶちこんだ。
「……酷い顔」
 鏡に写る自分に溜め息が出る。
「確かにこれだと、襲われたのかと普通思うか……」
 酷いくまに思わず笑えてくる。なのに、自分は。
 勇音は、己に虫酸がはしる。本当に腹立たしい。
 お湯だきの完了の音がし、襦袢と下着も脱ぎ、洗濯機に放り込むと、そのまま風呂へ。
 体を洗い、湯船に浸かると眠くなる。
 あとで燕青に理由を話さなければと思うがそれよりも眠気が勝つ。
 寝ては、駄目だ。溺死すると、勇音は、無理やりおき、湯船から出ると、バスタオルで体を拭き、風呂を出た。
「着替え忘れてた……」
 気持ち悪い、早く綺麗にしたいと色々先走ってしまった。
 ドアをゆっくり開けると、燕青は、いないようだ。
 勇音は、急いで部屋にいき、着替えると、そのまま洗面所に。
 洗濯機に洗剤、柔軟剤、漂白剤やらをいれ、スタートボタンを押すと、そのまままた出る。
「とりあえず寝る……」
 そのまま髪は、とりあえず術で乾かし、勇音は、倒れるように布団に、入ると寝た。
 目が覚め、時計を見ると、時刻は、正午。
 勇音は、身体を起こすと、そのまま寝巻きから、着物に着替え、布団を片付け、台所に。
「チョコは……よかった……」
 あえて分からないようにしていたが、念のために確認しておいてよかった。
 前日に光に教えて貰い、作ったブラウニーは、無事だ。
 結局色々悩んだ結果、燕青には、ブラウニーを贈ることにした。
 あとは、リキュールと。これは、勇音も好きそうなものをあえて選んだ。
 飲むとしてもたぶん燕青と分けることになるだろうと考えたからだ。
「そうだ。連絡……」
 冷蔵庫を閉め、勇音は、スマホを取りに、部屋へ。
 文机の上のスマホを取ると、とりあえず燕青に詳細を送った。
「まさか……あやかしと土地神の喧嘩に巻き込まれるなんて……」
 光の家から帰宅時、ユニとたまたま会った勇音は、すこし世間話をしていた。
 その時邪気を感じ、分身を作り、ブラウニーを分身に託し、勇音は、そのまま邪気のする方に向かったがそれが運のつきともいえる。
 その後土地神とあやかしの喧嘩に巻き込まれ、両者をボコボコにし、その後解決するのに、明け方近くまでかかってしまったのだ。
「ユニは、大丈夫だったみたいですね」
 ユニからもメッセージがきており、返信をすると、勇音は、気づく。
「お腹空いてた」
 なにか作らなければと、台所にいくと、シンクの上にラップがかけられたおにぎりが。
「この不格好でやたらとでかいの……」 
 燕青が作ったものだろう。
 添えられた手紙には、話しは、聞くから、とりあえずそれを食べて、元気出せとかかれていた。
 嬉しそうに勇音は、微笑むと、インスタント味噌汁と、茶をいれ、ちゃぶ台におくと、座布団の上に座る。
「いただきます」
 ほんのりと塩気のあるおにぎりは、美味しい。
 後でちゃんと礼を言わなくては。
 勇音は、そう思うと、食べ終え、片付けたのち、店を開けた。
 夜になり、閉めると、しばらくして、燕青が帰ってきた。
 珍しくビシッとスーツ姿で。
「勇音よかった……」
 燕青は、ほっとした顔をすると、居間で座り込んだ。
「そんなに心配だったんだ」
「尋常でない殺気だったんだぞ!?」
 確かに今朝は、殺気立っていたかもしれない。
「そんなに」
「そう!!」
 燕青は、とりあえずと紙袋も勇音に見せる。
「義理だから!! とりあえず経営者としてあげて、受け取ってきた!!」
 袋の中には、高そうなチョコが。
「……へぇ」
 勇音は、冷たい眼差しをむけ、言った。
「まぁ人の世界での義理ってやつだし」
「その……」
「私も食べるから」
「ありがとうございます!!」
 とりあえず勇音からの許しが出たのでホッとした。
「でこっちは、俺からバレンタインデーのプレゼント!!」
 勇音に燕青は、紙袋と花束を渡した。
「え??」
「日本だと女の子から男に贈るっていうのが、主流だが、海外だと反対だからなぁー」
「ありがとう」
 まさのサプライズにすこし戸惑う。
 勇音は、中を見るとロゼワインが。
「これなら飲めるだろ?? 一緒に」
 太陽のような笑みでいわれると、頷くことしか出来ない。
「そうね」
 勇音は、そういうと、花を花瓶にいけた。
「燕青のわりには、いいやつ」
「俺だって出す時は、だすぞ!?」
「日頃つなぎしか着てないのに」
「そりゃ楽だからなぁ~」
 勇音は、今しかないと、冷蔵庫をあけ、ドンっと燕青の前に皿に乗ったブラウニーとリキュールの瓶を置いた。
「バレンタインの贈り物……包む暇とかなくて……」
 本当なら昨晩やるつもりだった。だが結局出来なかった。
 燕青は、しっかりしてくれたのに。
 そう思うと心が苦しい。
 目から溢れた雫は、頬をつたいキラリと光ると畳に落ちた。
「勇音分かってる」
 燕青は、立ち上がると、勇音を抱き締めた。
 長い悲恋の片想いのお陰で、色々こじれてしまい、素直に想いが表現できない。
 濁流のように色々な想いが混ざりあい、今の勇音には、この涙が精一杯の表現だ。
「本当ならラッピングして……」
「分かってるよ。でも神子の役目で、出来なかった。だからって自分は、攻めるな。俺は、嬉しいぜ!! こうしてバレンタインの贈り物くれたんだからさ!!」
 勇音の心に暖かなものが落ちる。
「本当に……」
 勇音は、涙を拭くと、言った。
「あとこれ」
「なんだこれ??」
 差し出されたのは、紙だった。
 燕青は、受け取り、折りたたまれた紙を開くとそこには。
「銀音??」
「私の真名。友美と光先生は、知ってるけど、燕青に伝えてなかったと思って」
 初耳の事で、燕青は、内心驚いていた。
「勇音って名は、貴方とはじめてあったとき、勇ましい女といわれて、真名を名乗るのしゃくだから勇音って名乗ったのが始まり」
 読みは、同じでも漢字が違えば、意味も変わる。
 銀は、古くから薬とされる銀杏と彼女の髪色などから。
 音とは、様々なものを作り上げる。 
 その二つを組み合わせることで目の前の女神の権能を表すことが出来る名だ。
「うちの、一族は、真名を愛する者にしか伝えない。これで少しは、伝わる??」
 視線をそらし、頬を赤く染め燕青に勇音は、いうと、彼は、優しく目を細目言った。
「十分。今は、これでいいさ。俺も長らく待たせちまったしな」
 燕青は、そういうと、甘い声で囁く。
「その分今は、俺が言うさ……愛してる……」
 耳元で囁かれ、勇音の心臓が早鐘をうち、どうしようと思った時、優しく口づけをされた。
「燕青その……」
「帰ってきてそうそう悪いが、安心させてくれる??」
 燕青は、そういうと、勇音をひょいっと横抱きに。
「えっ!! ちょっ!??」
 戸惑い変な声が勇音から出た。
「こっちたら、ずっと心配してたんだぜ??」
 そのまま燕青は、自分の部屋に入り、なんと、布団の上に勇音をおろし、上着を脱ぐと、そのまま投げ飛ばし、彼女を押し倒した。
「ちょっと!!」
「バレンタインは、愛の日だろ??」
「でも……」
「待たせた分、返させてほしい」
 ネクタイを緩めると、優しく微笑み、燕青は、また勇音に、口づけた。
「私……いわないけど……」
「いいさ。そのぶん俺がいう。愛してるってな」
 燕青は、そういうと、また口づけを勇音にした。
 感じる心臓の音と、温もり。数百年求めていたぬくもりだ。
 また悲しい想いをするかもしれない。だが今は。今だかは、短くとも、このぬくもりを感じたい。
 答えるように燕青の肩に勇音は、手を回した。 
 バレンタインは、愛の日でもある。
 数百年待たせたからこそ、伝えたい。
 燕青と勇音は、互いに求めあい、甘い吐息が響いく。
 こうして、彼らは、互いの愛を伝えあったのであった。
 せめて今だけはと、切なく儚い想いも抱えながら。
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