日常編2

 流れの把握とは、どのようにするのか。 
 研修2日目にして夏は、分からなくなっていた。
「夏殿大丈夫か??」
 2日目の午前中が終わり、夏は、弁当を食べながら、夏は、落ち込んでいた。
「ありがとう幸さん」
 隣で弁当を食べる正雪は、微笑む。
「貴殿は、頑張っている」
「今は、その言葉が泣けてくる……」
 夏は、溜め息をついた。
「流れってなに!?」
「と言われても……」
「幸さんなんで分かるの!?」
 正雪は、夏の勢いに押されていた。
「ふむ……改めて考えると何故だろうか……」
 正雪は、考えを整理したのち言った。
「魔力の扱いと似ているからか」
「魔力??」
 夏は、あまり正雪のことを知らない。友といえるが。
 正雪は、立ち上がる。
「こういうことだ」
 近くにあった枝で地面に陣を描き、正雪は、詠唱すると、陣の上に氷で出来たウサギが。
「凄い……」
「私の使う魔術は、錬金術と元素変化。このウサギは、その二つを掛け合わせ、作ったもの」
 ウサギを正雪は、持つと、夏に渡した。
「可愛い……」
 冷たいウサギに涼を感じ、夏は、少しだけ、さっぱりした感覚がした。
「それは、よかった」
 ウサギを夏は、地面におくと腕を組む。
「魔力を使うからはあくしやすいのか……幸さんは……」
「あくまでも副産物としてだが……私も初めは、魔力の把握、調整、制御には、時間がかかった」
「……幸さん本当?? それ」
 疑われ、正雪は、しょぼんとした。
「嘘は、申さぬ……」
「ごめん!!」
「よい」
 正雪と夏がそう話しているとき、社務所に楸が入ってきた。
「とりあえず申請書類は、これでいいか……」
 夏と正雪は、悩ましい顔をしている楸を見てどうしたのかと思った。
「神子様どうされました??」
「審神者免許発行の書類だよ」
「えっ!? 発行!?」
 夏は、学校を卒業するときに貰っていた。まさか古参の審神者達は、申請をしなければならないとは。
「私も申請したが……そのように手間がかかるものでは、ないと思うが……楸殿……」
「幸さんも!?」
「私は、仮入学だったゆえ……」
「政府出会ったのは、その申請があったから来てたのか!!」
「さよう」
 夏と正雪は、仲がいいんだなと楸は、思った。
「で神子様は、何がお困りなんですか??」
「証明写真だよ」
 審神者の免許証には、所属の国と本丸名が現役の審神者には、明記されるが、正雪や楸は、違う。だが共通して証明写真は、要るのだ。
「私は、蛍殿に撮って貰ったが……楸殿もそうされては??」
「正雪殿それができれば楽だけど、みごとに高い料金払わされるから……」
「私は、払ってないが……」
 しかし払うのは、どうりだと正雪も思う。蛍は、プロの写真家であり、依頼もきっちりと受けている。
 なら自分の料金は、誰が払っているのだろう。
「たぶん友美か光に経費って形で蛍が申請をしてるよ」
「きっちりしてるねその蛍丸……」
 蛍丸は、可愛らしい印象がある夏。しかしここの蛍丸は、そうでは、ないらしい。
「なら私が支払った方がいいのでは……」
「経費だからこれでいいと思うよ。正雪殿」
「確かに経費か……」
「そう。それに蛍は、君には、優しいから」
 楸は、そう微笑むともう証明写真機で撮るかと、考えていた。
「主さんなら俺が撮ろうか??」
「浦島が??」
「スマホで簡単に撮れるし!! なんなら、ビシッと神子装束の方がかっこいいしね!!」
「確かに一理あるが……」
 浦島と楸がそんな話をするなか、夏は、気になっていた。蛍丸の事が。
「幸さんあの蛍丸ってどんな刀剣??」
「そうだな……とても世話焼き……というべきだろうか……」
「世話焼き……」
「あぁ」
 あの見かけからは、想像できない。夏は、昼からは、この事がきにって研修に集中出来ないかもと少し不安になった。
「浦島その画角だとあまりよくないよ」
 キャスケットをかぶった蛍が社務所に表れ、夏は、驚いた顔をしていた。
「蛍ならどうすればいい??」
「画面が暗い……楸スマホ古いでしょう!?
 蛍に話しかけられ楸は、不服そうな顔に。
「高すぎるんだ!! ホイホイかえれるか!!」
「まぁそこは、否定しないけど。この写真免許証に使うの??」
「一応」
 蛍は、リュックをおろすと中かはカメラを出した。
「浦島このレフ板を楸に持たせて」
「オッケー!!」
 浦島は、楸にレフ板を渡した。
「小さいねこれ……」
「臨時用の作ったやつだから。楸それを胸元に持っていって」
 指示されたとおりにやると、蛍は、カメラを構えた。
「楸背筋伸ばして、ちょっと笑って!!」
 指示されたとおりにすると、シャッターの音が。
 蛍は、確認すると楸に画面を見せた。
「これでいい??」
「主さんイケメン!!」
「ありがとう蛍、浦島。しかし料金は……」
「友美に経費であげておく。それと練習ってことでポートフォリオ載っけるからその分格安にしとくね!!」
「ポートフォリオ!!??」
「俺の仕事には、必須だし、新規の案件も実績として載せれるものは、載せないとだから!! 出来上がったらデータと写真渡すから」
「わかった」
 あっというまに悩みが解決してしまった。
 楸は、これもまた神の見えないちからによるものかと思った。
 蛍は、レフ板を片付けると今度は、ノートパソコンをリュックから取り出す。
 カメラにケーブルを繋げ、社務所の隅でなにやら作業を始めた。
「あの蛍丸凄いね……」
 それを見ていた加州は、少し驚く。
「蛍丸って普通あんな感じじゃないよね!?」
「たぶんね」
 ますます謎が増すばかりだ。
「さて二人とも昼からの研修を始めようか」
 しかしそのなぞの解決は、お預け、昼からの研修が始まり、また精神統一を正雪と夏は、始めた。
 カチカチとマウスとキーボードの音が響くなか、夏は、蛍をチラチラと見てしまっていた。
(霊力の流れなんて分からない……)
 夏は、どうしようと思っていたとき、楸が前に。
「静かな水面をイメージしてみなさい」
「水面……」
 瞼を閉じ、夏は、水面を思い浮かべる。すると今までより一番はっきりわかった。
 鏡のように静かな霊力を。更に集中し、変化があるか感じてみたが、変化は、なく。あるのは、例えるなら風呂釜にたっぷりと入った水のような霊力だ。
「これは……」
「感じたみたいだね」
「はい。神子様」
「その感覚を忘れずに。これから大切になってくるからね」
 楸は、そう微笑むと、正雪の所に。
「正雪殿」
 声をかけても、彼女は、反応しなかった。
 楸の顔が強ばる。
「まさか……のまれてないよな……」
 正雪の肩を揺すると正雪は、ゆっくりと瞼を開けた。
「楸殿……」
「何が見えた」
 正雪は、普段よりも強ばった楸の声色に少しビクッとしたが話をした。
「深い……闇……」
「その闇は、君を飲み込もうとしたかい??」
「いや……あれは……見ていたというべきか…‥こちらが近寄れば遠退き、遠退けば近寄る……という感じだった……」
 楸は、ほっと安心した。
「ならよかった……」
 いったいなんの話なのだろうか。
「神子様その……」
「夏殿には、関係のない話だ。こればかりは、一般の審神者に伝えることは、できない」
 楸は、冷たい声色で言った。
「楸殿……」
「正雪殿その闇には、触れては、駄目だよ。制御できるのは、友美だけだ。万が一何かあるとすると……君は、死ぬ間違いなく……」
 背筋がゾクッとした。あの闇は、怖いものらしい。しかしどこか静かで、安らかな空気も感じられた。
「そんな危ないとのがなぜ幸さんに……」
「夏殿」
 楸は、冷たい声で夏を呼ぶと、夏は、小さくなった。
「楸殿その……」
「詳しいことは、友美に聞くといい。たぶん話してくれるだろう。それか聞きにくかったらまずは、国広か蛍に聞くといい」
 蛍は、名を呼ばれ、顔を上げた。
「なに??」
「なにもないよ。さて今日は、これでおしまいだ」
 楸は、そういうと急ぎ足で社務所を出ていってしまった。
「神子様焦ってるかんじだ」
「だな……」
 社務所を片付け、挨拶をし、正雪は、夏と別れた。
「蛍殿」
「なに??」
 神社を出たあと正雪は、問う。
「私の中にある……静かで、暗くて、……でも怖い闇は、なんだろうか……」
 蛍は、一瞬顔が強ばった。
「正雪触ってないよね!?」
 蛍の慌てように正雪は、とりみだしたが、頷いた。
「あぁ」
「ならよかった……」
「そのあれは……」
 黄昏の空のした蛍は、言った。
「イザナミ由来の力だ……」
「イザナミとは、イザナギの伴侶にして……国産みの神にして黄泉の宰神……」
「友美の力の断片を使えるということは、正雪もと……思ってたけど、まさか……そんな形であるだなんて……」
「蛍殿??」
「……正雪その力は、正雪が願っていた物とは、真逆の力。だから使わないで!!」
「……わかった」
 全てを壊せばいいという声が聞こえる。
 正雪は、それをかき消すように首を横にふった。
「大丈夫。もしまた喚んでしまったら俺が殺すから」
「蛍殿……」
 蛍は、一瞬殺気を秘めた瞳をしたが、次の瞬間安心さすように言う。
「帰ろ!! とりあえず友美には、報告して!! 楸がやってそうだけど、対策を教えてくれると思うから!!」
「分かったそうしよう」
 もしかすると自分は、大変なものを見つけてしまったのかと知れない。
 正雪は、そう思いながら、帰路に着いたのであった。不安を感じながらも蛍の言葉を信じて。

 
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