光明ノ神子2

「光助けて~!!!!」
 と珍しく友美が言っている。
 光は、何事かと納戸に向かうとそこには、困り顔の友美が。
「友美どうしたんだ??」
「また増えたの!!」
「増えた??」
 光は、納戸の入り口を見ると積まれている。床に敷かれた布の上に刀剣が。
「増えたな!?」
「しかもこんなに!!」 
 友美は、涙目に。
「うちこんなに管理できないわよ!!」
「といいつつやってない??」
「やってるけれど!! 限度があるわ!!」
 友美は、眉間にシワを寄せ言うと、溜め息をつく。
「展示会に貸してくれって連絡もきてるのに……はぁ……」
 また珍しいこともあるなと光は、思った。
「展示会って博物館で??」
「そうそう。今刀剣ブームだから、個人所蔵の刀剣もなるべく皆さんに見せたいと声をかけてるんだって!!」
 友美は、やれやれという感じである。
「うちに出せる刀剣ないわよ」
 光は、この時キョトンとしてしまった。いやあるだろうと。
「友美さん……蛍丸と福島光忠あるよね??」
 友美は、にっこり。
「出してみろ。それこそ、蛍丸は、阿蘇に返せだ言われるぞ!? 福島光忠に、関しては、専門機関から問い合わせ多くあるし、嫌よ!!」
 確かに裏でどんなやり取りがあり今ここにあるか、よそさまは、知る由もない。
「それに薬研藤四郎も出せるわけもないし、江の刀も無理無理」
「それは、友美として??」
「もちろん私として思うこと。一応白野威に聞いてみたけど、出すなって」
 確かに出せる刀剣は、少ないかもしれない。
「蛍丸は、守り刀だしな……我が家の」
「それに福島光忠は、私個人所有だし、露見して泥棒に入られるのも嫌だしね」
「泥棒といえば、大倶利伽羅の件か……」
「そうそう」
 大倶利伽羅は、伊達政宗の刀として有名だが今は、個人所蔵だ。
 刀剣ブームのせいか、大倶利伽羅を保管している場所に侵入者が入ったらしく、盗まれずに済んだといえどやはり危険な事件とも言える。
「福島光忠なんて、山姥切国広みたく、行方不明刀剣でようやく見つかったって騒がれること間違いなしよ!?」
「骨董商で値切りまくった福島光忠……」
 光は、友美が刀剣を買ってきたことに驚いたが、その正体にも当時は、驚いたものだ。
「なによ」
 友美は、不満げに光を見るが、彼は、苦笑い。
「友美凄いなぁ……って……」
「なにがよ!! とりあえず展示会に貸せるような刀剣もあるかもと思って整理してたらこれだけまた増えてたの!!」
 友美は、指を指す、積み上げている刀剣を。
「とりあえずこれは、一時的??」
「当たり前よ!! このままだも痛むもの!! それだけは、避けないと!! 私頭取られて死にかねない!!」
 刀剣全般だが、大切にされていない刀剣は、何故か持ち主の一族や縁のある者の頭を取り、命を取るもしくは、じわじわくるしめ生かさず殺さずで大切なものを持っていく。
 やはり命のやり取りをする武器として作られたからかそれは、友美にも分からない。
 だが大切にしなければ大変なことになる代物なのである。
「とりあえず大慶直胤の刀剣を出すか……」
「新しい刀剣だね。比較的」
「現存数もあるし、ある程度は、名も知れてるしそこまで騒がれないだろうしね」
「水心子正秀の刀剣は、ないのか??」
 友美は、積み上げている刀剣を見ていう。
「あるかもね……ここと、刀剣部屋探せば……」
 光は、あの量の中から探せとと思ってしまった。
「とりあえず整理手伝って??」
「分かった」
 ということで友美と光は、手分けして整理をし、なんとかすべて片付けられた。
「とりあえず展示会に貸せるようなものだよな……」
「もうさ古墳時代から貰ってきた青銅の刀剣でよくない??」
 友美は、手に青銅の刀を持ちいうが、光は、思わず突っ込む。
「錆びてない青銅の刀は、レアだから!! 余計に騒ぎになる!!」
「確かに」
 ついつい貰うので感覚がバグるなと友美は、思いつつ片付けた。
「う~ん」
「友美この、再刀されたやつは……」
 光は、ガラスケースの刀剣を見ていう。
「それ駄目」
「だよな……」
 理由は、明白。この刀剣は、実休光忠だからだ。
 織田信長の刀として有名でなおかつ大阪夏の陣でやけ、行方不明となっている刀剣。
 今世に出せば、ファンの嬉しさの声が聞こえるが、騒ぎには、なる、
「福島光忠買った辺りになんかうちにひょっこり来たのよね……」
「相変わらずうちは、変なところだな……」
「自分でいうな!! でも同じ光忠どうし、でいたかったのかもね」
 と友美は、言う。
「とりあえず貸し出すならこれでいいわよね!!」 
 と友美がいい光に見せたのは、直胤の打刀だった。
「で相手からは、大慶直胤でもいいと言われてるのか??」
「とりあえずは」
 友美は、戸棚に置いてあった書類を光に見せる。
「確りとした組織からの依頼だな……」
 で確かに大慶直胤でもいいと書かれていたが、相手の本命は、古い刀のようだ。
「友美が無銘で登録した平安後期から鎌倉の刀を相手は、本命として貸し出して欲しそうな文面だが……」
「貸せるわけない!! だから古墳時代ならいけるって!!」
「絶対に趣旨違ってくるから駄目だろ……」
「よね。あとは、飛鳥時代とか??」
 実際この刀剣部屋には、飛鳥時代の刀剣もある。
「七星剣か……」
「そうそう」
 七星剣で有名なのは、聖徳太子の持ち物とされ、今現在は、四天王寺所有、国立博物館展示の七星剣だろう。
「七星剣は、退魔や鎮護の力があるとされているものの総称だしね」
「友美因にアレは……」
「天帝から貰ったの」
「相変わらず出所が凄い……」
 たぶん展示なんてしたら、どこからでたのかと来歴を探るために研究者が集まりそうだ。
「やっぱり展示は、無理よね……」
「無理無理」
 ということで、貸し出せそうなのは、大慶直胤と。
「水心子正秀くらいか!!」
 友美は、二振りの打刀を見ていう。
「この二振りでも相当だろ??」
「場合によっては、蜂須賀虎徹を展示するかも?? だしそんなこともないでしょう!!」
 友美は、呑気にいうが、もしそうなら、凄いなと、光は、思っていた。
「個人所有だろ?? 蜂須賀虎徹も」
「たぶん!! 私も詳しく知らないから」
 友美は、なら目玉になるものは、と考え。
「天の叢雲の剣??」
「神器を貸し出すな!!」
「よね。でもうちだと布団叩きよ??」
 今朝も白野威が自分の座布団を干して、使っていた。
 天の叢雲の剣を。布団叩きとして。
「まぁ……持ち主が布団叩きにしてるしな……」
「そうそう」
 友美は、とりあえず二振りの打刀を貸し出す準備をした。
「よし!!」
「友美持ち込むのか!?」
「えぇ。近いしなにより、博物館とかの刀剣保管に関して見たいしね!!」
 友美は、ケースにいれた刀剣を肩にかける。
「先方との約束もあるし、いってきます!!」
「いってらっしゃい」
 と友美は、光にいいそのまま刀剣部屋を出ていった。
「まぁ……蛍丸や福島光忠や実休光忠を貸し出すと言わなくてよかった……」
 光は、刀剣部屋を見渡し微笑む。
「本当に過ごしやすいんだなここは……」
 ここの刀剣たちは、明るく刀身が光っている。
 これもまたここが居心地がいいからなのだろう。
「さて俺も太刀の手入れをするか」
 と光が呟いた時、視線を感じふりかえると、何故かガラスケースに入れられてたはずの実休光忠が床に落ちていた。
「……わかった」
 光は、慣れた手付きで、実休光忠を拾い上げ、刀掛けに置いた。
「とりあえず俺の太刀も持ってくるからそこから動くな!!」
 と光は、言うと、道具と、太刀を持ち、部屋き戻る。
 そして床に座り、慣れた手付きで手入れを始めた。
「本当にありがとう」
 自分の太刀の手入れをしながら、光は、呟いていた。 
 この刀剣があるからこそ光は、生きて何時も帰ってこれるとも言える。
 相棒の手入れを終え、刀掛けに置くと、光は、立ち上がる。
 実休光忠を手に取ると、床に座り、手入れを始めた。
「よし」
 手入れを終え、光は、実休光忠をガラスケースの中に戻した。
 道具をまず片付け、その後自分の太刀を鞘に収め、光は、刀剣部屋の電気を消し、部屋を後にした。
「友美おかえり」
 そして納戸から廊下に出るとタイミングよく友美が帰宅した。
「ただいま!!」
「無事届けてきたんだな」
「うん!!」
 友美は、靴を脱ぎ、廊下に。
「二週間ほどだけどねー預けるの」
「意外に短い……」
「そりゃね」
 友美は、そういうと微笑む。
「とりあえず光ありがとう!! お陰で整理も出来たし、約束もはたせました!!」
「ならよかった」
 光は、優しく微笑む。
「おやつにする??」
「する!!」
 こうして刀剣に関する用事も無事にすんだ。
 友美と光は、微笑み合うと、そのままリビングに、いき、おやつのしたくをするのであった。
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