光明ノ神子2

 冬のある日、光は、ティーポットにお湯をそそいでいた。
 本日は、メジェドが遊びに来る日。さてさて今回は、どんな話が聞けるのかと何気なく外を見た時、光は、顔を青ざめた。
「えっ!?」
 テラスをご機嫌よく歩く枝が。
 歩く枝という時点でおかしいのだが、その枝には、桃の花だ。
 光は、顔をひきつる。
「……封印がとかれたのか!?」
 光は、ティーポットをシンクの上に、置くと、キッチンからテラスにあわててむかう。
 すると、枝は、光に気づき、跳び上がると、そのまま消えた。
「間違いなくあいつじゃないか!!」
 そうあいつ。恐怖の桃の枝。
「光~」
 光は、名を呼ばれ、振り返ると、メジェドは、くるくる回っていた。
「メジェド!!」
「マリカいないの??」
 メジェドは、回るのをやめると、さっそく友美がいないか、聞いてきた。
「友美は、今日は、いないよ」
「そっか!! なら男のお茶会!!」
 メジェドは、嬉しそうにいうが、そもそもメジェドに性別があるのかは、不明だ。
「メジェド男なのか??」
「メジェドの不思議の一つ。ふふふふ」
 メジェドは、怪しげに笑うので、これは、秘密かと光は、わかった。
「そうか」
「光顔色悪い~」
「あーこっちのゴタゴタだ」
「ゴタゴタ??」
 メジェドは、気配からなにかを察して、アワアワと慌てる。
「桃の枝!!」
「メジェド知ってるのか!?」
「エジプトでも大暴れ!!」
 光は、真顔に。
「よくラーからクレーム来なかったな!?」
「ラー様クレームいれたけど、ツクヨミからアレは、止めれないって言われたって!!」
 そうアレは、ツクヨミですら、止めれない。止めれるのは、月花ノ神子モアくらいだ。
 しかしそのモアすら、止めるのに一苦労するのが桃の枝なのだ。
「そうか……」
「光追う??」
 何故か追いたそうなメジェドに光は、聞いた。
「メジェドが追いかけたいんだろ??」
「当たり!!」
 光は、しかたがないと、和室へ。
 コートとマフラーを身に付けると、メジェドに耳当てと帽子、マフラー着させた。
「はいメジェド」
 メジェドは、光のトートバッグの中には入る。
「ありがとう!!」
「行くぞ!!」
「ゴー!!」
 光は、家を出ると、鍵を閉め、クロスバイクにのり、こぐ。
「気配的にあっちか!!」
 桃の枝は、気配遮断を出来るが、神子となると簡単に追うことが出来る。
 光は、気配をたどり、クロバイクをこぐなか、メジェドは、楽しそうにトートバッグから、顔を出していた。
「光あれなに??」
 そして信号で止まったとき、メジェドは、あるものを指差す。
「和菓子だな」
「いいね!!」
 メジェドは、トートバッグから飛び出し、光は、あわててクロスバイクをとめ、メジェドの所に。
「メジェド!!」
「あの栗饅頭がいいなー!!!」
 こりゃ買わないとたぶん、離れない。
 光は、メジェドを、抱き上げ、店内に入ると、栗饅頭を買ったが。
「お客様それ……」
 店員は、メジェドをじっと見ていた。
 世界では、マイナーだが、日本では、人気のメジェド。
 光は、まずいととりあえずいった。
「メジェドぬいぐるみです」
「とても可愛いですね!!」
「ありがとうございます」
 メジェドは、嬉しそうだが、光は、せめて、霊感ないやつに見えないようにしてくれと思ってしまった。
 会計を済ませ、栗饅頭を受け取ると、メジェドをトートバッグにいれ、光は、クロスバイクにまたがると、こぐ。
「桃の枝……あの方向だと、寒猫神社か!?」
「メジェド入って問題ない??」
「問題ないだろ!! メジェドなんやかんな高位なのに!!」
 光は、さらに速度をあげ、寒猫神社につくと、邪魔にならない所にクロスバイクをとめ、鳥居の前で挨拶すると、長い階段をのぼった。
「光先生!?」
「ユニ桃の枝が来てないか??」
 階段をのぼりきるのユニと出会い、光は、話すと、ユニの、顔が冷たい顔に。
「先生そのトートバッグの中身なんです??」
 光は、素直に、メジェドを見せた。
「メジェドだ」
 ユニは、きょとんとした。
「あのまさか死者の書に書かれてる、目からビーム出す……」
「そう。あのメジェド」
 メジェドは、トートバッグの中で首をかしげる。
「……桃の枝は、関係ない??」
「メジェドが追いかけたいというから来たんだ。俺達は、無実!!」
 ユニは、ほっとした顔に。
「ならモアが解き放ったか勝手に出てきたかですね」
「光ーあれ!!」
 メジェドの指差す先になんと桃の枝が。軽快な音楽と共に、ステップを踏んでいた。
「ユニ……」
 そのとたんユニから恐ろしい程の殺気が。
 メジェドは、怯え、トートバッグの中に引っ込む。
「……滅べ」 
 ユニは、こういうと、なんと、桃の枝を新たな空間で包み、なんとその空間を破壊した。
 光は、顔を青ざめる。そして思う。このユニの殺気が臨界点に達しさらに爆発すると、相殺の呪いを生み出す程の、邪神になるのかと。
「光先生ー」
「すみません」
 なにより笑顔が怖い。
 桃の枝は、なんと、爆破されても耐えていた。
 ユニは、苦虫を噛み潰したよう顔になる。
「光逃げよう!!」
「だな……」
「マリカより怖い!!」
 たぶん友美の方がまだ見た感じだけは、怖くない。
 やることは、ユニ以上で笑顔で、子供達を可愛がってる裏で、敵を根こそぎ殲滅し地獄を見せるが。
「チッ。逃さん!!」
 ユニは、そういうと、桃の枝を追い、山の方に。
 残された光とメジェドは、本殿に挨拶をしたのち、一応家の方にも顔を出した。
「光」
「ソーマ、今ユニ桃の枝を追って山の方にいった」
 状況を説明するために。
 ソーマは、メジェドを見ながら、溜め息をついた。
「まさかそいつが持ち込んだとかじゃないよな??」
「失礼な!! 俺とメジェドは、無実だ!!」
 ソーマは、光が言うのならそうなのだろうと信じることに。
「ユニって怒ると怖いな」
「友美程じゃない。ユニは、分かりやすいが、友美は、裏で、えげつないことやるだろ」
 光は、視線をそらす。
「アハハ……」
「とりあえずありがとう。まぁ山なら、氷雪もいるし、なんとかなるだろ」
「じゃ俺達は、帰る」
「じゃあな」
 メジェドと光は、そういうと、寒猫神社を後にした。
「帰るかメジェド」
「うん!!」
 そして帰路につき、家に帰ると、メジェドと光は、買ってきた栗饅頭をあてに、茶を飲んだ。
「美味しい!!」
「それは、よかったな」
「うん!! 今度アヌビスにもあげたい!!」
「分かったよ。その時は、連絡して」
「オッケー!!」
 メジェドは、嬉しそうに頷くと、栗饅頭を食べた。
 今日も色々あったが、まぁ、楽しかったかなと光は、微笑むのであった。
 楽しそうな笑みを浮かべて。
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