光明ノ神子にかわり代理審神者勤めます

 世間は、お盆だ。
「盆だからとうちでは、何かせぬのか??」
 執務室で正雪は、国広に聞くと、彼は、いう。
「一応今夏季休暇だぞ!?」
 そう。ぜっさん組織は、夏季休暇中だ。しかし国広は、仕事をしており、正雪も暇だからと屋敷にやって来る。
 なので、あまりそういう空気感では、ない。
「だとしてもだ……」
 昨年は、遺骨宝石事件で、夏季休暇は、ここまで暇では、なかった。
 正雪は、つまらなさそうな顔をすると言う。
「季節を感じることをしたい……」
「連日の猛暑でいいだろ」
「違う国広!! こう供養をするというか……」
 たぶん盆らしいことをしたいのだろう。
「供養ってな……」
「やはり寺にいくしかないか……」
 しかし友美いわく今の寺できっちりしてるところは、多いようで少ないらしい。
「なら送り火や精霊流しを見に行くのは、どうだ??」
「それが一番無難か……」
「へんに何かやるよりは、な」
 正雪は、頷く。
「うむ!! ならば京へ行こう!!」
 国広は、顔をひきつる。
「なに!?」
 こんな連日の猛暑というのに、あの京へ行こうと正雪は、いうのか。
 しかし一人で行かせると最後たぶん帰ってこない。へたすれば小野篁のようにあの世に迷い込んで帰ってこないかもしれない。
「国広??」
 瞬時に国広の脳内で色々演算され、結局。
「はぁ……」
 国広は、ためいきをつくと。
「俺もついていこう」
 ということになった。
「国広!!」
 正雪は、嬉しそうな顔をすると、微笑む。
「だが覚悟しろ。五山の送り火の日は、さらに混雑してるぞ」
「江戸の町のようにか??」
「あぁ」
 江戸の町よりは、ましかもしれないが、細かいことは、どうでもいい。
 国広は、あえて頷くと、正雪は、覚悟を決めなければとこの時思った。
「神域から見えるとかは……ないか……」
 ふと知り合いの神でもいれば人が少ないところから見てるのでは、と正雪は、思ったがさすがにその考えは、甘いかとすぐになった。
「神域か……案外上賀茂の地からなら見えるかもな」
「そうなのか??」
「あの辺りだと舟形と左大文字を見れるかもれないが……」
 国広も京都は、詳しくないのではっきりとは、答えられない。
「とりあえずある程度は、下調べしておく」
「国広気遣いいたみいる」
 正雪も調べておこうとこの時思った。
 
 いざ京に行く日となり、正雪は、朝から行くのかと思っていた。
「夜から!?」
 しかし国広の言葉に正雪は、執務室でビックリ。
 ちょこんとソファーにすわる正雪に国広は、言う。
「連日35℃ごえの京に昼間からいけるか。それこそ、正雪倒れるぞ??」
 正雪は、顔を青ざめた。
「流石……盆地……古の都!!」
「古の都は、関係ないぞ」
 なんせ京の暑さと寒さは、盆地という土地に由来するものでもあるので。
「しかし!! 疫病などもはやり古くから儀式などもされてきた京だからこその業や縁があるであろう!?」
「それは、まぁあるだろうが……」
 はっきりとは、分からないのである。
 正雪は、しょぼんとなりいう。
「せっかく浴衣を着てきたのに……」
「それこそ、夜の方がいいだろ」
 確かに暑い。正雪は、そうだなと思いつつもしょぼんとなった。
「昼間の京は、もう少し涼しくなってからだな」
「うむ!!」
 とりあえず元気になったのでこれでいいだろう。
「しかし暇だな……」
「帰ったらどうだ??」
 正雪は、しばらく悩みそして。
「国広連行されたのね」
 国広を連れ、帰ってきた。
 連れてこられた国広を友美は、みながら、微笑む。
「姫すまんが居座る」
「いつも居座ってるでしょう」
 座布団の上にすわる国広に友美は、いうと嬉しそうな正雪をみていった。
「正雪よろしくね国広の事」
「任されよ!!」
 しかしこれは遠回りで、国広に正雪を任せたと言っているのだろう。
「姫夜の京は、安全か??」
「まぁ大丈夫だろうけど、国広せっかくならロマンチックな方法とりましょう」
「ロマンチック??」
「むぅ??」
 国広と正雪が首をかしげるなか、友美は、微笑むのみそしてその答えは、夜分かった。

「暑すぎ!!」
 正雪の持つリードの先には、白野威が。
「ロマンチック……」
 何故白野威がつい来ることになったか、これは、友美の言ったロマンチックが深くか変わっていた。
四条から鴨川沿いを浴衣姿で正雪と国広は、白野威と共に、歩く。
 日が落ち少しだけ風は、涼しいが、湿気を含むわっとした風は、やはりあつい。
「恋人達川に突き落としてやりてぇー!!」
 しかしカップルは、相変わらず鴨川の土手に座り、イチャイチャしている。
「白野威様分かりまする!! やはりここは、魔術で吹っ飛ばすべきか……」
「首チョンパでよくね??」
「よくない!!」
 なんでこんな日まで突っ込みをしなければならないのかと国広は、思いながら、溜め息をつく。
 白野威と正雪は、不満そうな顔に。
「ハーイ!!」
 そして何故か国広は、外国人旅行者に話しかけられる事に。
 まったく分からんと思いつつ受け答えすると、旅行者は、笑顔で去っていった。
「ありゃ八坂神社の行き方聞いてたね」
「国広分かったのか??」
「一応な……」
 やはりこの容姿のせいか、日本人に見えないのだろう。名前は、山姥切国広と純和なのに。
「やはり南蛮人に見えるのだな」
 正雪は、感心していうが、国広と白野威からすればお前が言えるかというかんじだ。
「でどこで見るのさ五山の送り火」
 白野威は、国広に問う。
「上賀茂か北大路でいいかと思ってるが……」
 白野威は、国広のあんを鼻で笑う。
「ふん!!」
 これは、素直にいえということだろう。国広は、無駄なプライドを捨てろと己に言い聞かせ素直に頼む。
「空から見させて欲しいです。力を貸してください」
 若干棒読みだがそこは、おおめに見てやろう。
「白野威様お願いいたしまする!!」
 正雪の方が素直にいえて偉いなと白野威は、思う。
「任せろ!! 国広後日で豆大福だからな!?」
 豆大福なら安いもんだろう。国広は、頷くと、白野威は、自分と正雪そして国広に術をかけ、普通の人には、見えぬようにした。
「早くのりな!!」
 正雪と国広は、頷くと、白野威の背に乗り、空へ。
 前に座る正雪をみながら、国広は、確かにこれもたロマンチックなのかと思った。
 眼下に広がる街のかありは、まるで星空のようだ。
 正雪は、上空は、流石に少し涼しいと感じていた。
「とりあえず近くから行くから!!」
「分かったが白野威様場所分かるのか??」
「でかいから分かりやすいよ」
 そういっていると、東山にある大の文字に火が灯った。
「あんなにも大きいのか……」
 こうして生前は、みることがなかった送り火をみて、正雪は、感銘を受けた。
 これもまた昔から変わらないもの。
 白野威は、近くまで飛ぶと、いう。
「昔から京では、これが盆の風景さ」
「白野威様そうなのですね……」
「にしてもでかいな……」
 国広よもう少し他の感想は、ないのか。
 白野威は、呆れ顔で次に、妙と法の送り火の方に。
「はじめは、妙だけだったが、あとに法が追加されたそうだ」
「国広そうなのか……」
 こちらは、妙法で一つとされる送り火だが、昔は、妙だけだったらしい。そこから350年ほどたち追加されたのが法だ。
「まぁ仏教にちなんでだろうね」
 白野威は、そういうと次に上賀茂のほうへ。そこでは、舟形の送り火がすでにともされ、その足で、金閣寺のほうへ。すでに大の文字の送り火だともされていた。
「すごい……」
「次行くよー」
 そのまま一行は、嵐山に。そして鳥居の送り火がともされた。
「これが五山の送り火か……」
 こうしてみるとなかなかすごいなと国広は、思ったがそれよりも前で楽しそうにしている正雪をみて、彼は、思った。
 連れてこれてよかったと。
「白野威様!! これは、とてもよいでございまする!!」
「それは、よかったね」
 白野威としては、これをして意味があるのかとも思えている。
 しかしこれは、昔からの京の季節の風景の一つだ。
「これもまた人の営みか……」
 ポツリと白野威は、呟くと、微笑む。
「じゃ帰るよ」
「白野威様よいんはないのか!?」
「いるか?? 正雪は、みれた感動を話したくてしかたがないのに」
 確かにそわそわしているが。
「つうことで帰るよ」
 白野威は、そういい最後にもう一度ぐるりと五山の送り火をめぐり帰路に着いた。 
 その後帰宅した正雪は、友美に五山の送り火の話をするのであった。
「よかったわね」
「うむ!!」
 その光景をみて、国広と白野威は、微笑むのであった。連れていけてよかったと改めて思いながら。
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