光明ノ神子2

 少し涼しくなってきた朝方。まだまだ寝ていたい時間に、なんと起こされた。
「総司!!」
 襖がすごい勢いで開けられ、その音で敵襲かと、総司は、慌てて布団から飛び起きた。
「かっ……」
 しかし和室には入ってきたのは、榎麟だった。
「なんや血相かいて……」
「そりゃ血相もかくよ……」
 恋人が入ってきたと分かり、総司は、ようやく体の力を抜き、布団に座り込んだ。
「総司元気になってよかった……」
 榎麟は、安心した顔をすると、襖を閉め、中に。
「えっ!?」
「別にエエやろ??」
「……しかし私……」
 総司は、アワアワするが、榎麟は、布団のそばに腰を下ろすといった。
「私達恋人やろ??」
「確かにそうですが……」
 後で光に怒られないかと総司は、不安になる。
 一人なぜかおどおどしている総司を見ながら、榎麟は、思う。
 この姿をみて、誰があの新撰組の一番隊隊長の沖田総司と思うだろうか。
「ほんまにかわええわ……」
 自分よりも年下の榎麟にいわれ、総司は、少し困り顔。しかし彼女は、今日に居たところからこうなので、そこがいいなと思っていたりもする。
「で榎麟さん朝早くになんですか??」
「せや!! 総司よかった、今日は、遊びにいかへん???」
 総司は、しばらく考えた。
「かまいませんよ」
「ほんま!! おおきに!!」
 榎麟は、嬉しそうに笑った。
「ほなここや!!」
 と榎麟が取り出したのは、チケット。
「美術館ですか」
「そう!! みたい展覧会でな!! それにあわぜんざいもたべてみたいんよ!!」
 また懐かしいものを食べたいと言うなと総司は、思う。
 彼は、京に出る前は、江戸にすんでいた。
 浅草で食べられる、贅沢なお菓子というイメージがある。
「あわぜんざいですか……高級な菓子ですよね……」
「そうなん??」
「そうです。ほら江戸だと砂糖は、高級ですからね~ 手に入りますいし、昔に比べれば安いといっても!!」
「確かに……今やったら、普通の調味料やけどな……」
「はい」
「総司ほら用意できたら行こう!!」
「時間早くないですか!?」
 総司は、時計をみていうが、榎麟は、真面目な顔で告げる。
「こういう展示会は、人多いねん。だから早よいうことにこしたことは、ないんや」
「なるほど」
「とりあえず用意にしばらくかかるやろうし!! それでお願いします!!」
 榎麟は、そういうと、立ち上がり、部屋をでていった。
「逢い引きか……京で出来なかった分を……この時代で彼女と出来たら……」
 色々思い出すが、それより今は、支度をしなくては。
 総司は、布団を畳むことから、支度を始めた。

 沖田総司という武士が決断した事は、ある意味幕末を生きる武士にとっては、死ぬのと同義なのかもしれない。
 あの時は、必死だった。助かる術があることを知っておきながら、目の前の死に歩いてい武士を見捨てるなんて出来なかったから。
「榎麟さん??」
 知らぬまに考え事をしていたらしい。
 総司に、名を呼ばれ、榎麟は、我に返った。
「ぼーっとしてましたが、大丈夫ですか??」
「うん……」
 たぶん彼から受け止めてくれるだろうが、はたしてこの想いを出していいのだろうか。
 そう榎麟は、悩んでいた。
「着きました」
 知らぬまに美術館に到着。とりあえず列に並ぶことに。
「かかりそうやな……」
「並ぶのもまたこういうものの醍醐味!! 私としては、なかなか楽しいかも知れない!!」
「楽しい??」
 榎麟は、思わず首をかしげた。
「私にとっては貴女といられる時間は、とても大切なんです」
「……」
 爽やかな横顔は、とても優しい笑顔を浮かべていた。
 榎麟は、目を伏せた。いいだろうが、話しても。しかしこのままモヤモヤしてるのもよくないことを彼女は、知っている。
「総司ほな聞くけど」
「なんですか??」
 榎麟は、深呼吸したのち、いった。
「私は、武士としての……総司を殺した……その事についてどう思う??」
 少し悲しげな顔をした総司は、小声で呟いた。
「武士としての私は、生きてます。榎麟さん」
「え??」
「少なくとも私は、そう思ってます。刀と共にこの時代にこれた。しかし、私も武士がいない今の時代に武士としての沖田総司は、死んだと思ってました」
「そんなら、なんで生きてるって……」
「武士とは、刀を持っただけでなれるものでもない。そして身分が武士だからと真の武士では、ないと私は、知っています。それを更にここに来て思い知ったんです」
 それにある武士とも出会いもあった。
「何かを守り、そして正しき道を貫く。それが武士というものの本質かなと。私には、どちらも今ありますからね!!」
 榎麟は、少し照れた。
「うぬぬ……」
「珍しい照れてる……」
「そりゃ照れるわ!!」
 総司は、可愛いなと微笑んだとき、視線に気付き、後ろを見ると、並んでいた男性二人がなんともいえない顔をしていた。
「これは、今でいう、リア爆発しろ。ですね」
「そこ、冷静にいうところ!?」
「すみません榎麟さん。思わず!!」
 総司は、とりあえずなんだが、可愛そうな人達と思ってしまい。
 その後、無事に入館することが出来た。 
 美術館内は、とてもしっとりとした静かな空間となっていた。
 正直美術品に関しては、まったく分からないが、彼女が見たいのは、共にと総司は、思っている。
「凄いなぁ……うちにありそうやけど……」
 今回展示されているのは、有名な海外の画家の作品だ。
 油絵を見ながら、榎麟は、ボソッと呟いた。
「……先日銅鐸を友美さん出してましたしね……あと埴輪も動いてましたし……」
 総司は、思い出し苦笑い。
「総司銅鐸と油絵を一緒にしたら、あかん!!」
「そうですね……」
 なんだろうこのなんともいえない返事は。
「加州清光と源清麿一緒にしたらアカンのと同じや!!」
「なるほど!! 刀なら分かりやすい!!」
 ここでまさか刀剣を出すことになるとは、後で愚痴ろうと榎麟は、思ってしまった。
 その後も絵を総司と榎麟は、一通り見ると、美術館を後に。
 その後、足を延ばし、浅草に。
「外国人まみれ……」
「本当に西洋人ばかり……」
 観光地と分かっていたがこんなにも多いとは。
「とりあえずあわぜんざい」
「ですね……」
 そのままいそいそと、あわぜんざいの店に行き、注文して、あわぜんざいを食べた。
「美味しい~」
「本当にそうですね」
「そういえばなんで、浅草であわぜんざいなんやろ……」
「それは、昔この辺りは、粟が多く作られていたからですね」
「だから特産の粟!!」
「ということです」
 少しは、江戸の頃の記憶も役立つんだなと総司は、思いながら、美味しそうにあわぜんざいを食べる榎麟をみて、微笑む。
「本当にいつも美味しそうに食べますよね……屯所でもそうでしたが」
 豪快な料理ですら、榎麟は、美味しそうにいつも食べていたのを思い出す。
 男達に囲まれていても、彼女は、その負けん気で、乗りきり、次第に、認められていった。
「そりゃあの、当時の京のご飯は、そこでしか食べられへんしな。それにみんなでわいわい楽しかったし」
「そうですか」
 総司は、少し切なそうに微笑む。
「この味は、昔と同じなん??」
「たぶん。私も食べたことがないので」
「意外や……」
「武家もそこまで裕福では、ないですよ榎麟さん」
「確かに……」
 何時もある人物がそう言っていたなと榎麟は、思った。
「でもこうやって食べれたんや!! ある意味私とでついてるやん!!」
「そうですね」
 本当に榎麟は、何時も光を見ている。
 自分が床に伏せてる時でもそうだった。だからこそ大きな決断を出来た。
 全てを捨て、未来へ行くという決断を。
「総司実は、な。新撰組の皆には、総司を未来に連れていくって伝えてた」
 総司は、榎麟から告げられた言葉に驚きを隠せなかった。
「えっ……」
「で近藤さんも土方さんもいってた。連れていけって。アイツは、どこにいても俺達の仲間だって」
 懐かしい顔を思い出し、総司は、少し困り顔に。
「そういうことは、家でいってくださいよ……」
「そうやね。でも今いった方がええとおもてん」
 総司が少しでも喜んでくれるならと思ったら、かんきまわり、困らせてしまった。
「でもありがとうございます」
「せや!! 家帰ったら、久しぶりにあの頃の話せえへん??」
「そうですね」
 今なら楽しい話を出来るだろう。
 懐かしい記憶には、楽しいことも苦いこともあるけれど。
 あわぜんざいを全て食べ、店を後にしたのち、総司と榎麟は、仲良く帰路に着いた。
 さてどんな話ができるだろうか、そう思いながら、彼らは、微笑むのであった。
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