日常編2
湿気と暑さが厳しくなる頃、屋敷では、少しだけ変化があった。
「夏物の着物だったり浴衣だったりするな……」
あの浴衣や夏物の着物は、いったい。正雪は、気になり、国広にさっそく聞いた。
「政府からの支給だな」
「まさかの出所だな!?」
執務室でキーボードをうちながら、国広は、言った。
「突然軽装として出してきたんだ。うちのは、旦那が作ったものもあるが、政府支給でよろず屋で買ったものもあるぞ」
「なるほど。確かに夏は、暑いから」
「といいつつ政府は、夏関係なしに出してたが」
「む??」
「その反応が普通だよな」
何故季節関係なく出したのかと正雪は、いいたかった。
「百振以上を一気には、出せなかったんだろうな」
「そんなにいるのか!? 今!!」
「学校で習わなかったのか??」
「そこは……あぁ……」
「そうか」
国広は、そういうと、立ち上がる。
「正雪頼みがある」
「なんだろうか」
重要な頼みかと正雪は、キリッとしたが、内容は、案外簡単なものだった。
「長義殿の相手をしろだと!?」
「あぁ」
国広は、溜め息をつく。
「この時期のあいつは、セミ並みに鬱陶しいしうるさい」
そういうと、席に着き仕事を始めてしまった。
いったいどういう事だろうか、正雪は、色々考えていると、足音が。
「さぁ!! 国広くん!! どうだ!! 軽装の俺は!! 美しいだろ!!」
夏の着流しに羽織を着た長義が胸を張り、執務室に入ってきたが、国広は、どうでもよさそうに無視した。
長義が不服そうな顔をするので、正雪は、慌てていった。
「とても似合っている長義殿!!」
ここで役目をはたさなければと正雪は、いうと、長義は、はっと顔をし、気づいてくれたと嬉しそうな顔に。
「だろ?? 正雪さん!!」
すごい圧に正雪は、少しひいたが、頷いた。
「美しいく貴殿の在り方のようだ」
「ありがとう!!」
長義は、満足げに部屋をでていった。
「国広殿あれは……」
「なかなかだろ?? 毎年あれで困る」
国広は、書類を片付けた。
確かに毎年あれでは、困る。正雪は、涼しそうな服装だなと思いつつ手で顔を扇いだ。
「暑い……」
正雪の服装は、何時もの羽織に着物と袴。そのうえ謎のレオタードまで着ているのだ、暑いのは、当たり前だ。
江戸の初期と今では、温度がとても違うのだから。
国広は、そんな正雪を見て、立ち上がる。
「ほらこれ使え」
棚から扇子を取り出すと正雪に渡した。
「ありがとう国広殿」
男物の扇子だが今は、大きい方がいい。正雪は、扇子を、ひらき、使うが風は、ぬるい。
「……うぅ」
あまり涼しくなく、正雪は、げんなりしていた。
「正雪脱げ」
「国広殿!?」
突然変なことをいわれ、正雪は、困惑しながら、着物の合わせを手で押さえた。
「……貴方も男性……しかし……私は……」
国広は、真顔で正雪の頭をにチョップをいれた。優しく。
「むぎゃ!!」
「勘違いするなアホ。俺にあんたを抱く余力なんてあるか。あと興味もない」
遠回しに女として否定されたような。正雪は、ショックを受けた。
「……確かに女として……色々欠けているとは思うが……」
「はぁ??」
「……この姿は、落ち着くから……してるとは、いえ……やはり男装……」
さらしを巻き、生前のように胸を潰してなくてもやはり女には、見えずよくて中性的になるのだろうか。
「私は、しょせん……」
どんどん落ち込む正雪に、国広は、暑くて、自分も頭がまわってないと思いながら、溜め息をついた。
「俺も余計なことを言ったなすまん」
国広は、そういうと部屋の障子を閉める。そしてピッと電子音がすると涼しい風が。
「正雪」
名を呼んでみると正雪は、プイッとしほほを膨らませた。
「はぁ……」
機嫌を損ねてしまった。友美なら国広と殴りにかかってくるのでとても分かりやすい。
(姫ってなんやかんや裏表なくて分かりやすいんだよな……やることは、ゴリラというか……突拍子もないが……)
さてこの困った代理をどうするべきか。
「とりあえず危機感を持てたのは、偉いぞ」
とりあえず褒めてみた。
正雪は、チラッと国広を見ると、プイッとまたした。
「……鬼子母神と、源頼光連れてくるか」
国広は、様子を伺うと、後ろ姿がわかる。正雪の顔が青ざめ、冷や汗をかいていることに。
「……」
めんどくさい。国広は、放置することにした。
席に着くと仕事をはじめ、時より正雪の様子をみる。
とりあえず国広に背を向けたまま今は、光忠に貰ったクッキーを食べていた。
(怒ってるくせにここからは、出ていかないんだな)
本日分の仕事を終え、国広は、椅子から立ち上がる。
さて正雪は、どうしてるかと視線を向けたとき、彼は、目を見開いた。
背筋に嫌な汗が流れる。国広は、先ずは、あるところに連絡をした。
「旦那!! 来てくれ!! 正雪が!!」
声色からしてただ事じゃないと光は、判断し、国広に指示を出したのち、通話を切った。
国広は意識がなくダランとしている正雪の所に。長椅子に座っていたのが救いだ。
背もたれにもたれるかたちになっておりわたおれこむことは、なかったを
頬に触れると熱い。息は、まだある。執務室においてある冷蔵庫から水を冷凍庫から保冷剤を取り出すと、扉を閉め、水を正雪にぶっかけ、横に寝かし、保冷剤で首や脇などの動脈を冷やす。
「水分を取ってないと……気づいてやれなかった……」
余計なことを言わなければよかったと後悔しながらも出来ることを今は、すくだけと国広は着物の合わせに手を。
「すまん。あとで好きなようにしろ」
そう呟くと合わせを緩めた。
「国広!!」
光の声が聞こえ、国広は、ホッとすると障子を開けた。
「旦那……正雪が……」
「大丈夫!! とりあえずタンカーで部屋に運ぶぞ!!」
「ここで処置は……」
「出来なくないが、休ませるに、不向きだ」
国広は、頷くと、光とタンカーを使い、正雪を部屋に運ぶ。
急いで彼女の部屋のクーラーをいれ、そのうえ、光が術を使い冷やす。急いで濡れてよいいように加工した布団に寝かせる。
着物が濡れているが今は、それを使うのみ。
「国広サーキュレーターで風を当ててくれ」
「分かった」
サーキュレーターをつけ、体を冷やすように風を当て、その間光は、持ってきていた点滴をルートをとり、繋げた。
「国広このパックを立ってもってて」
国広は、輸液パックを受け取る。光は、点滴の支柱を準備し、国広から輸液パックを受け取ると、かけた。
「旦那他にやることは……」
「とりあえず今出来ることは、したから、目を覚ますのを待つくらいかな……」
光は、そういうと、国広を部屋の外に。
「旦那!?」
「あとは、医者の仕事だ!!」
障子が閉められ、国広は、立ち尽くすことしか出来なかった。後悔と罪悪感を感じながら。
目を覚ますと初めて見る不思議な物が吊り下げられていた。
管の行く先を目でたどると自分の左腕に。
「目が覚めたか」
視線を声のする方にやると、光が安心した顔をしていた。
「光どの……わたしは……」
「熱中症だ」
「熱中症??」
光は、バイタルを確認し言った。
「塩分が出すぎて、体内のバランスが崩れ汗がうまく出せなくなり、体温が上がる病気だ」
目を覚まし、体温も平温に戻っている。
「頭は、痛いか??」
「いいや」
「目眩は??」
「ない」
「ダルさは??」
「ないと思う……」
光は、ホッとした顔に。
「国広が適切に初期の処置をしてくれたのもあるな」
正雪は、はっとした顔に。
「……私は、国広殿に酷いことを……」
今にも泣きそうな顔に。光は、優しく微笑むと頭をなでた。
「なにがあったんだ??」
事を経緯を光に正雪は、話すと、彼は、少し困った顔をしていた。
「それは、傷つくな……正雪が……」
「うむ……しかしその後私は、無視を……」
「普通無視もするさ。そういう時」
「しかし……」
国広は、すまんと謝ってくれたのに。自分は、あの時謝罪を受け入れずこうして迷惑をかけた。
「……愛想をつかされてないといいが……」
「そらなら友美なんて愛想尽かされっぱなしだよ。だから大丈夫。とりあえず着替えるか??」
濡れているが着物に気づき正雪は、頷くと、光が浴衣を用意してくれた。
「点滴ももういいな」
輸液もなくなり、腕に刺していた針を光は、取ると、絆創膏を貼る。
「着替えている間外にいるから」
光は、そういうと、ビニール袋に点滴をいれ、外にでた。
着替えを正雪は、済ませ、声をかけた。
「光殿」
光は、なかに入ると、布団にかけていた防水シーツを取った。
「これで布団ももとどうりと!!」
「かたじけない」
「いいよ」
光は、微笑む。
「とりもうしばらくゆっくり安静だ」
「分かった……」
「それと国広が話があるそうだから、あとで来ると思う」
「むっ!?」
光は、そう言うと濡れた着物も持ち、部屋をでていき、しばらくして、慌ただし足音が聞こえ部屋の前で止まった。
「いいか??」
障子ごしに国広の、声が聞こえ、正雪は、どうぞというと、国広は、入ってきた。
襖を閉めると、国広は、土下座した。
「すまない。色々と酷いことを……」
土下座され正雪は、驚くが慌てていった。
「頭を上げてくれ国広殿!! 私こそこのような迷惑を……」
あの時ちゃんと謝罪を受け入れていれば。正雪は、後悔から目を伏せる。
国広は、頭を上げ、そんな正雪を見ていった。罪悪感を感じながら。
「俺が余計なことをいったからだろ。それにあんたを姫から預かる身。俺には、あんたを守る役目もある。水分をとるように言わなかった俺の責任だ」
正雪は、むすっとした顔に。
「なら姫がいなければ貴方は、私を守らないのか??」
「そんなことは、ないが……ってそこでむすっとなんでなる」
「だって姫のためと聞こえたゆえ……」
「そんなアホな話あるか」
国広は、この返しが出来るのなら大丈夫なんだなと少しホッとした。
「国広殿その……ありがとう……助けてくれて……」
「俺は、やれることをしたまで。それよりもすまん。手当ての過程で着物の合わせを少し緩ませてまらった」
申し訳なさそうに、国広は。いうと、正雪は、すぐに顔を真っ赤に。
「その……」
「謎のレオタードもあったから見てない」
正雪は、ホッとした顔に。
「そうか……」
「あぁ」
しかし暑さで倒れたからには、改革をしなければ。
「うむ……どうしたものか……」
「なにがだ??」
「国広殿やはりあの服は……」
「謎のレオタードは、脱いだ方がいいと思うぞ。さっきも俺の頭もまわってなくて、あんな言い方になったが、あれを脱ぐだけでもましだと思うが」
「だな……」
ならあれは、着ない方針に。
「着物よりも洋服の方が涼しい??」
「だと思う」
「ならナカツクニでの服装でいいか……」
なかなか当世の夏は、厳しそうである。
「国広殿!!」
「なんだ??」
「今更ながら……あの壁につけられている箱は??」
クーラーを指差す正雪に国広は、そう言えば知らないんだなと思いながら、言った。
「クーラーだ。夏の必需品で、あいつが動いてるとには、冷風が出てるんだ」
「なんと!?」
キラキラとした瞳で正雪は、クーラーを見る。
「中が気になる……」
「分解するな。後で戻せなくなるぞ」
正雪は、固まる。これは、困る。もし壊れれば、また倒れることに。
「うむ……」
「とりあえず今は、休め」
「……嫌といったら」
「布団に縛り付けるが??」
正雪は、プクーと頬を膨らませるが、しかたかたがないと布団に横になった。
「じゃ俺は、行く……」
といいかけたとき、立ち上がったとき、正雪にズボンの裾を掴まれた。
「……すまぬ」
どこか心細そうな不安そうな声と視線に、国広は、溜め息を着くと座った。
「ほら。これでいいか??」
「うむ!!」
しばらく様子を見ていると正雪は、安心した顔をして眠りはじめた。
「国広」
障子があき、入ってきたのは、光。国広は、光に困った視線を向けた。
「旦那どうすればいい……」
国広の手には、正雪の手が。どうやら、知らぬ間に握られてしまったようだ。
光は、優しく微笑む。
「起きるまで我慢かな」
洗い終えた着物を光は、正雪の荷物の所に置く。
「我慢って……」
「それだけ国広を信頼してるってことだろ」
「こんな写しを信頼するとは、変わったやつだ」
「珍しいな。そういうこというの」
切なげにゆれる碧眼。光は、国広の頭をなでる。
「友美は、あんなんだが、先見の明は、間違いなくなる。正雪をここに寄越したことも、そして国広に頼んだのもそれが最適解だと思ったからだ」
「旦那……」
「俺か、みてもそう思うよ。少なくとも今の正雪が答えじゃないのか??」
この組織のはじまりの刀にして、友美が認める近侍。友美なら蛍を選ぶと光は、思っていたが、違った。
「蛍は、私のためなら命すらも惜しまないわ。そして私の大切なもの達のためにも。でもそれは、あくまで蛍が認めた相手にのみ。でも国広は、違う。彼は、組織に保護されたもの、属してるものは、己の誇りにかけて守る。そしてそのちからもある。だからこそ、正雪の事を任せるの」
まだ肌寒い春の日に友美は、こう言っていた。
今なら分かる。あの選択は、間違っていなかったと。
「旦那……そうか」
「あぁ。これからもよろしく頼むよ」
光は、そういうと、目を細めた。
この男は、本当にあの友美を娶るだけの器がある。
全てを受け止めるだけの精神力、度胸そして暖かさと優しさがあるのだ。
「分かってる旦那」
国広がそういうと、正雪もどことなく笑っていた。
光と国広は、微笑む。
「しかし……動けん……」
「わかる。友美もよく……夜は手を繋げと言ってくるから……」
「旦那それ……夜伽の話じゃないよな??」
光は、視線をそらした。
「はぁ……お盛んでなにより……」
「これでも健全な男だから……」
思わずこんな話をしてしまったと国広と光は、反省した。場所は、考えなければ。
「……国広殿……破廉恥……」
「正雪!?」
「タイミングよすぎだな」
いったいどんな夢を見ているのか、国広は、呆れた顔をし光は、笑う。
さてさて国広は、いつ動けるようになるのか。それは、ある意味神のみぞ知ることだ。
「旦那なら見えるんじゃ……」
「見えても教えない」
「ケチ」
国広は、そう言うと溜め息を着いたが、その顔は、とても優しくそして、温かな顔をしていたのであった。
「夏物の着物だったり浴衣だったりするな……」
あの浴衣や夏物の着物は、いったい。正雪は、気になり、国広にさっそく聞いた。
「政府からの支給だな」
「まさかの出所だな!?」
執務室でキーボードをうちながら、国広は、言った。
「突然軽装として出してきたんだ。うちのは、旦那が作ったものもあるが、政府支給でよろず屋で買ったものもあるぞ」
「なるほど。確かに夏は、暑いから」
「といいつつ政府は、夏関係なしに出してたが」
「む??」
「その反応が普通だよな」
何故季節関係なく出したのかと正雪は、いいたかった。
「百振以上を一気には、出せなかったんだろうな」
「そんなにいるのか!? 今!!」
「学校で習わなかったのか??」
「そこは……あぁ……」
「そうか」
国広は、そういうと、立ち上がる。
「正雪頼みがある」
「なんだろうか」
重要な頼みかと正雪は、キリッとしたが、内容は、案外簡単なものだった。
「長義殿の相手をしろだと!?」
「あぁ」
国広は、溜め息をつく。
「この時期のあいつは、セミ並みに鬱陶しいしうるさい」
そういうと、席に着き仕事を始めてしまった。
いったいどういう事だろうか、正雪は、色々考えていると、足音が。
「さぁ!! 国広くん!! どうだ!! 軽装の俺は!! 美しいだろ!!」
夏の着流しに羽織を着た長義が胸を張り、執務室に入ってきたが、国広は、どうでもよさそうに無視した。
長義が不服そうな顔をするので、正雪は、慌てていった。
「とても似合っている長義殿!!」
ここで役目をはたさなければと正雪は、いうと、長義は、はっと顔をし、気づいてくれたと嬉しそうな顔に。
「だろ?? 正雪さん!!」
すごい圧に正雪は、少しひいたが、頷いた。
「美しいく貴殿の在り方のようだ」
「ありがとう!!」
長義は、満足げに部屋をでていった。
「国広殿あれは……」
「なかなかだろ?? 毎年あれで困る」
国広は、書類を片付けた。
確かに毎年あれでは、困る。正雪は、涼しそうな服装だなと思いつつ手で顔を扇いだ。
「暑い……」
正雪の服装は、何時もの羽織に着物と袴。そのうえ謎のレオタードまで着ているのだ、暑いのは、当たり前だ。
江戸の初期と今では、温度がとても違うのだから。
国広は、そんな正雪を見て、立ち上がる。
「ほらこれ使え」
棚から扇子を取り出すと正雪に渡した。
「ありがとう国広殿」
男物の扇子だが今は、大きい方がいい。正雪は、扇子を、ひらき、使うが風は、ぬるい。
「……うぅ」
あまり涼しくなく、正雪は、げんなりしていた。
「正雪脱げ」
「国広殿!?」
突然変なことをいわれ、正雪は、困惑しながら、着物の合わせを手で押さえた。
「……貴方も男性……しかし……私は……」
国広は、真顔で正雪の頭をにチョップをいれた。優しく。
「むぎゃ!!」
「勘違いするなアホ。俺にあんたを抱く余力なんてあるか。あと興味もない」
遠回しに女として否定されたような。正雪は、ショックを受けた。
「……確かに女として……色々欠けているとは思うが……」
「はぁ??」
「……この姿は、落ち着くから……してるとは、いえ……やはり男装……」
さらしを巻き、生前のように胸を潰してなくてもやはり女には、見えずよくて中性的になるのだろうか。
「私は、しょせん……」
どんどん落ち込む正雪に、国広は、暑くて、自分も頭がまわってないと思いながら、溜め息をついた。
「俺も余計なことを言ったなすまん」
国広は、そういうと部屋の障子を閉める。そしてピッと電子音がすると涼しい風が。
「正雪」
名を呼んでみると正雪は、プイッとしほほを膨らませた。
「はぁ……」
機嫌を損ねてしまった。友美なら国広と殴りにかかってくるのでとても分かりやすい。
(姫ってなんやかんや裏表なくて分かりやすいんだよな……やることは、ゴリラというか……突拍子もないが……)
さてこの困った代理をどうするべきか。
「とりあえず危機感を持てたのは、偉いぞ」
とりあえず褒めてみた。
正雪は、チラッと国広を見ると、プイッとまたした。
「……鬼子母神と、源頼光連れてくるか」
国広は、様子を伺うと、後ろ姿がわかる。正雪の顔が青ざめ、冷や汗をかいていることに。
「……」
めんどくさい。国広は、放置することにした。
席に着くと仕事をはじめ、時より正雪の様子をみる。
とりあえず国広に背を向けたまま今は、光忠に貰ったクッキーを食べていた。
(怒ってるくせにここからは、出ていかないんだな)
本日分の仕事を終え、国広は、椅子から立ち上がる。
さて正雪は、どうしてるかと視線を向けたとき、彼は、目を見開いた。
背筋に嫌な汗が流れる。国広は、先ずは、あるところに連絡をした。
「旦那!! 来てくれ!! 正雪が!!」
声色からしてただ事じゃないと光は、判断し、国広に指示を出したのち、通話を切った。
国広は意識がなくダランとしている正雪の所に。長椅子に座っていたのが救いだ。
背もたれにもたれるかたちになっておりわたおれこむことは、なかったを
頬に触れると熱い。息は、まだある。執務室においてある冷蔵庫から水を冷凍庫から保冷剤を取り出すと、扉を閉め、水を正雪にぶっかけ、横に寝かし、保冷剤で首や脇などの動脈を冷やす。
「水分を取ってないと……気づいてやれなかった……」
余計なことを言わなければよかったと後悔しながらも出来ることを今は、すくだけと国広は着物の合わせに手を。
「すまん。あとで好きなようにしろ」
そう呟くと合わせを緩めた。
「国広!!」
光の声が聞こえ、国広は、ホッとすると障子を開けた。
「旦那……正雪が……」
「大丈夫!! とりあえずタンカーで部屋に運ぶぞ!!」
「ここで処置は……」
「出来なくないが、休ませるに、不向きだ」
国広は、頷くと、光とタンカーを使い、正雪を部屋に運ぶ。
急いで彼女の部屋のクーラーをいれ、そのうえ、光が術を使い冷やす。急いで濡れてよいいように加工した布団に寝かせる。
着物が濡れているが今は、それを使うのみ。
「国広サーキュレーターで風を当ててくれ」
「分かった」
サーキュレーターをつけ、体を冷やすように風を当て、その間光は、持ってきていた点滴をルートをとり、繋げた。
「国広このパックを立ってもってて」
国広は、輸液パックを受け取る。光は、点滴の支柱を準備し、国広から輸液パックを受け取ると、かけた。
「旦那他にやることは……」
「とりあえず今出来ることは、したから、目を覚ますのを待つくらいかな……」
光は、そういうと、国広を部屋の外に。
「旦那!?」
「あとは、医者の仕事だ!!」
障子が閉められ、国広は、立ち尽くすことしか出来なかった。後悔と罪悪感を感じながら。
目を覚ますと初めて見る不思議な物が吊り下げられていた。
管の行く先を目でたどると自分の左腕に。
「目が覚めたか」
視線を声のする方にやると、光が安心した顔をしていた。
「光どの……わたしは……」
「熱中症だ」
「熱中症??」
光は、バイタルを確認し言った。
「塩分が出すぎて、体内のバランスが崩れ汗がうまく出せなくなり、体温が上がる病気だ」
目を覚まし、体温も平温に戻っている。
「頭は、痛いか??」
「いいや」
「目眩は??」
「ない」
「ダルさは??」
「ないと思う……」
光は、ホッとした顔に。
「国広が適切に初期の処置をしてくれたのもあるな」
正雪は、はっとした顔に。
「……私は、国広殿に酷いことを……」
今にも泣きそうな顔に。光は、優しく微笑むと頭をなでた。
「なにがあったんだ??」
事を経緯を光に正雪は、話すと、彼は、少し困った顔をしていた。
「それは、傷つくな……正雪が……」
「うむ……しかしその後私は、無視を……」
「普通無視もするさ。そういう時」
「しかし……」
国広は、すまんと謝ってくれたのに。自分は、あの時謝罪を受け入れずこうして迷惑をかけた。
「……愛想をつかされてないといいが……」
「そらなら友美なんて愛想尽かされっぱなしだよ。だから大丈夫。とりあえず着替えるか??」
濡れているが着物に気づき正雪は、頷くと、光が浴衣を用意してくれた。
「点滴ももういいな」
輸液もなくなり、腕に刺していた針を光は、取ると、絆創膏を貼る。
「着替えている間外にいるから」
光は、そういうと、ビニール袋に点滴をいれ、外にでた。
着替えを正雪は、済ませ、声をかけた。
「光殿」
光は、なかに入ると、布団にかけていた防水シーツを取った。
「これで布団ももとどうりと!!」
「かたじけない」
「いいよ」
光は、微笑む。
「とりもうしばらくゆっくり安静だ」
「分かった……」
「それと国広が話があるそうだから、あとで来ると思う」
「むっ!?」
光は、そう言うと濡れた着物も持ち、部屋をでていき、しばらくして、慌ただし足音が聞こえ部屋の前で止まった。
「いいか??」
障子ごしに国広の、声が聞こえ、正雪は、どうぞというと、国広は、入ってきた。
襖を閉めると、国広は、土下座した。
「すまない。色々と酷いことを……」
土下座され正雪は、驚くが慌てていった。
「頭を上げてくれ国広殿!! 私こそこのような迷惑を……」
あの時ちゃんと謝罪を受け入れていれば。正雪は、後悔から目を伏せる。
国広は、頭を上げ、そんな正雪を見ていった。罪悪感を感じながら。
「俺が余計なことをいったからだろ。それにあんたを姫から預かる身。俺には、あんたを守る役目もある。水分をとるように言わなかった俺の責任だ」
正雪は、むすっとした顔に。
「なら姫がいなければ貴方は、私を守らないのか??」
「そんなことは、ないが……ってそこでむすっとなんでなる」
「だって姫のためと聞こえたゆえ……」
「そんなアホな話あるか」
国広は、この返しが出来るのなら大丈夫なんだなと少しホッとした。
「国広殿その……ありがとう……助けてくれて……」
「俺は、やれることをしたまで。それよりもすまん。手当ての過程で着物の合わせを少し緩ませてまらった」
申し訳なさそうに、国広は。いうと、正雪は、すぐに顔を真っ赤に。
「その……」
「謎のレオタードもあったから見てない」
正雪は、ホッとした顔に。
「そうか……」
「あぁ」
しかし暑さで倒れたからには、改革をしなければ。
「うむ……どうしたものか……」
「なにがだ??」
「国広殿やはりあの服は……」
「謎のレオタードは、脱いだ方がいいと思うぞ。さっきも俺の頭もまわってなくて、あんな言い方になったが、あれを脱ぐだけでもましだと思うが」
「だな……」
ならあれは、着ない方針に。
「着物よりも洋服の方が涼しい??」
「だと思う」
「ならナカツクニでの服装でいいか……」
なかなか当世の夏は、厳しそうである。
「国広殿!!」
「なんだ??」
「今更ながら……あの壁につけられている箱は??」
クーラーを指差す正雪に国広は、そう言えば知らないんだなと思いながら、言った。
「クーラーだ。夏の必需品で、あいつが動いてるとには、冷風が出てるんだ」
「なんと!?」
キラキラとした瞳で正雪は、クーラーを見る。
「中が気になる……」
「分解するな。後で戻せなくなるぞ」
正雪は、固まる。これは、困る。もし壊れれば、また倒れることに。
「うむ……」
「とりあえず今は、休め」
「……嫌といったら」
「布団に縛り付けるが??」
正雪は、プクーと頬を膨らませるが、しかたかたがないと布団に横になった。
「じゃ俺は、行く……」
といいかけたとき、立ち上がったとき、正雪にズボンの裾を掴まれた。
「……すまぬ」
どこか心細そうな不安そうな声と視線に、国広は、溜め息を着くと座った。
「ほら。これでいいか??」
「うむ!!」
しばらく様子を見ていると正雪は、安心した顔をして眠りはじめた。
「国広」
障子があき、入ってきたのは、光。国広は、光に困った視線を向けた。
「旦那どうすればいい……」
国広の手には、正雪の手が。どうやら、知らぬ間に握られてしまったようだ。
光は、優しく微笑む。
「起きるまで我慢かな」
洗い終えた着物を光は、正雪の荷物の所に置く。
「我慢って……」
「それだけ国広を信頼してるってことだろ」
「こんな写しを信頼するとは、変わったやつだ」
「珍しいな。そういうこというの」
切なげにゆれる碧眼。光は、国広の頭をなでる。
「友美は、あんなんだが、先見の明は、間違いなくなる。正雪をここに寄越したことも、そして国広に頼んだのもそれが最適解だと思ったからだ」
「旦那……」
「俺か、みてもそう思うよ。少なくとも今の正雪が答えじゃないのか??」
この組織のはじまりの刀にして、友美が認める近侍。友美なら蛍を選ぶと光は、思っていたが、違った。
「蛍は、私のためなら命すらも惜しまないわ。そして私の大切なもの達のためにも。でもそれは、あくまで蛍が認めた相手にのみ。でも国広は、違う。彼は、組織に保護されたもの、属してるものは、己の誇りにかけて守る。そしてそのちからもある。だからこそ、正雪の事を任せるの」
まだ肌寒い春の日に友美は、こう言っていた。
今なら分かる。あの選択は、間違っていなかったと。
「旦那……そうか」
「あぁ。これからもよろしく頼むよ」
光は、そういうと、目を細めた。
この男は、本当にあの友美を娶るだけの器がある。
全てを受け止めるだけの精神力、度胸そして暖かさと優しさがあるのだ。
「分かってる旦那」
国広がそういうと、正雪もどことなく笑っていた。
光と国広は、微笑む。
「しかし……動けん……」
「わかる。友美もよく……夜は手を繋げと言ってくるから……」
「旦那それ……夜伽の話じゃないよな??」
光は、視線をそらした。
「はぁ……お盛んでなにより……」
「これでも健全な男だから……」
思わずこんな話をしてしまったと国広と光は、反省した。場所は、考えなければ。
「……国広殿……破廉恥……」
「正雪!?」
「タイミングよすぎだな」
いったいどんな夢を見ているのか、国広は、呆れた顔をし光は、笑う。
さてさて国広は、いつ動けるようになるのか。それは、ある意味神のみぞ知ることだ。
「旦那なら見えるんじゃ……」
「見えても教えない」
「ケチ」
国広は、そう言うと溜め息を着いたが、その顔は、とても優しくそして、温かな顔をしていたのであった。